クロサイとシロサイの違いは?天敵は?サイの疑問【生態と特徴】にお答え

05/01/2020

大きな体に立派な角を持つ動物サイ。

ひとくくりに「サイ」と呼ばれたり、ときにはカバと間違われたり、ゾウやキリンに比べるとマイナーな存在かもしれません。

今回のzoo zoo diaryはサイの種類・見わけ方皮膚や角のひみつ繁殖寿命など知りたかったサイ情報を一挙にお伝えします。きっとサイの疑問が解消するはずです。

平川動物公園 シロサイ

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サイの種類

サイはひづめの数が3つの草食動物。いわゆる奇蹄目(ウマ目)に分類されます。 現存しているサイは大きく5つに分けられています。

  • 奇蹄目 Perissodactyla
    • サイ科 Rhinocerotidae
      • シロサイ    Ceratotherium simum
      • クロサイ    Diceros bicornis
      • スマトラサイ  Dicerorhinus sumatrensis
      • インドサイ
        • インドサイ Rhinoceros unicornis
        • ジャワサイ Rhinoceros sondaicus
シロサイ
  • サイ属
  • アフリカ中央と南部に生息
  • IUCN準絶滅危惧(NT)
クロサイ
  • クロサイ属
  • アフリカ東部~南部に生息
  • IUCN深刻な危機(CR)
スマトラサイ
  • スマトラサイ属
  • インドネシアやマレーシアに生息
  • IUCN深刻な危機(CR)
インドサイ 
  • インドサイ属
  • インド~ネパールに生息
  • IUCN危急(VU)
ジャワサイ 
  • インドサイ属
  • インドネシア、ジャワ島西部に生息
  • IUCN深刻な危機(CR)

ジャワサイはインドサイ属ですが、その他はそれぞれ独立した属を持ちます。インドサイ属のみ角が1本。一角犀という呼び名があります。

ミナミシロサイ以外はすべて絶滅の危機に瀕しています。

日本で飼育されているのはシロサイ、クロサイそしてインドサイの3種類です。この3種類のサイを詳しく見ていきましょう。

シロサイ

サイ科の最大種といわれるシロサイ。アフリカのサバンナに生息し、おもに草を食べます。

オスの方が大きく体長4メートル体重3トンを超す巨体もいます。

シロサイの角は2本。口側の角の方が長く平均90cmほど。なかには1メートル以上の角を持つ個体もいます。

アフリカ大陸南部に生息するミナミシロサイ(Ceratotherium simum simum)と、中部に生息するキタシロサイ(Ceratotherium simumcottoni)が存在します。

サイの代表!ミナミシロサイ

ミナミシロサイは南アフリカ共和国やナミビアなど、アフリカ南部に生息しています。

サイのなかでは最も数が多く、動物園でもしばしば見かけます。

平川動物公園 シロサイ

19世紀末には絶滅寸前となり50頭以下だったミナミシロサイ。法整備や保護活動により、徐々にその数を増やし、2012年には2万頭以上に回復しました。

一方、ミナミシロサイの80%以上が生息する南アフリカでは、クルーガー国立公園における大規模な密猟が発生。増えていたミナミシロサイが激減しました。

2014年をピークに密猟は減少しているものの、ここ5年間で5,000頭ものシロサイがいなくなりました

現在も、ボツワナやケニアなどの一部地域では、ミナミシロサイの増加が続いています。しかし、南アフリカでの減少が大きいため、全体的なミナミシロサイ個体数は減少傾向にあります。

現在の推定生息数は1万8千頭。そのうち繁殖可能な個体は1万頭以下と考えられています。

将来絶滅の可能性があり、IUCN準絶滅危惧(NT)に指定されています。

絶滅は避けられない?!キタシロサイの現状

サイのなかで最多のミナミシロサイとは対極的にキタシロサイは残り2頭のみ。IUCNは深刻な危機(CR)と評価しています。

かつては、ウガンダや南スーダン、コンゴ民主共和国などアフリカ中部に分布していました。

乱獲や内戦などにより、キタシロサイの個体数は急速に減少。2006年以降、生存したキタシロサイは確認されていません。

チェコ共和国の動物園で飼育されていた最後の4頭(オス2頭、メス2頭)は、子孫を残すべくケニアの保護区に移されました。

しかし、繁殖成功には至らず、2014年と2018年にオスが亡くなりました。残された2頭のメスとミナミシロサイとの異種交配はうまくいかないだろうと予想されます。

そこで現在は、残るメスの卵子と冷凍保存されたキタシロサイの精子を用いた体外受精の研究が続けられています。もし受精に成功したら、ミナミシロサイを代理母とする計画です。

