動物園・水族館で生まれたホッキョクグマの家系を探ろう
ホッキョクグマの飼育・繁殖の歴史|日本のホッキョクグマの家系(血統)がわかる記事
地上最大の肉食動物「ホッキョクグマ」カナダやロシアなどの北極圏に生息しています。
生息数は推定2~3万頭。絶滅のおそれが高い動物(IUCNレッドリスト危急)として、ワシントン条約により輸出入が規制されています。
そのため、近年、日本国内の動物園・水族館はブリーディングローンを活用した共同繁殖計画に取り組んでいます。
日本のホッキョクグマ飼育・繁殖の歴史
ホッキョクグマ日本初上陸は1902年
1902年、日本初のホッキョクグマがドイツから東京都・上野動物園へやってきました。1933年大阪市・天王寺動物園、1937年名古屋市・東山動植物園でもホッキョクグマ飼育がはじまりました。
1980年代~1990年代には日本各地の動物園・水族館に導入され、1995年には33か所の施設で60頭以上ものホッキョクグマが飼育されていました。
初のホッキョクグマ繁殖成功は1974年
1917年、上野動物園で初めてホッキョクグマの繁殖活動が確認。しかし、子は成育しませんでした。
長い年月が経ち、1974年11月、北海道・旭山動物園でオス「コロ」が誕生しました。コロは日本で初めて成育したホッキョクグマであり、これが日本初の繁殖成功と記録されています。
コロの両親は野生個体の「シロウ」と「ユキ」計5頭の子の繁殖に成功したペアです。彼らの子どもたちも繁殖に成功し、現在もシロウとユキの血が引き継がれています。
飼育下のホッキョクグマ繁殖の今
野生ホッキョクグマと同様、飼育下のホッキョクグマも減少しているなか、今後も種が保たれるよう世界中の動物園・水族館が一丸となって繁殖に取り組んでいます。
ホッキョクグマだけでなく絶滅に瀕している動物の飼育下繁殖は計画的に行われています。
家系図調査やDNA検査を実施し、どの個体同士が血統的に繁殖に適しているか判別してからペアリングに挑みます。そうすることで近親交配を防ぎ、より健康的な遺伝子が引き継がれる可能性を高めます。
国内の動物園・水族館もより多くのホッキョクグマ繁殖成功を目指して協力し合っています。
日本のホッキョクグマの家系は4つ!
現在、日本にいる繁殖可能なホッキョクグマたちはおおきく4つの血統グループに分けられます。
- 旭山動物園のシロウとユキ 1974年~
- アドベンチャーワールドのアークティックとオホト 2009年~2013年
- 男鹿水族館の豪太 2012年~
- 天王寺動物園のゴーゴ 2014年~
旭山動物園「シロウとユキ」の子孫
ホッキョクグマの初繁殖に成功したペア
日本で初めて繁殖に成功したのは北海道旭川市・旭山動物園。父「シロウ」と母「ユキ」はともに野生個体。1967年の開園後に旭川市へやってきました。
シロウとユキのあいだに5頭の子が成育しました(1974~1981年)
計5頭の子が成育し、日本のホッキョクグマ個体数に大いに貢献してくれました。
- 1974年 コロ(オス)
- 1976年 ジュン(オス)
- 1979年 ダイ(オス)ショウ(オス)
- 1981年 ハッピー(メス)
さらに、1979年生まれの双子のオス「ダイ」「ショウ」は大分県、大阪府で父親となります。
ショウ=ユキオ 3頭の父となる|大阪
ダイときょうだいのショウは1歳になった頃、大阪市・天王寺動物園へ移動。ショウは大阪市では「ユキオ」と呼ばれていました。
ショウはアメリカ生まれのメス「ユキコ」とむすばれ、計3頭の子の父親となりました。
なかでも1990年に生まれた「ミユキ」は国内最高齢の美ホッキョクグマとして有名でした。
2024年1月、ミユキは32年間過ごした神戸市・王子動物園でその生涯を終えました。
ざんねんながら、ショウ(ユキオ)の孫は誕生しませんでした。
ダイの子「ララとルル」誕生|大分
ショウときょうだいのダイは1歳になった頃、大分県・別府市にある施設(別府ラクテンチ)へ移動しました。そして、繁殖に成功し2頭のメス「ララ」「ルル」が誕生しました。
現在も旭山動物園で飼育されているルル。そして、札幌市・円山動物園で8頭の母親となったララの父親がダイなのです。
ララは6回8頭の繁殖に成功!札幌
札幌市・円山動物園は2000年以降、6回の繁殖に成功しています。
父親は1995年に来日した「デナリ」母親は1996年に来園した「ララ」です。
