中国三大珍獣【ゴールデンターキン・キンシコウ・ジャイアントパンダ】特集!
みなさん珍獣というと、何を思い浮かべますか?
ジャイアントパンダ・オカピ・コビトカバは俗にいう世界三大珍獣です。なかでも人気度・知名度ともに高い珍獣はジャイアントパンダですね。
ジャイアントパンダの生息地である中国には、ほかにも珍獣がたくさん暮らしています。
zoo zoo diaryがとりあげるのは「中国三大珍獣」と呼ばれる動物ジャイアントパンダ・ゴールデンターキン・キンシコウ。
彼らはどこでどんな暮らしをおくっているのでしょうか?ほかの動物とのちがいなど生態と特徴をくわしく紹介します。
後半には中国三大珍獣に会える動物園を掲載中です。
中国三大珍獣とは?
中国は自国に生息する代表的な3種類の動物を「三大珍獣」と呼んでいます。
- ジャイアントパンダ
- ゴールデンターキン
- キンシコウ
中国は国家一級重点保護野生動物として、絶滅の危機にある動物を指定しています。指定された動物たちは、野生生物保護法のもと守られています。
ジャイアントパンダ
ジャイアントパンダは世界三大珍獣のなかで、というより動物界において不動の人気を誇る存在です。
生息地破壊や狩猟により減少したジャイアントパンダ。
この稀有で愛らしい動物を守ろうと、現在までに40か所ほどのジャイアントパンダ保護区が制定されています。
また、飼育や繁殖などの研究活動も行われています。
中国政府の努力の甲斐があり、ジャイアントパンダの生息数は増加傾向にあります。

ジャイアントパンダをもっと詳しく知りたい方は「ジャイアントパンダの生態と特徴」 「ジャイアントパンダの繁殖」をご覧ください。
ゴールデンターキン
中国の限定された地域の岩山や谷に生息するゴールデンターキン。
もともとの生息数の少なさに加え、環境破壊や狩猟により絶滅の危機に瀕している動物です。
IUCNレッドリストでは危急(VU)に指定されています。
ゴールデンターキンとは?
ターキンはウシ目(偶蹄目)に属するヤギ亜科ターキン属。
4つの亜種(3つの説あり)が知られており、いずれもヒマラヤ山脈や高原など標高の高いところで確認されています。
ターキンの一種である中国三大珍獣ゴールデンターキンは中国の秦嶺山脈に生息しています。
秦嶺山脈は自然豊かな山々、中国三大珍獣をはじめたくさんの動物たちが暮らしています。
- Budorcas taxicolor ssp. bedfordi
- 生息 秦嶺山脈の高地 5000頭
- 体長 150~200cm
- 体高 120cm
- 角長 50cm
- 体重 オス300kg メス200kg
体も角も大きい!ゴールデンターキンの形態
ターキンは非常に大きい動物。
とくにオスは大型で、体長2メートル、体重300kg以上に成長します。お顔も大きく、幅広で特徴的な鼻を持っています。
一方、体に対して四肢は短い傾向にあります。
スイギュウの角に似た形のターキンの角は長さ50cm以上。頭部の真ん中から両脇へと伸びる立派な角です。
輝く金色はオスだけ
寒さをしのぐため体毛は長いが、夏になると毛替わりします。
ゴールデンターキンは名前の通り、金色のように明るい体毛を持ちます。とくにオスに顕著に見られ、メスや子どもははクリーム色や茶色です。

フレキシブル!ゴールデンターキンの群れ
草食動物ですが、体の大きなターキンは群れでも単独でも生活することができます。
ゴールデンターキンの群れは季節ごとに変化します。ターキンの群れは、母親や子、若いターキンから成ります。
通常、成熟したオスは単独で行動します。
春になると300頭にものぼる大きな群れをつくり、4000メートル以上の高地へと移動します。このときに、塩分がつくられる場所で数日過ごすことが確認されています。
気温が下がり食料が乏しくなると、群れは20頭ほどの小さなグループに分裂します。そして、谷へと降りていきます。
季節ごとのターキンの移動は、必ず同じルートで行われます。
ゴールデンターキンは何を食べるの?
