キンシコウ必見【熊本市動植物園まとめ】大きい&珍しい動物たくさん
熊本市動植物園のアクセスと営業案内・おすすめ動物がわかる記事
2016年4月、熊本を襲った大きな地震。
熊本市にある動植物園もその被害者のひとつ。正門や猛獣舎付近は大きく破損し、猛獣たちは避難せざるをえない状況でした。
臨時休園、そして部分開園へ。
しばらくの間、限られた区域にいる限られた動物しか見ることはできず。まばらな来園者、壊れた歩道、工事の音…地震の爪痕を感じる園内でした。
募金を募り、復旧に努める日々がつづくなか、ついに2018年12月全面オープン!さらに2020年からリニューアル事業がはじまっています。
さあ熊本市動植物園はどんなところで、どんな動物たちに会えるのでしょうか?
この記事は熊本市動植物園のアクセスと営業案内をはじめ、キンシコウ、ユキヒョウ、ホッキョクグマ、アフリカゾウなど熊本市動植物園で会えるおすすめ動物を紹介します。
- 1. 熊本市動植物園とは?
- 2. 熊本市動植物園で会える動物たち
- 2.1. 大型ネコ科動物!熊本のビッグキャット
- 2.2. アムールトラのチャチャ|静岡生まれ
- 2.3. ライオンの赤ちゃん誕生!2019年
- 2.4. ユキヒョウ【中国・四国・九州に1頭】
- 2.5. ホッキョクグマのマルル【九州唯一】
- 2.6. オタリアのミク「アシカ」じゃない?!
- 2.7. クロサイ繁殖をめざすクラッグとミミカ
- 2.8. カバのなかよしコンビ|モモコとソラ
- 2.9. マサイキリン繁殖をめざす秋平とコナツ【全国8頭だけ】
- 2.10. シフゾウのチョッパーとアスカ【全国6頭だけ】
- 2.11. アフリカゾウのエリとマリー【九州唯一】
- 2.12. フンボルトペンギンと大接近!
- 2.13. カピバラ|冬あったか夏すずしい
- 2.14. クロクモザル一家「高いところ」に注目
- 2.15. ニホンザルの生息環境を再現
- 2.16. ワオキツネザルの活発な島暮らし
- 2.17. チンパンジー|雨の日も晴の日も快適
- 2.18. エリマキキツネザル|かも池の島に移動
- 3. 日本最後のキンシコウ|ヨウヨウ
熊本市動植物園とは?
熊本市動物園は1929年に開園。1991年に植物園が合併され、熊本市動植物園となりました。およそ120種の動物と700種以上の植物を展示する施設です。
動物園・植物園をあわせた総面積24.5万平方メートル(サッカーコート30面以上)実際に動物がいるエリアは半分程度の広さでしょう。急な勾配はなくまわりやすい動物園です。
また小さな遊園地が併設されています。池の周りをはしるモノレール(1回200円)に乗ると、高い目線からキリンやゾウを見ることができます。
熊本市動植物園は2029年の開園100周年に向けてリニューアルが進行中。2022年には植物園エリアと正門があたらしくなりました。
今後、アジア、アフリカ、南米と地域ごとの分類にきりかえ、混合展示や無柵放養式展示をとりいれる計画となっています。
リニューアルした植物園には動物を導入。熱帯植物がおいしげる温室「花の休憩所」ではナマケモノの展示がはじまっています。
動物も植物も楽しめる「熊本市動植物園」zoo zoo diary的ビッグキーワードはふたつ!
- 大型動物の飼育
- 希少動物の展示
魅力その1 – おおきい動物たくさん!
およそ120種類の動物が暮らす熊本市動植物園。入園料の安さにみあわず、食費や施設維持費のかさむ大型動物を飼育しています。
トラやライオン、ホッキョクグマなどの肉食獣からキリンやゾウ、カバなどの草食獣まで。おおきな動物だらけです。
あたらしい動物園ではありませんが、一部展示場は柵や檻がなく迫力のあるすがたを近くで観察することができます。
2022年12月現在、九州でアフリカゾウ、ホッキョクグマを展示している施設は熊本市動植物園だけです。
魅力その2 – めずらしい動物たくさん!
