ワオキツネザル【生態と特徴】ひなたぼっこ大好きなマダガスカルの動物
絶滅危惧種 ワオキツネザルの特徴・誕生から群れ生活、寿命までわかる記事
映画で大人気となったワオキツネザル。しま模様のしっぽをゆらし陽気におどるおちゃめな動物として描かれていました。
実際のところワオキツネザルたちはどのような生活を送っているのでしょうか?
この記事はワオキツネザルの生息地や名前の由来、繁殖から寿命までワオキツネザルの生態と特徴を徹底解説!
知っていると思わず言いたくなる「おもしろ・かわいい」ワオキツネザルの豆知識をお届けします。
ワオキツネザルとは?
霊長目キツネザル科ワオキツネザル属。
マダガスカルにしかいない輪尾なサル
アフリカの東に浮かぶマダガスカル島にのみ生息しています。乾燥した森からマングローブまでさまざまな場所に適応できる順応性の高い動物です。
体重3kgほどの小さな体ですが、体長より長いしま模様の尾が目をひきます。
群れのなかまと木の上で過ごすことが多く、ときに地上におり尾を高くあげて移動します。
おもに葉や花などの植物を食べるサルです。
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 マダガスカル島 2000頭
- 体長 40cm
- 体重 3kg
- 尾長 50cm
絶滅の危機にひんしています
ワオキツネザルの生息地は森林破壊により分断されました。
さらに食肉・ペット用の密猟がワオキツネザル減少に拍車をかけています。
ワオキツネザルが100頭以上確認されている分布域は8か所のみ。大半は保護区や国立公園に指定されています。
一方で群れの移動がないため遺伝子多様性に乏しく、増加の見込みは大きくありません。
2017年の調査において、ワオキツネザル生息数は2000~2400頭。2000年と比して95%減少したと報告されています。
ワオキツネザルは絶滅のおそれがきわめて高い動物(IUCNレッドリスト危機)です。近い将来、深刻な危機(CR)へと移行する可能性があると発表しています。
また、ワシントン条約附属書Ⅰに指定されているため、国際間取引はきびしく規制されています。
ワオキツネザルの形態
ワオキツネザルは毛やしっぽが長いため大きく見えますが、実際は体重3kgほどの小さなサルです。
- 体長 40cm
- 体重 3kg
- 尾長 50cm
全体的に灰~茶色のふわふわの毛でおおわれています。
顔や耳は白く、目の周りは黒。くっきりとした顔立ちです。
印象的なしま模様の尾がワオ「輪尾」の由来。しっぽは自分の体より長く50cm以上といわれています。
ちなみに英名は【Ring-tailed Lemur】です。
なぜ しっぽが「輪尾」なの?
ひときわ目をひくワオキツネザルのしま模様の尾。黒白の輪は13対ほど、先端は黒色です。
ワオキツネザルの名前の由来にもなった特徴的なしっぽ。その役割はいくつか知られています。
- コミュニケーションにつかう
- 居場所を知らせる
- なかまの区別をする
- 自己アピールする
- 防寒につかう
まず、仲間に居場所を知らせること。
マダガスカルでは敵をおそれる心配がないため、より目立つ「長い」そして「しましま」のしっぽになったと考えられています。
地上では尾を高くあげ、樹上では尾を垂らし、遠くからでもお互いを認識することができます。
また、尾ににおいをつけ、仲間の区別や自己アピールなどのコミュニケーションツールとして使います。
ときにはマフラーのように首やからだに巻きつけ、体温調節をおこなっています。
ワオキツネザルの丸いゆび
ワオキツネザルはおもに木の上で食事や睡眠をとる樹上性の動物です。
ゆび先は丸く、木にのぼったり掴まったりしやすい形状です。
一方で後あしの第2指(ひとさしゆび)には長く鋭い鉤状の爪がはえています。
これは、毛づくろいしやすいためと考えられています。
群れで暮らす動物にとってコミュニケーションは重要。ワオキツネザルのグルーミング(毛づくろい)は動物園でもよく見かける行為です。
ワオキツネザルの生態
キツネザルは樹上生活をする動物。ワオキツネザルも多くの時間を木の上で過ごします。
一方で、キツネザルのなかでは地上におりることが多く、尾を高くゆらしながら歩いたり、岩場をぴょんぴょん跳ねたりします。
食事はおもに植物(木の葉や花、果実など)ときに昆虫も食べます。
メスが強い!ワオキツネザルの群れ
ワオキツネザルの群れはメスが優位。数頭のちいさな群れから20頭以上のおおきな群れまで確認されています。
尾やグルーミングだけでなく、表情や声でもコミュニケーションをとりながら暮らしています。
縄張りを守るのはメスの役割。
ワオキツネザルの雌雄は外見上大きな差がありません。判別は難しいですが、強そうな方がメスかもしれませんね。
ワオキツネザルの戦い「臭さ」が決め手
ワオキツネザルの群れのオスには順位があります。
優位なオスはメスに近づくことが許されますが、弱いオスはメスに近づけず強いオスのあとを追うように行動します。
しかし、繁殖期になるとオス同士はメスをめぐる激しい争いをくりひろげます。
ワオキツネザルは1頭1頭ことなる「におい」を発します。
雌雄ともに体臭をはなちますが、オスは手首と脇下の分泌腺がメスより発達しています。自慢の長い尾に手首をこすりつける姿は、まさに香水をつけているようです。
ワオキツネザルの体臭はホルモンを含むと強烈になります。オスの場合は激臭であればあるほど健全で男らしいことを意味するといわれています。
発情の季節、ライバルに出くわしたオスのワオキツネザルはしっぽや手首を振りかざし自分の強さ(におい)をアピール!
