ウンピョウに会いたい!ヒョウとは違う「ウンピョウ」の生態と特徴
皆さんウンピョウって聞いたことがありますか?
いったい何のことか想像もつかないかもしれません。
動物園で見かけることが無く、かなり知名度が低い動物かもしれません。
ウンピョウはアジアで暮らすネコの仲間。ヒョウともユキヒョウとも違う種類です。
今回のzoo zoo diaryは知らないだけで超魅力的な動物ウンピョウを特集!
ウンピョウの生態と種類、ほかのネコとの違いや特徴、飼育施設などを紹介します。

ウンピョウ|Clouded Leopard
食肉目ネコ科ウンピョウ属。
漢字で書くと「雲豹」。
特徴的な模様が雲に似ていることが名前の由来です。不定形でふたつと同じものがない模様は、ウンピョウ最大の魅力といえます。
ヒョウ【Leopard】という名が付くものの、ウンピョウ属は500万年以上前に現ネコ科の共通祖先から分化しました。
ヒョウやライオンよりずっと前から存在し、古代ネコの面影を残すと考えられています。
ウンピョウの生息地はネパール、インドなどの南アジアからタイ、インドネシアなどの東南アジア。
とくに熱帯雨林を好みますが、低木林や草原にも出没します。
- 食肉目 Carnivora
- ネコ科 Felidae
- ウンピョウ属 Neofelis
- Neofelis nebulosa
- Neofelis diardi
- IUCNレッドリスト VU
- CITES Appendex Ⅰ
ウンピョウの生息数は、森林破壊や密猟により減少傾向。中国やベトナムでは絶滅間近と推定されます。
IUCNレッドリストはウンピョウを絶滅の恐れが高い危急(VU)と評価。ワシントン条約では附属書Ⅰに掲載され、輸出入が禁止されています。

ウンピョウの種類
かつては1種だと思われていたウンピョウ。
遺伝子研究が進み、大陸に生息するウンピョウとインドネシアに生息するウンピョウは別種であることがわかりました。
- Neofelis nebulosa
- 生息 南~東南アジアの森林 5000頭
- Neofelis diardi
- 生息 インドネシアの森林
- スマトラ島 1000頭
- ボルネオ島 4000頭
スンダウンピョウは2006年に同定された新しい種類です。
インドネシアやマレーシア等を含む島々【Sunda Islands】が起源。
離島に対してユーラシア大陸本土に生息するウンピョウを【Mainland】と呼ぶことにしました。
海水面上昇や火山活動により、陸路が閉ざされたあるいは泳げなくなったため、2種は別の環境で進化したと考えられています。
スンダウンピョウはタイリクウンピョウより毛色が暗く体が小さいといわれています。
しかし、まだまだ2種の判断材料は集まっていません。今後の研究に注目です。
ウンピョウの形態
全体は黄~灰褐色のウンピョウ。
胴には黒い縁取りの大柄が、四肢や腹には黒い斑点があります。首~背、目の横には黒い筋状の線があり、尾の模様は輪っか。なんとも複雑な模様です。
ウンピョウはヒョウやユキヒョウよりも小さなネコ科動物。
体重は15kg前後しかありません。オスのほうがメスより大きく、20kgを超える個体もいます。
- 体長 80~100cm
- 尾長 70~90cm
- 体高 40cm
- 体重 オス18kg メス11kg
ウンピョウは吠えることができず、大型ネコとは違います。むしろイエネコのようにゴロゴロ鳴いたり、短く高い声を出したりします。
しかしながら狩りの様子や体格が異なることから、小型ネコともいえず「中型のネコ」といわれています。