そしてもうひとつ。世界的に珍しい動物の展示です。
なんと日本で唯一!中国三大珍獣キンシコウに会うことができます。その美しい姿は必見!いまは1頭になりましたが、かつて繁殖に成功しています。
さらに、日本ではなかなか見れない動物が多数飼育されています。
ユキヒョウは神戸市・王子動物園より西でたった1頭のみ。クロサイは全21頭のうち2頭、マサイキリンは全8頭のうち2頭を飼育し繁殖をめざしています。
熊本市動植物園のアクセスと営業案内
熊本市中心部からほど近い江津湖のほとりに熊本市動植物園は建設されました。
公共交通機関で行きやすい動物園
熊本市内は市電(路面電車)とバスがはしっています。車がなくてもまったく不便なく動植物園まで行くことができます。
- 市電
- 熊本駅前/上熊本駅前 健軍町行
- (45分)動植物園入口 下車
- 下車後 徒歩10分
- 熊本駅前/上熊本駅前 健軍町行
- バス
- 桜町バスターミナル(25番乗り場) 木山(県庁経由・動植物園前経由)行
- (35分)動植物園前 下車
- 下車後 徒歩2分
- 桜町バスターミナル(25番乗り場) イオン熊本・城南・甲佐行
- (35分)動植物園西口 下車
- 下車後 徒歩1分
- 上熊本駅前 動植物園西口行
- (35分)動植物園西口 下車
- 下車後 徒歩1分
- 桜町バスターミナル(25番乗り場) 木山(県庁経由・動植物園前経由)行
路面電車とバス どっちで行く?
熊本の市電は路面電車。料金は一律、中学生以上170円、小児90円とバスより安いです。
市内は交通量がおおくバスは遅れ気味です。しかし動植物園前に停車するうえに乗客がすくないことが魅力。
路面電車は本数がおおくよく通ります。しかも交通量に左右されず遅れがすくないです。ただ通勤・通学の時間帯は利用者がおおいのが難点。
電停「動植物園入口」から動植物園まで徒歩10分。とはいえ整備された公園内をまっすぐに進むだけなので、とても近く感じます。
つまり、熊本市動植物園は路面電車にしろバスにしろ利便性は抜群。交通手段はお好みでお選びください。
駐車場は休日の混雑が予想されます!
駐車場料金は平日無料。土日祝日1回200円です。
スペースは比較的広いですが、休日の駐車場は混雑しています。
とくに連休の場合は、早い時間の来園か公共交通機関の利用がおすすめです。
営業案内|休園日はカレンダーで確認を
開園時間は9:00~17:00。入園は16:30までにお済ませください。
休園日は毎週月曜日(祝日の場合は次の平日がお休み)ただし第4週のみ月曜日は開園し、火曜日が休園です。来園前に公式HP「イベントカレンダー」でご確認ください。
入園料は下記の通り。
- 高校生以上 500円
- 小・中学生 100円
- 幼児 無料
おとな500円とリーズナブル!この入園料でゾウやトラ、ホッキョクグマ等を飼育できるのかと驚くばかりです。
現在、年間パスポートは発行していません。
熊本市動植物園は2021年4月より「開園100周年記念サポーター」を募集しています。
2000円以上寄付された方は1年間入園料が無料。10000円以上の場合はさらに特典がふえます。熊本市動植物園を応援したい!何度も行きたい!という方は、ぜひご支援をお願いします。
熊本市動植物園で会える動物たち
熊本市動植物園は現在リニューアル進行中です。
今後、動物の展示場所がかわる可能性があるため、動物園マップではなく動物の生物学的分類によって紹介していきます。ご了承ください。
園内のようす|休日は混雑します
休日の開園30分前、車は10台ほど、混雑まったくなし。
しかし、9時近くになるとぞくぞくと車が入ってきます。急いで券売機へ向かうと、すでに正門前には開園待ちの列。
園内は観覧スペースがうまるほどの人だかり。
キンシコウやアフリカゾウ、サイなどは観覧スペースがひろいため、問題なし。
一方、トラやライオン、ホッキョクグマなどの猛獣はとくに見えづらい状況になることもあります。
肉食動物(食肉目)
大型ネコ科動物!熊本のビッグキャット
2016年の熊本地震後、九州各地へ避難していた熊本市動植物園のビッグキャットたち。破損した獣舎が整備され、2018年10月に戻ってきました。
震災後の工事はリニューアルではなく復旧。大幅な改装はおこなわれず、以前の面影を感じます。
大きな変化は鉄格子の檻がとりはずされガラスビューになったこと。動物を観察しやすい展示場へ生まれかわりました。
さらに嬉しいことに、少しだけ鉄格子部分がのこされており動物のにおいや音を感じることもできます。ただし網目がきつくなったため撮影は困難に。
ウンピョウはいません
食肉目ネコ科ウンピョウ属。おもに東南アジアに生息しています。
2022年12月現在、日本に4頭しかいない珍しい動物です。
以前、熊本市はオスの「ジュール」とメスの「イーナ」を飼育していました。2頭は2004年に横浜市・ズーラシアで誕生し、2016年3月に熊本へやってきました。
ざんねんながら、2019年にイーナが死亡。翌年にはジュールも亡くなりました。よって、現在熊本市動植物園にはウンピョウはいません。
アムールトラのチャチャ|静岡生まれ
- Panthera tigris ssp. altaica