ララは1994年大分生まれ、日本初の繁殖ペアであるシロウとユキの孫にあたります。デナリは1993年アメリカ生まれの新しい血統の持ち主です。
2000年以降、ララは死産を繰り返しながらも、8頭の子を育てあげました。
- 2003年 ツヨシ(メス)
- 2005年 ピリカ(メス)
- 2008年 イコロ(オス)キロル(オス)
- 2010年 アイラ(メス)
- 2012年 ポロロ(メス)マルル(メス)
- 2014年 リラ(メス)
2003年生まれ「ツヨシ」メスは亡くなりました
2005年に釧路市へ。その後、性別がオスではなくメスと判別されました。
2016年からよこはま動物園ズーラシアで飼育されていましたが、2022年7月に亡くなりました。
2005生まれ「ピリカ」母親になりました
2011年から旭川市・旭山動物園で暮らしています。
2021年に「ホクト」との第1子となる「ゆめ」を出産し、無事に育てあげました。
2024年3月、ホクトとピリカの交尾が確認され、今冬は出産の可能性があります。
2008年生まれ「イコロ」「キロル」繁殖なるか
2010年に2頭はいっしょに帯広市へ。
2015年、イコロは上野動物園へ移動。イタリア生まれのメス「デア」と繁殖をめざしています。
一方、キロルは2011年に静岡県・浜松市動物園に行きました。このときは教育およびイコロとの闘争回避を目的とした一時的なものでした。
2016年からは釧路市で飼育。男鹿水族館生まれのメス「ミルク」とペアリング中でしたが、同居中の事故によりミルクが命を落としました。
そして2024年11月、外傷による細菌感染が原因でキロルが亡くなりました。
2012年生まれ「ポロロ」「マルル」ひとり暮らし中
2014年からポロロはとくしま動物園、マルルは熊本市動植物園で飼育されています。どちらもペアリングは行われていません。
2014年生まれ「リラ」繁殖活動はじめます
現在、円山動物園で飼育されているララの子は末っ子のリラのみです。
2022年10月、旭山動物園からオスの「ホクト」が来園。リラははじめての繁殖活動をおこない、無事交尾をおこないました。
ざんねんながら、妊娠はしておらず。2024年2月、ホクトは旭川市へ帰って行きました。
2018年3月、新たなホッキョクグマ館が完成した円山動物園。水中トンネルを含む国内最大級のホッキョクグマ展示場は、繁殖を意識した世界基準の施設です。
今後のリラの繁殖に期待している証拠でしょう。あせらずに見守っていただきたいです。
デナリが亡くなりました|2023年9月
日本のホッキョクグマ界のビッグダディとなったデナリ。ざんねんながら、2023年9月に亡くなりました。29歳でした。
2024年4月現在、札幌市・円山動物園で飼育しているホッキョクグマは母「ララ」娘「リラ」の2頭です。
シロウとユキのひ孫「ピリカ」 の繁殖
日本で初めてホッキョクグマの繁殖に成功した旭山動物園。当時のペアであるシロウとユキ以来、繁殖成功のニュースが途絶えていました。
2021年12月、ついにホッキョクグマの赤ちゃん「ゆめ」が生まれました。じつに40年ぶりの繁殖成功です。
母親はララの子「ピリカ」父親はロシア生まれの「ホクト」つまり、ゆめはシロウとユキの玄孫にあたります。
あたらしいメスを求めてやってきた「ホクト」
2000年ロシアの動物園で生まれたホクト。2002年から兵庫県・姫路市立動物園で飼育されていました。
のちにセルビア出身のメス「ユキ」とペアリング。ユキは2度ホクトの子を出産するも、ざんねんながら子は育ちませんでした。
そして2013年以降、2頭の交尾は確認されず。まだ、繁殖能力があると考えられるユキとホクト。どちらも経験がある貴重なホッキョクグマです。
それぞれの子孫をのこすべく、ユキは2019年3月に秋田県・男鹿水族館へ、ホクトは2020年6月に旭川市・旭山動物園へブリーディングローンにより移動しました。
あたらしいオスをむかえる「ピリカ」
旭山動物園には、もともとオスの「イワン」と3頭のメスがいました。20歳以上となった「サツキ」「ルル」そしてララの次女「ピリカ」です。
交尾には至るもののイワンと3頭のメスの繁殖は失敗におわっています。高齢となり今後の妊娠がむずかしいサツキとルルに比べ、ピリカは若く繁殖の可能性が十分にあります。
そこで、イワンをとくしま動物園におくり(2021年12月死亡)、繁殖オスとしてホクトが来園しました。
ホクトとピリカの赤ちゃんが生まれました!
