ナマケモノの特技とは?不思議な動物ナマケモノの省エネ生活

ナマケモノの種類、生態と特徴|動物の豆知識

ゆっくりした動きと垂れ下がった表情が印象的なナマケモノ。

動物園では寝てばかりですが、野生ではどんな暮らしを送っているのでしょうか?

知っているようで知らない不思議な動物ナマケモノ。その種類や生態と特徴、ナマケモノに会える動物園などを紹介します。

ナマケモノの種類

哺乳類の中の、有毛目に分類されるナマケモノ。中央~南アメリカの熱帯林に生息しています。

前足の指が2本のフタユビナマケモノ科と、前足の指が3本のミユビナマケモノ科に分類されます。後ろ足の指は、どちらも3本です。

フタユビナマケモノ科
  • フタユビナマケモノ(Linne’s Two-toed Sloth)
  • ホフマンナマケモノ(Hoffman’s Two-toed Sloth)
ミユビナマケモノ科
  • ノドチャミユビナマケモノ(Brown-throated Sloth)
  • ノドジロミユビナマケモノ(Pale-throated Three-toed Sloth)
  • タテガミナマケモノ(Maned Three-toed Sloth)
  • コビトナマケモノ(Pygmy Three-toed Sloth)

フタユビナマケモノ

フタユビナマケモノ

フタユビナマケモノはベネズエラからブラジル、ペルーのアマゾン盆地に生息しています。個体数が多く、IUCNレッドリストLCに分類されます。

現在、日本の動物園で飼育されているナマケモノは、すべて本種です。

ホフマンナマケモノ

ホフマンナマケモノは2つの生息域を持ちます。北はニカラグアからベネズエラ、エクアドルに、南はペルー北部からブラジル東部で観察されています。

絶滅の可能性は少ないと言われていますが、森林破壊が進む北部では個体数が減少しています。将来的な絶滅の危険性が懸念されています。

上野動物園は、1983年よりホフマンナマケモノを飼育していました。2011年にオスのヒデ、2014年にメスのコウが死亡し、日本のホフマンナマケモノ飼育数はゼロになりました。

ミユビナマケモノ

ノドチャミユビナマケモノ

北はホンジュラス、南はアルゼンチンまで広く生息するノドチャミユビナマケモノ。急速な減少等も見られず、絶滅のおそれは少ない種です。

【YouTube】Nat Geo WILDでノドチャミユビナマケモノをチェック

ノドジロミユビナマケモノ

ノドジロミユビナマケモノは、ベネズエラからブラジル北部のギアナ高地に生息しています。一部地域では密集し、絶滅は懸念されていません。

タテガミナマケモノ

ブラジル東部の大西洋沿岸にのみ生息するタテガミナマケモノ。IUCNレッドリスト絶滅危惧種(EN)に指定されていましたが、2009年に危急種(VU)に再評価されました。

コビトナマケモノ

コビトナマケモノは、パナマ領エスクド・デ・ベラグアス島にのみ生息します。500~1500頭のコビトナマケモノがいると、推測されています。

島の環境変化に伴い生息数は減少していると考えられ、最も絶滅が危惧されているナマケモノです。IUCNは、コビトナマケモノを絶滅寸前を意味する近絶滅種(CR)に記載しています。

【YouTube】California Academy of Scienceでコビトナマケモノをチェック

ナマケモノの生態

ナマケモノの生活

中南米のジャングルに生息するナマケモノ。

ほぼ一日中、木の上でじっとしています。雌雄ともに単独で生活しています。

ナマケモノの睡眠時間は、15時間~20時間。夜間に活発になる動物です。

平川動物園 ナマケモノ

ナマケモノの食事

色彩感覚はありますが、視力が弱く耳も悪いナマケモノ。嗅覚は優れているため、鼻や手を使って採食していると考えられています。

木の上で生活するナマケモノの食事は、もちろん木の葉。

しかし、葉はカロリーや栄養が少ないため、一般的な葉食者は大量の葉を食べます。

ところが、ナマケモノはたくさん食べるのではなく、エネルギーの消費を減らしました。つまり、生き残るために動かないことを選択したのです。

体力を使わないナマケモノは、1日数グラムの葉で生き続けています。

ミユビナマケモノは数種類の木の葉しか口にしません。一方のフタユビナマケモノは、果実や葉などさまざまなものを食します。

一般的に、動物園などでは、食料の調達が容易なフタユビナマケモノが飼育されています。

ナマケモノの消化

食物の消化にはエネルギーが必要となります。硬い細胞壁で囲まれた植物は、なおさらです。

ナマケモノの胃はひとつの袋ではなく、複数の袋を持っています。ナマケモノが食べた植物は、多重構造の胃を通ります。その際、共生微生物により時間をかけて効率よく消化されます。

ナマケモノの消化のスピードは非常に遅いと考えられています。1枚の葉の消化に30日、1回の食事の消化に50日かかる、といった報告があります。

ナマケモノは満腹なのに死んじゃう?!