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 ロシア極東周辺 400頭
- 体長 150~200cm
- 尾長 100cm
- 体高 90cm
- 体重 オス180kg メス120kg
熊本市動植物園のアムールトラのメス「チャチャ」は2011年に静岡市・日本平動物園で生まれ、2013年に来園しました。避難先は北九州市・到津の森公園でした。
ほんの数年の間に移動を繰り返し、ストレスを抱えているのではと心配ですが。おなかを見せて爆睡するなど、すっかり落ち着いています。
ライオンの赤ちゃん誕生!2019年
食肉目ネコ科ヒョウ属。
アフリカのサバンナに生息し、ビッグキャットで唯一群れ生活をおくる動物です。
- Panthera leo
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 アフリカ大陸サハラ砂漠以南 3万頭
- 体長 150~200cm
- 尾長 80cm
- 体高 110cm
- 体重 オス180kg メス120kg
現在、3頭のアフリカライオンが飼育されています。
2008年生まれのオス「サン」2015年にアフリカンサファリからやってきました。約4か月後に被災し、大分県に帰省していました。
アフリカンサファリへ避難したときも、熊本市動植物園へ戻ってきたときも、周りの心配をよそにお肉にがっつくサン。強くたくましいライオンです。
サンのパートナーは2013年生まれの「クリア」アフリカンサファリに帰省中のサンと相性がよさそうだったため、2018年10月お嫁さんとしていっしょに移動してきました。
2019年5月、期待にこたえるようにクリアは3頭の赤ちゃんを生みました。
オスは「レオ」メスは「ココ」「サニー」と名付けられ、クリアの愛情をうけてすくすくと成長。
2020年3月、レオとココは両親の故郷アフリカンサファリへ移動しました。
2022年12月現在、熊本市動植物園は父「サン」母「クリア」子「サニー」計3頭のアフリカライオンを飼育しています。
クリアはサンおよびサニーと同居しています。サンとの交尾が確認できたので、近いうちに新しい命が誕生するかもしれませんね。
ユキヒョウ【中国・四国・九州に1頭】
アルタイ山脈やヒマラヤ山脈に生息する食肉目ネコ科ヒョウ属の動物です。
- Panthera uncia
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 中央アジアの山岳地帯 7700頭
- 体長 100~130cm
- 尾長 100cm
- 体高 60cm
- 体重 オス45kg メス35kg
現在の飼育数は1頭。メスの「スピカ」2005年多摩動物公園生まれ。
2006年に熊本市へ移動してきました。被災後は大牟田市動物園へ避難していました。
いつ見ても美しい、もこもこのスピカ。寒い季節がとても似合います。
開園直後はうろうろ。しばらくするとすこし高いところで横になるのがスピカスタイルです。ときには自慢のしっぽを巻きつけ、大きな肉球を枕にすやすや。
どのスピカも素敵。時間を変えてみると、いろんな表情が見れてうれしいですね。
ユキヒョウは全国で9か所の施設にしかいないめずらしい動物。神戸市・王子動物園より西にあるのは熊本市動植物園だけです。お見逃しなく!
ホッキョクグマのマルル【九州唯一】
食肉目クマ科クマ属。北米やロシアなど北極圏に生息する動物です。
オスは体長2メートル、体重400kgを超える巨体。地上最大の肉食獣として知られています。
- Ursus maritimus
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 ロシア、カナダ等北極圏 2.5万頭
- 体長 200~250cm
- 体高 140cm
- 体重 オス400kg メス200kg
ホッキョクグマにとってはものすごくせまい殺風景な展示場。しかもヒトが上から見おろすつくりで、決して良い施設とはいえません。
しかし、熊本市動植物園のホッキョクグマはとても魅力的。その名は「マルル」メスです。
2012年生まれのマルルは2014年に札幌市・円山動物園から2年契約でやってきました。母子をはなし、次の繁殖をうながす目的です。
来園当時まだ2歳になる前だったマルル。それはそれは可愛くてまたたく間に人気者となりました。
双子だったマルルは熊本に来てひとりぼっち。しかし、まわりの心配をよそに元気に動きまわり遊びまわり、すぐに一人暮らしに慣れてくれました。
すでに歴としたおとなのマルルですが、湯たんぽやボールなどおもちゃが好きなようす。
がじがじしたり、
投げてみたり、それを追うように飛び込んでみたり。
おもちゃが壁やフェンスに当たる音とマルルが飛び込む音が園内にひびきわたります。もっとも来園者があつまる瞬間です。
ただ、観覧スペースに水しぶきがかかることもしばしば。ご注意ください。
円山動物園のホッキョクグマであるマルル。2016年以降は期間を延長しており、ひきつづき飼育することが発表されています。
展示場がせまく土場もないところで暮らし続けているマルルは果たしてしあわせなのか、疑問に思うこともありますが。
九州でホッキョクグマに会えるのは熊本だけです。ぜひお見逃しなく!