当初、ホクトとピリカの同居は手に汗握るものだったようです。しかし、やさしいホクトの対応にピリカはようやく心をゆるし、2021年12月待望の出産!
旭山動物園公式YouTube「ペアリング日記」では強気なピリカに対するホクトの寛容さを感じることができます。
双子がおおいホッキョクグマですが、ピリカは3頭の赤ちゃん生みました。2頭はまもなく亡くなりましたが、のこる1頭はピリカのもと元気に育っています。
ホクトとピリカの子「ゆめ」は2022年4月から一般公開されています。
ホクトは札幌へ行くも… 2024年2月に旭川へ戻る
長年交尾をしていなかったホクトが子孫をのこせたことに驚きと感動を隠せません。
ゆめの誕生により、繁殖能力のあるオスと証明されたホクト。2022年10月、あらたなペアをつくるべく札幌市・円山動物園に移動が決まりました。
お相手は2014年生まれのルルの第8子「リラ」2023年2月にはリラとホクトの交尾がみられましたが、リラの出産はありませんでした。
大きな闘争はなかったようですが、2頭のペアリングは早々に解消。2024年2月にホクトは旭山動物園に帰ってきました。ピリカとの2度目の繁殖をめざすとのことです。
さて、動物園側は鼻からリラとホクトの繁殖が成功するとは思っておらず、リラの経験のためにホクトを移動したのではと感じるのは、わたしだけでしょうか。
なぜなら、ピリカの妹であるリラとホクトの子が生まれたとしても、ゆめとおなじ血統だからです。
将来のことを考えて繁殖させなければならないことが、飼育下動物特有の課題となっています。
ゆめは神戸へ旅立ちました 2023年12月
2歳をむかえるゆめは、神戸市・王子動物園へ旅立ちました。ゆめの成長とピリカの発情を促すためです。
古さはあるものの比較的広い放飼場なので、のびのび成長できると良いですね。
2024年11月、ピリカ妊娠の可能性あり
2024年3月、旭山動物園に戻ってきたホクトとピリカの交尾が確認され、今冬ピリカは出産の可能性があります。そのため、ピリカは現在展示中止中です。あたたかく見守りましょう。
アドベンチャーワールド生まれの子
1993年に雌雄のホッキョクグマ飼育をはじめた和歌山県・アドベンチャーワールド。6回の繁殖歴があり、うち2回2頭が成育しました。
父親は1991年スウェーデン生まれの「アークティック」母親は1991年イギリス生まれの「オホト」です。
オス「ライト」1頭のみ!鹿児島
アドベンチャーワールドはじめての繁殖成功は2009年10月、メス「ミライ」が誕生。そして、2013年にはオス「ライト」が生まれ育ちました。
オホトは育児ができないメスだったのか、ミライもライトも人工哺育でした。
2014年に姉と父親が亡くなり、2021年には母親も亡くなりました。
つまり、アドベンチャーワールドで飼育されていたホッキョクグマ(アークティックとオホト)の血の存続はライトにかかっています。
2023年3月、おとなになったライトがついに和歌山を飛びだす日がきました。移動先は鹿児島市・平川動物公園。将来的にはメスを導入し繁殖にとりくむ計画です。
快適な屋内暮らしから南国鹿児島の暮らしに順応できるか心配でしたが、ライトなりに慣れてきたように感じます。オホトとアークティックの孫が見れる日がくると良いですね。
男鹿水族館2003年ロシア生「豪太」の子
秋田県・男鹿水族館は2012年、2020年と2回のホッキョクグマ繁殖に成功しています。
2003年ロシアの動物園で生まれたオス「豪太(ゴウタ)」2005年に来日した、男鹿水族館初のホッキョクグマです。
来日当時2歳、体重およそ140kgと小さなホッキョクグマだった豪太。クラウドファンディングで体重計を購入し、2023年9月の豪太は体重450kgと発表されました。
2012年ミルク誕生!母はクルミ
2011年に繁殖のため釧路市動物園から「クルミ」が来園しました。
クルミは1996年釧路市動物園生まれ。旭山動物園以外で初となる繁殖に成功した「タロとコロ」ペアの第4子です。
2009年には円山動物園からやってきた「デナリ」とペアリングするも、子は生まれませんでした。
釧路市から男鹿水族館へ移動後まもなくクルミは豪太を受けいれ、2012年メスの「ミルク」を出産!
