進展するパンダ研究!最新ジャイアントパンダの生態と特徴
世界中で人気を集めるジャイアントパンダ。
日本では東京都・上野動物園と和歌山県・アドベンチャーワールドで繁殖に成功し、ますますパンダ熱が強くなっています。
ジャイアントパンダの存在が世に広まったのは、1870年ごろ。たった150年ほど前の出来事です。
パンダの歴史は浅く、だれもが知っているにもかかわらず、実際の生態はあまり知られていません。
そこで、今回のzoo zoo diaryでは、近年のジャイアントパンダ研究でわかった、最新のパンダ事情をお届けします。

ジャイアントパンダとは?
食肉目クマ科ジャイアントパンダ属 Ailuropoda melanoleuca
中華人民共和国の3つの省(甘粛省、四川省、陝西省)にある、標高1500~3000メートルの山々に生息しています。
頭から尾までの長さは120~150cm。体高80cmほど。アメリカクロクマと同等の大きさです。
オスの方が大きく、野生でも100kgを超えるジャイアントパンダがいます。
- 食肉目クマ科 Ailuropoda melanoleuca
- 生息 中国の山林 1800頭
- 体長 120~150cm
- 体高 75cm
- 体重 オス130kg メス100kg
ジャイアントパンダの生息数
1869年、中国人が持つジャイアントパンダの毛皮を、フランス人が発見・報告するまで、世界には知られていなかったジャイアントパンダ。
類を見ないジャイアントパンダの毛皮は、たいへんな人気となりました。

1974年から開始した大規模調査において、ジャイアントパンダの生息数はおよそ2500頭と推定されました。
毛皮目的の乱獲が続き、10年後の調査では半数以下の1200頭ほどに激減。
1988年ジャイアントパンダの密猟禁止法、さらにはジャイアントパンダとその生息地を守るプロジェクトが開始しました。
2000年から行われた大規模調査では、ジャイアントパンダ生息数はおよそ1500頭以上に回復。
さらに、2011年から行われた最新の調査では、約1800頭と増加傾向にあることがわかりました。
2016年IUCNレッドリストはジャイアントパンダを危機(EN)から危急(VU)に再評価しました。
一方で、パンダの生息地である竹林が減少するという見込みから、容易に安心することはできません。
ジャイアントパンダの生態
ジャイアントパンダは単独生活を好みます。子は2歳ごろまで、母親と行動を共にします。
耳や尾など、表面的なコミュニケーションツールは乏しく、おもに匂いと声で自分の存在をアピールします。通常は、各々のパンダが接触を避けて暮らしています。
一方で3~5月の繁殖期、発情している雌雄の声と匂いは、お互いを惹きつけます。
ジャイアントパンダの繁殖は、別記事に詳しく掲載しています。
ジャイアントパンダの睡眠
野生のジャイアントパンダは、食事の合間に2~4時間の短い睡眠を繰り返します。
パンダの寝姿は「十パンダ十色」。大の字だったり、丸まっていたり、さまざま。そこもパンダの魅力のひとつです。

ジャイアントパンダの寿命
野生ジャイアントパンダの寿命は15~20年ほどと考えられています。
飼育下では、30年以上生きた個体が記録されています。
国内では、和歌山県・アドベンチャーワールドの永明(1992年生)が最高齢です。

ジャイアントパンダの色
ご存知の通り、ジャイアントパンダは白と黒の動物。
では、どこが黒くてどこが白いか、わかりますか?
耳と目の周りが黒いのは、みなさんおわかりのことでしょう。
では、体はどうでしょうか?お腹やおしり、肢は何色でしょう?
正解は、
こちら。

四肢は黒。これも、わりと答えられる方が多いと思います。
しかし、胴体の色は意外と複雑。
全体的には白ですが、首の後ろから肩そして胸もとまでは黒。埋もれて見にくいパンダのしっぽは白です。
なんとも不思議で愛らしいカラーリングです。
ジャイアントパンダはなぜ白黒?
クマなのに、茶色や黒ではないし、ホッキョクグマのように白一色でもないというジャイアントパンダ。
なぜ白黒なのか、世界中で議論が行われています。zoo zoo diaryでは3つの仮説を紹介します。
- カモフラージュ説
- シグナル説
- 体温調節説
パンダが白黒の理由|3つの説
雪山に溶け込む白。そして、密林では影と光になり見えにくい白黒。生息地で生きていくために、体色が進化したというカモフラージュ説。
これは、野生のジャイアントパンダに天敵がいないことから、成り立たないといわれています。
では、ジャイアントパンダ同士の何かしらのサインを強調しているのでは?もしくは、行動が重ならないよう遠くから識別してもらうためでは?という、シグナル説。
単独生活を送るジャイアントパンダ。特徴的な体色は、他個体との社会的関りに一役買っているかもしれません。
また、白は熱を反射し、黒は熱を吸収することから、体温調節説。
一般に、冷えて凍傷になりやすい耳や四肢の先端まで黒いことが、この説を後押ししています。
しかし、科学的根拠は発見できず、いまだ未解決の問題となっています。

ジャイアントパンダと竹
ジャイアントパンダの食べ物といえば、
ご存知、竹。
とくに栄養やカロリーが高く繊維質の少ない、タケノコや新芽を好みます。
パンダは食肉目クマ科ですが、食料の99%を占めるのが植物(竹)。残りの1%は、卵や肉、豆などです。

