ホワイトタイガーとは?白いトラに隠された動物繁殖の真相

04/15/2021

トラといえば何色を思い浮かべますか?

多くの方は「黒いしま模様のある黄色」だと思います。

しかし、なかには白いトラ「ホワイトタイガー」をイメージする方もいるでしょう。

真っ白の毛に薄いしま模様があるホワイトタイガー。黄色のトラよりもめずらしく、とても人気がある動物です。

ホワイトタイガーは世界にはおよそ250頭、日本では30頭ほど飼育されています。

では、ホワイトタイガーはどのように生まれてきたのでしょうか?ふつうのトラと何が違うのでしょうか?

今回は、知られざるホワイトタイガー誕生の真相に迫ります!

ホワイトタイガーの過去(発見や繁殖)からホワイトタイガーのいま(方針や飼育施設)まで、ホワイトタイガーの疑問にお答えします。

平川動物公園 ホワイトタイガー

ホワイトタイガーとは?

美しい白い体毛に淡いしま模様が印象的なホワイトタイガー。

動物園やメディアでは「トラ」ではなく「ホワイトタイガー」と紹介されています。ということは、トラとは別の種類なのでしょうか?

答えはノー。

ホワイトタイガーは一般的に「トラ」と呼ばれるベンガル(系)トラの白変種です。ホワイトタイガーという亜種ではありません。

ベンガルトラに(系)をつける理由は飼育下のベンガルトラにはアムールトラとの交雑種が多いため、純血の証明がむずかしいから。

ホワイトタイガーにもアムールトラの血が混ざった個体がおおいといわれています。

ホワイトタイガーとベンガルトラ
左:ホワイトタイガー  右:ベンガルトラ

トラの種類についてくわしくは「トラって何種類?日本で会える虎の特徴と見わけ方」で紹介しています。

アルビノではありません

ホワイトタイガーは全体は白、しま模様は茶~黒色、そして目は青色です。

メラニンが欠乏した遺伝子疾患であるアルビノとは異なり、通常の遺伝によって誕生します。

ただし劣性遺伝によって表面化するため、頻繁には誕生しません。

野生ホワイトタイガーはいるの?

何世紀も前から、ベンガルトラ生息地であるインドではホワイトタイガーが発見されています。

動物保全より商業やトロフィーハンティングが勝る時代。たくさんのホワイトタイガーがヒトの手で捕獲もしくは射殺されました。

1950年代、インドで発見されたホワイトタイガーを最後に野生の個体は確認されていません

過去、飼育下のホワイトタイガーと野生由来のベンガルトラとの交配によりホワイトタイガーが生まれました。

この事実はインドに白変遺伝子を有したベンガルトラが存在するという証。

自然界であれホワイトタイガーの血を引き継いだベンガルトラ同士が繁殖した場合、ホワイトタイガーが誕生する可能性があるということです。

2017年、インドのニルギリ生物圏保護区においてペイルタイガー【Pale Tiger】が撮影されました。

ペイル【Pale】とはヴィヴィット【Vivit】と相対する言葉で「淡い」「薄い」といった意味。通常のトラより体毛の色が薄いものをさします。

ペイルタイガーはしばしば見られる遺伝的多型とのこと。血液型がAB型の日本人ように、ペイルタイガーは少数派ですが珍しくはありません。

しかし、写真に撮られたペイルタイガーは淡というより白!ホワイトタイガーだと多くの方が思うでしょう。

ペイルタイガー
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/super-rare-pale-tiger-photographed-india-180963980/

