アムールヒョウの特徴!アムールヒョウに会える動物園と歴史

02/01/2022

突然ですが、ヒョウはどこに住んでいるでしょう?

多くの方が「アフリカ」と答えるかもしれません。

実は、世界には9種類のヒョウが存在します。アフリカだけでなく、アジアにも住んでいます。

今回、zoo zoo diaryで紹介するのは、ロシアに住むアムールヒョウです。

日本にいるアムールヒョウの歴史と、アムールヒョウに会える動物園を紹介します。

アムールヒョウに関する最新情報を随時更新していきます!

アムールヒョウとは?

食肉目ネコ科ヒョウ属 Panthera pardus orientalis

ビッグキャット、いわゆる大型ネコ科動物は食物連鎖の頂点に君臨しています。

アフリカではライオン、アジアではトラ、南米ではジャガー、といったように重ならない地域で活動しています。

一方、ヒョウはアフリカからアジアまで広く分布しています。ライオンやトラを避けながら、上手に暮らしています。

順応能力に優れたヒョウは、環境に合わせた進化を遂げ、現在9亜種が確認されています。それぞれ生息地が名前の由来となっています。

ヒョウの種類
  • アフリカヒョウ  Panthera pardus pardus
  • ペルシャヒョウ  Panthera pardus saxicolor
  • インドシナヒョウ Panthera pardus delacouri 
  • ジャワヒョウ   Panthera pardus melas
  • スリランカヒョウ Panthera pardus kotiya
  • インドヒョウ   Panthera pardus fusca
  • アラビアヒョウ  Panthera pardus nimr
  • キタシナヒョウ  Panthera pardus japonensis
  • アムールヒョウ: Panthera pardus orientalis

アムールヒョウは、ヒョウの中で最も北に生息しています。ロシア極東およびその国境付近(中国北東)で確認されています。

単独行動を好み、活動範囲は1頭当たり150平方kmほど。想像が難しいですが、とても広い範囲(大阪府堺市と同等)をテリトリーにしています。

生息地以外にアムールヒョウとその他ヒョウ亜種との大きな差はありません。

体長およそ1.3メートル。尾の長さは80cmほど。体重40kg前後ですが、オスの方が大きく50kgの個体も確認されています。

アムールヒョウの寿命は15年ほど。飼育下では20年以上生きた個体もいます。

サンディエゴ動物園 ヒョウ
  • 生息 ロシア 80頭
  • 体長 100~130cm
  • 尾長 80cm
  • 体高 60cm
  • 体重 オス45kg メス35kg
  • 寿命 15年

アムールヒョウの特徴

広い生息域を持つヒョウは全部で9種類。すべて同じくらいの大きさで、色や柄も似ているため、一見して区別することは困難。

しかし、それぞれの環境に適した進化が、亜種の特徴としてあらわれています。

毛の長さと色

アムールヒョウは極寒の地で暮らしています。

冬になると、長く厚い毛に生え変わります。夏毛2.5cmに対して、冬毛は7cmほど。

また、毛の色も変わります。夏は赤っぽい黄色ですが、冬は背景の白色(雪)に紛れるよう、淡い黄色を帯びています。

そのため、体の大きさはアフリカヒョウなどと同じくらいでも、長く淡い毛を持つアムールヒョウは大きく見えます。

寒い地域に住む動物は大きくなるというベルクマンの法則より、実際にアムールヒョウはヒョウの中で最大級とされています。

ヒョウ柄の違い

皆さんご存知の通り、ヒョウにはヒョウ柄があります。ロゼット(Rosette)柄とも呼ばれる、花のような形の輪っかの模様です。

アムールヒョウの模様は、ひとつひとつが大きく、切れ目のない輪であることが特徴。

トラと同じように、ヒョウの模様はカモフラージュの役割を果たしています。

草木の生えにくい寒冷地では、密な模様は不自然なのかもしれませんね。

アムールヒョウ ヒョウ 違い
左:アムールヒョウ 毛が長く大柄

アムールヒョウの保全活動

アフリカからアジアに広く生息するヒョウ。

生息地破壊や食糧難、ヒトとの接触などにより、すべてのヒョウが減少傾向にあります。

その中でも、アムールヒョウ生息数は100頭以下とされ、IUCN深刻な危機(CR)に指定されています。

アムールヒョウは、多くの希少動物と同じように、人間活動(森林破壊や密猟など)により個体数が減少しました。

かつては、ロシア南東~中国東部、朝鮮半島まで分布していました。

現在は、ロシア極東部とその周辺という非常に限られた地域に、限られた個体群しか存在していません。

そのため、遺伝子多様性の低さが問題となっています。

生息地が狭く個体数も少ないアムールヒョウは、必然的に近親交配が増えます。

遺伝子が類似したもの同士の交配では、病気や奇形が遺伝しやすいとされます。結果として、死産の多さや寿命の短さにつながります。

つまり、繁殖率が低いアムールヒョウは、個体数増加の見込みが少ないため、このままでは絶滅を避けることはできません。

サンディエゴ動物園 アムールヒョウ

そこで、アムールヒョウの窮地を救うために、2001年から本格的な保全計画が開始されました。

ロシアだけでなく、ブロンクス動物園を運営するWCS(野生生物保全協会)やロンドン動物園を運営するZSL(ロンドン動物学会)など世界中から、アムールヒョウのために研究者が集まっています。