大切な種を救えるかもしれないという期待がふくらみます。

一方、絶滅させるのも生存させるのも、ヒト次第という事実にいきどおりを感じます。そもそも狩猟や戦争をしなければ、キタシロサイのいまの悲惨な状況はありえません。

わたしたちが犯してきた罪の深さを動物たちが身をもって教えてくれています。

最後の2頭のキタシロサイはケニアのオルペジェタ自然保護区で飼育中です。

クロサイ

おもにアフリカ大陸東部から南部に生息しています。クロサイはシロサイが生息する草原より、木々の生えたところを好みます。

体長3メートル体重1トン程度。シロサイ同様2本の角を有しています。

1960年代には10万頭もいた野生のクロサイは、現在5,500頭ほどしかいません。

名古屋市東山動植物園 クロサイ

クロサイの亜種

4亜種(South Eastern, Eastern, South Western, Western)存在しています。

クロサイの亜種
  • ナントウクロサイ Diceros bicornisminor
  • ヒガシクロサイ Diceros bicornismichaeli
  • ナンセイクロサイ Diceros bicornisbicornis
  • ニシクロサイ Diceros bicornislongipes

ナントウクロサイは、南アフリカとタンザニア南部に生息。ミナミチュウオウ(Southern-central)クロサイとも呼ばれています。生息数は2,300頭ほどですが、減少率が高いため深刻な危機(CR)に分類されています。

ヒガシクロサイは、ケニアやタンザニア北部に生息。保全活動やパトロールにより生息数は30年間でほぼ倍になり、2017年に1,000頭を超えました。増加傾向ではあるものの、その数の少なさから深刻な危機(CR)に指定されています。

ヒガシクロサイは、本来の生息地ではない南アフリカの民間動物保護区にも生息しています。今後、南アフリカのクロサイは、かつての生息地へ返される予定です。

ナンセイクロサイは、ナミビアと南アフリカ南部に生息。再導入に成功し、生息数は2,200頭ほど。現在も増加中です。さらに、繁殖可能な個体が1,000頭を超え、準絶滅危惧(NT)と再評価されました。

ニシクロサイは、アフリカ中西部に生息していました。しかし、カメルーン北部で確認されたのを最後に、絶滅(EX)と判定されました。

動物を狩る権利がオークションに?!

2014年、絶滅に瀕しているクロサイの狩猟許可がオークションにかけられました。なんと、出品者はクロサイの保有国であるナミビア政府。

結果は35万ドル(4000万円以上)という高額でアメリカ人が落札しました。動物の命をお金で取引するなんて!と驚いたことはかくしきれません。

しかし、難しい話はここから。

ハンターが支払った金額はすべてクロサイの保全に充てられます

つまり、ナミビアはクロサイを絶滅から救うためにクロサイを殺す許可を出したのです。そして、ハンターはその資金援助をした、という形になります。

狩猟許可が出たサイは生殖不能な高齢の個体。

年老いたオスのサイはテリトリーを保持しつづけ、若いオスの脅威となっています。そのため、高齢個体の排除により、若い個体のテリトリー確保、繁殖機会増加などが期待されます。

クロサイの絶滅防止につながるよい行いだと、ハンターは述べています。

【You Tube】CNNによるハンターのインタビュー映像はこちら

一方、絶滅危惧種を狩れるならいくらでも出す、という富裕ハンターが増えるだけでは?保全のための除外はナンセンス、などネガティブな意見も多く存在します。

上記の件は「オークション」「高額」ということで注目を浴びました。

サイのような希少な動物だけでなく、野生では問題行動を起こす動物や高齢となった動物が銃殺されている現実があります。

保護区のレンジャーがやむなく射殺するより資金調達のために富裕層を利用するのは、ひとつの手なのかもしれません。

同じ狩猟でも話題性があることをとりあげ、メディアや評論家がお金儲けをしているだけにすぎないという人もいます。

しかし、報道は動物たちが置かれている状況や保全のむずかしさ、大切さなどを多くのヒトの目や耳に届け、動物について考えるきっかけを与えたでしょう。

インドサイ

日本で会えるもう1種類のサイ、インドサイ。

インド北東部からネパールの沼地や河川近くで生活しています。草や葉だけでなく、果実や水草などバラエティに富んだ食事をします。

サイのなかではシロサイに次ぐ大きさを誇ります。体長3メートル以上、体重2トン前後。角は1本だけ。英語では【Greater One-Horned】大きな一角をもつサイと称されています。