一瞬にして勝敗が決まるというユニークな戦いです。
とはいえ、においで決着がつかない場合は取っ組み合いがはじまります。意外にもケガの絶えない動物のひとつです。
【YouTube】BBC Earthでワオキツネザルのメスをめぐる戦いをチェック!
日光浴|ワオキツネザルの体温調節
ところで、ワオキツネザルのこんなポーズ、見たことありませんか?
太陽にむかって体をひろげ、ひなたぼっこをしているワオキツネザルです。
体温調節が苦手なワオキツネザルは太陽の熱を利用して体をあたためます。安全が確保された動物園だから、ではなく、野生ワオキツネザルも日常的に日光浴をおこなっています。
動物園では天気の良い日におとずれるとワオキツネザルの日光浴を見れる確率アップです。連れ添ってひなたぼっこする姿に癒されます。
さむい季節には、愛知県・日本モンキーセンターや兵庫県・神戸どうぶつ王国等ストーブを設置し、暖をとるワオキツネザルが風物詩になっている動物園もあります。
ワオキツネザルの繁殖と寿命
ワオキツネザルの繁殖期は4~5月。優位なオスはメスと交尾することができます。
妊娠期間は約4か月。9月ごろ、出産のピークを迎えます。
マダガスカル(南半球)とは違い、日本(北半球)では10~2月が繁殖期。出産は春ごろです。
子育ては母親のみでおこないます。ワオキツネザルは通常1度に1子を産みますが、双子の出産も確認されています。
小さな赤ちゃん|ワオキツネザルの成長
おとなのワオキツネザルの体重はおよそ3kg。
一方、体重100g以下と非常に小さな赤ちゃんワオキツネザル。
ところが、外見はおとなとほぼ同じ。尾にも輪の模様があります。
生まれたばかりのワオキツネザルの赤ちゃんは母親のおなかや背中にしがみついて生活します。
2か月ほどたつと母親から離れ、4か月を超えるころにはひとりで動きまわるようになります。
ワオキツネザルの赤ちゃんの成長ははやいため、母親はつぎの繁殖期には発情がきます。
メスは2歳まで、オスは3歳までに性成熟をむかえます。
15年以上|ワオキツネザルの寿命
野生ワオキツネザルの寿命は15年ほど。
ただし、乳児死亡率が高いため誕生した子のおよそ7割が成熟する前に亡くなると考えられています。
遺伝子多様性にくわえ、子の成長率の低さがワオキツネザルの個体数回復をさまたげています。
飼育下のワオキツネザルは20年以上生きます。
日本最高齢だった高知県・のいち動物公園の「ジョン」山梨県・甲府市遊亀公園付属動物園の「チビタ」は34歳でした。
現在も30歳以上のワオキツネザルが何頭もいます。
マダガスカルの動物は減りつづけています
ワオキツネザルをふくむキツネザル科の動物たちはマダガスカル島にのみ生息しています。
むかしむかし大陸から切り離されたマダガスカル島。キツネザルは天敵が少ない環境で独自の進化をとげました。
ところが、たくさんのヒトが島に住むようになってからキツネザルの生活は一変。農地をつくるために森林を壊しはじめたのです。
結局、住みか(森林)や食べもの(植物)を奪われ、ほぼすべてのキツネザルが絶滅へと追いやられてしまいました。
ヒトがやってくる前は島の80%が森林だったマダガスカル島。2020年の調査では20%に減っていると報告されました。
ヒトが生きるために森林を破壊したものの、森がなくなったことにより川が氾濫したり地球温暖化による干ばつがおきたり。
森林だけでなく農地も荒れてしまい、おおくの島民が食糧難・貧困におちいっています。
そして「食べるため」「売るため」キツネザル密猟に手をそめてしまうのです。
マダガスカルの人々の生活苦がつづくかぎりキツネザル密猟はおわらないでしょう。
環境・動物保全だけでなく人道支援も動物を守ることにつながります。マダガスカル事業をおこなっている団体はたくさんあります。ぜひご覧ください。
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
ワオキツネザルの生活はイメージできましたか?
ひなたぼっこが大好きなワオキツネザル。丸いゆびやしましまのしっぽが愛らしい動物です。
森林破壊のため絶滅の危機にあるワオキツネザルですが、日本では50か所以上の動物園で会うことができます。
動物園に行ったらワオキツネザルの尾の動きやにおいにも注目してみてください。
飼育施設は「ワオキツネザルに会える・ふれあえる動物園リスト」でご確認ください。
以上、ワオキツネザルの豆知識でした。
【参考】
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