オオコウモリは空飛ぶキツネ?果物大好きオオコウモリの生態と特徴
コウモリのイメージを変える?!実は可愛い動物オオコウモリ
皆さんコウモリにはどのようなイメージがありますか?
暗い洞窟の中で生活する黒い鳥のような動物。あまり見る機会がなく得体の知れない存在かもしれません。
しかし世の中には、森を住みかとしフルーツを食べるコウモリがいます。
今回のzoo zoo diaryは大型のコウモリ「オオコウモリ」を特集!
小型のコウモリとは違う生態や特徴を紹介します。後半にはオオコウモリに会える施設を掲載中です。
オオコウモリの豆知識を携えて動物園に会いに行きましょう!

オオコウモリ|Flying Fox
翼手目(コウモリ目)オオコウモリ科オオコウモリ属。
果物を食べることから【Fruit Bat】細長い顔立ちがキツネに似ていることから【Flying Fox】とも呼ばれています。
オオコウモリは日本を含む東南アジアやオーストラリア等に生息しています。
分布域が広く多様性のあるオオコウモリは、現在60種以上に分類されています。
- 翼手目 Chiroptera
- オオコウモリ科 Pteropodidae
- オオコウモリ属 Pteropus
- オオコウモリ科 Pteropodidae
- 生息 熱帯~亜熱帯の森林
- アフリカ東沿岸の島
- 南~東南アジア
- オセアニア
- 体長 10~30cm
- 翼長 50~150cm
- 体重 0.3~1.5kg
ざんねんなことに、オオコウモリの半数は絶滅の危機に瀕しています。
本記事ではオオコウモリ全種の掲載はしていません。オオコウモリ全般の形態・生態と日本で会えるオオコウモリを紹介しています。
オオコウモリの形態
オオコウモリといっても、その種類は60種以上!
そのため大きさも幅があります。いずれもオスの方がメスより大きく育つ傾向にあります。
インドに生息するインドオオコウモリや東南アジアに生息するマレーオオコウモリ等が、最大種といわれています。
大きなオオコウモリは体長30cm、体重1kg以上に成長します。両手を広げた長さは1.5メートルにもなります。
数十グラムしかない小型コウモリより遥かに大きく、同じコウモリとは思えないほどです。
コウモリはなぜ飛べるの?
コウモリは哺乳動物で唯一飛行能力を備えた動物です。
モモンガ等が空を飛ぶのは滑空ですが、コウモリは文字通り自由に空を飛べます。
コウモリはヒトと同じ5本指ですが、指骨が長く進化しています。また、親指の爪は鋭い鉤爪でとても目立ちます。
オオコウモリはひとさし指にも爪が生えていますが、親指に比べると小さく、写真ではわかりづらいです。

そして、長い指の間から後肢そして尾まで薄い膜が張っています。
- 前膜 :肩から親指
- 指間膜:指の間
- 体側膜:小指から後肢
- 腿間膜:後肢から尾
小型コウモリには3cmほどの尾があり、後肢から尾をつなぐ腿間膜があります。
一方のオオコウモリは尾がほとんど退化しており、腿間膜は目立ちません。
これらの膜が翼の役割を担い「翼手」と呼ばれるようになりました。
つまり、コウモリの翼は皮膚。
血管や神経が通っているので、翼を広げたときはよく観察してみてください。

オオコウモリの生活
基本は夜行性。日中は木の枝にぶらさがって休んでいます。
オオコウモリはナマケモノと同じように長く曲がった爪を持ち、力を使わずにぶらさがることができます。
そのため爪が折れたり変形したりすると、生活に大きな影響を及ぼします。
コウモリのイメージ通り、オオコウモリはほとんどの時間、頭を下にして過ごしています。交尾もその態勢で行います。
一方で排泄時は、前肢の爪でぶらさがります。頭を上にしたコウモリを見れるまたとないチャンスです。
というわたしも写真に納めたことはありません。ちょうど終わって向きを変える瞬間でした→

コウモリの群れ「キャンプ」
コウモリは群れで行動する動物です。
数十頭から成る群れがいくつも集まり、大きなコロニー(集団営巣地)をつくります。その全個体数は1000頭、ときには1万頭にも及びます。
このような大規模なコウモリのコロニーは、キャンプ【Camp】と呼ばれています。
オオコウモリはエサや繁殖相手を求め、いくつかのキャンプを転々としながら暮らしています。
キャンプは賑やかで独特の香りは放つため、すぐに見つけることができます。
オオコウモリは30種類以上もの鳴き声を駆使して、会話しています。
テリトリーをアピールしたり、危険を知らせたり、仲間うちでもよく声を出し合います。
とはいえ日中のほとんどはまったり。動物園で見かけても静かに休んでいる印象です。

