ハイエナの真実「強く賢い」生態と特徴|ハイエナに会える動物園
ハイエナの種類と特徴・群れや天敵、寿命などハイエナの魅力がわかる記事
みなさんはハイエナにどんなイメージを持っていますか?
獲物を横取りする「いやな動物」と思っている方が多いかもしれません。
でも、あなたは本当にハイエナのことを知ってますか?
今回のzoo zoo diaryは実は勘違いされがちなハイエナに注目!
ハイエナの種類、生息地から群れ(クラン)、狩り、繁殖などハイエナの生態と特徴を徹底解説!ハイエナの本当の魅力をお伝えします。
ハイエナの種類【4種】
食肉目ハイエナ科。
ビントロングやハクビシンが属す「ジャコウネコ科」から進化して生まれたと考えられています。見ためはイヌのようですがネコにちかい動物です。
現在4種、それぞれ独立した属に分類されています。
- 食肉目 Carnivora
- ハイエナ科 Hyaenidae
- ブチハイエナ Crocuta crocuta
- シマハイエナ Hyaena hyaena
- ブラウンハイエナ Parahyaena brunnea
- アードウルフ Proteles cristata
- ハイエナ科 Hyaenidae
2022年12月現在、ハイエナに絶滅のおそれはありません。
しかし、ブラウンハイエナとシマハイエナは繁殖可能な個体が推定1万頭以下。将来、絶滅の可能性がある動物(IUCNレッドリスト準絶滅危惧)です。
ブチハイエナ|斑点・大きい
黄土色の体毛に黒い斑点があることから名付けられたブチハイエナ。マダラハイエナとも呼ばれています。
ハイエナの最大種であるブチハイエナは体長1.6メートル、体重80kg以上にも成長します。
ブチハイエナはアフリカ・サハラ砂漠より南の地域に広く生息しています。サバンナや森林、山地などさまざまな地域で観察されています。
生息数は3~5万頭ほど。現在のところ絶滅のおそれはありません(IUCNレッドリスト低懸念)。
一方で、西~東アフリカにかけて、ヒトとの対立により多くのハイエナが死亡。全体的な生息数は減少傾向にあります。
日本で飼育されているハイエナのほとんどはブチハイエナです。
シマハイエナ|しま模様・たてがみ
クリーム色の体毛に黒いしま模様。背中に立派なたてがみが生えています。タテガミハイエナとも呼ばれています。
体長1メートル、体重50kgほど。ブチハイエナにつぐ大きいさのハイエナです。
サハラ砂漠より北や中東、インドなどに生息しています。草原や茂みを好み、人里の近くでも観察されています。
生息数は1万頭ほど。ヒトとの接触やエサ不足などにより、シマハイエナは減少しつづけています。将来、絶滅のおそれがあります(IUCNレッドリスト準絶滅危惧)。
現在日本でシマハイエナを展示している施設は2か所のみ。東京都・羽村市動物公園と富士サファリパークです。
ブラウンハイエナ|ふさふさの長い毛
かつてはシマハイエナと同属(シマハイエナ属)でしたが、2006年に独立属となりました。
ブラウンハイエナはその名の通り全体は茶色。カッショクハイエナとも呼びます。長い毛に覆われ、四肢にしま模様があります。
体長1メートル、体重40kgほど。ほそみのハイエナです。
アフリカ大陸南部の砂漠ややぶなど乾燥した地域に生息しています。
生息数は7千頭ほど。その約半数がボツワナで暮らしています。
個体数は維持されていますが、IUCNレッドリストは将来絶滅のおそれがある(準絶滅危惧)と評価しています。
現在、日本では飼育されていません。
アードウルフ|小さい・主食シロアリ
別名ツチオオカミ。ウルフ(オオカミ)と付いていますがハイエナです。
シマハイエナ同様クリーム色の毛に覆われ、胴体や四肢に黒いしま模様があります。
体長80cm、体重10kgほど。最も小さなハイエナです。