ナマケモノは哺乳類ですが、体温を一定に保つことができません。気温によって体温が変わる変温動物です。

そのため、1年を通して天候が安定している熱帯林に住みついたと考えられています。

ナマケモノの胃に共生している微生物は、低温により死滅することがわかっています。外気温が下がりナマケモノの体温が下がると、消化を助ける微生物がいなくなってしまいます。

すると、ナマケモノはいつもどおり食事をしても、消化ができず栄養も得られない状態となります。最悪の結果、食料は十分にあるのに飢え死にしてしまいます。

2017年~2018年の嵐では、多くのナマケモノが衰弱し保護されました。

ナマケモノの排泄

ナマケモノは週に1回程度、木から降りて用を足します。

排便前にお尻を動かす仕草や排便中のにこやかな表情は、とってもチャーミングです。

なぜナマケモノのトイレは地上?

木の上で生活しているナマケモノが、わざわざ地上に降りて排泄するのは、いったいなぜでしょうか?

現在、2つの仮説が有力視されています。

1つは、共生している虫(蛾)のため。

ナマケモノが地上に排便すると、虫はその糞に卵を生みます。そして、卵からかえった虫は木の上に住むナマケモノの毛に寄生。これが元となり、ナマケモノの体に苔が生えます。

ナマケモノに生えた苔は、時には栄養源となり時にはジャングルに身を隠す手助けにもなる、と考えられています。

ナマケモノと自然

2つ目は、繁殖相手を探すため。

雌雄ともに単独行動するナマケモノ。広いジャングルの中で、繁殖相手を探すのは至難の業でしょう。

通常、1週間に1回ほどの排便ですが、発情期のメスは毎日のように地上に降りて排泄する様子が観察されました。

よって、糞の匂いを頼りにオスがメスを探し出すと考えられています。

ナマケモノが生きていくうえで、虫や苔は必須ではありません。

一方で、野生動物にとって子孫を残すことは、最も重要な課題のひとつ。命を脅かす行動の理由として、より論理的と言えるでしょう。

ナマケモノの繁殖

生涯のほとんどを木にぶらさがって過ごすナマケモノ。交尾はもちろん、出産もぶらさがったまま行います。

ナマケモノの親子 千葉市動物公園

ナマケモノの性成熟は2~5歳。

繁殖期のメスは、準備ができたことを知らせるように声を出します。それを聞きつけたオスが、メスの元へやって来ます。

ミユビナマケモノは6か月、フタユビナマケモノは1年の妊娠期間を経て、通常1頭の子を出産します。

生まれたての赤ちゃんは自分で母親の毛をつかみ、乳首までたどり着かなければなりません。

その後1か月ほどは、お母さんのおなかに乗って生活します。

生後半年、長いものでは2歳ごろまで、母と子はともに過ごすと言われています。

ナマケモノの寿命

野生におけるナマケモノの寿命は20年。飼育下では40年以上生きたという報告もあります。

一方、成熟する前に亡くなるナマケモノも多いことがわかっています。

ナマケモノの天敵は?

ナマケモノの天敵は、地上にいるジャガーやピューマなどの肉食獣。

彼らから逃れるために、ナマケモノは樹上生活者となりました。

週に1回のトイレの時間は、ナマケモノにとって最も危険な時。ナマケモノの死因の半数は、排泄時のハンティングだと言われています。

しかし、木に登れば安心とも限りません。空からは猛禽類に狙われます。

動きの鈍いナマケモノにとって、見つからないことが最大の長生きの秘訣かもしれません。

ざんねんながら、わたしたちヒトも、ナマケモノの死因をつくっています。

可愛らしい表情とおとなしい行動が人気を集め、ナマケモノのペット目的としての捕獲は増加傾向です。また、食料用に殺されることもあります。

さらに、生息地を訪れた観光客にさわられたり捕まえられたりしたナマケモノが、死亡する例も報告されています。

ナマケモノの形態

ナマケモノは体長70センチ前後に対して、体重10キロ以下。筋肉量が少ない動物です。

全体は淡い茶色の毛に覆われており、生息地の保護色となっています。

みなさん、ナマケモノが立派な爪を持っていることはご存知でしたか?