ミルクはすくすく成長し2014年に母クルミの生まれた釧路市動物園へ旅立ちました。
旭山動物園、円山動物園とは異なる血統であり、つぎの繁殖も期待されていた豪太とクルミ。
ざんねんながら、2018年1月にクルミが亡くなりました。
ミルクとキロルはざんねんな結果に
タロとコロの血をうけついだ唯一のホッキョクグマとなったミルク。2014年から母の生まれ故郷である釧路市動物園で飼育されています。
ミルクの繁殖相手に選ばれたのは2008年生まれの「キロル」ララとデナリの3回目の繁殖で成育した子です。静岡県・浜松市動物園でのひとり暮らしを経て、釧路市へやってきました。
キロルとミルクは同居するものの、なかなか近づくことはなく相性が良くないようでした。しかし、2022年から急に仲良くなり、繁殖が近いと思われていました。
タロとコロの血は途絶えました
そんななか、繁殖に向けた同居中の事故が原因でミルクが亡くなりました。まだ10歳でした。
クルミ(タロとコロ)の血をひく唯一の個体だっただけに、とてもざんねんなニュースです。
野生のホッキョクグマは共食いや子殺しが確認されています。もちろん繁殖期のオス同士の闘争やメスとの接触で相手を傷つけることがあります。
飼育下だからこそ防げたのでは、と思う反面、意思疎通のできない動物の行動をヒトが予測することは不可能。動物園での事故はどうしても避けられません。
とはいえショック。野生動物を飼育することの難しさを痛感する出来事です。
ユキと豪太の子「フブキ」2020年生
クルミの死亡当時、豪太はまだ14歳。繁殖成功例のある豪太の力に期待すべく、2019年姫路市立動物園から「ユキ」がやってきました。
ユキは1999年セルビアの動物園で生まれ、2002年に来日。パートナーだったホクトの子を妊娠・出産しましたが、ざんねんながら子はすべて産後まもなく亡くなっています。
姫路市動物園では6年間ほど交尾をおこなっていなかったユキ。
ところが、驚くことに男鹿水族館での飼育開始当月から豪太と同居に成功!そして5月までに7回の交尾が観察されました。
環境の変化が吉と出たのか、豪太との相性が良かったのか、非常に喜ばしいニュースです。
2019年はユキの妊娠には至りませんでしたが、翌2020年にも同居・繁殖行動が確認されました。
そしてついに2020年12月、ユキは1頭の赤ちゃんを出産しました!
つらい思いをしてきたユキですが、今回は無事に生まれ育っています。子はオス「フブキ」ユキの愛情をいっぱい受けながら元気に過ごしています。
【YouTube】男鹿水族館GAO 公式チャンネルはフブキの誕生からホッキョクグマの飼育のようすまで、さまざまな動画をあげています。ぜひチェックしてみてください!
