象の耳と鼻は聞く嗅ぐだけじゃない!ゾウの体温調節【生態と特徴】
耳・鼻の大きさ、寝相や寿命などゾウのなぜ?にお答えします
室町時代に初めて日本の地を踏んだゾウ。それ以来、長きにわたって人を魅了し続けています。
さて、ゾウの特徴は?
と聞くと、多くの方が「大きな耳と長い鼻」と答えるでしょう。
では、なぜゾウの耳が大きく鼻が長いのか、その理由を答えられますか?
今回のzoo zoo diaryは、意外と知られていないゾウの耳と鼻に注目!
ゾウの耳と鼻には、音を聞いたりにおいを嗅いだりする以外の役割があります。それを理解すると先の質問に簡単に答えられるはずです。
また、ゾウの群れや生活、繁殖・寿命などゾウ好きなら知っておきたいゾウの生態をご紹介します。
気になっていたゾウの疑問をどんどん解決していきましょう!

本記事ではゾウの生態と特徴を紹介しています。ゾウの種類を知りたい方は「アフリカゾウとアジアゾウ!象の種類、違いと見わけ方を学ぼう」をご覧ください。
ゾウとは?
長鼻目(ゾウ目)ゾウ科の動物。
陸上最大の動物であるゾウは、体長6メートル、体高3メートル、体重は5トン以上。
長い鼻と大きな耳が特徴です。
ゾウの種類|アフリカゾウとアジアゾウ
アフリカ大陸に生息するアフリカゾウと、インドやスリランカ、インドネシア等に生息するアジアゾウにわけられます。
一般に、アフリカゾウの方がアジアゾウより大きい傾向にあります。
- サバンナゾウ
- シンリンゾウ(マルミミゾウ)
- インドゾウ
- スリランカゾウ(セイロンゾウ)
- スマトラゾウ
- ボルネオゾウ
ゾウは群れで暮らします
ゾウは、年長のメスをリーダーとする群れで暮らしています。
群れは、さまざまな年齢層のメスとその子どもたちから成ります。成熟を迎えるオスは群れを離れ、単独生活を送ります。
草原や森林など植物や水のある場所を移動しながら生活するゾウ。
行動範囲は非常に広く、毎日20kmほど歩きます。さらに雨量の少ない乾季には、エサや水を求めて100km以上歩きまわります。
また繁殖期のオスは、メスを求めて200km以上移動したと報告されています。
ゾウの食事はバラエティ豊か
動物園やテレビ番組などで見かけることの多いゾウ。草を食べる草食動物であることは、多くの方がご存知だと思います。
ゾウは草だけでなく、木の葉や根、樹皮、果物などを食べます。その食性は多様で、150種類以上の植物を食べると報告されています。
大きなゾウのエネルギーを満たすには、1日あたり100kg以上の植物と、50リットル以上の水を必要とします。
水が豊富な飼育下では、200リットルも水を飲むことがあります。

ゾウの繁殖|赤ちゃんゾウは体重100kg!
ゾウの妊娠期間は22か月!2年に迫る長さです。
母親は群れの仲間に見守られながら、立ったまま出産します。通常、子は1頭です。
お腹の中に長くいた赤ちゃんゾウは、生まれながらに体長1メートル、体重100kg以上と巨大。そして、数分後には立ちあがり、数時間後には歩きだします。
たった2日間でゾウの赤ちゃんはみるみる成長。
出産のために移動を控えていた群れは、再び歩き始めます。群れの皆が赤ちゃんゾウに合わせてゆっくりと行動し、植物の知識や道など生きる術を教えます。
強くたくましく、絆の深い動物です。
ゾウの母乳は脂肪に富み、牛乳の100倍のたんぱく質を含みます。この栄養満点のゾウミルクを毎日10リットルも飲み、赤ちゃんゾウはぐんぐん成長します。
ゾウは生後4か月ごろから草を食べ始めます。
しかし、完全に離乳するのは約2歳。その頃には体重800kgほどですが、まだまだおとなゾウに比べると愛らしい子ゾウです。