ターキンは早朝や夕方に活発。草や木などさまざまな植物を食します。
大きなターキンは、足が届く範囲であれば、高い樹木の葉や枝も食べます。ときには、力づくで木を倒して採食します。
草食動物は食事により塩分を摂取することができません。塩は、体液や腸内環境を維持するために欠かせない要素。
ターキンは移動を繰り返し、塩を摂取しています。
コミュニケーション能力が高い
普段は物静かなターキン。
時として音を出したり体勢を変えたり、独自のコミュニケーションを取ります。
ターキンは音を操る?!
何かを求めているときにはげっぷのような音、優位を示すときには威圧的な音を出します。
また、危険を予知したときには大きな咳をして、群れの仲間に注意喚起します。
繁殖期を迎えたメスは高い音を出しオスに知らせ、オスはメスの声に返答します。
オスがメスを巡って闘争する際には、怒鳴り声に似た大きな音を出し威嚇します。
ターキンの子は母親から離れると母親を呼びます。母親はその不安げな音に応えるように低くかすれた声を出し、子を自分のもとへと導きます。
さまざまな音を出すことにより、ターキンは互いにコミュニケーションをとっています。
体勢でアピール!
ターキンは、音だけでなく体を使って意思疎通を図ります。
オスは直立し首と顎をあげて優位を示します。また、横向きになり自分の大きさをアピールすることもあります。
一方で、頭を下げる姿勢は攻撃性を意味します。
寒さとゴールデンターキンの進化
ターキンの短い足と大きく2つに割れた蹄は、岩山を動きまわるために有利です。
通常はゆっくりとした動きをするターキン。
ところが、危険が迫ったときには足場の悪い斜面をすばやく移動することができます。
ターキンの大きな鼻は可愛いだけじゃない!
高山地帯に生息するターキンは、厳しい寒さをしのぐ術を持っています。
もちろん、分厚い冬毛は凍えるような風を防いでくれます。
そして、愛らしい大きな鼻にも秘密があります。
ターキンの鼻には大きな副鼻腔があります。鼻から吸った冷たい空気はその空洞で温められたのち、肺の中へと入って行きます。
つまり、ターキンは鼻を大きく進化させ、呼吸による体温の低下をふせぐことに成功しました。
ターキンは油をかく?!
ターキンは汗を分泌する汗腺がありません。
その代わりに、油分を含んだ物質を分泌します。油脂は水分をはじきます。簡単にいうと、ターキンはレインコートを着ているような状態。
そのため、ストームや霧の中でも濡れにくく、体温低下も防ぐことができます。さらには、夏の乾燥も和らげてくれます。
動物園では、ターキンがこすった壁や檻などに注目して見てください。付着したターキンの油性物質を発見できるでしょう。
ちなみに、この油は刺激臭を放ちます。ターキン展示場では異様な匂いが漂っていますが、ターキンの匂いなのでじっくり味わってみてください。
不思議なことにオスは油性物質を分泌しません。そのため匂いもありません。
オスのターキンは美しい黄金の毛のために、防水の仕組みを断念したのでしょうか?寒くないのか気になるところです。
ゴールデンターキンの繁殖と寿命
7月ごろ、秦嶺山脈に雪が降り始める前にターキンの繁殖期は訪れます。
別々に暮らすターキンの雌雄にとって、ターキンの尿に含まれるフェロモンが繁殖相手を探す重要な鍵となります。
そのため、ターキンは自分の尿を体に付ける習性があります。単独行動していたオスは、匂いを頼りにメスに近づきます。
晴れて妊娠したメスは、春の出産に向けて草木が生い茂ったエリアを探します。一般的に1度に1頭の子を産みます。
赤ちゃんは茶色だよ!
ターキンの赤ちゃんは体重およそ5kg、毛色は濃い茶色。山の中で保護色となります。
生まれて3日と経たないうちに、母親の後をついてまわるようになります。移動距離が長いターキンにとって、すぐに歩けることは非常に大切です。
また、ヒョウやクマはターキンを捕食するといわれていますが、体の大きいターキンを狙うことは稀。多くは小さな子どもがターゲットとなります。
ターキンだけでなく多くの草食動物は、捕食を回避するためにも自力での歩行が必須となります。
また、赤ちゃん特有の茶色の毛が目かくしとなります。
生後2か月ごろには離乳し、半年ごろには角が生えだします。年齢とともに毛深く、オスの体毛は明るくなります。
通常、母親が次の子を出産するまで、母子は行動を共にします。
ターキンの性成熟は約3年。
寿命は16年ほどですが、飼育下では20年生きることが確認されています。
キンシコウ
キンシコウはパンダやターキンと同じように国によって保護されている貴重な動物です。
IUCNレッドリストでは危機(EN)に指定されています。
キンシコウとは?