【関連記事】ホッキョクグマに会える動物園・水族館 一覧とニュース|2022年12月
オタリアのミク「アシカ」じゃない?!
食肉目アシカ科オタリア属。南米大陸の沿岸部に生息します。
一見アシカにそっくりですが、少し大きめ。オスは体長2.5メートル、体重300kg以上にもなります。
また、おとなオスの首周りにはたてがみが生えています。
- Otaria byronia
- IUCNレッドリスト 低懸念(LC)
- CITES 記載なし
- 生息 南アメリカ沿岸 2.5万頭
- 体長 オス260cm メス200cm
- 体重 オス300kg メス150kg
熊本市動植物園では1頭のオス、1998年生まれの「ミク(未来)」を飼育しています。メスの「マイ」は2020年に23歳で亡くなりました。
たまに「ぷはーっ」と観覧者のちかくで息継ぎをしたり、フェンスにぶつかってきたり、サービス精神旺盛なミク。太く毛深く、アシカとは違うことがわかります。
暑い日にはへばっていることもありますが。夏におこなわれる氷のプレゼントは要チェックイベントです。
草食動物(偶蹄目・奇蹄目)
熊本市動植物園は肉食動物だけでなく、草食動物もたくさん飼育しています。なかでもゾウやサイ、キリンなど人気も知名度もたかい動物に会える数少ない動物園です。
クロサイ繁殖をめざすクラッグとミミカ
- Diceros bicornis
- IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 アフリカ東部~南部のサバンナ 5500頭
- 体長 300~350cm
- 体高 160cm
- 体重 オス1300kg メス1000kg
以前はシロサイが飼育されていた熊本市動植物園。2015年、2016年と相次いで死亡し、サイのいない動物園となりました。
そして、熊本地震が発生。
復旧に時間と費用がかかるなか、2018年3月クロサイのオスがやってきました。同年6月にはメスも来園。驚きと喜びのニュースでした。
熊本市動植物園のクロサイ展示場は柵で半分に区切られています。猛獣舎側とチンパンジー舎側から観察することができます。
ひろくはないものの、単独行動をとるクロサイにとってプライベートなスペースは大切。
雨の日にはぬかるみができる土。木の葉や枝を好むクロサイのために植樹をおこなうなど、環境をととのえています。
やんちゃで食いしん坊なクラッグ
2001年8月安佐動物公園生まれのオス、クラッグ。
繁殖を目的とした貸借契約(ブリーディングローン)により、2004年~2018年までは和歌山県のアドベンチャーワールドにいました。
豪華な耳毛と額側の長い角が特徴的なクラッグ。仏の顔に癒されます。クラッグは臆病な一面があるので驚かさないようにそっと見守ってください。
おおきな体と美しい角のミミカ
そして、クラッグの向こう側に見えているのがパートナーのミミカ。2009年4月上野動物園生まれです。
クラッグ同様、ブリーディングローンにより2012年~2018年はアドベンチャーワールドで飼育されていました。
オスを圧倒するほど立派な体格のミミカ。均整のとれた2本の角が美しく、長い耳毛は生えてません。
来園時、搬入に苦労したクラッグと対照的に、1時間もかからず寝室へはいるという偉業を成しとげたミミカ。
しかしながら、展示場に慣れるには時間がかかったようです。
ミミカと初対面のとき、ラッキーなことにミミカは観覧スペースのすぐ目の前に陣取り、手がとどく距離にいました。可愛いお尻をさわりたくなりますが、ぐっと我慢です。
現在クラッグとミミカは同居訓練中。ハズバンダリートレーニングにより麻酔なしで採血し、健康管理をおこなっています。
ミミカはクラッグのお嫁さん候補として上野から和歌山へ移動。しかしながら、繁殖には至りませんでした。
そこで、サイ飼育経験のある熊本市動植物園へ転居。環境をかえることが2頭の関係性の変化を生むのでは、と期待しています。
今回の選択が吉と出るか凶と出るか。答えはもうすこし先になりそうです。
個体数減少が顕著なクロサイ。シロサイに比べると神経質で攻撃的なため、飼育がむずかしいといわれています。
クロサイは全国で11の動物園でしか会えません。いつか熊本でクロサイの赤ちゃんを見れる日が来ますように。
カバのなかよしコンビ|モモコとソラ
鯨偶蹄目カバ科カバ属。サハラ砂漠以南のアフリカ大陸に広く分布しています。
体長3メートル、体重1トンを超す大きな動物です。
- Hippopotamus amphibius
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CETES 附属書Ⅱ