ホワイトタイガーの繁殖

発見当時から現在までホワイトタイガーは人々を魅了しつづけています。

動物園やサーカス団などは、収入を得るためにホワイトタイガーを目玉にしたいと考えるようになりました。

ところが、いくら生息地を探してもホワイトタイガーが見つかりません。

話題性のあるホワイトタイガーを展示するために、人々は近親交配を選択しました。

白変遺伝子の遺伝

なぜ近親交配がおこなわれたのかを知るには「遺伝」について知る必要があります。

トラの色の場合、黄の遺伝子が強く(優性)白の遺伝子は弱い(劣性)とわかっています。通常、強い遺伝子が子孫へと受け継がれるため、弱い遺伝子は淘汰されます。

実際に、黄と黄の組み合わせからホワイトタイガーが誕生することは極めてまれです。

どちらかがホワイトタイガーであれば、黄トラ同士の交配より白変種が生まれる可能性は高まります。しかし、多くの場合、子は白変遺伝子をもつ黄トラになります。

一方、白変遺伝子しか持たない個体(ホワイトタイガー)同士であれば、誕生する子は必ず白変種(ホワイトタイガー)となります。

ホワイトタイガー 遺伝
ホワイトタイガーが生まれる条件
  • トラXトラ
    • どちらも白変遺伝子をもつ
    • どちらも劣性遺伝する
  • トラXホワイトタイガー
    • トラが白変遺伝子をもつ
    • トラの白変遺伝子が劣性遺伝する
  • ホワイトタイガーXホワイトタイガー
    • 必ずホワイトタイガーが生まれる

白変種=突然変異ではない?!