ゾウの寝相と睡眠時間
ヒトの睡眠時間は7~8時間。一般的に横になって眠ります。
では、ゾウはどうやって寝るかご存知ですか?
なんと立ったまま寝ます。睡眠時間はたったの2時間程度。
ゾウは大きな体を維持するため、1日に100kg以上の食事と50リットル以上の水を摂取しなければなりません。
採食や水分補給のための移動だけでなく、食事そのものにも時間がかかります。
結果、睡眠という行動が限られたのだと考えられます。
ゾウは立ったまま寝ます!
多くの動物は体を地面に伏せて休息をとります。
一方、おとなのゾウは基本的に立ったまま寝ます。

体重5トンのゾウが横になると、片側に莫大な圧力がかかります。
また、体を起こすために大きな力が必要となります。ときには立つことができなくなり、そのまま自分の体重で圧死してしまいます。
つまり、ゾウにとって横臥は諸刃の剣といえます。
飼育下ではゾウを立たせる訓練や装置の設備を行い、長時間ゾウが横にならないよう注意しています。
野生では長旅の疲労がたまっているとき等、横になって休むゾウの群れが確認されています。
ちなみに成長過程である子ゾウは、しばしば横になります。おとなの1/10ほどの体重の子ゾウたちは、身軽に起きあがることができます。
そのため、体力温存や休息のメリットの方が大きいと考えられます。
ゾウの寿命は短い?長い?
体の大きな動物は長命の傾向にあります。もちろんゾウも長寿動物として知られています。
一般的に、飼育下の動物は捕食や飢餓の危険がありません。そのため、野生より長生きする傾向があります。
しかし、ゾウはその逆。
野生ゾウの寿命は70~80歳。動物園のゾウの約2倍長い、という研究結果が発表されています。
自然界において、ゾウは一日中エサや水を求めて移動する動物。
どんなに広い施設でも、ゾウにとっては狭く息が詰まる思いでしょう。動物園のゾウは、運動不足やストレスに悩まされています。
日本のご長寿ゾウたち
推定69歳!アジアゾウの日本最高齢
2016年、東京都・井の頭自然文化園のはな子は、国内最高齢69歳でその生涯を終えました。
現在は、多摩動物公園にいるオスのアヌーラ(推定1953年生)が日本で最も高齢のゾウです。2022年に故はな子の記録を更新します。
視力の衰えがあるものの、2022年現在も現役!午前もしくは午後のみですが、放飼場で会うことができます。
アヌーラの放飼は「東京ズーネット」に掲載されています。
アジアゾウのはな子とアヌーラは、野生と同じくらい長生きです。エサや飼育方法など長寿の秘訣が共有され、飼育下ゾウの健康寿命が延びることを願います。
推定57歳!アフリカゾウの日本最高齢
2022年3月、日本最高齢のアフリカゾウである上野動物園のアコ(メス)が推定57歳で亡くなりました。
現在は仙台市・八木山動物公園のメアリー(推定1966年生)が最高齢のアフリカゾウです。
ゾウの耳が大きい・鼻が長い理由
ゾウ最大の特徴はもちろん、大きな耳と長い鼻。だれしもがゾウを描くときに意識する部分ですね。
さて、ゾウの耳と鼻はゾウの日常にどのように関わっているのでしょうか?音を聞いたり匂いを嗅いだりするだけでしょうか?
なぜゾウの耳が大きく、鼻が長く進化したのか、その役割を考えてみましょう!
バスタオルの大きさ!はがきの薄さ!ゾウの耳
顔を覆うほど大きなゾウの耳。幅1メートル、長さ1.2メートル以上に達します。
耳だけでバスタオルほどの大きさとは、ゾウがとてつもなく大きな動物だと改めて感じますね。