ウンピョウの生態
ウンピョウに関する情報の多くは動物園由来。
熱帯雨林の木の上にいる野生ウンピョウの観察は非常に難しく、その生態は今なお謎に包まれています。
ウンピョウは夜行性?
アジアの森林に生息するウンピョウは、トラやヒョウと分布域が重なります。
ビッグキャットに比べると小さなウンピョウは、群れを成さずひっそりと樹上で生活しています。
さらに夜間に行動することで、他の肉食動物との接触を避けています。
一方、競合相手のいない地域では日中に活発。さらには地上で過ごすことが報告されています。
つまり、ウンピョウは日夜問わず活動でき、木の上でも土の上でも生きていける動物。
本当のところウンピョウは、暖かい昼間に狩りをしてそのまま食べて寝る、という生活がしたいのでは?生き残るために樹上性に、そして夜行性になったのかもしれませんね。
ウンピョウの狩りと食事
ウンピョウは雌雄ともに単独行動を好みます。狩りも当然1頭で行います。
樹上にいることが多いウンピョウ。
ところが、狩りの場はほとんど地上であることがわかってきました。
おもな獲物は、鳥やリスなどの小型動物。ときにはシカやイノシシなど大きな動物を狩る様子も確認されています。

通常、ライオンなどの大型ネコ科動物は首や鼻をおさえ獲物を窒息させます。
食事は基本、木の上でとります。
野生における狩りの記録が少ないため、どのようにウンピョウが獲物を仕留めるか明確ではありません。
一説によると、ウンピョウは鋭く長い牙を首に突き刺し、神経や血管を攻撃。獲物をほぼ即死させる技術があると考えられています。
ウンピョウの繁殖と成長
ウンピョウは2歳ごろ性成熟を迎えます。
メスの発情は1月に1回1週間ほど。およそ3か月の妊娠期間を経て、2~3頭の子を出産します。
ウンピョウは雌雄差があり、オスはメスの2倍近く大きく育ちます。
そのため、交尾を求めるオスがメスをケガさせることがあります。最悪の場合メスは死に至ります。
飼育状況下では幼いころに面識がある個体同士の方が、繁殖に成功すると報告されています。
赤ちゃんの体重は200グラム以下。ライオンの子と同じように、目が見えず歩けない弱弱しい状態で誕生します。
小さな小さなウンピョウですが、パウ(足裏)が大きく立派。雲模様はまだなく、目の横に入った黒い線がウンピョウと特徴づけています。
約2週間後に目が開き、3週間後には歩き出します。このころ歯が生えてきます。
ウンピョウの赤ちゃんがお肉を食べ始めるのは生後7週間以降ですが、3か月ほどは母乳を必要とします。
生後6か月経つころには、美しいウンピョウの模様ができあがります。
子ウンピョウは母親から狩りをはじめとする生きる術を学びます。そして2歳を迎えると親元を離れていきます。
ウンピョウの寿命
ウンピョウの寿命は比較的長く、飼育下では15年ほど。なかには20年以上生きた個体も確認されています。
研究が乏しく不確かですが、野生ウンピョウの寿命は13年前後と考えられています。
ウンピョウの特徴|ヒョウとの違い
ヒョウとは違う進化を遂げたウンピョウ。
あらゆるところにヒョウ属とウンピョウ属の違いは隠されています。
木登りの達人!あしとしっぽ
ヒョウを含む多くのネコ科動物は木に登ります。そのなかでもウンピョウはとくに木登りを得意とします。
ウンピョウの体を見ると、短い四肢と大きなパウ(足裏)が目立ちます。
樹上で安定感を得るため、短くどっしりとした四肢と幅広のパウへと進化しました。
そのためヒョウのようにスタイルが良いとはいえず、胴長短足の印象です。
ウンピョウは足首の骨が柔らかく、ぐるりと回すことができます。
爪が上向きになるため、安全に木を下れるうえにぶら下がることができます。これは、ヒョウにはできない動きです。
また、ウンピョウは体に対して最も長い尾を有するネコ科動物です。

