ゾウの種類【アフリカゾウとアジアゾウ】耳も鼻も頭も違うよ
動物園で人気者の動物、ゾウ。
長い鼻と大きな耳を見れば、誰しもがゾウとわかるでしょう。
一方でゾウといっても、さまざまな種類がいることをご存知でしょうか?
ゾウは大きく2種。細かくは6種類も現存しています。
そこで、今回のzoo zoo diaryは意外と知られていないゾウの種類に注目!耳や鼻、牙などゾウの種類による違い・見わけ方を解説します。

ゾウの種類
ゾウは大きく2つ、アフリカゾウ属とアジアゾウ属にわけられます。
- ゾウ目(長鼻目) Proboscidea
- ゾウ科 Elephantidae
- アジアゾウ属 Elephas
- アジアゾウ Elephas maximus
- インドゾウ Elephas maximus ssp. indicus
- スリランカゾウ Elephas maximus ssp. maximus
- スマトラゾウ Elephas maximus ssp. sumatranus
- ボルネオゾウ Elephas maximus ssp. borneensis
- アジアゾウ Elephas maximus
- アフリカゾウ属 Loxodonta
- サバンナゾウ Loxodonta africana
- シンリンゾウ Loxodonta cyclotis
- アジアゾウ属 Elephas
- ゾウ科 Elephantidae
アフリカゾウはさらに2種(サバンナゾウとシンリンゾウ)にわけられます。悲しいことに、すべてのゾウは絶滅が危惧されています。
近年、IUCNはアフリカゾウを2種に分けて評価。2021年3月に、シンリンゾウは深刻な危機(CR)、サバンナゾウは危機(EN)と発表されました。
アフリカゾウは1990年代に激減。その後、保全活動が盛んになっています。現在は40万頭前後と考えらえています。
アジアゾウは1種ですが、生息地によって4亜種にわけられます。
アジアゾウの生息数は70年間で半減し、現在も減少傾向。生息数は4~5万頭ほどと推測され、危機(EN)に指定されています。
遺伝子研究が盛んな昨今、ボルネオゾウはスマトラゾウとは異なる種であると捉えられています。
スマトラゾウは生息地の激減により絶滅寸前。IUCNは2011年よりスマトラゾウを深刻な危機(CR)と評価しています。
幸運なことに、日本では6種類すべてのゾウを見ることができます。
ボルネオゾウ・スマトラゾウは1施設(福山動物園・群馬サファリパーク)、シンリンゾウは2施設(安佐動物公園、秋吉台サファリ)でしか会えない希少な存在です。
ゾウに会える動物園を知りたい方は別記事をご覧ください↓
まず、大きなくくりでゾウを見ていきましょう!
アジアゾウとアフリカゾウの違い
生息地|アジアとアフリカ
アジアゾウとアフリカゾウの最も大きな違いは、生息地です。
名前の通り、インドやスリランカ、タイ、インドネシアなどアジアに生息するアジアゾウ。
そして、アフリカゾウはサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に生息しています。
住む場所がこれだけ離れていると、外見も当然異なります。
体格|頭と背中のかたち
アフリカゾウは 陸上最大の哺乳類。推定体重10トンを超える巨体の記録もあります。頭頂部は平らで、背中より肩とお尻が盛り上がっています。
アジアゾウはアフリカゾウに比べると体が小さく、頭にぽこぽことお山がふたつ。背中は丸く、柔和な印象を受けます。

アジアゾウ(右) :頭が丸い・背中は凸型
象牙の長さ
ゾウというと、象牙を思い浮かべる方も多いでしょう。
より長い牙が生えているのはアフリカゾウ。
2メートル以上の長い牙を持つオスはビッグタスカ―【Big Tusker】と呼ばれています。ビッグタスカーの牙は45kg以上、つまり牙だけで90kgと驚異の重さです!
ビッグタスカーは歩くと地面に牙が擦れてしまいます。大きな体のゾウがずさずさと音を立てて歩く姿は圧巻です。
過去には長さ3.5メートル、重さ120kgほどのビッグタスカーが確認されています。
アフリカゾウはオスだけでなく、牙が長く立派なメスもいます。彼女たちはアイコニックカウ【Iconic Cow】と称されています。
しかし、スーパータスカ―のように45kg以上の牙を持つメスは確認されていません。
一方のアジアゾウの牙は比較的短く、メスにおいては牙を持たない個体もいます。
当然、アフリカゾウなのに短かったりアジアゾウなのに長かったりと、個体差があります。