- 生息 サハラ砂漠以南の湿地帯 12万頭
- 体長 300~400cm
- 体高 150cm
- 体重 オス2000kg メス1500kg
現在、熊本市動植物園には2頭のメスカバが飼育されています。
1997年6月愛媛県立とべ動物園生まれのモモコ。2010年に熊本にやってきました。体重が1.5トンもある立派なカバです。
2012年5月東武動物公園生まれのソラ。2015年に来園した当時の体重はまだ800kgでした。現在はおよそ1トンに成長しています。
ソラをすんなり受け入れたモモコのおかげで、あっという間に2頭は仲良しになりました。ソラはいまでもモモコの後をつけてまわります。
獣舎から出てきてプールへ入るときも、
プールからあがってひなたぼっこするときも、モモコとソラはいっしょ。
甘える妹の相手をする姉という感じでしょうか。平和な2頭の雰囲気にとても癒されます。
モモコに比してソラは明らかに小柄なので、見分けは簡単です。
ときにプールで口をあけたり追いかけっこしたり、遊ぶ様子を見ることができます。大きなカバが2頭いるとすごい迫力ですね。
マサイキリン繁殖をめざす秋平とコナツ【全国8頭だけ】
鯨偶蹄目キリン科。アフリカ大陸サバンナに生息する首の長い動物です。
熊本市動植物園にはキリンのうち、複雑な模様を持つマサイキリンを展示しています。
- Giraffa camelopardalis ssp. tippelskirchi
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 ケニア、エチオピアのサバンナ・低木地帯 3.5万頭
- 体長 400~500cm
- 首長 180cm
- 体高 200~300cm
- 体重 オス1000kg メス700kg
2022年4月現在、オスの秋平とメスのコナツが飼育されています。
マサイキリンの嬉しいニュースと悲しいニュース
秋平の父親リキは2009年に静岡市立日本平動物園から繁殖のためにやってきました。リキは2頭のメスと繁殖に成功しています。
2016年1月にランとリキの息子、冬真が誕生。同年9月、小春とリキの第1子、秋平が誕生しました。
全国的にめずらしいマサイキリンの繁殖に成功した熊本市動植物園。小春の震災を乗りこえた出産は大きな話題となり、多くの方に笑顔をとどけました。
おとなオス・リキ、おとなメス・ランと小春、そして赤ちゃんキリン・冬真と秋平。一時は5頭もマサイキリンがいるにぎやかなキリン舎でした。
しかし、秋平誕生翌月に、当時国内最高齢22歳だったランが死亡。
さらに今後の繁殖も期待されていたリキは、2017年10月、あまりにも早すぎる死を遂げました。まだ9歳でした。
そして、2018年7月には小春が11歳という若さで突然死。おなかの中にはリキとの第2子がいましたが、助かりませんでした。
秋平の兄、冬真は2017年11月ブリーディングローンにより宮崎市フェニックス自然動物園へと移動。2020年、めでたく繁殖に成功しました。
一方で、あっという間にひとりぼっちになってしまった秋平。まだ幼く小さかったので、さみしそうに感じました。
今後どのように維持・繁殖を目指すのか注目を浴びていたなか、2020年に宮崎で生まれた冬真の子「コナツ」の熊本への移動が発表されました。
マサイキリンの相関図をみてわかるとおり、コナツと秋平には血縁関係があります。しかし、数すくないマサイキリンをのこすための決断です。
現在同居訓練中の2頭。今後の動向に注目です。
シフゾウのチョッパーとアスカ【全国6頭だけ】
鯨偶蹄目シカ科シフゾウ属。野生では絶滅した動物です。
体長2メートル、体重180kg前後と大型。オスはトナカイのように立派な角を持ちます。
- Elaphurus davidianus
- IUCNレッドリスト 野生絶滅(EW)
- CITES 記載なし
- 体長 150~200cm
- 尾長 50cm
- 角長 60~80cm
- 体高 110cm
- 体重 オス200kg メス100kg
現在の熊本市動植物園シフゾウ展示場は縦長なので動物との距離があります。さらに柵や檻にかこまれ、写真はおろか観察もしにくいのが難点。
熊本市動植物園には現在2頭のシフゾウ、チョッパーとありさが暮らしています。
2013年生まれのオス、チョッパー。2017年には多摩動物公園から、お嫁さん候補のありさ(2004年生)が来園しました。
まだ、おめでたい報告はありませんが、今後繁殖がうまくいくことを願っています。
日本におけるシフゾウ飼育数は6頭だけ。たった3か所でしか会うことができない珍しい動物です。ぜひお見逃しなく!
