ワシントン条約やブリーディングローンとは?動物保全とハンティングビジネス

04/26/2019

動物の取引と狩りについて学ぼう!

動物の記事を読んでいると目にするワシントン条約、ブリーディングローンという動物の取引に関する言葉。

みなさんは、その意味や意義をご存知ですか?

今回は、動物や動物園を理解するうえで重要な動物の取引に注目します。そして、現地人の資金源となっているハンティングビジネスや密猟の実態を紹介します。

ワシントン条約が生まれた背景を知り、動物が置かれている立場やわたしたちがするべき行動を考えてみましょう。

※ショッキングな内容も含まれていますので、閲覧には注意していください。

アフリカンサファリ シロサイ

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約

正式名称は非常に長いですが、文字通り、絶滅に瀕した動植物の取引に関する国際間の約束事です。過度な国際取引の抑制を目的としています。

Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Floraの頭文字から、CITESと略されます。

日本人にとって最も一般的なワシントン条約という呼び名は、1973年にアメリカ・ワシントンD.C.で採択されたことが由来です。

ワシントン条約が発効される前までは、無秩序に動植物の取引が行われていました。

牙や角、肉、毛皮、飼育などを目的に、多くの種類の動物が殺されたり、囚われたりしました。個体数の減少に繁殖の増加が追い付かず、さまざまな動物の生息数が減少しました。

また、木材や紙をつくるために森林が伐採され、植物の数も減っています。さらに、地球温暖化により自然環境は悪路を進んでいます。

このまま動植物をヒトが自由に利用していたら、絶滅種の増加は明らかです。

そこで、輸出入に関する制限や許可書の提出を設け、過剰な動植物の取引を制限するワシントン条約が誕生しました。

IUCNレッドリストにおいて、絶滅の危険性があると査定されている動物のほとんどは、ワシントン条約により取引が規制されています。

動物の生死にかかわらず、はく製や毛皮、角なども規制の対象となります。

ワシントン条約の締約国会議は2~3年に1回行われています。その都度、規則や附属書の改正が検討されています。

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ワシントン条約附属書

動植物は付属書Ⅰ~Ⅲに分類され、それぞれ取引条件が異なります。

動物園にいる多くの動物たちは、ワシントン条約で保護されています。

Ⅰ(現在、絶滅のおそれのある種)

ゴリラ、ジャイアントパンダ、ゾウ、サイ、ライオン、トラ、オランウータン、チーターなど約1000種類

  • 学術研究を目的とした取引のみ可能
  • 輸出入国の許可書が必要
Ⅱ(将来、絶滅のおそれのある種)

カバ、アメリカバイソン、ワシ、ホッキョクグマ、アメリカグマ、マントヒヒ、ハシビロコウ、サメなど約34000種類

  • 商業目的の取引が可能
  • 輸出国の許可書が必要
Ⅲ(国際協力が必要な種)

アジアスイギュウ(ネパール)、シマハイエナ(パキスタン)、セイウチ(カナダ)、ビントロング(インド)など約200種類

  • 商業目的の取引が可能
  • 輸出国の許可書が必要
  • 掲載国が原産でない場合は、原産地証明書が必要

附属書Ⅰの動物

附属書Ⅰに掲載された動植物は、絶滅のおそれが高い種。学術研究を目的とした取引のみが可能です。つまり、商業目的の取引は禁止されています。

ゴリラやパンダ、ライオン、トラなど動物園で人気のある動物たちの多くは、附属書Ⅰに定められています。

アフリカンサファリ ライオン

附属書Ⅰの動植物の商業的な輸出入はできません。

例外として、ワシントン条約の登録施設で人工繁殖させた動物は、商業取引が認められています。人工繁殖によって生まれた希少動物たちは、日本の動物園には手が出ないような高値で取引されています。

しかし、「新しい仲間がやって来ました」という動物園のお知らせを見聞きすることがあるでしょう。

動物を展示してお金をもらっているから、商業にならないの?と疑問に思いませんか?