また、長年の密猟がゾウの遺伝子に影響している可能性が示唆されています。
象牙と密猟
近年、野生のアフリカゾウの牙が短くなってきているという研究報告があります。ビッグタスカーの数は減少し、およそ30頭しかいないともいわれています。
アフリカゾウの牙に影響を与えているのは、わたしたち人間です。
美しく加工しやすい象牙は、紀元前から美術品などに使われていました。その後、印鑑やピアノの鍵盤などに利用され始め、世界各地で象牙需要が高まりました。
そして、牙を目的とした乱獲が進み、瞬く間にゾウの数は減っていきました。
牙が長い野生ゾウは数十頭しかいません
乱獲被害が大きい地域ではビッグタスカーの遺伝子が絶え、牙が短いアフリカゾウだけが生き残りました。
そもそもゾウは根を掘ったり、皮を剥いだりするために日常的に牙を使っています。繁殖期のオスが武器として使うこともあります。
つまり、牙がない(短い)ということは生きていくうえで不利なはず。
ところが、牙がないことのデメリットより、牙があることのデメリット(密猟被害)の方が大きくなりました。
その結果、牙が短い、もしくは牙を持たない個体が増えたと考えられています。
アジアゾウの牙はアフリカゾウに比べると小さめですが、密度が高く質が良いとされています。そのため、アフリカゾウ同様に密猟が絶えません。
現在CITESにより、象牙の輸出入は禁止されています。
一方、日本国内では商業取引が可能なまま。日本にある象牙が、需要の多い中国などへ密輸されるケースが増加しています。
入手困難な状態で需要が続けば、象牙はさらに高値で取引されることになります。そうすると、密猟グループは象牙獲得のために、さらに躍起になるでしょう。
近い将来、牙がないゾウが普通となる日が来るかもしれません。
皮膚|毛の長さと色
実は、ゾウの背中や頭には毛が生えています。
アフリカゾウは毛が短いため、あまり目立ちません。よく見るとちくちく毛が伸びていることがわかります。
一方、アジアゾウは茶色の長い毛が生えています。頭から背中はふさふさです。子どものアジアゾウはとくに毛が濃いため、一目瞭然。
一般にゾウは灰~褐色。種による大きな差はなく、生息地(土)の色によっては黄み・赤みが強いことがあります。
ところが、アジアゾウは年齢とともに色素が薄くなります。おとなゾウの顔や鼻は淡い桃~橙色が目立ちます。

感覚器|耳・鼻・くちびる
ゾウの特徴、大きな耳や長い鼻にもアジアゾウとアフリカゾウの違いがあります。
耳の大きさ・形の違い
アフリカゾウもアジアゾウも、大きな耳を持っています。一見似ているようですが、形や大きさが異なります。
アフリカゾウは、首が隠れるほど巨大な耳を有します。
一方、アジアゾウの耳は比較的小さく、角ばっています。
ゾウの鼻先と口もとに注目!
ゾウの鼻先には、にょきっと飛び出た部分(指状突起)があります。
小さなものから柔らかいものまで器用につかむことができる、指のような役割を果たします。
アフリカゾウは上下に突起がありますが、アジアゾウは突起が上側にしかありません。
そして、口もとにある下唇にもアジアゾウとアフリカゾウを見わけるポイントが隠されています。
アフリカゾウは丸く短い下唇。横から見ると飛び出ていないことがわかります。
一方、アジアゾウは細長い下唇。食事中など口を開けると突出していることがよくわかります。
大きな体に気を取られ、鼻先や口もとは見落としがち。ぜひじっくり確認してみてください。

比べてみるとまったく異なるアフリカゾウとアジアゾウ。
ここからは、さらに詳しい種類を見ていきましょう。
アフリカゾウの仲間
サバンナゾウ
一般的に動物園でアフリカゾウと紹介されているゾウが、サバンナゾウ。
陸上の哺乳類としては最大!
体長6メートル、体重5トン以上に成長します。地上から背中までの高さ(体高)は3メートルほどあります。
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- 生息 サハラ砂漠以南の草原 28万頭
- 体長 450~550cm ※鼻を含まない
- 体高 250~350cm
- 体重 オス6000kg メス3500kg
首を覆うほど大きな耳。雌雄ともに長く立派な牙が特徴的です。

シンリンゾウ(マルミミゾウ)
シンリンゾウは西アフリカと中央アフリカの熱帯雨林に生息しています。
シンリンゾウが最も多く生息するガボン、ついでコンゴ共和国に全体の約7割が生息すると考えらえています。
- IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
- 生息 西・中央アフリカの熱帯雨林
- 体長 300~400cm ※鼻を含まない
- 体高 200cm
- 体重 オス4000kg メス2000kg
ジャングルの中で暮らすシンリンゾウは発見が困難なため、はっきりとした生息数はわかっていません。
近年の研究によると、ここ100年ほどの間にシンリンゾウは80%以上減少したといわれています。
シンリンゾウの特徴|丸い耳
これまでアフリカゾウは1種と思われていました。
2010年の研究報告に基づき、現在はサバンナゾウとシンリンゾウの2種と認定されています。
一般的に、サバンナに生息するアフリカゾウより体も耳も小さく、体高は2メートルほど。
サバンナゾウより丸い耳と、細く直線的な牙を持っているといわれています。
日本では、耳の丸さから「マルミミゾウ」の名で親しまれています。