アムールヒョウの生態や個体数の把握だけでなく、森林破壊や密猟の抑制、地元民の教育を行い、ヒトがアムールヒョウの命を奪うことを防いでいます。

さらに、飼育下繁殖させた個体を野生に帰し、新たな個体群の誕生を目指しています。

アムールヒョウ 保全
The Zoological Society of Londonより

どの個体を、どの地域に放つのか、果たして野生で生きていけるのか、など議論は山積みですが。今後の経過に注目です。

大規模な生息数調査では、アムールヒョウはかつて考えられていたより、生存していることがわかりました。

とはいえ、2018年の報告では、84頭。

アムールヒョウ絶滅を避けるためには、継続的な保全活動が必要です。

日本のアムールヒョウ【動物園の歴史】

アムールヒョウ繁殖

日本で初めてアムールヒョウの繁殖に成功したのは、北海道旭川市・旭山動物園です。

その後、神戸市・王子動物園、広島市・安佐動物公園福山市立動物園でアムールヒョウが誕生しています。

ビッグとエイラの血統

北海道旭川市・旭山動物園は、ロシア(当時、ソ連)やアメリカの代表者が出席するなか、1967年に開園しました。

当初からロシアと友好関係にあった旭山動物園。アムールヒョウが寄贈され、日本でのアムールヒョウ展示が始まりました。

しかし、繁殖には至らず。1981年にアムールヒョウが死亡して以来、旭山動物園(日本)にアムールヒョウがいない日々が続きました。

そして1988年、待望のアムールヒョウが来園!フィンランドからオスのビッグ、アメリカからメスのエイラが来園しました。

その2年後、2頭の間に初めて子が誕生。しかし、子はまもなく亡くなりました。

翌1991年に、エイラ2回目の出産。心配されるなか、エイラはメスのサクラを無事に育てました。さらに、1996年には、メスのことが生まれました。

日本で初めてアムールヒョウの出産・育児を教えてくれたエイラは、2002年に死亡。

ビッグはその後も旭山動物園で暮らし、2007年、22年間の長い人生を終えました。

初の日本生まれのアムールヒョウ、サクラは神戸市・王子動物園へ移動。

1996年、ドイツより来園したカニムとの間に、ビッグとエイラの孫を授かりました。

サクラは2009年、カニムは2011年に死亡しました。2頭とも18歳と長生きでした。

サクラとカニムの子、タマコは安佐動物公園へ移動。

ドイツより来園したベルと繁殖に成功し、2004年、2頭のオス(アテネとキン)が誕生しました。

その後、アテネとキンは旭山動物園へ移動。

キンは、2017年にトワとミライの父親となりました。母親は、ロシアより来園したルナです。

キンは当時12歳と高齢となり、果たして繁殖能力があるのか、多くの方が不安と期待を抱くなか、見事ビッグとエイラの血を残してくれました。

歴史的なビッグとエイラの血統を絶やさないために、トワとミライのペア探しが重要になってきます。

ベルの血統

1997年ドイツ生まれのオス、ベル。

1998年に広島市・安佐動物公園へやって来ました。その後、ベルは2頭のメスと繁殖に成功しました。

アムールヒョウ ベル
四国新聞社より

初めてのペア相手は、ビッグとエイラの孫タマコ。先述したアテネとキンの父親となりました。

タマコは、2006年に難産により亡くなりました。2頭は3回繁殖を行った、相性の良いペアだっただけに、とても悲しいニュースでした。

しかし、2008年、ベルは来日したばかりのチャイムと結ばれました。

チャイムは、2頭のメス(ピン、ポン)と1頭のオス(ダッシュ)を生みました。

ピンとポンは、それぞれ福山市立動物園と王子動物園で繁殖に成功。さらに、ポンの子セイラは、ベルのひ孫(スク、ラム、トライ)を出産しました。

ベルは、2017年、徳山動物園にて19歳で亡くなりました。

日本のアムールヒョウ相関図

2022年1月現在、日本では10か所の動物園で17頭のアムールヒョウが飼育されています。

日本で初めてアムールヒョウを生んでくれた、エイラ。そのパートナーであるビッグ。この2頭から日本生まれのアムールヒョウの歴史が始まりました。

日本のアムールヒョウ 家系図
 

日本のアムールヒョウの相関図を見てみると、ビッグとエイラの血統を引くアムールヒョウは、キン(ひ孫)、トワとミライ(玄孫)の3頭のみ。

そして、現存している日本生まれのアムールヒョウは皆、ベルの血が入っていることがわかります。

トワ・ミライとスク・ラム・トライの血のつながりは、薄いように思いますが。

今後、外国から新しい血統が入るのか、日本にいるアムールヒョウで繁殖を目指すのか、気になるところです。

アムールヒョウの未来を左右する?!チャイムとルナ

野生同様、飼育下のアムールヒョウでも遺伝子多様性の低さが問題となっています。

近親交配を避けるためには、世界中の施設が協力し、将来を見据えた計画を立てなければなりません。

日本の動物園のアムールヒョウにおいて、半数以上がベルの子孫です。