しかし、胃腸の構造は肉食動物。
つまり、食べた竹のほとんどが消化されずに排泄されてしまいます。十分な栄養を摂るためには、量で賄うしかありません。
そのため、ジャイアントパンダは毎日10kg以上の竹を必要とします。
採食に費やす時間は、なんと10時間以上。
そして、排便は1日100回以上!驚異的です。
意外と知られていませんが、パンダは食事中以外ほぼ排便し続けています。
生息地調査では、パンダが同じ場所にどのくらいの時間とどまったか、便を見て推測しています。
パンダはグルメ
山に自生する竹は、1種類ではありません。
そのため、パンダは竹の栄養や旬の違いによって、季節ごとに採食場を変え、もっとも栄養のある部分を食べています。
やみくもに竹を食べるのではなく、考えて、選んで食事をしているのです。
飼育下でも同様に、新鮮でない竹や栄養のない部分は除けられてしまいます。
パンダは位置情報を正確に記憶し、竹が生えている場所やその旬を把握しています。
唯一の食料といえる竹に対するこだわりが、とても強い動物です。

竹のため!パンダの進化
硬い植物を食べ続けるために、パンダの顎と歯は強く進化しました。とくに奥歯は大きく、竹をすりつぶすことができます。
また、頬の筋肉を発達させ、噛む力に耐えうる頑丈な頭蓋骨を手に入れました。
つまり、ぬいぐるみのように愛らしいパンダの大きな丸い頭と顔は、生きるために必要不可欠な骨と筋肉なのです。
パンダの指は何本?
クマの仲間は、すべての指が直線状に並んでいます。これは、穴を掘ったり木に登ったりするためです。
一方、わたしたちヒトは物を掴んだり持ったりするために、親指がほかの4本の指と離れています。
パンダはというと、クマなので四肢には5本の指が並んでいます。
ところが、パンダの食事風景を見てみると、ヒトのように地面に座り、前肢の指で竹をつかみ口元に運んでいます。あたかも、親指があるように見えます。

それは「第6の指」と呼ばれるパンダの肉球(こぶ)です。進化した手首の骨が親指の役割を果たし、器用に物をつかむことができます。
さらに、パンダの小指の下にも、張り出した骨が肉球(こぶ)のように見える部位があります。実際は、この「第7の指」が物体の保持に大きく寄与している、とも考えられています。
竹を持たない後肢の指は、クマそのもの。見比べると全く違う構造なのが、おわかりでしょう。
結論、パンダの指は5本。第6・7の指は骨の進化により生まれた、偽物の指です。
パンダは省エネ動物
パンダは食事に多くの時間を使いつつも、十分なカロリーを得られません。そんなパンダが生きていくためには、エネルギー消費量を減らす必要があります。
熱放出を減らす厚い毛皮や、体と比較して小さな内臓は、エネルギー節約のための身体的特徴です。
また、体力を使わないよう行動しているパンダ。
ゆっくりな動きや、休んでばかりいるのにも、動物なりの理由があるのです。

なぜ竹を食べるの?
一見、栄養の少ない竹しか食べないパンダは、マイナスの進化を遂げたと思われるかもしれません。
しかし、実際には、竹を求めて他の動物と争うこともなければ、大量に自生している竹をパンダ同士で取り合うこともありません。
竹を食べることは、敵をつくらず山の中で生き抜く、パンダのサバイバル術です。
密猟禁止や生息地保全が行われて以来、パンダの生息数は回復しています。
これは、パンダが順調に繁殖し、子が成長している証です。
実は、パンダは環境適応能力が高く、繁殖率も高い、強くたくましい動物だったのです。
ジャイアントパンダに会える動物園
2021年6月現在、日本では3か所の動物園で計13頭のジャイアントパンダが飼育されています。
上野動物園のシャンシャンは、2022年6月に中国に行く予定です。
王子動物園のタンタンは高齢となり、豊かな老後を送るために中国へ帰ります。現在、帰還日は未定です。
- リーリー 力力(2005年生)
- シンシン 真真(2005年生)
- シャンシャン 香香(2017年生)
- シャオシャオ 暁暁(2021年生)
- レイレイ 蕾蕾(2021年生)
- エイメイ 永明(1992年生)
- ラウヒン 良浜(2000年生)
- オウヒン 桜浜(2014年生)
- トウヒン 桃浜(2014年生)
- ユイヒン 結浜(2016年生)
- サイヒン 彩浜(2018年生)
- フウヒン 楓浜(2020年生)
- タンタン 旦旦(1995年生)
歴史が浅く、わからないことが多かったジャイアントパンダ。
パンダの保全活動や研究活動が盛んになるにつれ、多くのパンダ的常識が覆されてきました。
みなさんが思っていたパンダのイメージが、少し変わったのではないでしょうか?
繁殖能力が低く、なぜか竹しか食べない動物。
ではなく、争いを避けるために竹を食べ、小さな命を懸命につなぎ、着実に生き残ってきた動物です。
今後さらなる研究により、また新たなパンダ事情が明らかになるかもしれません。
日本では、東京都・上野動物園、和歌山県・アドベンチャーワールド、兵庫県・王子動物園でパンダに会うことができます。
可愛いだけじゃない、ジャイアントパンダに会いに行きましょう!

以上、ジャイアントパンダの豆知識でした。
【参考】
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