大きさばかりが取り上げられがちなゾウの耳。実は、とっても薄いのが特徴です。
ゾウの皮膚は分厚く、脚や背中では3cmもの厚さがあります。
一方、耳は約0.2mm。ハガキ程度の薄さしかありません。
血管がいくつも浮き出た耳を見ると、皮膚の薄さが想像できるでしょう。
なぜゾウの耳は大きくて薄いの?
暑いとき、ヒトもゾウも血流を高め放熱します。
ゾウの耳の血管は皮膚表面に近いため、より熱を外に逃がしやすいというメリットがあります。
耳が大きければ大きいほど血管が多くなり、放熱量が大きくなります。
つまり、暑い季節を乗り越えるために、ゾウは耳を大きく薄く進化させました。
しかし、皮膚の薄さは皮膚の脆さ。注目して見ると、耳が欠けたり切れたりしています。

また、寒いときは体温の低下を招いてしまいます。
気温が低い日、ゾウは耳をピタッと体に付けて、熱を逃がさないように工夫しています。
ゾウの鼻は万能!
鼻、鼻と呼ぶゾウの鼻。口元をよく見ると、鼻の付け根は口とつながっています。
実は、長いゾウの鼻は上唇と鼻がくっついて伸びたもの。鼻でもあり唇でもあるのです。
なぜゾウの鼻は長いの?
ゾウの鼻は非常に器用で、ゾウの生活で嗅覚以外の働きをしています。
- 食事のため
- コミュニケーションのため
体が大きくなればなるほど、動きが制御され地面との距離は遠くなります。体重の重い動物にとって、座ったり伏せたりするのは、一苦労。
その不便を解決するために、ゾウの鼻は進化しました。
ゾウの鼻は10万以上の筋肉で構成されており、骨はありません。莫大な筋肉のおかげで、ゾウは自由に鼻を動かすことができます。
ゾウは鼻で地面の草や高い木の葉をとったり、水を飲んだりします。ゾウの鼻は手と口の役割を担っています。

さらに、鼻先には指のように動く突起(指状突起)やセンサーとなる感覚毛があります。
ゾウの鼻は小豆サイズのものをつかむことができ、触れるだけで物体を認識することもできる優れものです。
たくさんの植物を食べたり大移動したりするゾウの生活に大いに寄与しています。
また、ゾウの鼻はコミュニケーションツールの役割を果たしています。
わたしたちがボディタッチをしたり握手をしたりするように、ゾウは鼻で相手をさわったり、鼻と鼻を合わせたりします。

ゾウはイヌより鼻が利く!
もちろん、嗅覚器としても優秀。
ゾウは、嗅覚が優れた動物として有名なイヌの2倍の嗅覚受容体を持っています。
どれほどゾウの鼻が良いかというと、はるか遠くの水の匂いを嗅ぎとり、その場所に辿り着けるほど。水のない乾季には、地下水を掘り当てることができます。
いくら匂ってもヒトに水の匂いは追えませんよね。恐るべき能力です。
ゾウいるところに水あり。ゾウは自分を潤すだけでなく、野生動物のオアシスをつくってくれるのです。
また、ヒトを民族単位で嗅ぎわけることができ、狩猟民族を避けて行動していると報告されています。
トレードマークでもあるゾウの長い鼻は、何役もこなす非常に重要な器官です。
ゾウの体温調節×鼻と耳
ゾウ最大の特徴である大きな耳と長い鼻は、体温を維持するためにも活躍しています。
泥浴び・水浴び|虫や熱から皮膚を守る
ゾウは器用な鼻を使って砂や泥、水をとり、体にかけます。
これを砂浴びや泥浴び、水浴びと呼びます。
野生だけでなく飼育下の個体も行う、ゾウの習慣です。これらの行為は、体についた虫を除去するためと考えられています。
また、強い日差しから皮膚を守り、暑さを和らげる効果もあります。泥は保湿作用が高く、皮膚を乾燥から防いでくれます。
ゾウは長い鼻を自在に動かし、おなかにも背中にも砂や水をかけることができます。

