ユキヒョウの生態と特徴!幻の動物ユキヒョウに会える動物園
ヒョウは、アフリカのビッグファイブにも数えられる人気動物。ほとんどの方がその姿かたちを思い浮かべられるでしょう。
では、ユキヒョウをご存知ですか?
飼育している施設が少ないため、知らない方もいるでしょう。
しかし、ユキヒョウ展示場へ行くと、必ず立派なカメラを持ったファンがいます。
そこで、今回のzoo zoo diaryでは、多くの人を魅了するユキヒョウの生態や特徴、ユキヒョウに会える動物園を紹介します。

ユキヒョウとは?
食肉目ネコ科ヒョウ属 Panthera uncia
体長1~1.3メートルと、一般的なヒョウの大きさと変わりません。一方、体重は軽く40kg前後。
雌雄差は少なく、オスの方が少し大きい程度です。
ユキヒョウ最大の特徴は、毛色。
一般的に思い描くヒョウの色、黄色ではありません。白やグレー、ベージュの体毛で覆われています。
花のような斑紋、いわゆるヒョウ柄はありますが、くっきりした模様ではありません。
- 生息 中央アジアの山岳地帯 7700頭
- 体長 100~130cm
- 尾長 100cm
- 体高 60cm
- 体重 オス45kg メス35kg
- 体毛 灰~白茶色 長い
- 寿命 15年
ユキヒョウの生態
ユキヒョウは、雌雄ともに群れを成さず、山奥でひっそりと暮らしています。
他の動物の気配に非常に敏感。接触を避けるように行動しています。休むときは、岩陰などに隠れています。
また、灰色や淡い茶色の毛が周囲の岩や山肌に溶け込み、隠れていなくても見えないほどです。
そのため、野生のユキヒョウを見るのは至難の業。幻の動物と呼ばれています。
ユキヒョウの観察記録や研究報告は非常に少なく、ユキヒョウの実態は未だ多くの謎に包まれています。
性格は控えめ。自身や子に危険を感じない限り、自ら攻撃することはないといわれています。

ユキヒョウの生息地
ユキ、のイメージ通り、寒いところに生息しているユキヒョウ。
中央アジアのアルタイ山脈やヒマラヤ山脈など、山岳地帯で発見されています。
ユキヒョウは非常に広い行動範囲を持ちます。
冬場は積雪を避けるため、標高の低いところで過ごします。反対に、夏は暑さをしのぐため、標高5000メートルほどまで移動します。
雪山に生息するユキヒョウは発見が非常に困難なため、野生の個体数は定かではありません。
野生のユキヒョウは、地球温暖化や密猟により減少傾向。近年は、保護区の制定や密猟防止策により、減少率は低下しています。
推定個体数には幅があり、4000~8000頭とされていました。2016年には7700頭前後と報告されています。
そのうち60%ほどは、中国に生息していると考えられています。
ユキヒョウはIUCNレッドリスト危急VUに指定され、ワシントン条約では商業取引が禁止されています。
雪山に住むために進化!
毛色以外に大きな特徴としては
太くて短い足と太くて長いしっぽ。

足場の悪い山岳地帯を移動するユキヒョウ。
バランスを保つため、足は短く尾は長く進化しました。尾長は体長と同じくらい(約1メートル)です。
寒い冬に耐えるため、ユキヒョウは毛深くなりました。腹の毛は10cmほどの厚さ。
立派な尾も厚い毛に覆われており、口や鼻を冷気から守るマフラーの役割も果たします。
大きな肉球の周りにも毛がぎっしり生えています。暖かく滑りにくい肉球のおかげで、深い雪の中で行動することができます。
また、鼻の穴の中(鼻腔)が広く、冷たい外気が直接肺に入らない仕組みになっています。

ユキヒョウの狩り
険しい雪山でも俊敏に動くことができるユキヒョウ。
狩りは明け方や夕方など、うす暗い時間帯に行われます。主な食料は、ヤギやヒツジ。
しかし、ユキヒョウは状況に応じて獲物を変えることが知られています。場合によっては、死肉や家畜を食べることもあります。
ユキヒョウは背後から獲物に忍び寄り、一気に跳びかかります。
ごつごつした急な斜面を、ものすごいスピードと跳躍で追いかけるユキヒョウ。非常に華麗で、桁違いにかっこいい瞬間です。
ユキヒョウは後肢の力が強く、10メートル以上ジャンプすることができます。
この跳躍力をもって、自分より大きな動物を仕留めることも可能。
他者の目を避けるユキヒョウは、倒した獲物を隠れ家に運んでから食べることがあります。
また、食べ切れないエサを洞穴などに隠すことも確認されています。
ユキヒョウの繁殖
繁殖期は1~3月。雌雄ともに単独行動をとるユキヒョウは、匂いを頼りに繁殖相手を探します。
妊娠期間は約3か月。
妊娠したメスは出産に最適で安全な場所を探します。さらに、地面に自分の毛を敷き詰め、出産の環境を整えます。
通常、20cm程度の赤ちゃんを1度に2、3頭産みます。
子は2歳ごろまで母親と行動を共にし、その後ひとり立ちします。
性成熟は、3歳前後です。
ユキヒョウの寿命
1度に複数頭産むことが多いユキヒョウ。
ところが、生まれた子は成熟前に死亡することが多いといわれています。生息地破壊や食糧難による飢餓が主な原因。
厳しい時期を乗り越えたユキヒョウの寿命は、15年ほど。
世界には、20年以上生きたユキヒョウも確認されています。