霊長目オナガザル科シシバナザル属。またの名をゴールデンモンキーといいます。
しずくのような形をした上向きの鼻が特徴的なシシバナザル。その鼻の形から、シシバナ(獅子鼻)と名付けられました。
現在、5種確認されていますが、茶や黒など一般的なサルと同じような体色を呈しています。
一方、シセンシシバナザルは明るい体毛を持ち、キンシコウと呼ばれています。
- Rhinopithecus roxellana
- 生息 中国中西部の山岳地帯 1.5万頭
- 体長 50~65cm
- 尾長 60cm
- 体重 オス15kg メス10kg
金色の毛と水色の顔|キンシコウの形態
メスは体長50cm、体重10kg程度。オスはメスよりかなり大きく、体重20kg以上の個体も確認されています。

雌雄ともに体長と同じくらいの長さのしっぽを持っています。
キンシコウの毛は金色というよりオレンジ色に近い、濃く鮮やかな色。体毛と対照的な青みがかった白い顔が印象的です。
厳しい寒さを耐え抜くため、顔以外は長い毛に覆われています。
一般的に成熟したオスの体毛はより明るく長め。
さらに、オスは立派な犬歯と口の両脇に小さなイボを持っています。
極寒の地に住むサル!
シシバナザルの中でも、ヒト以外の霊長目の中でも最も寒いところに生息するキンシコウ。
標高2000~4000メートルほどの地域で観察されています。積雪の時期には、少し低いところへ移動して生活しています。
高山の冬は厳しく、キンシコウは身を寄せあって寒さをしのぎます。
キンシコウは昼行性。おもに木の上で一日を過ごしていますが、地上に降りることも確認されています。
食べものの多くはは植物。ときにタンパク源として昆虫や卵などを食すこともあります。
群れも異色!キンシコウのコロニー
キンシコウは1頭のオスと、メスや子から成る家族で生活しています。通常、いくつもの家族が共存し、100頭前後の大きな群れを成します。
中国の研究により、ひとつのエリアに複数の群れが生息していることがわかりました。
群れ同士が対面したときには互いに別の方角へと向かい、争いを避けている様子が報告されています。
また、ゴールデンターキン同様、春になるとさらに多くの家族群が統合します。
ときには300頭以上の大群となり行動を共にします。これは、霊長目としては異例です。
さきほど述べたように、キンシコウは闘争を好みません。しかし、大きな声を出して威嚇する場合があります。
また、食料を発見したときにはキーキーと鳴きます。
その他にも声によるコミュニケーションは幅広く観察されています。
赤ちゃんは黄金じゃない?!キンシコウの繁殖
キンシコウは年中繁殖できますが、10月ごろにピークを迎えます。
妊娠期間はおよそ200日。春から夏にかけて通常1頭の子を出産します。
子育ては母親が行いますが、しばしば母親以外のメスが手伝うことも確認されています。
生まれたばかりの子は500グラムほど。
毛色は灰色で目立ちにくくなっています。成長とともにおとなの色に近づいていきます。
生後3週間ほど経つと、キンシコウの子は群れの中を動きまわり始めます。
3か月頃まで、母親とともに、仲間に見守られながら成長します。
キンシコウの性成熟は5歳以降。
成長したキンシコウは親から群れを追い出されます。そして自立し、成熟した個体は新たな家族をつくります。
キンシコウの寿命は?