アジアゾウの仲間
インドゾウ
アジアゾウの中で最も数が多く分布域も広い種が、インドゾウ。
そのため、インドゾウをアジアゾウと称することもあります。
インドから東南アジアの森林地帯に生息。
アフリカゾウより小さいですが、オスは体長5メートル、体重4トン前後に成長します。
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- 生息 インド、タイ等の草原や森林 3万頭
- 体長 400~500cm ※鼻を含まない
- 体高 250~300cm
- 体重 オス4000kg メス3000kg
オスは太い牙が生えるものもいますが、メスは短くほとんど目立ちません。

スリランカゾウ
スリランカはインドの東に浮かぶ島国。イギリス領時代の名称からセイロンゾウとも呼ばれています。
北海道より小さい国土ですが、ゾウ密度の高い国です。
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- 生息 スリランカの森林 5千頭
- 体長 400~500cm ※鼻を含まない
- 体高 250~300cm
- 体重 オス4000kg メス3000kg
スリランカゾウは、入植者の乱獲により4万頭から2千頭まで数を減らしました。
1980年代から保護活動が始まり、現在は5千頭ほどに増加したと考えられています。
アジアゾウの中で最も大きいとされ、色が濃いのが特徴。
また、メスだけでなくオスも牙を持たないことが多い種類です。

スマトラゾウ
インドネシアのスマトラ島に生息するスマトラゾウ。
インドゾウより小さく、色が明るいといわれています。
- IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
- 生息 インドネシア・スマトラ島 2000頭
- 体長 350~450cm ※鼻を含まない
- 体高 170~270cm
- 体重 オス4000kg メス3000kg
生息数は2000頭前後。インドネシアによる保護を受けていますが、減少傾向が続いています。
急速な森林破壊により、スマトラゾウ生息地はかつての3割ほどしか残っていません。
パーム用アブラヤシ農園や紙パルプ用植林地の近くでは、ゾウの毒死や感電死が幾度となく発見されています。
IUCNレッドリストは他のアジアゾウとは別に、スマトラゾウを深刻な危機(CR)と評価しています。
日本では、群馬サファリパークでメスのイダ(2006年生)とオスのアスワタマ(2009年生)に会うことができます。
ボルネオゾウ
インドネシア・ボルネオ島に生息しています。
英名でピグミー【Pygmy】と記載されますが、実際には他のアジアゾウと大差はないのではといわれています。
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- 生息 インドネシア・ボルネオ島 1500頭
- 体長 300~400cm ※鼻を含まない
- 体高 150~250cm
- 体重 オス4000kg メス2500kg
森林破壊により食糧難に陥り、ボルネオゾウは減少。現在、およそ1500頭ほどが生息していると報告されています。
童顔で耳が大きく、成獣でも子ゾウのような可愛らしい印象を受けます。地面に着くほど長いしっぽが特徴的です。
長年アジアゾウはインドゾウ、スリランカゾウ、スマトラゾウの3亜種に分類されていました。
しかしながら、東南アジアに浮かぶボルネオ島北部に生息しているゾウたちは、少し形態が違います。多くの動物学者が不思議に思っていました。
ついに、2003年遺伝子研究により、ボルネオに住むゾウは30万年前から独自の進化を遂げているゾウだとわかりました。
以降、ボルネオゾウを1亜種と分類するようになりました。形態や生態など生息地調査が進められています。
ところが、数百年前に絶滅したジャワ島のゾウ(ジャワゾウ)の子孫という仮説が浮上。
いまだボルネオゾウは謎に包まれています。
日本では、広島県・福山市立動物園で1頭のメス(ふくちゃん)に会うことができます。

大きくアフリカゾウとアジアゾウに分類されるゾウ。その違いは体、耳、鼻と意外にも多く、あっさりと区別できるでしょう。
一方で細かい分類(亜種)の判別は、なかなか難しいのが事実。アジアゾウは看板を見ないと何ゾウかわからないかもしれません。
動物の予習をして行くともっと楽しるのが、動物園の良さのひとつです。
みなさんも動物園を訪れた際は、細部までじっくり観察してみてください。
今回紹介したゾウに会える動物園は別記事に掲載しています↓
【参考】
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