白変種は以前は突然変異と考えられていました。しかし、近年は変異ではないといわれています。

ホワイトライオンやシロクジャクなど「白変種」はさまざまな動物で確認されています。

しかし、そもそもの生息数がすくない動物ではめったに発見されません。

インドの野生ベンガルトラはおよそ3000頭。かつて約10万頭生息していたころ、そのうち1000頭以上がホワイトタイガーだった可能性があります。

一方で、過去に発見されたホワイトタイガーはことどとく捕獲されました。ゆえに現代では白変遺伝子をもつトラが野生から消えてしまったのかもしれません。

平川動物公園 ホワイトタイガー

ホワイトタイガーの歴史

飼育下のホワイトタイガーは3つの血統から生まれてると考えられます。

  1. Mohan インドで発見された
  2. Tony  異種交配(アムールトラ+ベンガルトラ)により生まれた
  3. Orissa  インド野生由来の父娘の交配により生まれた

野生ベンガルトラ Mohan由来|モハン系統

1951年、インド中部でホワイトタイガーの子どもが発見されました。

いっしょにいた母トラとホワイトタイガーでない子トラたちは射殺され、ホワイトタイガーだけが捕獲されました。

彼はモハン【Mohan】と名付けられ、ヒトの手で育てられました。

成熟したモハンは野生由来のベンガルトラと繁殖に成功。人々は稀有なホワイトタイガーの赤ちゃんを期待していました。

ところが、モハンの子はすべて通常色のトラでした。

アフリカンサファリ トラ 赤ちゃん

そこで、モハンとモハンの娘を繁殖させることにしました。

モハンの子たちはモハンから白変遺伝子を受け継いでいるはずと考えたからです。

1958年、モハンの娘は飼育下で初めてホワイトタイガーの赤ちゃんを出産しました。子はオス1頭、メス3頭でした。

ここから、ホワイトタイガーの近親交配の歴史が始まります

ホワイトタイガー誕生の可能性が高い、親子やきょうだい同士の交配を繰り返しました。

アムールトラとベンガルトラの雑種 Tony由来|トニー系統

また、飼育下では個体数を維持するため、近親交配だけでなく異種交配がおこなわれていました。つまり「雑種のトラをつくった」のです。

いま以上に動物を「みせもの」として扱う時代でしたから。種の保全などまったく考えられていません

1972年、アムールトラとベンガルトラの間に生まれた子(雑種)同士を交配させたところ、ホワイトタイガーのトニー【Tony】が誕生しました。

ベンガル(系)トラであるトニーから、ホワイトタイガーにアムールトラの血が混ざりました。

野生ベンガルトラの近親交配 Orissa由来|オリッサ系統

さらに、1980年インド東部オリッサ州において野生ベンガルトラの父娘の交配をおこなったところ、ホワイトタイガーが生まれました。

モハンやトニーと異なる血統と推測され、発見地の名前からオリッサ【Orissa】と呼ばれています。

みんな親戚?!ホワイトタイガーの血縁

3系統の血(Mohan, Tony, Orissa)が混じりあい、ホワイトタイガーは動物園で生きつづけています。

ヒトは需要がたかいホワイトタイガー欲しさに、血縁者同士の繁殖を積極的におこなってきました。

結果的に世界中で飼育されているホワイトタイガーの多くはMohanの血をひくと考えられています。

通常、子トラは成長すると親もとをはなれ、自分のテリトリーで暮らしはじめます。おのずと近親交配が避けられる環境におかれています。

しかしながら、ホワイトタイガーの繁殖には50年以上前からヒトが介入し、自然に反する行為をつづけています。

平川動物公園 ホワイトタイガー

ホワイトタイガーの寿命

通常の遺伝で誕生するホワイトタイガー。病気でもなければ違う種類でもないため、生態は通常のトラと同じ。

ところが、ホワイトタイガーは短命の傾向にあります。なぜならホワイトタイガーは近親交配によって生まれているからです。

近親交配の危険性とは?

血縁関係にあるもの同士は、遺伝情報が類似しています。

親子やきょうだいは外見や声などが似ていますよね。さらに優れている点や劣っている点も共通することがあります。

一般的に、動物は近親交配を避ける習性があります。

他の血統と競合し、より優れた情報を子孫へのこすためです。劣った情報が遺伝もしくは表現化することは少なく、徐々に排除されていきます。

ところが、近親交配では劣った遺伝子をフォローする優れた遺伝子がありません。また、同じ遺伝子が欠損している場合もあります。

通常は遺伝しないであろう不利な情報や失われた情報が子孫へと伝わってしまいます。すると、病気や奇形をもって生まれる可能性が高くなります

ホワイトタイガーは何度も何度も近親交配をくりかえしてきました。そのため遺伝子の偏りが大きく、100%健康な個体はほぼいません。

動物福祉の観点から近親交配は反対されています

このように、近親交配は不幸な動物を生み、動物福祉(動物がしあわせであること)に反しています。

アメリカ動物園水族館協会は「希少な容姿の継承を目的とした人為的な繁殖をおこなうべきでない」と明言しています。現に会員に対してホワイトタイガーやホワイトライオン等の近親交配を禁止しています。

ざんねんながら、日本をはじめほとんどの国は飼育下の近親交配について言及していません。

いまだに世界中の施設で血縁関係同士の動物繁殖がおこなわれています。

【最新】近親交配はふつう?!

2021年5月、雑誌Natureに「動物は近親交配をめったに避けない」という研究報告が掲載されました。

わたし自身、タイトルにとても驚きました。

この分析により、動物が血縁関係の有無を識別しているという確証は見つかりませんでした。

著者らは「繁殖相手がいない状況や子孫を多くのこしたい場合は親子でもきょうだいでもいとわない、むしろその方が子孫を多くのこす確率が高い」と発表しています。

貴論文は139の実験のメタ分析です。また、幅広い種を対象としています。

生息地研究ではない、動物の種差が考慮されていない等の理由から、環境や動物により結果が大きく異なると予想されます。

といいつつも、野生動物の減少により繁殖相手が見つからず近親交配がふえている可能性は否定できません。

もし、近親交配が稀でないならば、飼育下繁殖の考え方が大きく変わってくるでしょう。今後の研究にも要注目です。

平川動物公園 ホワイトタイガー

異種交配の危険性とは?