動物園には、動物の展示以外に大きな仕事があります。それは、動物を繁殖させることです。

ブリーディングローン

Breed(繁殖)のためのLoan(貸借)。動物園同士で動物を貸し借りすることをブリーディングローンといいます。

繁殖を目的とするブリーディングローンは、動物園同士の共同保護にあたります。そのため、商業取引が禁止されている動物の取引も、例外ではありません。

貸借契約のため、移動した動物の所有者は貸し出した動物園のまま。ブリーディングローンでやって来た動物は、移動先で生涯を終えることもありますが、元の動物園に帰ることもあります。

また、ブリーディングローンにより誕生した子の所有権は、契約締結の際に動物園間で取り決めを行っています。親を貸し出した動物園に子を送ることは、一般的です。

ブリーディングローンのメリット

1. 支出を抑える

ブリーディングローンは、期限付きのレンタル料もしくは無償で動物を導入できます。

動物園にとって最大の出費のひとつは、動物の購入費。絶滅危惧種等の動物は1頭購入するよりレンタル料の方が安価のため、支出を減らすことができます。

国内の施設間では、無償の貸し借りがしばしば実施されています。

一方、国外施設との取引は、世界規模の保全活動、有償もしくは交換により行われます。

ブリーディングローンにより移動した動物は、必ずしも繁殖活動を行うとは限りません。移動先に繁殖相手がいない取引は、母親の繁殖を促す、近親交配を防ぐなどの目的があります。

また、環境を変えるために繁殖ペアを移動させたり、自然界にならい発情期のみ同居させたり、計画的な移動が実施されています。

八木山動物園 クロサイ親子 ラン

2. 新しい血統

希少な動物であればあるほど、ひとつの動物園に一組のペアしかいません。

めでたく繁殖に成功しても、同じ両親の子どもばかりが誕生します。近親交配の危険を生むばかりでなく、同じ病気にかかりやすいなどのリスクを生じます。

動物園はブリーディングローンにより新しい血統を取り入れ、新しい家族の誕生を目指します。国内だけでなく、海外の施設とも話し合いながら、血縁を意識した繁殖プログラムが進められています。

3. 繁殖機会を与える

動物によっては単独行動を好み、メスもしくはオスだけが飼育されている場合があります。また、パートナーと別れてしまって単独となった動物もいるでしょう。

野生であれば繁殖シーズンに相手を求めて旅に出ます。一方、飼育下では繁殖のチャンスがないまま時が過ぎていきます。

そこで、繁殖可能な動物同士を引き合わせるように、施設間で話し合いが行われます。子孫を残すという動物の本能を呼び起こすとともに、変化のある生活が生まれ動物福祉の向上にもつながります。

長崎バイオパーク ワオキツネザルの親子

ブリーディングローンのデメリット

ブリーディングローンの活用は、動物園経営や種の保存など動物の未来に関わる重要な活動です。

一方、移動中に死亡したり、移動先の環境や相手が合わず衰弱したり、動物の負担があることも確かです。また、取り残された個体の環境も変化し、体調を崩すケースもあります。

移動に耐えられるか、環境の変化についていけるかなどの判断は、施設スタッフの責任。しかし、飼育下動物も本来は野生。ヒトの予想をはるかに超えた行動をとるかもしれません。