実際にはインドサイの角はシロサイやクロサイほど長くありません。一方、下顎に長い前歯が生えており、争いの際に利用します。

東山動植物園 インドサイ

インドサイの特徴

1本の角も特徴的ですが、最も目をひくのは鎧のようなひだのある皮膚

首周りにはひだが集中しており、急所を守る役割があると考えられています。全体的にほんのりピンク色。太ももや肩には、ボタンのような突起が目立ちます。

サイの習性である泥浴びにとどまらずインドサイは水の中を泳ぎます。さらには、カバのように潜ったりエサを食べたりすることも確認されています。

ユニークでチャーミングなサイです。

【YouTube】San Diego Zoo Safari Parkの泳ぐインドサイ親子を見る

密猟や生息地破壊により一時は200頭以下に落ち込んだインドサイ。

インドとネパールにおける国立公園の制定や保全活動により、現在は3,500頭程度に回復しています。その70%以上が、インドのカジランガ国立公園に生息しています。

2008年に危機(EN)から危急(VU)に再評価されています。

シロサイとクロサイの見わけ方

日本で会える3種類のサイのなかで角が1つしかないインドサイは区別が簡単です。

では、シロサイとクロサイの違いはご存知でしょうか?

文字通り「皮膚の色」ではないんです。サイを見ても「白」ではないし「黒」でもないですよね。

大きな違いは口元にあります。

サイの口の形

サバンナに住むシロサイは、地上の草を食べて生活しています。そのため、頭は長く平たい口を持っています

一方、低木地に住むクロサイは木に生えている枝や芽などを食べます。高い場所にあるエサをとれるように、上唇は長く飛びでています。英語では【Hook Lipped】鉤状のくちびると呼ばれています。

また、シロサイと違って頭をもちあげないといけないのでクロサイは小顔です。

現地の言葉「幅広な口を持つサイ」が「ホワイトライノー」と間違って伝えられました。そして、同じアフリカ大陸に生息する別のサイを「ブラックライノー」と名付けたといわれています。

シロサイとクロサイ
シロサイ:長い顔に幅広の口 クロサイ:小さい顔に長い上唇

クロサイの方が黒い?

写真を見てクロサイの方が黒いと思ったあなた。

実は、そうではありません。

泥浴びの習性があるサイは生息地の土の色が肌にうつります。そのため、場所によってサイの肌の色は変わります。

つまり、黒いシロサイもいれば白いクロサイも存在するということです。

サイの区別をするときは顔を観察してください。比べてみるとまったく違うことがわかるでしょう。

ちなみに、インドサイは木の枝や葉も食べるため、クロサイと同じような口の形をしています

東山動植物園 インドサイ

サイの生態

サイは、雌雄ともに単独行動を好み、それぞれ縄張りを持ちます。境界にフンの匂いをまき散らせて、自分のテリトリーをアピールします。

サイの繁殖

繁殖期のみ雌雄が会合し、出産・育児はメスのみで行います。今のところ、決まった繁殖期はないと考えられています。

サイの妊娠期間は長く15か月ほど。種によって異なりますが、40~60kgの赤ちゃんが誕生します。1度に1頭しか出産せず、授乳期間は1年以上に及びます。

子サイは、毎日数十リットルもの母乳を飲み、毎日数kgずつ大きくなっていきます。

一見早いように思えますが、体重1トン以上のサイにとっては微々たるもの。比較的、成長に時間のかかる動物です。

安佐動物公園 クロサイの親子

雌雄ともに単独行動をとるため、サイの子は3歳ごろ母親のもとを離れていきます。

メスの性成熟はおよそ3年。一方、オスは約8年かかります。

しかし、実際に初めて繁殖を行うのは、メスが6歳、オスは10歳以上と考えられています。

サイは子殺しをする?!

サイの母親は、子が独立するまで発情することはありません。

つまり、長い個体では5年以上繁殖を行わない状態となります。そのため、生涯に生む子どもの数は5頭ほどと考えられます。

このことからも、サイの個体数回復が難題であるとわかります。

また、繁殖活動に盛んなオスがメスの発情を促すため子を殺すことも確認されています。

サイの寿命

ゾウをはじめ身体が大きい動物は、寿命が長い傾向にあります。サイもそのひとつ。40~50年ほど生きるといわれています。

世界最高齢は、2019年に死亡した野生由来・保護下に置かれていたクロサイ。推定57歳とのこと。

出生が確かな例としては、フランスの動物園で暮らしていたシロサイのサナが55歳でした。

福岡市動物園 シロサイ ロック
故ロック(推定45歳)

サイの目はほとんど見えてません!

ところで、サイの目。良く見たことありますか?