コウモリの翼つくろい?
空を飛び移動するコウモリにとって、翼手のメンテナンスは最重要事項!
鳥が丁寧に羽づくろいをするように、コウモリも丁寧に翼手を舐めています。
翼の役割を担う「膜」の清潔さ・柔軟性を保たなければ、十分な飛行能力を発揮できないからです。
コウモリは起きているとき、ほとんどの時間を翼手の手入れに費やしています。夜間、移動や食事の合間にも行っています。
本来飛べるはずのない哺乳類であるコウモリ。その飛行には、多大な準備時間が必要なのです。

オオコウモリの繁殖と寿命
オオコウモリの妊娠期間は5か月ほど。通常1年に1回、1頭の子を出産します。
体重200kgにもなるライオン(妊娠期間100日前後)よりも長い間、おなかの中で育ちます。
そのため、誕生時はすでに全身が毛で覆われ、目は開いています。さらに、すぐに母親にしがみつく力を備えています。
オオコウモリは決まった繁殖相手を持たず、子育ては母親だけで行います。
生後2~3か月で子オオコウモリは飛べるようになります。性成熟は2歳ごろです。
コウモリは長生きNo.1!
コウモリは長生き動物として有名です。
一般に大きな動物ほど長生きするといわれ、ゾウやサイからネズミまで多くの動物に当てはまります。
一方でコウモリは小さい体に対して、非常に寿命が長い例外的存在。
同程度のサイズであるモルモット(平均寿命6年)と比して、オオコウモリは倍以上生きます。
オオコウモリの寿命は野生下で15年。飼育下では30年以上生きた例があります。
天敵はワニや猛禽類など。
しかし大きな群れで活動しているオオコウモリは、さほど狙われることはありません。
注目!コウモリの遺伝子研究
なぜコウモリが長生きなのでしょうか?
成長ホルモン遺伝子や癌抑制遺伝子などが関与しているといわれていますが、今のところはっきりした答えは出ていません。
コウモリはヒトにとって危険なウイルスと共生しています。また、癌にかかることもありません。
類まれなコウモリの免疫力の強さ。遺伝子の秘密を解明すべく、研究が続けられています。
オオコウモリの特徴
オオコウモリは「コウモリ」の仲間(翼手目)ですが、一般的なコウモリとは大きく違う点があります。
- 視覚と嗅覚
- 食べ物
この2点、いったいどう違うのかみていきましょう。
オオコウモリはエコーロケーションできません!
小型コウモリは、反響音から自分や獲物の位置を把握する能力(エコーロケーション)を持っています。
音を集めるために耳は大きく進化しました。
おかげで小型コウモリは暗闇の中でも、物の位置をしっかり把握し飛行できます。
一方、オオコウモリはエコーロケーションは行いません。
代わりに、目で見て鼻でにおいをかいで物事を判断します。
そのため、耳は小さく目は大きく進化しました。
オオコウモリの視力は非常に優れており、夜間でも十分に活動できます。
オオコウモリのうるうるした大きな目はとても愛らしく「コウモリ」のイメージを覆す存在です。

また、視覚だけでなく嗅覚も優秀。においを頼りに食べ物を探し当てています。
フルーツを食べるコウモリ
小型コウモリの主食が昆虫であるのに対し、オオコウモリが昆虫を食べるのは稀。
主に果物や花など甘いものを食します。
日中は休息をとり、夜になると採食に出かけます。
オオコウモリの移動速度は1時間に20kmほど。最高速度は時速60kmといわれています。
行動範囲がとても広く、新鮮な果物を求めて50km以上移動する様子も確認されています。
オオコウモリは非常に記憶力が良いため、以前訪れたエサ場や木に迷うことなく辿り着くことができます。
オオコウモリは20cmほどと小さな動物ですが、食欲旺盛!体重の30%以上の食事量が必要です。
体重1kgのオオコウモリであれば300グラム。
一見少なく感じるかもしれませんが、体重60kgのヒトであれば18kg以上食べる計算。
ヒトの食事量は成人男性でも2kgほどといわれています。オオコウモリの食事量がとてつもなく多いことが想像できますね。
生息地では、オオコウモリが果樹園のフルーツを食べ尽くしてしまい、住民との間に大きな軋轢を生んでいます。
オオコウモリの現状と保全
60種以上いるオオコウモリですが、そのほとんどが絶滅の危機に瀕しています。
なぜオオコウモリは減り続けるの?
オオコウモリは長い寿命を持つにもかかわらず、繁殖率は高くありません。
なぜなら、オオコウモリのメスは1年に1頭しか子を生まないからです。
もしも乱獲や自然災害のような不幸な出来事により一気に個体数が減ってしまうと、オオコウモリの数はなかなか回復しません。
また、作物への被害や感染症媒介等の理由で、オオコウモリはヒトから迫害されています。
しかし、森の中でオオコウモリは植物の種をまき、健やかな森林を保つ重要な役割を担っています。
オオコウモリが減ると、植物の種子や花粉の拡散が減ります。
すると、森の花や果実が少なくなり、オオコウモリは食べるものがなくなります。
そこで、オオコウモリたちは森を抜けだし、たくさんのフルーツつまり果樹園に辿り着きます。
その結果、ヒトとの衝突が生まれてしまいます。