フブキは名古屋に行きます!2023年3月
2023年3月、ついにフブキのひとり立ちの日がやってきます。
移動先は名古屋市・東山動植物園。現在はホッキョクグマのいない動物園ですが、1950年代から2020年まで40年以上のホッキョクグマ飼育歴史のある施設です。
今回の移動は「ホッキョクグマ計画推進会議」により決定されたもの。繁殖に成功した貴重なホッキョクグマとして、豪太とユキにつぎの期待が寄せられているようです。
豪太の新しいお相手「モモ」2024年~
2023年交尾行動はあったものの妊娠へはいたらなかったユキ。まだ若い豪太の血を残すべくメスの交換が決定しました。
今回秋田にやってくるのは静岡県・浜松市動物園の「モモ」2014年に天王寺動物園で生まれたホッキョクグマ。性成熟を迎えたばかりの若いメスです。
20歳をこえたユキは移動に耐え繁殖に成功し、本当に頑張ったと思います。浜松市動物園で健やかに過ごせることを祈ります。
天王寺動物園2004年ロシア生「ゴーゴ」の子
大阪市・天王寺動物園は2014年、2020年とホッキョクグマ繁殖に成功しました。
むずかしいホッキョクグマ繁殖を近年2度もなしとげた天王寺動物園。
いずれも父親は「ゴーゴ」2004年にロシアの動物園で生まれました。
2006年、天王寺動物園にやってきたときは2歳にもなっていませんでした。
モモ誕生!2014年バフィンの高齢出産
2011年、はじめて交尾をするといわれる年頃になったゴーゴのもとにメスの「バフィン」が来園しました。
バフィンはスウェーデンの動物園で生まれ、1993年から静岡県・浜松市動物園で飼育されていました。
性成熟を迎えたばかりのゴーゴと当時20歳のバフィン。
年の離れた2頭がはたしてうまくゆくのか、不安視する声も多いなか2013年3月初の交尾を確認。ざんねんながら、そのときは妊娠していませんでした。
しかし翌2014年3月、再び繁殖行動が観察されました。そして同年11月、天王寺動物園で待望のホッキョクグマの赤ちゃんが誕生!
バフィンは23歳という高齢出産となりました。メスの赤ちゃん「モモ」はバフィンの愛情を受けて元気に成長しました。
2016年、バフィンはモモを連れて浜松市動物園にかえっていきました。皆の期待を背負ってモモを生み育ててくれた、バフィンに感謝です。
ゴーゴは和歌山へ 2015~2018年
一方、父親のゴーゴは2015年3月、ブリーディングローンにより和歌山県・アドベンチャーワールドに移動。
お相手は先述のオホト、2度の繁殖成功例(人工哺育)をもつメスです。
ゴーゴとオホトは3年連続で交尾が観察されたものの、妊娠にはつながりませんでした。
そして2018年、ゴーゴは天王寺にもどってきました。
2020年ホウちゃん誕生!母イッちゃん
ゴーゴ初の繁殖相手となったバフィンは高齢のためさらなる繁殖は断念。そこで、次のパートナーとなるべく「イッちゃん」がやってきました。
イッちゃんは2013年にロシアの動物園で誕生。ゴーゴがアドベンチャーワールドに行った直後に来日しました。
2020年2月から4月までゴーゴとイッちゃんは初の同居生活を送り、ゴーゴは見事、交尾に成功!そして2020年11月めでたく赤ちゃんが誕生しました。
子はメス「ホウちゃん」と名付けられました。イッちゃんは初産でしたが、無事にホウちゃんを育ててくれました。
ずいぶんとおおきくなりましたが、まだまだ可愛らしいホウちゃん。天王寺動物園を代表する人気ものです。
ちなみに、ゴーゴとイッちゃんは豚まんで有名な「551HORAI」さまが天王寺動物園へ寄贈した個体です。
おかげさまで愛すべきモモとホウちゃんが生まれました。大阪だけでなく日本、いや、世界中を幸せにしてくれています。感謝です。
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ホウちゃんひとり暮らしがはじまります
2021年2月、父親のゴーゴは神奈川県・よこはま動物園ズーラシアへ移動。さらに2022年12月イッちゃんもズーラシアヘ行くことが決まりました。
2歳をむかえたホウちゃんはひとり立ち。そして、父と母はきょうだいをつくるために再会です。
ズーラシアで暮らすゴーゴ 2021年~
2021年2月、ゴーゴが繁殖のためよこはま動物園ズーラシアへ移動しました。2頭の父親としての繁殖能力に期待が集まっています。
メスのツヨシは繁殖できず…
ズーラシアは2003年に札幌市・円山動物園で生まれたメス「ツヨシ」とゴーゴの繁殖を目指していました。
ツヨシは2016年にズーラシアに来園。1999年にロシアから来日した「ジャンブイ」と仲が良く、交尾が確認されたこともあります。
しかし、現在まで妊娠にいたらず。
野生由来のジャンブイは推定1992年生まれ。高齢のため、このさき繁殖は期待できません。ツヨシとの相性は良いものの、子孫を残せなかったことはとてもざんねんです。
そこで、ツヨシの繁殖相手として選ばれたのが2頭のメスを射止めたゴーゴ。
ところが、2022年7月、悪性腫瘍によりツヨシが亡くなりました。18歳でした。
ゴーゴとイッちゃんズーラシアで再会
ツヨシの死亡により、メスのホッキョクグマがいなくなったズーラシア。さらに同年12月にはシャンブイが亡くなり、ズーラシアのホッキョクグマはゴーゴ1頭のみとなりました。
今後どうするのだろうと思っていた矢先、まさかのニュースが!
