タスマニアデビル【日本に2頭だけ】かわいい悪魔の正体とは

09/09/2022

オーストラリアの動物というと、カンガルーやコアラなどのんびりしたイメージがあると思います。

では、オーストラリアに肉食動物はいるのでしょうか?

答えは「イエス」それが今回特集するタスマニアデビルです。

ヒトからもおそれられ「悪魔」の名をつけられた動物とはいったいどんな動物でしょうか?

タスマニアデビルの生態と特徴から日本のタスマニアデビルに会える動物園まで紹介します。

タスマニアデビルとは?

オーストラリアにしかいない肉食動物タスマニアデビル。単に「デビル」とも呼ばれます。

デビル【Devil】悪魔という名は、入植者が闇のなかから聞こえる不気味な鳴き声を「悪魔の声」だとおもったことに由来しています。

一般に肉食動物をさす「ネコ目(食肉目)」ではなくフクロネコ目に分類されます。

われわれにとって「袋をもつネコ」はまったくなじみがありませんが、実は60種以上もいます。ただしタスマニアデビル属は1種のみです。

  • フクロネコ目 Dasyuromorphia
    • フクロネコ科 Dasyuridae
      • タスマニアデビル属 Sarcophilus
        • タスマニアデビル Sarcophilus harrisii
サンディエゴ動物園タスマニアンデビル

タスマニアデビルはオーストラリア南東にうかぶタスマニア島に生息しています。

正確な個体数はわかっていません。1990年代に10万頭以上いたタスマニアデビルは3万頭以下にへったといわれています。

  • IUCNレッドリスト 危機(EN)
  • CITES 記載なし
  • 生息 タスマニア島 3万頭
  • 体長 オス65cm メス58cm
  • 尾長 25cm
  • 体高 25cm
  • 体重 オス11kg メス8kg

IUCNレッドリストは過去10年間でタスマニアデビルが60%以上へっていることから、絶滅の可能性がたかい危機(EN)と評価しています。

ワシントン条約の規制はありませんが、オーストラリア政府が輸出入をきびしく制限しています。

タスマニア島にしかいません

オーストラリア大陸の南東にあるタスマニア島の海岸付近から山林までひろく分布しています。とくに森と草原の境界のような木がまばらなに生えている場所を好みます

はっきりとした理由はわかっていませんが、およそ3000年前にタスマニアデビルはオーストラリア本土からすがたを消しました

  • オーストラリア本土でのタスマニアデビル絶滅の原因とは?
    1. 天候の変化
    2. 感染症等の病
    3. ディンゴとの衝突
    4. ヒトとの衝突

2020年、オーストラリア本土の自然保護区にタスマニアデビルが再導入されました。2021年には自然繁殖が確認されています。

何千年もいなかった肉食動物がやってくることは、果たして吉か凶か。今後の研究報告も要チェックです。

タスマニアデビルの形態

現存する有袋肉食動物(フクロネコ目)の最大種であるタスマニアデビル。

  • メス < オス(体重10kg、体長60cm以上)
  • 黒毛 胸に白い三日月模様
  • 耳が赤い

オスの方がおおきく体重10kg、体長60cm以上。なかには体高30cm体重14kgほどのタスマニアデビルが確認されています。

全体は黒毛でおおわれ、胸に三日月のような白い模様があります。ちょうどツキノワグマのものと似ています。

からだに対して耳がおおきく、また血流がよいため赤く見えます。興奮したりストレスを感じたりすると、さらに赤くなります。

有袋類なのでメスはおなかに袋(育児嚢)があります。カンガルーはおなか側に入り口がありますが、タスマニアデビルはおしり側に入り口があります。

肉食動物らしい鋭い牙や爪をもち、オオカミとおなじくらい強い顎の力をもっています。

あしの裏の秘密|フクロネコの肉球

四肢はみじかく胴長に見えます。前あしの方がながく指は5本。後あしの指は4本だけです。

フクロネコ科の動物は特徴的な肉球をもちます。かかとやあし首をおおう、ぶあつい革製品のような見た目。もはや肉球には見えません。

表面はちいさな凹凸があり、すべりどめやクッションの役割を果たすと考えられています。ちなみにとてもやわらかいそうです。

後あし立ちするときはあしの裏全体を地面につけ、歩くときはつま先だけつけます。

タスマニアデビルは顔が大きい!

タスマニアデビルは体に対してとても顔が大きい動物です。

高齢になると体の筋力が衰えていくため、顔(頭部)の重さが体重の4分の1ほどを占めます。ヒトの頭は体重の約10%なので、その倍以上重たい計算になります。

タスマニアデビルは肉食動物。大きな骨や肉を噛みちぎるために、顎の筋肉が発達しています。必然的に顔が大きく、重たくなりました。

タスマニアデビルの噛む力は同じ体重のイヌの4倍もあります。

タスマニアデビルの生態

タスマニアデビルは巣穴をつくるため土を掘ります。このとき育児嚢に砂がはいらないよう、おしり側に袋の入り口があります。

1頭につき複数の巣穴をつくり、数日おきに移動しながら活動しています。

タスマニアデビルは1km先のにおいがわかるほど嗅覚が優れています。おのおの行動範囲ににおい(糞)をのこし、自分の居場所や状態をアピールします。

悪魔といわれた声は食べるとき以外はほぼ聞くことはありません。

木登りは狩りのときなどに限られ、基本的に地上で単独行動をとります。夜のあいだに移動や食事をし、日中は巣穴でやすみ、ときに日光浴をして過ごします。

タスマニアデビルの目は夜間に見えるよう進化しています。また、動くものをとらえるのは得意ですが、とまっているものはよく見えません。

大きな口に尖った歯がびっしり生え、獰猛なイメージのタスマニアデビル。実は「闘争」より「逃走」をえらびます。

もちろん相手に襲われたり罠にかけられたりすると反撃しますが。基本的には攻撃ではなく口をおおきくあける等のディスプレイ(威嚇)でおわります。

一方で、交尾や繁殖相手のとりあいのときには攻撃的になることが報告されています。

大食い!さわがしい!肉食!

