絶滅危惧種とは?レッドリストの動物と動物園の役割

11/22/2018

動物に関する記事を読むと、よく現れる絶滅危惧種やレッドリストという言葉。

なんとなく読み過ごしている方が多いのではないでしょうか?

絶滅危惧種とは、絶滅のおそれがある動物のランクのひとつに過ぎません。レッドリスト自体も、ざまざまな機関から発表され、ひとつではありません。それゆえ、いくつもの定義や分類が存在します。

今回は世界と日本のレッドリストについて学び、動物や動物園の大切さを再確認しましょう。

長崎バイオパーク レッサーパンダ

国際自然保護連合のレッドリスト

IUCNレッドリストとは、国際自然保護連合( International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)、通称IUCNが作成した絶滅のおそれのある動植物の一覧です。

専門家の調査結果に基づき、植物や菌を含む野生の生物1種ごとの絶滅危機の程度を決めます。IUCNのレッドリストは、1年に2,3回更新されます。

絶滅種 Extinct(EX)

地球上からすでに絶滅した種。

カスピトラ、ジャワトラ、ニホンカワウソ、ニホンオオカミ、ニシクロサイ、フクロオオカミ、マンモス、メキシコハイイログマなど、およそ800種類。

はるか昔の野生生物の絶滅は、隕石衝突や環境変化、進化などによると考えられています。

一方、ヒトが発展した有史以降は、人間活動が原因となっています。乱獲や駆除目的の狩猟、外来種の持ち込み、生息地破壊など。

いま現在も、わたしたちはさまざまな動物に影響を与えています。

野生絶滅種 Extinct in the Wild(EW)

野生ではすでに絶滅した種。

シフゾウ、シロオリックス、ヒトコブラクダ、ハワイガラスなどおよそ60種類。

生息地における野生の個体が確認されなくなったとき、EWと認定されます。本来の生息地以外での野生個体や飼育下の個体は生存している状態です。

日本の動物園にいる野生絶滅種

1. シフゾウ

偶蹄目シカ科シフゾウ属。2008年より、EWと評価されています。

熊本市動植物園 シフゾウ
  • 大森山動物園
  • 多摩動物公園
  • 安佐動物公園
  • 熊本市動植物園
2. シロオリックス

偶蹄目ウシ科オリックス属。2000年より、EWと評価されています。

姫路セントラルパーク シロオリックス
  • 岩手サファリ
  • 那須サファリ
  • 多摩動物公園
  • 羽村市動物公園
  • 千葉市動物公園
  • 茶臼山動物園
  • 伊豆アニマルキングダム
  • アドベンチャーワールド
  • 姫路セントラルパーク
  • とくしま動物園
  • とべ動物園
  • 秋吉台サファリランド
  • アフリカンサファリ
3. ヒトコブラクダ

偶蹄目ラクダ科ラクダ属。2001年、EWと評価されました。

平川動物公園 ヒトコブラクダ

ヒトコブラクダは何千年も前から確保され、家畜として飼育されてきました。そのため、もともとアフリカに生息していたヒトコブラクダは、絶滅してしまいました。

  • 盛岡市動物公園
  • 群馬サファリパーク
  • ズーラシア
  • アドベンチャーワールド
  • 姫路動物園
  • 九十九島動植物園

絶滅危機種 Threatened

絶滅のおそれのある種。絶滅危機種は、その危機度からさらに3つに分類されます。

Critically Endangered(CR)近絶滅種

個体数が非常に少なく絶滅寸前の種

アムールヒョウ、イリオモテヤマネコ、オランウータン、クロサイ、クロザル、ゴリラ(マウンテンゴリラ除く)、シンリンゾウ、スマトラゾウ、スマトラトラ、ベローシファカなど、およそ2500種

Endangered(EN)絶滅危惧種

絶滅のおそれが最も高い種

アジアゾウ(スマトラゾウ除く)、アムールトラ、オカピ、ケープペンギン、サバンナゾウ、シロテテナガザル、ジンベエザメ、チンパンジー、マウンテンゴリラ、ワオキツネザルなど、およそ3800種

Vulnerable(VU)危急種

絶滅のおそれが高い種

インドサイ、カバ、キリン、コアラ、ジャイアントパンダ、チーター、ハシビロコウ、ビントロング、フォッサ、ホッキョクグマ、ライオン、ユキヒョウなど、およそ5600種

さまざまな国や地域で保護活動や繁殖活動が行われている種です。

レッドリストに絶滅危機種に指定された動物は、全部で約12000種類。

現在の状況が続くと、野生における個体数が減少し、いずれ絶滅するであろう動物たちが、これほど多いという事実。

例を見てわかる通り、動物園で見かける多くの動物が絶滅危機種に含まれています。わたしたちが身近に感じている動物たちのほとんどは、野生での生息数が減少しています。

八木山動物公園 スマトラトラ

準危急種 Lower Risk(LR)