高山に生息するキンシコウを観察するのは至難の業。そのため、野生キンシコウのデータは乏しいのが実情です。
飼育下での寿命は比較的長く20年を超えます。また、20歳ごろまでは繁殖可能だと考えられています。
キンシコウの敵
地上での天敵はヒョウやオオカミなど。危険を感じるとすばやく木にのぼり、逃げることができます。
ところが、樹上では猛禽類によって捕食されることがあります。
成体の被捕食率は低く、狙われるのは未熟な子ども。
危険を察知したキンシコウは、群れ全体で若い個体を守る習性があります。
子や母親の周りをオスたちが囲い、勇敢にも歯や腕を使い、敵の攻撃を防ぎます。非常に頼もしい存在です。
中国三大珍獣に会える動物園
3か所!ジャイアントパンダに会える動物園
2021年6月現在、日本では3か所の動物園で計13頭のジャイアントパンダが飼育されています。
- リーリー 力力(2005年生)
- シンシン 真真(2005年生)
- シャンシャン 香香(2017年生)
- シャオシャオ 暁暁(2021年生)
- レイレイ 蕾蕾(2021年生)
- エイメイ 永明(1992年生)
- ラウヒン 良浜(2000年生)
- オウヒン 桜浜(2014年生)
- トウヒン 桃浜(2014年生)
- ユイヒン 結浜(2016年生)
- サイヒン 彩浜(2018年生)
- フウヒン 楓浜(2020年生)
- タンタン 旦旦(1995年生)
上野動物園のシャンシャンは2022年6月までに中国に行く予定です。
王子動物園のタンタンは高齢となり、豊かな老後を送るために中国へ帰ることになりました。
しかし、COVID-19の影響により帰還できず、2022年末までに延長されています。
さらに、心臓を患い、王子動物園で治療に励んでいます。無事、体調が回復することを願っています。
3か所!ゴールデンターキンに会える動物園
日本では、現在3か所の動物園でゴールデンターキンに会うことができます。
- 多摩動物公園
- よこはま動物園ズーラシア
- アドベンチャーワールド
全国で3か所と限られていますが、計20頭以上のゴールデンターキンが飼育されています。
2019年3月には、和歌山県アドベンチャーワールドでオス2頭が、そして7月には多摩動物公園でオス1頭が誕生しました!
よこはま動物園ズーラシアでは、2019年に続いて2020年12月にもゴールデンターキンの赤ちゃんが生まれています。
たくましい落ち着いた成体とは異なる、活発で小さなターキンを見れるチャンスです。
機会がある方は、ぜひ訪れてみてください。

熊本だけ!キンシコウに会える動物園
現在、日本でキンシコウを飼育している動物園は熊本市動植物園のみ。
2016年熊本地震災害を受け、復興工事のため一時は非公開となっていたキンシコウ。2018年12月、全面開園に伴い、キンシコウ展示が再開されました!
- 父:パオパオ(29)*
- 母:ヘンヘン(27)*
- 長男:シンシン(21)*
- 次男:フェイフェイ(22)*
- 長女:ヨウヨウ(2004年生)
*死亡個体
1993年に中国の動物園協会と契約を結び、パオパオがやって来ました。その後ヘンヘンも来園。繁殖に成功し、6頭の子が生まれました。
2018年に両親と長男が相次いで亡くなりました。とても悲しい出来事でした。
そして2021年8月、次男のフェイフェイが死亡。
ついに日本のキンシコウはヨウヨウ1頭だけになりました。
中国国内で丁重に扱われているキンシコウ。新たな個体をゆずりうけるのは容易ではありません。
日本でキンシコウが見られなくなる日はもうすぐでしょう。
熊本市動植物園のキンシコウは別記事で紹介しています↓

国家一級野生生物として保護されている中国三大珍獣。
彼らの最大の敵はわれわれヒトです。
狩猟や生息地破壊により、その数は減少しました。保護区や法律がつくられた今でも密猟が行われています。
また、人間活動による開拓や気候変動の影響で森林破壊や食料不足はつづいています。
これは中国三大珍獣だけの話ではなく、ほとんどすべての動物にってヒトが天敵となっています。
現在は多くのヒトが今までの過ちをただし、保護や研究に尽力しています。
ジャイアントパンダだけでなく、ゴールデンターキンとキンシコウについて興味を持っていただけましたか?
今度動物園に行ったら、世界三大珍獣だけでなく中国の三大珍獣にも注目してみてください。
以上、中国三大珍獣のお話でした。
【参考】
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