大きな体や顔に対して、サイの目は非常に小さいです。

実は、サイの視力は非常に悪いことがわかっています。

ときには、数メートル先のものすら見えないそうです。そのため、動くものに驚いて突進してしまう傾向にあります。

もしもサイに出くわしたときは、ゆっくりと離れ、視野から出るのが賢明でしょう。

目の悪いサイは、耳や鼻で周囲の状況を感じとります。

自由自在のサイの耳

ラッパのような形のサイの耳は、360度ぐるぐる自由に動かせます。耳が違う方向を向いてる姿も、しばしば見かけます。

さらに、残された他のサイの匂いを嗅ぎわけることができるほど、嗅覚が優れています。

オスは発情したメスの匂いを発見・追跡し、求愛活動を行います。

動物園では大きな音や強烈な匂いで、動物たちをびっくりさせないようにご注意ください。

シロサイ 福岡市動物園

極厚!サイの皮膚

サイの皮膚は非常に厚く、硬いことで有名です。ライオンの爪や牙もなかなか刺さらないほどの頑丈さ。厚いところでは5cmもあります。

しかし、さわった印象は予想ほど硬くはありませんでした。ほんのりあたたかく、しっかりめの絨毯のような感触だったことを覚えています。

ちなみに注射針は通りません。採血は皮膚の薄い耳から行っています

サイの角は爪?

サイの角は、ウシのように骨でできた角ではありません

ケラチンでできており、人間でいうと髪の毛や爪と同じ成分。

つまり、一生伸び続きます。われわれが爪を切るように、サイは自分で角を研がなければなりません。

そのため、角の形に器用さや性格が現れている気がします。

ぼこぼこしていたり、滑らかだったり。曲がっていたり、直線的だったり。1本はきれいだけど、もう1本はつぶれていることもあります。

1頭1頭、思い思いに角を研いでいるようです。

今回写真を載せているサイも皆、角の長さや太さが異なります。個体識別の鍵にもなりますので、ぜひチェックしてみてください。

ブロンクス動物園 シロサイ

快速!サイのあし

野生のサイは危険を感じたり興奮したりすると、およそ時速50kmで疾走します。

おとなのシロサイは体重2トン以上。非常に強い脚力の持ち主であることがわかります。

動物園では危険が少ないうえに敷地が狭いため、走るサイを見ることはほとんどありません。

一方、開放的なサファリパークではダイナミックな様子を見れるかもしれません。

サイの天敵

サイは子どもといえど100kgほど、捕食動物にとって十分な食料です。アフリカではライオン、アジアではトラなどの大型肉食獣に狙われることがあります。

一方、体長3メートル、体重1トン以上という巨体のおとなサイに挑むものは、ほぼいません。

唯一といっていいサイの天敵は、わたしたち人間。

最大の敵ヒト!密猟がたえません

すべてのサイを対象に、角を目的とした密猟が後を絶ちません。

現在、主な密輸先はアジア。

刀の柄としてサイ角を利用してきた中東では、近年、需要が減少傾向にあります。

一方、漢方医学では解熱鎮痛や滋養強壮の効果があるとして、現在でもサイ角が使われています。前述したように角の成分はケラチンです。科学的根拠は全くありません。

また、ベトナムでは富豪や権力のシンボルとして人気が高まり、新たな市場が生まれています。

金より高値で売買されることもあり、組織的な密猟グループが関与しています。彼らはサイを殺すことには興味なく、サイの角を獲ることだけが目的です。

しかし、密猟者が強大なサイ相手に素手で立ち向かうわけはなく、当然銃を使用します。結果的に、射殺もしくは重傷により死亡するケースがほとんどです。

サイ密猟被害数(2017年)は、1000頭以上!

近年では、動物園にも密猟者が現れ、角を持ち去るという事件も起こっています。

角をそぎ落とされたサイの無残な姿。どうしてこんなことができるのだろう、と怒りと悲しみでいっぱいになります。

保護活動の一環として、密猟の対象にならないよう角を切る行為が実施されています。殺されないための苦渋の決断でしょうが、非常にざんねんに思います。

いっそ取引を解禁したら密猟が減るのではないかという意見もあり、世界中でサイ絶滅防止に関する話し合いが続けられています。

絶滅の危機に瀕し、さまざまな犯罪や議論の的となるサイ。

密猟や生息地破壊は、サイだけでなく多くの絶滅危惧種の脅威となっています。

動物の大切さ、自然の尊さを、少しでも多くの人に理解していただきたいです。

熊本市動植物園 クロサイ

サイと密猟は切っても切り離せない関係です。密猟防止策がとられていなかったら、今頃サイは絶滅しているでしょう。

わたしたちが動物園でサイに会えることはすごくありがたいことです。口や耳など細かいところに注目して、サイの種類や生態をじっくり確認してみましょう!

サイに会える動物園リストを種類別につくっています。会いたいサイがどこにいるのかチェックしてみてください↓

以上、サイの豆知識でした。

【参考】

Save the Rhino

IUCN