なんと大阪でペアだったメス「イッちゃん」が2022年12月にズーラシアに来園することが決まったのです。
天王寺動物園に寄贈されたホッキョクグマ2頭がそろって他園にいくとは思いませんでした。ホウちゃんのように未来のホッキョクグマをつなぐための決断に感謝です。
ズーラシアのホッキョクグマ展示場は広く深いプールや砂場があります。飼育環境がよければきっとまた繁殖に成功するはず。
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2023年11月イッちゃん出産するも…
2023年11月、イッちゃんはズーラシアにやってきて早速ゴーゴの子を妊娠・出産しました。双子でしたが、いずれも間もなく亡くなりました。
相変わらず相性は良いようなので、ゴーゴとイッちゃん2回目の繁殖成功の日はそう遠くないでしょう。
とべ動物園「ピース」パールとバリーバの子
これまでに紹介したホッキョクグマたちと異なる血統をもつ母娘がいます。愛媛県・とべ動物園の「バリーバ」と「ピース」です。
ピースは1999年12月生まれ。人工哺育のホッキョクグマとして全国的に有名なホッキョクグマです。
バリーバは1990年デンマークで生まれ、1997年に来日。父親「パール」はハンガリーで生まれ、1998年からとべ動物園で飼育されていました。
日本初!人工哺育で育ったピース
飼育下でも生存率が低いホッキョクグマ。
ピースは双子として生まれましたが、1頭はまもなく死亡。ピースの命も危ういと考え、人工哺育となりました。
ホッキョクグマ人工哺育成功例がなかった日本。ピースの成育は歴史的出来事です。
ピースは子孫を残せません…
ピースはパール(2001年没)とバリーバにとって唯一の子であり、ユニークな血統の持ち主。将来の遺伝的多様性を考えると繁殖メスとして選ばるような個体です。
しかし、人工哺育の動物は繁殖できても育児放棄する例が多いこと、ピースがてんかん発作を抑える薬を飲みつづけていることから、繁殖に適さないと判断されました。
20歳を超え老齢期に入った現在も、ピースはとべ動物園一の人気ものです!
