ホワイトタイガーとは?白いトラに隠された動物繁殖の真相

09/15/2018

動物園で異彩を放つホワイトタイガー。

世界にはおよそ250頭、日本では、30頭ほどが飼育されています。

黄色と黒のトラ柄が、なぜ白と茶色になったのでしょうか?ホワイトタイガーは何者で、いったいどうやって生まれてきたのでしょうか?

ホワイトタイガー誕生の真相に迫ります!

ホワイトタイガーとは?

美しい白い体毛に茶色の縞模様が印象的なホワイトタイガー。

動物園やメディアでは「トラ」ではなく、「ホワイトタイガー」と紹介されています。ということは、トラとは別の種類なのでしょうか?

答えはノー。

ホワイトタイガーは、一般的に「トラ」と呼ばれるベンガルトラの白変種です。ホワイトタイガーという亜種ではないため、登録はベンガルトラとなります。

ホワイトタイガーとベンガルトラ
左:ホワイトタイガー  右:ベンガルトラ

ホワイトタイガーの色

ホワイトタイガーは白色の体毛に茶色の縞模様、そして目は青色です。

メラニンが欠乏した遺伝子疾患であるアルビノとは異なり、通常の遺伝によって誕生します。

しかし、劣性遺伝によって表面化するため、通常はめったに誕生しません。

1950年代、ベンガルトラ生息地であるインドで発見されたホワイトタイガーを最後に、野生の個体は確認されていません。

ホワイトタイガーの繁殖

では、なぜ世界には250頭ものホワイトタイガーがいるのでしょうか?

それは、ホワイトタイガーの遺伝子を持つトラ同士を交配させているからです。

白変遺伝子の遺伝

トラの色において黄の遺伝子が強く(優性)、白の遺伝子は弱い(劣性)とわかっています。

通常、優性遺伝子が子孫へと受け継がれるため、白変遺伝子(劣性遺伝子)は淘汰されます。

黄と黄の個体からホワイトタイガーが誕生する確率は非常に低いのが事実。なぜなら白変遺伝子が遺伝したとしても、黄色の遺伝子が優先的に発現するからです。

たとえば、母親がホワイトタイガーだとしても、父親の優性遺伝子が勝ります。子は、白変遺伝子を持つ黄トラになります。もし、父親も白変遺伝子を持っており、かつ劣性遺伝したら、ホワイトタイガーの子が生まれる可能性があります。

一方、白と白の個体(劣性遺伝子のみを持つ個体)の掛け合わせにより誕生する子は、ホワイトタイガーとなります。

ホワイトタイガーはみんな親戚同士?!

珍しいホワイトタイガーの人気は高く、動物園などはホワイトタイガーを展示したいと考えるようになりました。

ところが、いくら生息地を探してもホワイトタイガーが見つかりません。

話題性のあるホワイトタイガーを展示するために、人々は近親交配を選択しました。

野生最後のホワイトタイガーとベンガルトラの繁殖により生まれた白変種(野生ホワイトタイガーの子)同士を交配させ、白変種の子(野生ホワイトタイガーの孫)をつくります。

さらに、ホワイトタイガーである子と孫や、孫同士の掛け合わせにより、次世代のホワイトタイガー(野生ホワイトタイガーのひ孫)が誕生。

そしてまた白変種同士の交配を繰り返し、ホワイトタイガーを増やしてきました。

平川動物公園 ホワイトタイガー

このように、ヒトは血縁関係のある動物同士の繁殖を積極的に行ってきたのです。

結果的に、世界中で飼育されているホワイトタイガーの起源は、野性最後の個体であると言われています。

通常、動物界において近親交配は行われません。人間界でも、兄妹や親子で結婚はしませんよね。

悲しいことに、ホワイトタイガーの繁殖には50年以上前からヒトが介入し、自然に反する行為を続けています。

ホワイトタイガーの寿命

血縁関係にあるもの同士は、遺伝情報が類似しています。当然、優れている点も劣っている点も共通することがあります。

近親交配の危険性

一般的に、動物は近親交配を避ける習性があります。他の血統と競合し、優れた情報を子孫へ残すためです。劣性遺伝子が表現化することは少なく、徐々に排除されていきます。

一方、近親交配では、劣った遺伝子をフォローする優れた遺伝子がありません。また、同じ遺伝子が欠損している場合もあります。

通常は遺伝しないであろう不利な情報や失われた情報が、子孫へと伝わってしまいます。

結果的に、病気や奇形を持って生まれる可能性が高くなります。

大牟田市動物園 ホワイトタイガー
例:斜視を持って生まれたホワイトタイガー

動物福祉の観点から、近親交配には反対意見が多く存在します。アメリカ動物園水族館協会は、希少な容姿の継承を目的とした人為的な繁殖を行うべきでない、と明言しています。