アードウルフの最大の特徴は食べもの。食肉目ですがシロアリを食べます。
長い舌でなめとり噛むことが少ないせいか、とても小顔。強靭な顎をもつワイルドなハイエナのイメージどはかけはなれています。
アードウルフはアフリカ東部とアフリカ南部に生息しています。多くは保護された区域の草原ややぶで暮らしており、個体数は維持されています。
IUCNレッドリストは絶滅のおそれはない(低懸念)と評価しています。
現在、日本では飼育されていません。
ハイエナの種類【まとめ】
ブチハイエナ
- 絶滅のおそれなし
- サハラ砂漠以南に広く生息
- 生息数 3~5万頭 減少傾向
- 最大種 体長1.6m 体重80kg
シマハイエナ
- 将来絶滅のおそれあり
- サハラ砂漠以北~インドに生息
- 生息数 1万頭 減少傾向
- 大きい 体長1m 体重50kg
ブラウンハイエナ
- 将来絶滅のおそれあり
- アフリカ大陸南部に生息
- 生息数 7千頭 安定傾向
- ほそい 体長1m 体重40kg
アードウルフ
- 絶滅のおそれなし
- アフリカ大陸東・南部に生息
- 生息数 不明 安定傾向
- 最小種 体長0.8m 体重10kg
ブチハイエナの生態と特徴
ひとくにハイエナといっても4種類。それぞれが、身体的特徴や生態をもっています。
ここからは日本で最も一般的なハイエナ「ブチハイエナ」を詳しく見ていきましょう。
クラン|ブチハイエナの群れ
単独でも群れでも活動するハイエナ。日中は茂みや穴ぐらで休み、夜になると活動的になります。
ブチハイエナとブラウンハイエナは「クラン」と呼ばれる群れを形成して生活しています。
ブチハイエナのメスは男性ホルモン(アンドロゲン)濃度が高く、メスの方が大きく成長する動物です。また、オスの生殖器のような陰部をもち偽陰嚢もあります。
群れ(クラン)のリーダーはメス。リーダー以外のメスもオスより優位な立場にあります。
メスハイエナはなぜ男性ホルモンがおおいの?
この答えはハイエナの群れの仕組みが関係します。
ハイエナはリーダーであるメスが群れを守らないといけません。
戦うための攻撃力や体格をえるために男性ホルモンの分泌量がおおくなりました。ハイエナの陰部は「攻撃性のあらわれ」とも考えられています。
リーダーはメス(世襲制)オスは弱小
ライオンはわが子でもオス(リーダー候補)であればプライドから追い出します。
しかし、ハイエナの群れでは一般にリーダーの娘が次期リーダーとなります。リーダーである母親から生きる術を学び、クランを引き継いでいきます。
リーダーの直系でないメスハイエナたちも生涯おなじ群れにとどまり、協力しながら生活します。
一方で成熟をむかえるオスはクランから追い出されます。そして、別の群れに加わります。
クランに加わったばかりのオスは、下位のオスのなかでもさらに最下位のあつかいを受けます。
オスは繁殖以外に必要とされない非常にシビアな社会です。
ハイエナは狩りが上手!クランの狩り
ハイエナは狩りはせずエサを横取りして生きていると思っていませんか?
イメージとは裏腹に、群れを成すハイエナは自分たちで狩りをすることが主。クランでかかれば狩りの成功率は7割ほどといわれています。
ハイエナは目、耳、鼻すべてが優れています。そのため、獲物探しは得意。体力もあるので、時速60kmでターゲットを追いつづけることができます。
高い身体能力に加え、知能も高いハイエナ。他の動物のエサをとらなくても食事に困ることはありません。
ただし狩りは体力をつかいます。そのため、他者の獲物を奪う様子も観察されています。
実は獲物の横取りはハイエナだけでなく多くの捕食動物で確認されている行為。ヒョウもライオンもおこなっています。
【You Tube】National Geographicでブチハイエナの狩りをチェック!