ユキヒョウに会える動物園
現在、日本でユキヒョウを展示している動物園は9か所。計18頭のユキヒョウが飼育されています。
- 円山動物園
- アクバル(2005年生)
- シジム(2010年生)
- 旭山動物園
- ユーリ(2019年生)
- 大森山動物園
- アサヒ(2011年生)
- リヒト(2016年生)
- 多摩動物公園
- ヴァルデマール(2003年生)
- ミルチャ(2008年生)
- ミミ(2009年生)
- コボ(2013年生)
- フク(2017年生)
- いしかわ動物園
- ジーマ(2010年生)
- スカイ(2011年生)
- 東山動植物園
- ユキチ(2009年生)
- リアン(2011年生)
- 浜松市動物園
- リーベ(2003年生)
- 王子動物園
- ユッコ(2009年生)
- フブキ(2017年生)
- 熊本市動植物園
- スピカ(2005年生)
2019年1月に群馬サファリパークのマイ、同年7月には甲府市遊亀公園付属動物園のミュウが亡くなりました。
2頭は双子で、ミュウは国内最高齢の16歳でした。
また、2020年9月、和歌山県・アドベンチャーワールドのシリウス(15歳)が死亡しました。
現在、遊亀公園、群馬サファリパーク、アドベンチャーワールドにユキヒョウはいません。
動物園のユキヒョウ繁殖とシンギズ
2000年にカザフスタンから東京都・多摩動物公園にやって来た、野生由来のシンギズ。
繁殖能力が非常に高いオスで、4頭のメスの間に16頭の子どもを授かりました。
絶滅が危惧され個体数の少ないユキヒョウは、動物園に新たに導入することが難しい動物のひとつ。
シンギズは、国内における飼育下繁殖に大いに貢献し、日本のユキヒョウ数を増やしてくれました。
2015年、推定26歳という長い生涯を終えました。
日本にいるユキヒョウの半数は、シンギズの血を引いています。
遺伝的多様性の観点から、海外生まれのユキヒョウの繁殖に期待が寄せられています。

ユキヒョウの赤ちゃんに会いに行こう!
ユキヒョウ日本一!多摩動物公園
東京都・多摩動物公園は、シンギズがやって来て以来、ユキヒョウ繁殖のリーダー的存在となっています。
しかし、出産・育児経験のあるマユとユキが亡くなってからは、繁殖に成功していませんでした。
そんななか、2017年6月、2頭のユキヒョウが誕生しました。
母親は2010年にオーストリアからやって来たミミ。父親は2015年にカナダからやって来たコボです。
生まれた2頭のうち、1頭は3日後に死亡しましたが、残る1頭(フク、オス)は母親の手で育てられました。
2020年、3歳となるフク。
性成熟を迎える年頃です。これからますます男らしくなることでしょう。
ミミとコボはまだ若く、繁殖の可能性があります。
独自の血統を両親から引き継いだフクは、ユキヒョウの今後を担う存在になるかもしれません。
2022年1月現在、多摩動物公園はコボ一家を含め、5頭のユキヒョウを飼育中。国内最多です!ぜひ訪れてみてください。
旭山動物園は出産ラッシュ!
2019年7月、北海道・旭山動物園でメスのユーリが誕生しました。
母親は2012年ドイツから来日したジーマ、父親は円山動物園生まれのヤマト(2021年没)。
ヤマトはシンギズの息子アクバルの子です。
ヤマト・ジーマペアの繁殖は今回が3度目。
2015年、ジーマにとって初産となった子は、出産翌日に死亡しました。
翌2016年には、2頭の子を出産。うち1頭は亡くなりましたが、残る1頭(リヒト、オス)を立派に育てあげました。
ジーマは、出産・育児に成功した貴重なユキヒョウです。
新たな繁殖を目指して、2022年1月、いしかわ動物園に移動しました。
新たなパートナー候補スカイは、シンギズの息子(アクバルの弟)です。
旭山動物園は2020年に入ってからも、カバ、アムールトラ、ワオキツネザル、ゴマフアザラシ、アビシニアコロブスと、たくさんの赤ちゃんが誕生しています。
見どころ満載の旭山動物園。楽しめること間違いなしです!
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ユキヒョウ繁殖の今後
2019年のユーリ誕生以降、国内でユキヒョウは生まれていません。
出産経験があり、独立した血統であるジーマ、ミミ、シジムに期待が寄せられています。
シジム|円山動物園
円山動物園のシジムは、2010年スウェーデンNordens Arkで生まれました。
Nordens Arkは絶滅に瀕した動物たちの保全に尽力している非営利財団です。動物園における飼育・繁殖だけでなく、生息地へ赴いて野生動物の研究も行っています。
世界中のユキヒョウ血統の調整を担うNordens Ark。
国際的な繁殖管理のもと、2011年シジムは円山動物園に移動となりました。
シジムは、2017年より発情期のオスとの同居を行っています。交尾は観察されるものの、繁殖成功には至っていません。
とはいえ、2019年シジムはアクバルの子を出産しました。
子のケアがうまくできず、子はまもなく衰弱死してしまいましたが、出産の経験はシジムにとって大きな一歩です。
2021年12月から再度、アクバルとの同居が行われています。出産・育児までできることを祈っています。
野生では、ほぼ見ることのできない幻の動物ユキヒョウ。
灰色の長い毛に短い手足、そして太いしっぽ。重たそうな外見に似合わず、とても身軽で跳躍力がピカイチ!
一度見ると好きにならずにはいられない、魅力的な動物です。
動物園に行ったら、ユキヒョウの尾や毛に注目して観察してみましょう。

以上、ユキヒョウのお話でした。
【参考】
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