アフリカゾウのエリとマリー【九州唯一】
- Loxodonta africana
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ ※例外あり
- 生息 サハラ砂漠以南の草原や森林
- 体長 450~550cm ※鼻を含まない
- 鼻長 150~200cm
- 体高 250~300cm
- 体重 オス6000kg メス3500kg
現在、エリとマリーが飼育されています。2頭は1984年(推定2~3歳の時)に来園して以来、熊本の人々に愛されつづけています。
しっぽの先にふさ毛。外側に伸びる短めの牙が特徴のエリ。
毛のないしっぽと内側に伸びた長い牙が特徴のマリー。
エリより体が大きく優位な個体です。泥浴びや水浴びの習性があるのに雨が苦手という、ちょっと不思議なマリーさん。
2021年の体重測定でエリがおよそ3トン、マリーはおよそ3.3トンでした。
放飼場と観覧スペースのあいだを堀でしきる無柵放養式展示をとりいれています。すぐそばにアフリカゾウがいると大迫力です。
しかし、放飼場は2頭のアフリカゾウが暮らすのに十分とはいえない広さ。どこの動物園もおなじですが、飼育下のゾウは運動不足におちいりがちです。
熊本市動植物園では水場を設けたり、フィーダーを置いたり、動物たちが飽くことなく楽しめるようエンリッチメントをとりいれています。
九州でアフリカゾウに会えるのは熊本市動植物園だけです。ぜひ、ゆっくり観察してみてください。
その他の動物たち
フンボルトペンギンと大接近!
ペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属。チリやペルーに生息する鳥類です。
日本の環境に適応し動物園や水族館でよく見かけるペンギンですが、絶滅の危機にひんしています。
- Spheniscus humboldti
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 チリ・ペルーの沿岸 2万頭
- 体長 60cm
- 体重 5kg
目から口周辺がピンク色。胸の黒帯が1本のフンボルトペンギン。
熊本市動植物園のペンギン展示場は砂利や木々をつかい、ペルーの海岸を再現しています。
同じ目線、そして水中を見れるつくり。柵にアクリル板を用いることで、おとなも子どもも近距離でペンギンを観察できます。
エサを飲みこむ喉の動きを見たりペンギン臭を感じたり、近いからこそわかることもたくさん。満足度がたかいペンギン展示場です。
カピバラ|冬あったか夏すずしい
お隣には同じく南米原産の動物。げっ歯目テンジクネズミ科カピバラ属のカピバラです。
体長1メートルをこえる最大のネズミです。
- Hydrochoerus hydrochaeris
- IUCNレッドリスト 低懸念(LC)
- CITES 記載なし
- 生息 南アメリカ大陸の湿地帯
- 体長 100~130cm
- 体重 40~60kg
寒さが苦手なカピバラのために、動物園ではカピバラの寒さ対策がおこなわれています。写真奥のカピバラがオレンジになっているのが、わかりますか?
