インドライオン【生態と特徴】日本に2頭だけ!アジアにすむライオン
アジアとアフリカのライオンの違い|インドライオンがいる動物園がわかる記事
ライオンの生息地といえば、多くの方は「アフリカ」と答えるでしょう。
もちろん、それは正解です。
しかし、真の正解は「アフリカとインド」。
実はライオンはインドにも生息しています。
今回は知られざるインドのライオンを特集!
アフリカのライオンとの見た目や群れ、寿命のちがいはあるのでしょうか?2種を比較しながらインドライオンの生態と特徴を紹介します。
後半にはインドライオンに会える動物園を掲載しています。2022年4月現在、2か所の動物園で2頭しか飼育されていません。
さぁインドライオンについて勉強して、動物園に会いに行きましょう!

インドライオンとは?
ライオンは食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されます。
ライオンといえばアフリカのイメージですが、実は2種存在しています。
一般にライオンと呼ばれるのが、アフリカのライオン【African Lion】。そしてもう1種は知る人ぞ知るアジアのライオン【Asiatic Lion】。
現在はインドでしか確認されておらず、インドライオンとも呼ばれています。
アフリカライオン
- Panthera leo ssp. leo
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息数 2万頭
- 生息 サハラ砂漠以南のサバンナや低木地帯
インドライオン
- Panthera leo ssp.persica
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息数 600頭
- 生息 ギル国立公園の樹林や草原