絶滅危機種のいずれにも属さない種。準危急種は、さらに2つに分類されます。

Near Threatened(NT)近危急種

将来、絶滅のおそれのある種

アメリカバイソン、コウテイペンギン、ジャガー、ミナミシロサイ、ヤブイヌなど、およそ4000種

Least Concern(LC)低危険種

絶滅のおそれが少ない種

アメリカグマ、オグロヌー、カピバラ、カンガルー、ニホンザル、マントヒヒなど、20000種以上

準危急種に掲載された動物、とくに低危険種は、絶滅の可能性が少ない動物です。

ところが、保全の必要がないという意味ではありません。なかには、個体数が減少しているものもいます。

2008年には、低危険種(LC)とされていたエランドが、2017年、危急種(VN)と査定されました。

また、シロフクロウも2016年まではLCでしたが、現在はVNです。

上記のように、絶滅しないと考えられていた動物が、急激に減少することがあります。狩猟や生息地破壊、地球温暖化によるエサの不足などが原因とされています。

アフリカンサファリ バイソン

日本のレッドリスト

レッドリストというと一般的にIUCN作成のものをさします。一方、レッドリストはさまざまな国や機関でつくられています。

日本の環境省では、日本に生息する野生生物のレッドリストを公表しています。

IUCNのレッドリストとは、名称が異なりますので、要注意。区分や意味合いはほぼ同じです。

絶滅

IUCN絶滅種と同義。

エゾオオカミ、オキナワオオコウモリ、ニホンオオカミ、ニホンカワウソなど、計7種。

野生絶滅

IUCN野生絶滅種と同義。

現在、野生絶滅とされる種はいません。

絶滅危惧

IUCNの絶滅危機種と同様に、環境省が定める絶滅危惧はさらに3つに分類されます。

絶滅危惧ⅠA類

ごく近い将来絶滅する危険性が高い(CRに相当)

イリオモテヤマネコ、ジュゴン、ツシマヤマネコ、ニホンアシカ、ラッコなど、計12種

絶滅危惧ⅠB類

近い将来絶滅する危険性が高い(ENに相当)

アマミノクロウサギ、エチゴモグラ、オガサワラオオコウモリ、ケナガネズミなど、計12種

絶滅危惧ⅠⅠ類

絶滅の危険性が高まっている(VUに相当)

クロホオヒゲコウモリ、トウキョウトガリネズミ、ヤマワコウモリなど、計9種

準絶滅危惧

絶滅危惧に移行する可能性がある種。IUCN近危急種に相当。

エゾナキウサギ、シコクトガリネズミ、チョウセンイタチ、ツシマテン、トドなど、計18種。

環境省では、絶滅危惧種を守るために、生息環境を改善したり、保護活動を行ったりしています。

また、保護した絶滅危惧種の動物を、生息地に帰す取り組みも行っています。トキやコウノトリは、野生復帰が進められています。

レッドリストの意義

レッドリストは、自然界の動物がいかに危険な状態にあるのか、教えてくれます。

ヒトコブラクダのように野生絶滅やゴリラやサイのように絶滅寸前という、動物が置かれた現状を知ることができます。

ただの動物一覧として終わらせるのではなく、今のわたしたちにできることを考えてみましょう。

上質な動物の毛皮や装飾品、ペットショップで売られている希少動物は、いったいどこからやって来るのでしょうか。もしかしたら、密猟や違法取引で獲得したものかもしれません。

自然破壊や地球温暖化の原因はなんでしょうか。資源の無駄使いによるものかもしれません。ひとりひとりが節電やゴミ削減を意識することで、動物の未来が変わるかもしません。

動物にとって良いことは、環境にやさしいこと。わたしたちヒトにとっても大切なことです。

長崎バイオパーク ワオキツネザル

動物園の役割

動物園にいる人気動物、パンダやゴリラ、ゾウ、ライオン、トラなど多くの動物が絶滅危機種と査定されています。

現在、動物園にいる種が途絶えると、その動物を見ることができなくなる可能性があります。動物がいない動物園を回避するために、世界中の動物園で繁殖や保護活動が行われています。

繁殖活動

多くの動物園では、種を絶やさないよう繁殖活動に力を入れています。

動物の個体数が減少する中、動物の価格は上昇しています。動物購入費の増大は、動物園にとって重大な問題です。さらに、ワシントン条約により、商業取引が規制されている動物もいます。

絶滅が予想される動物に関しては、早期に繁殖活動を開始する必要があります。

新しい血統が入らない近親交配の状態が続くと、通常は排除されるような弱い遺伝子も受け継がれていきます。

その結果、生まれながらに奇形があったり、免疫が弱く病気になりやすかったり、寿命が短くなる傾向にあります。繁殖可能期以前に亡くなってしまうと、動物園の個体数は減少していきます。

そのため、動物園間では繁殖を目的に動物を貸し借りするブリーディングローンが盛んに行われています。商業取引ではないため、絶滅危惧種など希少動物も対象となります。

多様な家系を築くことが、将来の動物園の鍵のひとつです。

保護活動

動物園では、野生生物の保護活動も行っています。

救える命を救うとともに、近親交配を避けるための新たな血統として、大きな意義を持ちます。

絶滅のおそれがある動物の場合は、最終的に野生復帰させることが目標です。

国内の動物園でも、環境省のレッドリストに記載された動物の保護に取り組んでいます。

野生で保護されたツシマヤマネコやシマフクロウは、いくつかの動物園で飼育・展示されています。

その他、わたしたちの目に入らないところで飼育されている保護動物もいます。

ツシマヤマネコ エラブオオコウモリ
左:ツシマヤマネコ  右:エラブオオコウモリ

動物園は、わたしたちを楽しませる娯楽だけではなく、動物の保全や研究という重要な役割を果たしています。

今後も、貴重な動物が絶滅しないよう、動物園を応援しましょう。

以上、レッドリストのお話でした。

【参考】

日本動物園水族館協会

世界自然保護基金ジャパン

The IUCN Red List of Threatened Species

Animal Facts

Posted by zoo zoo diary