小屋の天井に設置されたヒーターで暖をとっていました。
夏にはプールにはいる様子が観察できます。実はカピバラは泳ぎが得意な動物です。
そのほかカンガルー、フラミンゴ、ヤマアラシ等に会えます。
サルのなかま(霊長目)
熊本市動植物園にはたくさんのサルの仲間が暮らしています。
なかでも日本にのこり1頭となった「キンシコウ」は絶対に見たい動物です。キンシコウは一番最後に記載しています。
キンシコウとシシオザルはガラスビューですが、ワオキツネザルやチンパンジーは水で囲まれた柵のない開放的な放飼場で暮らしています。
生息地を再現したり、行動をうながす工夫をしたり、動物が過ごしやすい環境をつくっています。
クロクモザル一家「高いところ」に注目
正門から入り左手に見えるサル島。
面積はせまいものの、水堀で囲まれた柵のない島が2つ並んでいます。ひとつはリスザル、ひとつはクモザルの展示場です。
霊長目クモザル科クモザル属。クロクモザルと表記されています。
- Ateles paniscus
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 南アメリカ大陸の熱帯雨林
- 体長 50cm
- 尾長 70cm
- 体重 6~8kg
ちいさな顔に細長いあしが特徴的なクモザル。
公式HPにはギアナクモザルの学名が記載されています。ただギアナクモザル特有の赤い顔ではありません。
熊本市動植物園では無柵放養式展示と行動展示のくみあわせにより、魅力たっぷりのクモザルをじっくり見ることができます。
すこし手狭に感じますが、島の中央にはタワー。そしてタワーを囲むようにヤシの木が生えています。
タワーでうんていをしたりヤシの木にのぼったり、クモザルの身体能力を発揮できる立体的なつくりです。
熊本市動植物園はクロクモザル繁殖に成功しています。5頭以上が放飼されており、小さな子どももいました。
あまり知名度は高くありませんが、特徴的な愛らしい顔とコミカルな動きに注目です。
ニホンザルの生息環境を再現
わたしたちに最もなじみのあるサルは、もちろんニホンザル。
東北~九州まで広く分布しています。青森などの積雪地帯にも生息しています。
- Macaca fuscata
- IUCNレッドリスト 低懸念(LC)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 日本の森林
- 体長 55cm
- 体重 10~15kg
他のサルと異なり、ニホンザルの尾は非常にみじかく長さ10cmほど。体の末端である尾は凍傷になりやすいため、みじかく進化しました。
展示場はニホンザルたちのルーツである熊本県球磨郡を再現。
円形の放飼場の中央はたかく、おおきな木があります。周囲はネットでおおわれ、2か所のガラスビューから見える景色が異なるようにつくられています。
整地された里山。
そして木々がゆたかな奥山。
野生のようにニホンザルたちは自由に行き来することができます。
写真は緑があまりないように見えますが、飼育員さんたちが定期的に植樹や芝いれをおこなっています。
しかし、サルたちが食べたり抜いたりしてしまうので、なかなか育たないそうです。
ニホンザル舎の入口には看板がありますが、細いくねくね道なのでスルーされていることも。見逃さないよう注意です。
ワオキツネザルの活発な島暮らし
- Lemur catta
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 マダガスカル島南部の樹林
- 体長 40cm
- 尾長 60cm
- 体重 3㎏
以前は正門付近にいたワオキツネザル。現在は「かも池」にある大きな島に引越しています。動物との距離は遠くなったものの、緑ゆたかでひろびろとした放飼場です。
木に登ってみたり、悠々とひなたぼっこをしたり。リラックスしている様子に癒されます。
通路から一段下がった場所なので、気づかず通り過ぎる方も多々。
シフゾウ舎付近にある階段をおりると、ワオキツネザルの島とおなじ高さになります。
元気なワオキツネザルたちをゆっくり見れるスポットです。
チンパンジー|雨の日も晴の日も快適
霊長目ヒト科チンパンジー属。
コンゴ民主共和国やルワンダなどアフリカ赤道付近に生息します。
- Pan troglodytes
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 西・中央アフリカの森林 20万人
- 身長 150cm
- 体重 オス50㎏ メス40kg
チンパンジー愛ランドと名付けられた展示エリア。大きな建物(全天候型展示場)と池に浮かぶ島(屋外展示場)からなります。
建物のなかは運動をうながすタワーとロープ等があり、全天候型展示場と称されています。ガラス張りで雨の日も雪の日も活発なチンパンジーを見ることができます。
2階部分の床が透明なので真下からチンパンジーが見れるというおもしろいつくりです。
さらに2階から屋外デッキへ出ると、屋外展示場のタワーを真正面からながめることができます。
島中心には大きなタワー。柱や木をむすぶたくさんのロープがはりめぐらされています。
ごはんの時間は展示場をつなぐ橋やタワーのいたるところに野菜が置かれています。ときには仲良くときには小競り合いをするチンパンジーの群れを見ることができます。