国内最高齢ホッキョクグマのバリーバ
ピースの母バリーバは、さらなる繁殖をめざして2011年よこはま動物園ズーラシアヘ移動。オスと交尾をするも妊娠・出産にはいたらず、2016年にとべ動物園に帰ってきました。
2024年4月現在、バリーバは国内最高齢ホッキョクグマです。ピースとともに健やかに過ごせますように。
繁殖にとりくむ動物園とホッキョクグマたち
飼育数がすくなくなっているホッキョクグマ。繁殖に取り組むものの、いまだ成功にはいたっていないペア3組を紹介します。
八木山動物公園|カイとポーラ
仙台市・八木山動物公園は2頭のホッキョクグマを飼育しています。
セルビア生まれのメス「ポーラ」とロシア生まれのオス「カイ」どちらも2004年生まれ。それぞれ2005年、2006年に来園しました。
カイとポーラの交尾は何度も確認されています。さらに、ポーラは3度の出産を経験しました。
ポーラのはじめての出産|2019年12月
ざんねんながら子は死産でした。ポーラはわが子を認識し世話するようすが確認されました。
ポーラが妊娠・出産できるメスだということがわかりました。たくさんのヒトが悲しみと希望をいだいた出来事でした。
翌2020年もカイとの交尾を確認。11月より産室にこもっていましたが、出産にはいたりませんでした。
2021年はとくに動きなく。
ポーラ 2回目の出産|2022年11月
2022年は妊娠の可能性があり、10月よりポーラは展示中止していました。そして同年11月、2頭の子が生まれました。
今回は生きています!赤ちゃんの声も授乳音も確認されました。しかし、3日後に子は亡くなっていました。
飼育員の方々は生きている赤ちゃんを見ただけに、初産のときよりももっと辛かっただろうと思います。
ポーラの体も心配されますが、とくに問題なく過ごしているとのことでなにより。
ポーラ3回目の出産!子の成育|2023年12月
昨年につづき、ポーラがカイの子を妊娠・出産しました。ポーラはしっかりと子を世話しており、子も順調に育っているようすでした。
ところが、授乳の際にポーラがあやまって子を踏んでしまい、子は亡くなってしまいました。
悲しい事故でしたが、ポーラにとって貴重な経験だったと思いたいですね。どうか無理のないよう過ごしてください。
ホッキョクグマは死産率や幼獣死亡率がたかいことが知られています。ポーラの身に起きたことは異例ではありません。
大事なことは、カイにもポーラにも繁殖能力があるということ。姫路市のホクトとユキのように環境やパートナーの変化が必要なのかもしれません。
上野動物園|イコロとデア
東京都・上野動物園は2頭のホッキョクグマを飼育しています。
2008年にイタリアで生まれたメス「デア」と札幌市・円山動物園で生まれたオス「イコロ」それぞれ2012年、2015年に来園しました。
ホッキョクグマが繁殖活動をしはじめる7歳をむかえ、2016年から同居をおこなっています。イコロはマウントするものの上手に交尾ができていないようす。
そのため、2024年2月には人工授精が行われました。よほどこのペアの子が望まれているのでしょう。今後のデアの動向に注目です。
日本平動物園|ロッシーとバニラ
静岡市・日本平動物園は2頭のホッキョクグマを飼育しています。オスの「ロッシー」とメスの「バニラ」です。
2007年ロシア生まれのロッシーは翌2008年に来日。赤ちゃんだったロッシーはめきめき成長し、2023年10月時点の体重はなんと603kg!日本最大のホッキョクグマです。
バニラは2009年タイで生まれ、2011年にロッシーのお嫁さんとしてやってきました。
子は生まれるも育たず… 2015年
2015年、ロッシーとバニラのあいだにはじめての子が生まれました。
しかしながら、バニラが赤ちゃんを噛み殺してしまいました。
死産もしくは弱い子が生まれることの多いホッキョクグマの出産では、こういった事例はそうめずらしいことではありません。
その後もロッシーとバニラの繁殖に向けた同居を実施中です。ロッシーはロシアの動物園から貸与されているだけに、ペア解消はむずかしいのかもしれません。
バニラはしばしば展示が中止されます。妊娠の兆候がある場合におこなわれていると推測されます。その際はお静かに願います。
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2024年11月現在、日本の18の施設で28頭のホッキョクグマが飼育されています。
動物園・水族館はホッキョクグマの種が絶えないよう、計画的な共同繁殖をおこなっています。
しかし、血統の相性と個体同士の相性は別もの。ヒトの計画どうりに事が進むかは分かりません。
さらに、ホッキョクグマは飼育環境に適さない動物のため動物園・水族館で飼育すること自体が問題視されはじめています。
つまり、いつか動物園・水族館でホッキョクグマを見ることができなくなるかもしれません。
また、地球温暖化により野生ホッキョクグマのすむ場所や獲物が減少し、ホッキョクグマの個体数も減りつづけています。
これからも野生ホッキョクグマが生きていけるよう節電やゴミ削減など自分にできることをつづけましょう!
以上、動物園・水族館におけるホッキョクグマ繁殖のお話でした。
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