実は、異種交配は野生でも確認されています。

ベンガルトラとアムールトラ(亜種)、ボルネオオランウータンとスマトラオランウータン(種)等のように生息地がはなれたものの場合、完全なヒトの産物です。

一方で、生息域がかさなるもの同士では野生下の交雑が発見されています。ただしこの原因もヒトにあるといわれています。

なぜなら、人間活動により動物たちの住みかがへり、かつては住み分けできていた種が1か所に集まってしまったからです。

一般に異種交配により生まれたから寿命がみじかいということではありません。

異種交配の最大の危険は、雑種に繁殖能力がある場合、純粋な「種」がたもたれないこと。混血は生物学的分類ができず、保全対象にはなりません

野生動物においては、遺伝子調査による生息数の大幅な修正さらには純血の隔離等がおこなわれるかもしれません。

種の保全の観点から異種交配は反対されています

動物園ではむかしから近親交配、異種交配がおこなわれてきました。

しかし、近年は血縁の近い個体同士や雑種の繁殖は「動物をまもる」行為に反するとし、消極的になっています。

日本にいるベンガルトラは純血の証明がむずかしく、繁殖活動がひかえられています。今後、日本のベンガルトがふえる可能性はひくいかもしれません。

白変遺伝子は寿命に影響なし

一般的にトラは15年以上生きるといわれています。

もともと氷河期には保護色効果があったとされる白変種は正常な遺伝によって誕生します。つまり、白変遺伝子は寿命への影響はないと考えられています。

ところが、ホワイトタイガーの寿命はトラに比べて短いといわれています。

現存する多くのホワイトタイガーは度重なる近親交配によって誕生しています。劣ったもしくは失われた情報が遺伝しつづけています。

そのため、ホワイトタイガーは関節の障害や腎臓の病気をもって生まれる確率が高いとわかっています。

また、白変遺伝子は視神経に影響を与えるため、ホワイトタイガーは白い毛とともに斜視や弱視など目の障害をひきついでいます

平川動物公園 ホワイトタイガー
白変遺伝子は内斜視を起こす

ひどい障害や疾患は行動を制限し、最悪の場合死にいたります。

生まれて間もない死亡や親・きょうだいと同じ原因で若いうちに亡くなることが、ホワイトタイガーの平均寿命をちぢめています。

さらに、ホワイトタイガーの死産が多いことも近親交配による影響だと推測されます。

一方、通常の交配により誕生したホワイトタイガーの寿命はベンガルトラと同等です。

ホワイトタイガーに会える動物園

現在、日本には30頭以上のホワイトタイガーが飼育されています。

関東~中部
  • 宇都宮動物園
  • 東武動物公園
  • 群馬サファリパーク
  • いしかわ動物園
  • 伊豆アニマルキングダム
関西~中国
  • NIFREL
  • 池田動物園
  • 姫路セントラルパーク
  • アドベンチャーワールド
  • 秋吉台サファリランド
四国・九州
  • とべ動物園
  • しらとり動物園
  • アフリカンサファリ
  • 平川動物公園

伝説の動物に?!ホワイトタイガーの未来

計画的繁殖により生まれたホワイトタイガーたち。

美しい容姿の奥にはヒトのエゴが隠されています。その背景を思うと複雑な心境になります。

大牟田市動物園のホワイトタイガーの案内パネルには、今回記載したような真実が書かれていました。SNS上でとりあげられ、大きな話題となりました。

【追記】2022年5月、大牟田市動物園のホワイティが死亡しました。

大牟田市動物園 ホワイトタイガー

障害をもって生まれる、みじかい人生を送るなど、動物の人生をヒトが操作して良いのでしょうか?

これはホワイトタイガーだけでなく、さまざまな飼育下動物にあてはまる疑問です。

しかし、動物園があるからこそ、われわれは野生動物を知り、生息地の課題を知ることができます。動物園が絶滅を救った例もいくつもあります。

動物園の是非は常に議論の的となっています。

今後、日本の動物園でホワイトタイガーの意図的繁殖が行われるかは定かではありません。

動物福祉の意識が高まる昨今。アメリカが発表したように、劣性遺伝を目的とした繁殖が禁止される日が来るかもしれません。

トラはIUCNレッドリスト危機(EN)ワシントン条約附属書Ⅰに指定されています。

世界からホワイトタイガーがいなくなるのは時間の問題といえるでしょう。

命のものさし: 動物の命・人間の命・わたしの命

新品価格
¥1,650から
(2022/6/14 19:55時点)

白く美しいホワイトタイガー。

野生で発見されたことから、家族を殺され、その後は飼育下で家族と交配させられたモハン【Mohan】。彼の一生はとても幸せとは思えません。

種の保存や動物福祉を無視した作為的な繁殖がなければ、ホワイトタイガーは伝説の動物となっていたことでしょう。

ホワイトタイガーには複雑な思いが隠されています。

みなさんはホワイトタイガーを見たいですか?それとも見たくないですか?

真相を知っていると簡単に答えられない疑問かもしれません。

平川動物公園 ホワイトタイガー

以上、ホワイトタイガーの豆知識でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会