オオコウモリはこのような悪循環に陥り、生息数が減少してしまった動物です。
一部生息地では、オオコウモリが食肉や製薬の目的で乱獲されています。実際に狩猟規制がない地域もあります。
オオコウモリの絶滅を防ぐために、保護区や法の整備が急務となっています。
日本で会える5種類のオオコウモリ
日本固有種であるダイトウオオコウモリ、オリイオオコウモリ、エラブオオコウモリとオガサワラオオコウモリ。
そしてオオコウモリの最大種インドオオコウモリが飼育されています。
クビワオオコウモリ
おもに日本に生息するクビワオオコウモリ。さらに5種に分類されています。
- クビワオオコウモリ Pteropus dasymallus
- エラブオオコウモリ P.d. dasymallus
- ダイトウオオコウモリ P.d. daitoensis
- オリイオオコウモリ P.d. inopinatus
- ヤエヤマオオコウモリ P.d. yayeyamae
- タイワンオオコウモリ P.d. formosus
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 南西諸島、台湾など
- 体長 20cm
- 翼長 80cm
- 体重 0.5kg
全体は黒~褐色。首周りに白~金色の毛が生え、首輪のように見えることから名付けられました。
英名【Ryukyu Flying Fox】琉球のオオコウモリです。
日本の動物園では、南・北大東島に生息するダイトウオオコウモリと、沖縄本島に生息するオリイオオコウモリを飼育しています。
7か所!オリイオオコウモリに会える動物園
オリイオオコウモリは沖縄本島および周辺に生息しています。
森林減少に伴い都会に出没するようになり、公園や民家の果樹で発見されています。
日本の環境省では、とくに絶滅に関する評価はありません。
現在、7カ所の動物園で飼育されています。
- 上野動物園
- 井の頭自然文化園
- 大島公園
- 富山市ファミリーパーク
- 伊豆シャボテン動物公園
- 沖縄こどもの国
- ネオパークオキナワ
オオコウモリ展示はじめました|伊豆シャボテン動物公園
静岡県にある伊豆シャボテン動物公園では、2017年よりオリイオオコウモリの飼育を始めました。
2019年からは繁殖に成功しています。
群れるオオコウモリが見たい!沖縄こどもの国
なかでも沖縄こどもの国では、80頭ほどの群れで飼育しています。
野生では大きな個体群で暮らしているため、コウモリがひしめき合っている状態が自然ともいえます。
より自然なオリイオオコウモリの様子を観察できるかもしれません。
ダイトウオオコウモリに会えるのは「沖縄こどもの国」だけ
ダイトウオオコウモリは首周りだけでなく、頭や胸にも明るい毛が生え、非常に美しいことで有名です。
ダイトウオオコウモリはサトウキビ農地開発により、生息地を追われています。さらに、交通事故やネコに捕食される例も確認されています。
現在の生息数は南北合わせて300頭ほど。
国は1973年にダイトウオオコウモリを天然記念物としています。2004年には国内希少野生動植物種に指定されました。
環境省は絶滅寸前を意味する絶滅危惧ⅠA類と評価しています。植林や生息地保全が行われています。
現在、ダイトウオオコウモリを飼育・展示しているのは全国で1か所。生息地・大東島がある沖縄県の沖縄こどもの国だけです。
沖縄こどもの国では、2種類のクビワオオコウモリに会えます。ぜひ、2種を見比べてみてください。
エラブオオコウモリに会える?平川動物公園
日本動物園水族館協会(JAZA)HPには記載ありませんが、鹿児島市・平川動物公園ではエラブオオコウモリを飼育しています。
エラブオオコウモリは、鹿児島県南西の口永良部島周辺にのみ生息しています。現在の生息数は200頭未満。
1975年国の天然記念物に指定。絶滅危惧ⅠA類に評価されています。
平川動物公園は日本で唯一、エラブオオコウモリの飼育が認められています。生息地である島々が鹿児島県であることから、保護・研究を目的としています。
1993年には保護個体同士の繁殖に成功。現在はその息子にあたるブン(1994年生)とモン(1995年生)が飼育されています。
しかし、20歳を超え高齢となった2頭。
保護個体が導入されない限り、平川動物公園でエラブオオコウモリ見れなくなる日はもうすぐ来るでしょう。