ダイナミックな泥浴びや水浴びは、ゾウの大きさや器用さを感じられます。加えて、口角が上がり笑っているような表情を見せてくれる、貴重な瞬間です。
外で暮らす動物たちにとって、寄生虫や皮膚の病気は命にかかわる重大な問題。その分、泥浴びや水浴びは生きていくために大切な習慣といえます。
もちろん、水や泥には体温を下げる効果もあります。
暑い夏の日の動物園では、プールに入ったりホースで水をかけられたりしているゾウを見かけます。野生のゾウも同じように水浴びをして体温調節を行います。

耳運動|放熱をコントロール
ゾウたちは、いったいどのようにして暑い日々を乗り越えるのでしょうか?
答えは、ゾウおなじみの耳の運動。
ゾウが日常的に耳をパタパタと動かすのは、体温を下げるためです。
ゾウの耳は薄く、血管が皮膚表面に近いため、より放熱しやすい構造になっています。さらに、耳の裏側には血管がたくさんあります。
耳を動かし風を起こすことにより、血管を通して熱を発散。その結果、体を冷やすことができます。
ゾウの体温はヒトとほぼ同じ、36~37度。
当然、外気温が高くなると体温も上昇します。暑いと感じる温度もわたしたちといっしょ。猛暑日には頻繁に耳をパタパタしてます。

ゾウは汗かくの?
驚くことに、ゾウには汗腺がありません。
つまり、汗はかきません。というか、かけません。
わたしたちは、発汗により体温調節を行います。なぜ、ゾウにはその機能がないのでしょうか?
ゾウに汗腺がない理由
2トン以上の体重を持つゾウ。ところが、体重当たりの体表面積は、他の動物に比べると非常に小さいです。
例えば、体重2トンのネズミがいるとしたら、ゾウのおよそ18倍大きい体を持つ計算になります。想像できませんが。それくらいゾウの体表面積は小さいのです。
ネズミなど小さな動物は体重当たりの体表面積が大きいので、うまく放熱し汗の量も少量で済みます。
一方、体の大きなゾウは小動物の反対。
もしもゾウの皮膚に汗腺が存在したら、放熱するためにゾウはずっと汗を流さないといけません。大量の汗をかくと、それ相応の水分が必要になります。
便利な社会で生きているヒトは、汗をかくたびに水分を摂取できます。しかし、自然界における水分確保は容易ではありません。
ゾウにとって発汗は、体温調節のメリットより水分喪失のデメリットの方が大きいのです。
汗をかくことが自然なヒトにとって、汗腺がないことは不思議ですよね。

参照元:https://en.upali.ch/skin/
ゾウに会える動物園
現在日本では30か所以上の動物園がゾウを飼育・展示しています。
施設名順に掲載しています。
- 秋吉台サファリ
- 安佐動物公園
- アドベンチャーワールド
- アフリカンサファリ
- 市原ぞうの国
- 伊豆アニマルキングダム
- 到津の森公園
- 岩手サファリパーク
- 上野動物園
- 宇都宮動物園
- 王子動物園
- 大森山動物園
- 岡崎市東公園動物園
- 沖縄こどもの国
- おびひろ動物園
- 金沢動物園
- かみね動物園
- 京都市動物園
- 熊本市動植物園
- 群馬サファリパーク
- 多摩動物公園
- 千葉市動物公園
- 東武動物公園
- 徳山動物園
- とべ動物園
- 那須サファリパーク
- 東山動植物園
- 姫路動物園
- 平川動物公園
- フェニックス自然動物園
- 福山市立動物園
- 富士サファリ
- 円山動物園
- 盛岡市動物公園
- 八木山動物公園
- よこはま動物園ズーラシア
ゾウの種類、種類別の展示施設に関しては下記事に掲載しています↓

誰もが知っている長い鼻、大きな耳と体を持つゾウ。
ゾウの特徴的な体には、興味深い役割や仕組みがあることを紹介しました。
学んだことを実際に確認できることが、動物園のおもしろさのひとつです。ぜひ細かいところまで注目して、動物観察を楽しんでください。

以上、ゾウの豆知識でした。
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