木の上をぴょんぴょん動きまわるリスザルに代表されるよう、樹上生活動物に長い尾は欠かせません。バランスをとる役割を果たしています。
ウンピョウは優れたバランス感覚と安定した四肢のおかげで、簡単に樹上を行き来することができるのです。
鋭い牙と大きなくち
ウンピョウの特徴は顔にもあります。それは大きな口と牙。
ウンピョウは顎の可動域が広く、大きく口を開けることができます。
ライオンの口の開きは65度ほど。ライオンのあくびを見ると、口がとてつもなく大きく開いているように見えます。
対するウンピョウの口の開きは、なんと100度!ライオンよりはるかに大きく開けることができます。
また、牙の長さは約5cm!10倍ほど体の大きいトラの牙と同じくらいとは驚きです。
ウンピョウは口も大きく牙も長いため、獲物の首に牙を刺せるのです。

ウンピョウの瞳
通常、大型ネコ科動物はまん丸の瞳をしています。暗いところでも明るいところでも丸のまま、大きくなったり小さくなったりします。
しかし、ウンピョウの瞳孔は縦長。大きくなっても丸にはならず、小さくなってもイエネコほど細くはなりません。
実際に瞳をまじまじと見ることは難しいので、あとから写真をチェックしてみてくださ。

タイにおけるウンピョウ繁殖基地であるカオ・キアオ動物園【Khao Kheow Open Zoo】
後肢の動きや長い牙、大きな口などウンピョウの特徴を確認できるおすすめ動画です↓
ウンピョウの脅威|森林破壊と密猟
ウンピョウは2種合わせて1万頭ほど。生息地が限られ、絶滅が危惧されています。
そのおもな原因は人間活動。
- 森林破壊
- 密猟
農地開発のため森林が壊され、ウンピョウの生息地は分断されてしまいました。
繁殖相手や獲物が見つからず、子を残せなかったり衰弱死したり、ウンピョウの個体数が増える見込みは多くありません。
また、密猟も大きな問題。
一部地域では食用のためウンピョウが乱獲されています。
さらに、服飾用に毛皮、医療用に歯と骨がターゲットとなっています。
保全活動が進められていますが、法整備後の現在も密猟は絶えません。
動物を守るためには地域住民の協力が必要不可欠。保全団体等がウンピョウと彼らを取り巻く環境を教授し、地域の関心を高めています。

ウンピョウに会える動物園
2022年4月現在、日本では1か所の動物園でウンピョウを展示しています。
よこはま動物園ズーラシア
ウンピョウに会えるのはズーラシアだけ。現在3頭飼育しています。
- アニル(2002年)
- スパイダー(2012年生)
- ブー(2012年生)
メスのアニル。2002年生まれ、2005年にイギリスから来日しました。
2022年に20歳という超高齢になるアニル。ゆっくりしていることが多いようですが、まだ現役で展示されています。
ウンピョウの丸い目のせいか、まったく年齢を感じさせません。これからも健やかに過ごせますように。
変わってスパイダーとブーは、2012年にシンガボール動物園で生まれた双子です。
2015年に繫殖目的でやって来ました。
しかし、現在はきょうだいしか繁殖相手がいません。
ズーラシアは2012年アニルに対して人工授精を行っています。その際、冷凍保存された精子を利用していました。もしかしたら今回も人工的に繁殖を行うかもしれません。
仮にスパイダーとブーが仲が良いのであれば、血縁関係にはありますが、自然繁殖の方がリスクは少ないのでは…
限られた個体で命をつなぐのは簡単ではありません。今後の動向に注目です。
【リンク】よこはま動物園ズーラシア公式ホームページ
のいち動物公園にウンピョウはいません
2021年12月、高知県立のいち動物公園で飼育されていたオスのリュウが死亡しました。
リュウはアニルの弟です。2009年に高知県に来て以来の人気者。18歳と長生きでした。

さて、ウンピョウはどんな動物でしたか?
ヒョウのように尾が長かったり狩りをしたり、はたまたイエネコのような瞳だったり鳴き声だったり。ヒョウともネコともいいがたい、独特な動物です。
熱帯雨林の樹上を好むウンピョウの生態は、まだまだ謎だらけ。
これからもっとおもしろい新情報が出てくるかもしれません。
ひきつづきウンピョウを見守り続けましょう!
以上、ウンピョウの豆知識でした。
【参考】
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