タスマニアデビルはちいさくか弱そうに見えますが、タスマニア島生態系の上位をしめる捕食者。つまり、肉食動物です。

通常1日に体重の10%ほどの肉を食べますが、最大で体重の40%も食べることができるほど大食漢!もし50kgのヒトだったら20kgものお肉を食べる計算です。

このことから、タスマニアデビルは多くのエネルギーを必要とする代謝が良い動物だとわかります。

夜行性のため狩りはもっぱら暗くなってから。トカゲやカエルなどを食べます。

一方で、ワラビーやウォンバットなど倍ほどのおおきさの動物をするどい歯でしとめることができます。

しかし、タスマニアデビルは狩り以上に死肉を食べることがおおいといわれています。

皮とおおきな骨以外はきれいに食べつくし、タスマニアの自然の清潔をたもつ役割をになっています。アフリカのハイエナとおなじような存在です。

【関連記事】知ってほしいハイエナの真実「強く賢い」クランのしくみや天敵とは?

不思議なのは単独行動をとるにもかかわらず、採食は複数頭でおこなうこと。

これは他のタスマニアデビルが血肉のにおいをかぎつけ、集まってくるから。威嚇をしあいながら騒がしくガツガツ食べます。

実はタスマニアデビルが鳴くのは食事のときくらい。ふだんは静かで悪魔の要素はありません。

しかし暗闇から骨や肉をむさぼる音と奇妙な鳴き声が聞こえたら、たしかに悪魔だと思ってしまうかもしれませんね。

タスマニアデビルは尾に脂肪をたくわえています。そのため、ふとい立派な尾をもつ個体は健康であることを意味しています。

おなかの袋でそだつ|タスマニアデビルの繁殖

タスマニアデビルの発情期は3月ごろ。妊娠期間は1か月前後。有袋類の出産ではもれなく米粒ほどの小さな子が誕生します。

ただしタスマニアデビルの場合は、数十頭の赤ちゃんが生まれます。

しかし、母親のおなかの袋(育児嚢)のなかの乳首は4つだけ。そのため、最初にたどりついた4頭だけが生育できます。

超未熟児状態の赤ちゃんタスマニアデビルたちは、4か月間育児嚢のなかで成長します。その後出袋しますが、およそ9か月間は母親のたすけが必要です。

ちいさなタスマニアデビルがよりちいさな赤ちゃんお背負うすがたは、とっても可愛らしいです。

性成熟は2歳ごろ。寿命は5~8年。

ところが、近年DFTDの影響かタスマニアデビルの早熟が観察されています。

タスマニアデビル死因No.1は「がん」DFTDとは?

タスマニア島で種を守ってきたタスマニアデビル。

かつては絶滅したタスマニアタイガーがタスマニアデビルの捕食者でした。現在はタカなどの大型猛禽類がタスマニアデビルの天敵です。

また、空腹の際は共食いが見られます。同類から逃げるために、タスマニアデビルの幼獣は木登りが得意と考えられています。

1800年代にはヨーロッパの入植者によって駆除されはじめました。100年以上もつづいた迫害により、タスマニアデビルは絶滅寸前に。

1941年、ようやく保護法が施行され、少しずつタスマニアデビルの生息数は増加していました。

しかし、伝染性の病【Devil Facial Tumour Disease, DFTD】デビル顔面腫瘍性疾患が流行。

DFTDは1996年にはじめて疾患として認識されましたが、1980年ごろから発生していると考えられています。

きわめて致死性がたかく、80%以上の野生タスマニアデビルがDFTDのために亡くなったといわれています。

あっという間に絶滅に近づいたタスマニアデビルを救おうと、り患したデビルを隔離したり科学者がワクチンや治療法の研究をおこなったりしています。

また、近年の報告によると、病に打ち勝ち寿命(5年以上)をまっとうする個体がふえつつあるとのこと。

いままさにタスマニアデビルはDFTD耐性タスマニアデビルへと進化しています。

タスマニアデビルに会えるのは多摩動物公園だけ!

東京都日野市にある多摩動物公園が、日本で唯一タスマニアデビルを飼育している施設です。

2016年オーストラリアから姉妹が来日。日本では20年ぶりとなるタスマニアデビル公開でした。

その翌年には、テイマーとダーウェントという兄弟がやってきました。

ざんねんながら2017年、2019年に姉妹が亡くなったため、現在はオス2頭を飼育しています。

ダーウェントは2021年11月に断脚手術を受け、バックヤードで経過観察中です。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会

多摩動物公園

Department of Natural Resources and Environment Tasmania