人気のたかいチンパンジーはイベントにひっぱりだこ。春はひなまつり、夏は七夕まつり、秋は収穫祭、冬は冬至といった行事に参加しているので要チェックです。
タワーの上層部にいることがおおいチンパンジーは遠くからでも観察できます。緑や青空のもとにいるチンパンジーはよりいっそう魅力的です。
2019年には北九州市・到津の森公園から若いメスのミルクがやってきました。
ミルクはめでたく2020年に初産をおえましたが、ざんねんながら生まれた子はまもなく亡くなってしまいました。
そして2021年9月、ミルクが2回目の妊娠。心配されるなか、2022年3月に元気な男の子「レン」が誕生!ミルクの愛情をいっぱいうけて育っています。
レンの誕生により熊本市動植物園のチンパンジーは合計5人となりました。
- オス
- マルク 推定1980年生(野生)
- レン 2022年生(父マルク母ミルク)
- メス
- ノゾミ 推定1978年生(野生)
- クッキー 1991年生
- ミルク 2006年生
ひろびろとした展示場でたくさん遊ぶレンを見れる日がたのしみですね。
エリマキキツネザル|かも池の島に移動
霊長目キツネザル科エリマキキツネザル属。マダガスカルに生息する動物です。
顔の周りの毛が長いことが名前の由来です。体長より長いしっぽを持つ、大型のキツネザルです。
- Varecia variegata
- IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 マダガスカル島東部の熱帯雨林
- 体長 50cm
- 尾長 60cm
- 体重 3.5kg
熊本市動植物園では、クロシロエリマキキツネザルが飼育されています。
頭数のわりにせまい展示場だと感じました。ガラスの汚れが目立ち、せっかくの美しい毛が見えにくい状況でした。
しかし、嬉しいことに2022年6月にワオキツネザルのとなりの島へお引っ越ししました!
ずいぶんと開放的な展示場になり、より活発なエリマキキツネザルをよりクリアに見れるのではと楽しみです。
園内マップによると、以前エリマキキツネザルがいたところにレッサーパンダがやってきたようです→
マンドリルはいません
アフリカ西部に生息するオマキザル科マンドリル属の動物。
熊本市動植物園には、オスのコタロウとメスの穂奈美が暮らしていました。ざんねんながら、2019年に穂奈美(26歳)が、2021年にコタロウ(24歳)が死亡しました。
現在、熊本市動植物園にマンドリルはいません。
日本最後のキンシコウ|ヨウヨウ
熊本市動植物園で最も注目すべき霊長類はキンシコウ!日本で唯一のキンシコウを飼育しています。
おもに中国の山岳地帯に生息しています。美しい黄金色の毛をもつ珍獣です。
- Rhinopithecus roxellana
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 中国中西部の山岳地帯 1.5万頭
- 体長 50~65cm
- 尾長 60cm
- 体重 オス15kg メス10kg
パオパオとヘンヘン一家
1990年代に中国の動物園からやって来たオスのパオパオとメスのヘンヘン。繁殖に成功し、3頭の子ども(2男1女)とともに飼育されていました。
2016年熊本地震後、キンシコウ舎が使えなくなり仮住まいをしていたキンシコウたち。
慣れない暮らしをしている最中、2018年にパオパオ(当時29歳)とヘンヘン(当時27歳)、長男シンシン(当時21歳)が亡くなりました。
パオパオとヘンヘンは数年前から衰えが見られ、人間でいうと80~90歳の老夫婦。長生きなキンシコウでした。息子のシンシンも60代くらいと高齢の域にはいっていました。
突然環境が変わりストレスもあったのかもしれません。なにより元来さむい地域にすむキンシコウにとって、近年の異常な暑さは致命的だったのかもしれません。
2021年8月、ついに次男フェイフェイ(当時22歳)が死亡しました。前日まで元気に過ごしていたそうですが、ざんねんでなりません。
2022年7月現在、末っ子ヨウヨウ(2004年生)が日本唯一のキンシコウとなっています。
高山に住むキンシコウは、やはり標高がたかいところが好きなのでしょうか。
展示場上部にいることがおおく見えにくいです。
檻越しにスキンシップをとるほど、仲が良かったフェイフェイとヨウヨウ。
とうとうひどりぼっちになってしまいました。
家族の死や環境変化をのりこえて、健康に過ごしてほしいと切に願います。
動物園だけでなく、植物園と遊園地が併設されている熊本市動植物園。
いちばんの魅力はキンシコウ!日本では、ここ熊本でしか会うことができない非常に貴重な動物です。
また、ライオンやホッキョクグマ、ゾウなどの大型動物、クロサイやユキヒョウ、シフゾウなどの珍しい動物を多く飼育しています。
猛獣や大きな動物が好きな方にとっては、とても満足度が高い動物園。
被災した動物や人々が再びおなじ場所で輝いています。ぜひみなさんもリスタートした熊本市動植物園を訪れてみてください。
以上、熊本市動植物園でした。
【参考】
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