どちらも絶滅危惧種。インドライオンはとくに個体数がすくなく生息域が小さいことから、絶滅のおそれがきわめて高い動物(IUCNレッドリスト危機)です。
なおワシントン条約により輸出入規制があり、インドライオンは学術目的以外の取引が禁止されています。
英名はアジアライオンですが、日本の動物園ではインドライオンの名で紹介されています。そのため、本記事ではインドライオンで統一しています。
インドのみ|インドライオンの生息地
アフリカのサバンナに生息するライオンと異なり、インドライオンは森林を好みます。
かつては、インドのみならず中東アジアにも生息していたインドライオン。
現在は、インド北西部にあるギル国立公園・野生生物保護区でのみ確認されています。
ギルの自然のほとんどは保護区。インドライオンをはじめとする貴重な動植物が、密猟や自然破壊から守られています。
もちろん、保護区外に生息するインドライオンもいます。
保護区外では井戸に落ちて亡くなるライオンがしばしば発見されており、事故防止策が急務となっています。
インドライオンは何頭いるの?
1880年代には生息数15頭ほど。絶滅寸前でした。
せまい生息域に限られた数しかいないインドライオン。近親交配により、なんとかその種をひきついできました。
そのため、遺伝子多様性のひくさが個体数増加の課題となっています。
また、密猟、不測の事態(井戸への落下、ウイルス感染など)によってインドライオンは減りつづけていました。
しかしながら、インド政府の大規模な保護活動の結果、インドライオン生息数は徐々に増加。近年は安定傾向です。
2020年にはインドライオンは600頭以上にふえたと発表されました。
ヒトとインドライオン
乱獲や生息地破壊・分断により、急激に減少したインドライオン。保護区の制定により、森が守られ密猟が阻止され、なんとか絶滅を避けています。
近年の課題は、ヒトとの接触。
ヒトは動物の森林を破壊し、農地や宅地をつくりました。インドライオンだけでなく、多くの動物たちが住みかを奪われました。
結果、インドライオンも彼らの獲物も減ってしまいました。
エサを探し歩くインドライオンはいつのまにか森を出、近くの集落を発見。そして家畜を襲うようになったのです。
悲しいことにヒトを襲ったインドライオンも確認されています。
人間活動は動物だけでなくヒトの悲劇も生んでいます。
インド政府や保全団体はライオンと近隣住民を守るために尽力しています。
【YouTube】ZSLのギル国立公園におけるインドライオン保護活動をチェック!
ライオンの新分類
2022年4月現在、IUCNレッドリストの分類は「アフリカライオン」「インドライオン」の2種。
一方で近年の遺伝子研究の結果、新しいライオンの分類が発表されています。
- Panthera leo ssp. leo
- 生息 西・中央アフリカとインド
- Panthera leo ssp. melanochaita
- 生息 東・南アメリカ
インドと西・中央アフリカのライオンが近縁であることがわかり、東・南アフリカのライオンと区別する動きが出ています。
乱獲や生息地破壊により西アフリカと中央アフリカのライオンは絶滅寸前。
アフリカ西部には400頭前後。W・アルリ・パンジャリ自然公園群(ニジェール、ベナン、ブルキナファソ)に90%以上のライオンが生息しています。
アフリカ中央部ではカメルーンや中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国等に生息。全部で2000頭未満と推測されています。
つまり、インドライオンと同じように絶滅の可能性が非常に高いといえます。
生息数が安定・増加傾向にある南アフリカのライオンと区別されることで、西・中央アフリカのライオンはぐっと絶滅へちかづくことになります。
そうすると、国や保全団体の活動が活発化し、ライオンがより丁重にあつかわれるでしょう。今後の動きに要注目です。
インドライオンの特徴「アフリカライオンとの違い」
さて、インドライオンは生息地以外に、アフリカに住むライオンとどんな違いがあるのでしょうか?
ここからは、インドライオンの特徴をアフリカライオンと比較しながら紹介します。
体格|インドライオンは小さい?
見た目はどちらもライオン。瞬時に判断することは容易ではありません。
アフリカライオン
- 体長 150~200cm
- 尾長 80cm
- 体高 110cm
- 体重 オス200kg メス120kg
インドライオン
- 体長 130~180cm
- 尾長 80cm
- 体高 100cm
- 体重 オス180kg メス110kg
インドライオンは比較的小柄。おとなオスでも200kgを超す個体は発見されていません。
体長は頭から尾まで含めて290cmの個体が、これまで確認された最大のインドライオンです。
小さいといえでも大きいですよね。実際にアフリカライオンと見比べることは少ないため、サイズだけでは判断が難しいかもしれません。
体毛|色とたてがみの生え方
アフリカライオンに比して、体毛の色が明るいといわれるインドライオン。
雌雄ともに全体的に毛深く、子ライオンはふさふさしています。
成熟したオスライオンに生えるたてがみにも、2種の違いがあります。
インドライオンのたてがみは頭頂部が短いのが特徴。
アフリカのオスライオンは、頭から首まで長いたてがみが生えます。そのため、耳は見えにくくなっています。
ところが、インドライオンは頭の毛が少ないので耳がしっかり見えます。

また、インドライオンは肘に房毛がたくさん!そして尾の先端に生える房毛も長く立派です。
注目!インドライオンのおなか
おとなオスを見ればインドライオンの区別はできそうですね。
では、メスライオンや子どもはどうでしょう?たてがみがないのでより難易度高め。
しかし、意外なところに見わけ方がかくれています。
それは、お腹。
実は、インドライオンのお腹には一筋の皮膚のひだがあります。
横向きのインドライオンを見ると、お腹の真ん中の皮膚がたれているのがわかると思います。
これは、インドライオンにしかない大きな特徴です。
インドライオンの群れと狩り
インドライオンはアフリカライオンと同じように、群れ(プライド)で暮らしています。
個体数が少ないためか、メス2頭ほどの小さなプライドをつくります。ちなみにアフリカライオンのプライドのメスは平均5頭ほどです。
アフリカでは、オスライオンは多くの時間をプライドのメスや子どもたちと過ごします。
一方インドでは、オスは常にプライドのメスと行動をともにするわけではありません。繁殖期にだけプライドに合流する様子も確認されています。
獲物がすくないインドでは飢えを避けるため小さな単位で行動すると推測されています。
一般的に群れをなすライオンは狩りも複数で行います。
ところが、調査によるとインドライオンは群れで出かけたとしても、狩りをするのは1頭のライオンだとわかってきました。
ほかのライオンは傍観し、獲物が倒れたら群れの皆で食べるスタイル。複数等のメスが戦略的に狩りをするアフリカライオンとは異なります。
開けたサバンナより目隠しのおおい森林では「獲物に接近しやすく狩りの成功率が高い」のではと考えられています。
おもな獲物はシカやウシの仲間。保護区外では家畜を襲うため、近隣住民との確執が生まれています。