オガサワラオオコウモリ
東京の南に位置する小笠原諸島にのみ生息するオガサワラオオコウモリ。
英名【Bonin Flying Fox】小笠原諸島は発見当時無人だったことから「ぶにん」と呼ばれ、それが変換されたといわれています。
沖縄や鹿児島に生息するクビワオオコウモリとは別種とされています。
- Pteropus pselaphon
- IUCNレッドリスト 危機(EN)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 小笠原諸島 300頭
- 体長 20cm
- 翼長 80cm
- 体重 0.4kg
クビワオオコウモリに特徴的な明るい毛は生えていません。また、耳が小さいことが特徴です。
生息数は300頭ほど。環境省はオガサワラオオコウモリを絶滅危惧ⅠB類と評価しています。
オガサワラオオコウモリも人間活動により生息地を奪われたり、害獣対策のために負傷・死亡したりしています。
2009年国内希少野生動植物種に指定され、保護・増殖事業が行われています。
オガサワラオオコウモリに会えるのは上野動物園だけ!
JAZAによると、上野動物園はオガサワラオオコウモリを飼育しています。
エラブオオコウモリ同様、保護目的です。今後新しい個体の導入予定はなく、いずれ展示終了するでしょう。
生息地である小笠原村・父島にあるNPO法人小笠原自然文化研究所が、オガサワラオオコウモリの保護を行っています。
インドオオコウモリ
インドやバングラデシュなど南アジアに広く生息しているインドオオコウモリ。
一部地域では生息数の減少がみられるものの、全体数は多いため絶滅は危惧されていません。
- Pteropus giganteus
- IUCNレッドリスト 低懸念(LC)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 小笠原諸島 300頭
- 体長 30cm
- 翼長 130cm
- 体重 1kg
インドオオコウモリは翼手を広げた大きさが1メートルを優に超え、最大種ともいわれるオオコウモリです。

インドオオコウモリに会える4つの動物園
現在日本では、4か所の動物園がインドオオコウモリを飼育しています。
以下はJAZA飼育動物検索の結果ですが、岡山市・池田動物園HP動物一覧(2021年9月時点)にはインドオオコウモリは記載されていません。
- 草津熱帯圏
- 京都市動物園
- 池田動物園*
- 高知県立のいち動物公園*
- 長崎バイオパーク
*展示されていない可能性があります
JAZA非加盟ですが、群馬県・草津町には「草津熱帯圏」という展示施設があります。温泉を利用し亜熱帯の環境を再現しています。
カピバラや小型サルなどの哺乳類と数多くの爬虫類を飼育しています。亜熱帯で暮らすインドオオコウモリも展示されています。
インドオオコウモリ展示終了|のいち動物公園
高知県立のいち動物公園では、インドオオコウモリのオーモリサン(2003年生)を飼育しています。
年を重ねるうちに枝にぶらさがることができなくなり、5年以上前からバックヤードでケージ暮らしをしています。
2022年4月現在、のいち動物公園ではインドオオコウモリを見ることはできません。
オオコウモリの赤ちゃんが見れるかも?!京都市動物園
京都市動物園では順調に繁殖に成功しており、2020年にもオス1頭が誕生しています。
10頭以上のインドオオコウモリを飼育しています。群れるオオコウモリを見たい方におすすめの動物園です。
オオコウモリに大接近!長崎バイオパーク
長崎県西海市にある長崎バイオパークでは、檻やガラスに遮られることなくオオコウモリを見れます。
亜熱帯を再現したドームの一角で、2~3頭のオオコウモリが止まり木にぶらさがっています。
人工物なので殺風景ではありますが、ふれられるほどの距離でインドオオコウモリを観察できます。

世の中には知らないだけで魅力的な動物がたくさんいます。
今回紹介したのは、果物を食べるオオコウモリ。
コウモリ特有の大きな耳を持たず、エコーロケーション能力を持ちません。
代わりに、夜でも見える視力の良さ。そして遠くのフルーツのにおいを判別できる嗅覚の良さを持ち合わせています。
そのため小さなコウモリとは異なる、キツネのような見た目になりました。
大きな目を持つオオコウモリはとても可愛らしく、見たヒトはきっとコウモリの印象が変わるはずです。
ぜひ動物園で確認してみてくださ。

以上、オオコウモリの豆知識でした。
【参考】
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