ナマケモノの爪

長さはおよそ10センチ。鋭く強烈に見えます。しかし、おもな役割は武器ではありません。

通常、ナマケモノの長いカギ状の爪は、フックの役割を果たしています。筋肉が少ないナマケモノは爪を木に引っ掛けることで、力を使わずにぶら下がることができます。

戦闘力はゼロに近いナマケモノ。天敵に見つかっても、爪を使って攻撃することはほぼありません。

ナマケモノだって戦う!

一方で、繁殖期にはメスをめぐって、オス同士が争うことがあります。その際は、長い爪を武器として利用します。

もちろん、戦うときもナマケモノスタイルは崩しません。動作は変わらず遅いです。しかし、普段の動きからすると何倍も速く感じます。

ナマケモノの毛

ナマケモノの毛は、他の動物とは反対方向に生えています。おなかの真ん中に分け目があり、背中方向に向かって体毛が伸びていきます。

重力でそう見えるのではありません。とても不思議です。

この理由は、木にぶらさがり背中を下に向けて生活することを考慮すると、納得できます。

特徴的な体毛の生え方により、雨水が体にとどまることなく流れ落ちていきます。その結果、雨期の嵐にも耐えられるのです。

ナマケモノの特技

かくれんぼするナマケモノ

動きの遅いナマケモノが捕食者から逃げ切るのは、ほぼ不可能。発見されたら、たちまち狙われてしまいます。

そのため、ナマケモノは逃げるより見つからないことを選びました。

野生のナマケモノは、常に樹木にまぎれて生活しています。苔が生えた個体は茶色に緑。まさに植物。木々が生い茂った森の中で見つけるのは、さぞ難しいでしょう。

捕食者にとってはもちろん、研究者にとってもナマケモノを探すのは困難を極めます。そのため、ナマケモノの正確な生息数は、未だに不明です。

水泳するナマケモノ

何をするにも遅い印象のナマケモノの特技は、なんとスイミング。

水の中では、長い前足を器用に動かし、地上より3倍ほど速く進むことができます。ミユビナマケモノは特に速く上手に泳ぎます。

とはいっても、時速300メートルほど。つまり、1分間におよそ5メートルしか進めません。

ナマケモノの生息するジャングルは、雨期になると森まで水があふれてきます。そのため、野生では泳ぐ必要があります。

川が氾濫する雨期はナマケモノの引っ越しシーズン。

住んでいるエリアに水があふれてきたら、ナマケモノはわざと木から落ちます。そして、新しい住みかへと泳いで行きます。

ナマケモノは泳ぐことで、地上を歩くより早く遠くまで移動できます。さらに捕食の危険性も少ないと考えられます。

ナマケモノに会える動物園

現在日本で飼育されているナマケモノは、すべてフタユビナマケモノです。

▼関東~中部
  • 那須どうぶつ王国
  • 埼玉県こども動物自然公園
  • 大島公園動物園
  • 千葉市動物公園
  • いしかわ動物園
  • 伊豆シャボテン動物公園
  • 日本平動物園
  • 東山動物園
▼関西~九州
  • アドベンチャーワールド
  • みさき公園
  • 神戸どうぶつ王国
  • 王子動物園
  • 秋吉台サファリ
  • ときわ動物園
  • 徳島動物園
  • のいち動物公園
  • 大牟田市動物園
  • 長崎バイオパーク
  • 平川動物公園
  • ネオパークオキナワ
JAZAより

2017年5月には千葉市動物公園で、9月には埼玉県こども動物自然公園で赤ちゃんが誕生しました。


さて、ナマケモノの生活はイメージできましたか?

動きまわるナマケモノはなかなか見れませんが、生態なのでやむを得ません。じっくり毛や爪を観察してみましょう。

以上、ナマケモノの豆知識でした。

【参考】

International Union for Conservation of Nature

The Sloth Conservation Foundation

日本動物園水族館協会

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です