顎の強さ|ハイエナの噛む力は最強
ハイエナの強欲なイメージは残骸を食べることに由来するでしょう。
ハイエナの噛む力は哺乳類最強といわれています。硬い肉はもちろん、大きなスイギュウの骨も粉々にしてしまうほどの強さ。
ライオンやトラに比べると体も顔も小さいハイエナ。しかし、他の動物が手を付けられないものまで噛み砕く力を秘めています。
死骸に群がり死肉をむさぼる姿は決してかっこよこくないかもしれません。それでもハイエナの残飯処理はサバンナの清潔保持に必要不可欠!
死肉を食べるハゲタカやコンドルと同じように、大自然の掃除役として大切な存在なのです。
ハイエナの天敵と寿命
狩りの上手さや顎の強さもあり、ハイエナのサバンナでの順位は最上クラス。
ヒョウやチーターでさえ、ハイエナを見つけたら獲物をおいて逃げてしまいます。
つまり、ハイエナの敵はほとんどいません。いうならばライオンだけです。
ライオンとハイエナの関係とは?
ライオンとハイエナの生活圏は重なることが多々あります。
ライオンの縄張りにうかつに侵入すると、ライオンのオスに見つかってしまいます。当然、ハイエナは命を落とす可能性が高まります。
しかし、ライオンとハイエナはライバル関係。
ライオンに立ち向かうときもあれば、譲るときもあります。
狩りにおいてもハイエナの獲物をライオンが奪うときもあれば、ライオンの獲物をハイエナが奪うときもあります。
自然界において、獲物の横取りは卑怯ではなく生きるためのひとつの手法といえます。
出産で亡くなることが多い
メスハイエナの男性器のような陰部。日常生活に支障はありませんが、ハイエナを死に追いやる大きな原因となっています。
出産時、産道を兼ねているハイエナの陰部は大きく膨れあがります。しかし、胎児が細長い産道をとおる間に母親の皮ふは裂けてしまいます。
当然ながら死産率は高く、さらに母親も出産時の傷が原因で死亡することがあります。
多大な痛みと戦いながらハイエナは子孫をのこしています。
長生き!ブチハイエナの寿命
3年ほどでおとなに成長するハイエナ。
死産は多いものの、外敵はライオンのみ。幼獣の生存率は高いと考えられています。
体の大きさに反して寿命はおよそ20年と長め。
飼育下では40歳まで生きたという事例もあります。
ハイエナに会える動物園
現在、ハイエナは全国で15か所の動物園でしか飼育されていません。
シマハイエナを飼育している動物園は、東京都・羽村市動物公園と富士サファリパークのみ。その他はブチハイエナです。
- 円山動物園
- ノースサファリサッポロ
- 宇都宮動物園
- 大宮公園
- 千葉市動物公園
- 羽村市動物公園*
- 日本平動物園
- 富士サファリ*
- 天王寺動物園
- 池田動物園
- しろとり動物園
- のいち動物公園
- とくしま動物園
- 秋吉台サファリ
- アフリカンサファリ
*:シマハイエナを飼育している施設
ハイエナの赤ちゃん情報
香川県・しろとり動物園では、2018年から続々とブチハイエナの赤ちゃんが生まれています。現在は8頭のハイエナ家族が暮らしています。
しろとり動物園で生まれた「ヤミー」はその後、山口県・秋吉台サファリに移動。2021年、2022年と赤ちゃんを生み育てています。
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
他人の獲物を横取りする印象の強いハイエナ。真実の姿を知って、イメージが変わりましたか?
狩りが得意なうえに、サバンナの死骸を掃除してくれる働き者。ブサイクに描かれがちですが、実は可愛らしく賢い動物です。
日本ではあまり見かけることのない動物ですが、ぜひ注目してみてください。
以上、ハイエナの豆知識でした。
【参考】
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