そこで鍵となるのが、日本生まれでないアムールヒョウたち。

2022年1月現在、日本にいる外国生まれのアムールヒョウのメスは、安佐動物公園のチャイムと東武動物公園のルナだけです。

チャイム|安佐動物公園

チャイムは2003年ドイツ生まれのメス。2004年にフランスの動物園へ移動し、日本には2008年にやって来ました。

アムールヒョウ 安佐動物公園 チャイム

チャイムは来園した年にベルと繁殖。出産・育児に成功しました。

2015年、ベルと福山市立動物園での繁殖経験を持つアニュイが交換となりましたが、うまくいかず。2018年には、アニュイと王子動物園での繁殖経験を持つアムロが交換されました。

2019年、アムロとチャイムの交尾が確認されました。しかし、ざんねんながら繁殖には至っていません。

現在、日本最高齢のチャイム。アムールヒョウの寿命(15年ほど)を優に超えています。

チャイムが高齢のため繁殖できないとすると、日本で独自の血統を持つメスはルナ、1頭のみです。

ルナ|東武動物公園

ルナは2012年ロシア生まれ。2015年に旭山動物園へ移動してきました。

2017年、ビッグとエイラの孫であるキンと繁殖に成功しました。当時5歳のルナは初産にもかかわらず、上手に子育てを終えました。

日本にいる他のアムールヒョウとは異なる血統を持つルナ。日本の動物園としては、優先的に繁殖させたい個体です。

新たな繁殖ペアをつくるために、2019年、ルナは東武動物公園へと移りました。

東武動物園にはオランダ生まれのアブスがいます。海外の動物園出身のアムールヒョウで、かつ子孫を残していない個体です。

施設側としては、新しい血統を生む貴重なペアです。

しかし、アブスが来日したのは2017年。当時、ピンとアニュイの子、カランがいましたが、繁殖には至りませんでした。

そして、2019年、ルナ来園。アブスは、すでに15歳でした。

いくら貴重な組み合わせとはいえ、繁殖適齢期にあるルナと高齢期にあるアブス。可能性は低いように思われますが。

日本アムールヒョウ界の未来を担う2頭。奇跡が起こるようお祈りしています。

アムールヒョウに会える動物園

2022年1月現在、日本には10施設に17頭のアムールヒョウがいます。

アムールヒョウに会える動物園
  • 旭山動物園
    • キン(2004年生)
    • ミライ(2017年生)
  • 宇都宮動物園
    • トワ(2017年生)
  • 群馬サファリ
    • カラン(2014年生)
  • 東武動物公園
    • アブス(2004年生)
    • ルナ(2015年生)
  • よこはま動物園ズーラシア
    • ダッシュ(2008年生)
    • トライ(2019年生)
  • いしかわ動物園
    • コロン(2014年生)
  • 王子動物園
    • アニュイ(2008年生)
    • セイラ(2015年生)
    • スク(2019年生)
  • 安佐動物公園
    • チャイム(2003年生)
    • アムロ(2010年生)
  • 福山市立動物園
    • ピン(2008年生)
    • ラム(2019年生)
  • 大牟田市動物園
    • ポン(2008年生)

繁殖できるペアは、東武動物公園のアブスとルナ、王子動物園のアニュイとセイラ、安佐動物公園のチャイムとアムロです。

しかし、アブスとチャイムは、ヒョウの寿命である15歳を超えています。そのため、繁殖の可能性は高くありません。

日本でアムールヒョウに会えなくなる日が、近づいている気がします。

王子動物園 アムールヒョウ

アムールヒョウの赤ちゃんに会える動物園

2019年以来、日本の動物園でアムールヒョウは生まれていません。

3つ子誕生!王子動物園

2019年7月、王子動物園生まれのセイラが3頭の子を出産しました。

父親は、イギリス生まれのアニュイ。福山市や広島市を経て、2018年に神戸市にやって来ました。

子は無事に生まれたものの、セイラが育児できなかったため、3頭は人工哺育となりました。

メス2頭(スク、ラム)、オス1頭(トライ)は元気に育ちました。

2020年トライは横浜市・ズーラシアへ、ラムは福山市立動物園へ移動しました。

2022年子どもたちは性成熟である3歳を迎えます。今後のペアリングに注目です。

現在、王子動物園ではアニュイ、セイラ、スクの3頭に会うことができます。


極寒の地で暮らすアムールヒョウ。もふもふの毛と大きなヒョウ柄が特徴的です。

現在の生息数は100頭以下。その美しい姿が世界から消えようとしています。原因はもちろん人間活動(森林破壊や狩猟等)です。

今わたしたちがアムールヒョウに会えることはとても貴重なことです。これからも種が絶えないよう応援しましょう!

以上、アムールヒョウのお話でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会

WCS Russia