寿命|インドライオンは長生き?!
遺伝子多様性が問題視されるインドライオンですが、一般にアフリカライオンより寿命が長い傾向にあります。
- アフリカライオン 13年
- インドライオン 15年
アフリカにおいて、10歳を超えたオスライオンはプライドを維持することが困難になってきます。プライドを失くしてまもなく死亡するオスは珍しくありません。
そのため、アフリカライオンのオスはメスに比べて寿命が短い傾向にあります。
一方のインドライオンの成獣の生存率は90%以上!多くは15年の天寿を全うします。
野生ライオンの最高齢(推定)はアフリカで14歳、インドで15歳といわれています。
飼育下では、2種とも20年以上生きた例があります。
インドライオンに会える動物園 2か所
非常に数の少ないインドライオン。飼育下での繁殖が種の保全のために必須となります。
しかし、動物園は純粋なインドライオンの血統を確保することに苦難しています。
ギル国立公園があるインド・グジャラート州ジュナガドにあるザックカーバーグ動物公園【Sakkarbaug Zoological Park】がインドライオン繁殖基地となっています。
現在、日本では2か所の動物園でインドライオンを展示しています。繁殖のないまま高齢化が進み、のこるインドライオンは2頭。
日本でインドライオンに会えなくなる日は、すぐそこまで来ています。
バドゥリ|よこはま動物園ズーラシア
2022年3月、メスのガウリーが死亡しました。21歳ととても長生きでした。
ガウリーの死亡によりズーラシアのインドライオンは1頭だけになりました。
2017年シンガポール動物園からやって来たオスのバドゥリ(2011年生)。早いところお相手が見つかれば、繁殖の可能性はあるかもしれません。
ラージャー|野毛山動物園
2008年にズーラシアで生まれたオスのラージャー。
誕生時すでに衰弱していたため、人工哺育で成長。2014年に野毛山動物園へ移動しました。
13歳を超え高齢となってきましたが、とても美しいお顔立ちです。
上野動物園にインドライオンはいません
上野動物園は2002年に妊娠したメス、チャンディをズーラシアからひきうけました。
チャンディは無事3頭の子を上野で出産。結果、上野では母チャンディと子3頭(アニタ、シャクティ、モハン)を飼育していました。
みな血縁関係にあるため、繁殖のない人生を終えました。
オスのモハンが2019年11月に死亡し、上野動物園でのインドライオン展示は終了しました。

インドライオンの生態と特徴【まとめ】
- 生息 インド・ギル国立公園の樹林や草原
600頭 安定傾向 - 生活 小さなプライドもしくは単独
- 特徴(アフリカライオンと比べて)
- 体が小さい
- 体毛が明色
- 頭部のたてがみが短い(耳が見える)
- おなかに皮膚のひだがある
- 寿命 15年(アフリカライオン 13年)
アフリカではなくインドに生息するライオン。
いまだにわからないことも多いですが、アフリカのライオンとは見た目も生活もちがっています。
インド政府や保全団体の活動により、なんとか絶滅をまぬかれたインドライオン。
近年は生息数が安定傾向にあり、その数は徐々にふえています。
一方で日本で飼育されているインドライオンはついに残り2頭となりました。
世界に1000頭といない「インドライオン」ぜひとも見てほしい・知ってほしい動物です。
以上、インドライオンのお話でした。
【参考】
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