一方、日本では従来と変わらず、血縁関係同士の繁殖が行われています。

白変種の寿命

もともと氷河期には保護色効果があったとされる白変種は、正常な遺伝によって誕生します。よって、白変遺伝子は寿命への影響はないと考えられています。

ところが、現存する多くのホワイトタイガーは、近親交配によって誕生しています。近親交配では、劣性や欠損が遺伝し続けます。

近親交配によって生まれたホワイトタイガーは、目が見えにくかったり、関節に異常があったり、障害を持って生まれる確率が高いと言われています。

場合によっては、トラ本来の行動が制限されてしまうこともあります。

その結果、近親交配により誕生したホワイトタイガーの寿命は短い傾向にあります。

また、ホワイトタイガーは死産が多いと報告されています。これも、近親交配による影響だと推測されます。

一方、通常の交配により誕生したホワイトタイガーの寿命は、ベンガルトラと同等。一般的に、トラは15年以上生きると報告されています。

ホワイトタイガーに会える動物園

現在、日本には30頭以上のホワイトタイガーが飼育されています。

  • 宇都宮動物園
  • 東武動物公園
  • 群馬サファリパーク
  • いしかわ動物園
  • 伊豆アニマルキングダム
  • NIFREL
  • 池田動物園
  • 姫路セントラルパーク
  • アドベンチャーワールド
  • 秋吉台サファリランド
  • とべ動物園
  • しらとり動物園
  • 大牟田市動物園
  • アフリカンサファリ
  • 平川動物公園

ホワイトタイガーの赤ちゃんに会える動物園

アニマルキングダム!7頭のホワイトタイガー

2020年10月、静岡県・伊豆アニマルキングダムで3頭のホワイトタイガーが誕生。母親はシロップ(2014年生)、父親はナイト(2012年生)です。

オスのバニラ、メスのホイップとメレンゲと名付けられ、元気に成長しています。

赤ちゃんを合わせて、伊豆アニマルキングダムでは計7頭のホワイトタイガーを飼育しています。

宇都宮動物園!

2021年3月には、栃木県・宇都宮動物園で4頭の赤ちゃんが誕生し、1頭(オス)が生育しています。母親はシラナミ(2012年生)、父親はアース(2013年生)です。

シラナミは、2017年に伊豆アニマルキングダムより来園しました。シロップのお姉さんに当たります。

2019年にアースの子、グーナ(オス)を出産しました。グーナは衰弱が激しく、人工哺育となりました。

しかし、今回はシラナミのお乳で育っています。

シラナミ親子は、5月より一般公開されています。現在、命名権を販売中です。詳しくはこちら

ホワイトタイガーの将来

ホワイトタイガー 秋吉台サファリランド

計画的繁殖により生まれたホワイトタイガーたち。

美しい容姿の奥には、ヒトのエゴが隠されています。その背景を思うと複雑な心境になります。

大牟田市動物園のホワイトタイガーの案内パネルには、今回記載したような真実が書かれていました。SNS上で取り上げられ、大きな話題となりました。

障害を持って生まれる、短い人生を送るなど、動物の人生をヒトが操作して良いのでしょうか?

これはホワイトタイガーだけでなく、多くの飼育下動物に当てはまる疑問です。

しかし、動物園があるからこそ、われわれは野生動物を知り生息地の課題を知ることができます。動物園が絶滅を救った例もいくつもあります。

動物園の是非は、常に議論の的となっています。

今後、日本の動物園でホワイトタイガーの意図的繁殖が行われるかは定かではありません。

動物福祉の意識が高まる昨今。アメリカが発表したように、劣性遺伝を目的とした繁殖が禁止される日が来るかもしれません。

トラは絶滅危機種に指定されています。その中でもさらに個体数が少ない白変種。

世界からホワイトタイガーがいなくなるのは、時間の問題と言えるでしょう。


白く美しいホワイトタイガー。その繁殖には複雑な思いが隠されています。

みなさんはホワイトタイガーを見たいですか?それとも見たくないですか?

真相を知っていると、簡単に答えられない疑問かもしれません。

平川動物公園 ホワイトタイガー

以上、ホワイトタイガーの豆知識でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会