不測の事態への対処が、ブリーディングローンの課題となっています。

国内のブリーディングローン例

ジャイアントパンダ

世界中のジャイアントパンダは、中国からやって来ます。日本で飼育されているすべてのパンダの所有権は、中国のパンダ繁育研究基地にあります。

上野動物園 パンダの赤ちゃん シャンシャン

和歌山県のアドベンチャーワールドは、世界で初めてパンダのブリーディングローンを行いました。

アドベンチャーワールドがパンダ繁殖に貢献していることは、国内外で有名です。これまでに、10頭以上のパンダが生まれています。

日本で生まれたパンダの赤ちゃんは、中国に返す約束をしています。

そのため、2017年に誕生した上野動物園のシャンシャンや2018年に誕生したサイヒンも、数年後には中国に帰国します。

ニシローランドゴリラ

上野動物園と東山動植物園のオスのニシローランドゴリラは、オーストラリアのタロンガ動物園からブリーディングローンにより来日しました。

東山動植物園 ゴリラ キヨマサとアニー

2頭とも群れを築くことに成功。国内のゴリラ個体数増加の大きな要となっています。

上野動物園の母親であるモモコは、千葉市動物公園から借りている個体です。

モモコのように、国内の動物園同士でもブリーディングローンは計画的に行われています。

飼育数の少ないゴリラ等は、血縁関係にある個体が多く、ペアリングが困難となっています。

動物園の繁殖に関する問題

動物園の繁殖活動や研究は、将来の動物の絶滅を防ぐ鍵となります。

一方、飼育下での繁殖には敷地の広さや血統など、野生では考えにくい問題が起こってしまいます。

過度な繁殖

サファリパークなどで、ライオンやトラの赤ちゃんとふれあえるイベントは大人気企画。多くの人が来園し、大きな収益を生みます。

しかし、猛獣は数か月で近寄れなくなります。

動物園側は、イベント開催のために繁殖を頻繁に行っています。施設によっては年中行事のように子どもが誕生します。

ふれあえる間は重宝されますが、動物はどんどん成長します。力が強く近寄れなくなった幼獣たちが行く先は同じバックヤードや展示場です。

近年は動物の高齢化が進んでいるため、獣舎の個体数が増えつつあります。限られた敷地に動物が密に飼育されている状態は、精神的にも肉体的にも決して良いとは言えません。

動物福祉の観点から、飼育下における過度な繁殖は問題視されています。

近親交配

ホワイトライオンやホワイトタイガーは美しく珍しい存在。多くの来園者を惹きつける目玉動物のひとつです。

動物園によっては、ホワイトライオンやホワイトタイガーを絶やさないために近親交配をさせています。

その結果、病気や奇形を持って生まれ、苦しい思いをしている個体もいます。

平川動物公園 ホワイトタイガー

野生動物の生息地とは遠く離れた日本でも、ヒトのエゴが動物を苦しめていることは確かです。

動物園自体の存在を否定する意見も、数多く存在します。

動物の精神状態や生活環境を改善するために、エンリッチメントが重要視されています。

ハンティングビジネス

動物を保護する活動が盛んに行われる中、近年、野生動物の宝庫であるアフリカでは、動物狩りに関連したビジネスが成長しています。

生活のためでない娯楽の狩猟、いわゆるスポーツハンティングです。

射殺した動物をはく製や毛皮などに加工して狩りの記念品とすることから、トロフィーハンティングとも呼ばれています。

なかでも南アフリカで流行しているのが、キャンド・ハンティング。

キャンド・ハンティング

キャンド・ハンティングとは、ライオンやキリンなどの大型動物を養殖し、敷地内で狩猟すること。

南アフリカでは、動物の所有権はその土地の所有者に属します。国立公園や保護区での狩りは禁止されていますが、私有地での狩りに違法性はありません。

狩猟許可を受ければ、敷地内の野生生物を自由に狩ることができます。

トロフィーとして育てられた動物は、注文が入ったら柵で囲われた広大な敷地に放されます。つまり、動物たちは缶詰にされた状態(canned)。

そして、ハンターは大金を払い、狩りを楽しむのです。

現在アフリカには、キャンド・ハンティングを行う施設が200か所以上あると言われています。

なぜハンディングビジネスが流行したのか?

答えは簡単。畜産よりキャンド・ハンティングの方が収益性が高いからです。

やせたアフリカの大地では、食用の動物を育てることは容易ではありません。

一方、もともとアフリカに生息している動物は、問題なく育ちます。

野生では狩ることができない貴重な大型動物は、とくに狩猟の需要が高く、1頭当たりの取引価格が高騰しています。

秋吉台サファリ ゾウ

ハンティングビジネス賛成の声

殺されるために育てられるという動物たち。人間の身勝手な行動に憤りを感じるでしょう。

当然、世界中からトロフィーハンティングへの非難が集まっています。

一方で、ハンティングビジネスを必要とする意見が存在するのも事実。その一部を紹介します。

1. 密猟抑制

合法的な狩猟の場を提供することにより、野生動物の密猟を防いでいるという見解。

すべての狩猟を規制したところで、ハンターがゼロになるわけではありません。狩りを楽しむ者は行き場をなくし、公園や保護区に出没するでしょう。そして、野生動物を標的にするのです。

結果として、違法な狩猟が増加すると懸念されています。

2. 問題のある個体の駆除

世の中には、異常行動を起こす個体が必ず存在します。なかには、健康な個体や若い個体を殺したり、他の繁殖に干渉したり、種保全の観点から注視される個体もいます。

ハンターたちは、対象となる動物を保護区から私有地へおびき寄せ、駆除していると主張します。私有地の動物は所有者のものとなるため、殺しても違法ではありません。

実際のところ、狩猟禁止区内の問題のある個体は、レンジャーによって射殺されています。

狩りのターゲットとしては、都合の良い相手と言えるでしょう。

3. 収入源

ハンティングビジネスは、地元の絶大な資金源となっています。

経済状況が厳しい南アフリカでは、狩猟による収益の一部が野生生物の保護に充てられています。

すなわち、狩猟は動物のためであるという意見。

また、ハンティングビジネスは案内人、運転手、護衛など多くの雇用を生みます。無情だと感じながらも、ハンティング用の動物(トロフィー)の養殖に携わっている人々もいます。

ハンティングビジネスの規制が強まると、失業者が増えると考えられます。

一方で、ガイドやハンターを装った密猟が増加しています。

観光や娯楽に来ているように見えるグループが、プロの密猟業者かもしれません。ハンティングの流行により、密猟パトロールがさらに困難となっています。

一概に良い悪いとは判断することが難しい、ハンティングビジネス。世界的には反発が多く、規制強化の傾向にあります。

福岡市動物園 ヒョウ

野生生物の密輸入

ワシントン条約の発効により、野生生物取引の際には政府の許可が必要となりました。乱獲や密猟、不必要な取引などが抑制され、野生生物の保護につながります。

需要と密猟

希少動物は非常に高値で取引されているため、金銭目当てで違法行為を行う者が後を絶ちません。密猟した動物から加工品をつくり、密輸する者もいます。

日本と中国間では象牙の違法取引が盛んに行われており、近年大きな問題となっています。

また、ペット用として密輸される動物もいます。子どもの愛らしさや成獣の美しさから、ライオンやトラなどの大型ネコ科動物は特に人気があります。

10年間に1000頭以上の赤ちゃんチーターが密輸され、その多くは輸送中に死亡していると言われています。密猟の増加により、チーター生息数の減少は加速しました。

アフリカンサファリ チータ

わが国でも、カワウソや小型サルなど珍しい動物を飼う人が増えてきています。

しかし、彼らは文字通り野に生きる動物です。飼育が難しいため、捨てられたり殺されたりと、不幸な運命を辿っています。

世の中のペット人気が動物を死亡させているという事実に、目を向ける必要があります。

手に入らないからこそ手に入れたいというヒトの心理。需要があるから、密猟はなくならないのです。


食料や装飾、ペットなどの目的で、捕獲または殺害されてきた野生生物。ワシントン条約がなければ、とっくに絶滅している種もいることでしょう。

しかし、現在でも狩りのために生まれた動物や、密猟により不運な人生を歩む動物がいるのは事実です。

ワシントン条約をはじめ、動物に関する取引を学び、動物・環境保全や繁殖の重要性を理解していただければ幸いです。

【参考】

経済産業省 ワシントン条約

Animal Facts

Posted by zoo zoo diary