ジャイアントパンダ繁殖の壁とは?赤ちゃんパンダに会いに行こう

10/31/2021

世界三大珍獣として知られているジャイアントパンダ。

中国では国家一級重点保護野生動物に指定され、中国三大珍獣と称されています。

近年日本では、上野動物園とアドベンチャーワールドでジャイアントパンダ誕生が相次ぎ、動物園ニュースの2大トップとなっています。

動物の赤ちゃん誕生は、しばしば見聞きします。一方で、その成長を毎週、毎月のようにテレビで取り上げることは、あまりありませんよね。

しかし、ジャイアントパンダにいたっては、誕生から成長まで逐一報道されています。

なぜパンダの誕生は、これほどまでに注目されるのでしょうか?

可愛いから、だけではない特別な理由があります。

知られざるジャイアントパンダの繁殖を学び、赤ちゃんパンダに会いに行きましょう!

アドベンチャーワールド ジャイアントパンダの親子

ジャイアントパンダの生態と特徴は別記事に掲載しています。

ジャイアントパンダの繁殖

通常、単独生活を送るジャイアントパンダ。

春、声や匂いを頼りにオスとメスが出会う季節です。

ジャイアントパンダは、4~8歳で性成熟を迎えます。そして、20歳前後まで繁殖できると考えられています。

妊娠・育児中は発情が止まるため、パンダの妊娠間隔は2~3年。生涯に生む子の数は、6頭ほどです。

パンダの妊娠と出産

パンダの発情期

メスのジャイアントパンダの発情期は非常に短く、1年のうち長くて数週間。

そして、妊娠可能な期間である発情のピークは数日のみ、とわかっています。

オスパンダたちは、広大な山林の中から発情しているメスの居場所を突き止めることができます。

ときには複数のオスが、同じメスのもとに引き寄せられます。

穏やかなイメージのパンダですが、繁殖期のオスは獰猛。激しい争いに勝ったものだけが、メスと交尾できます。

お互いの匂いを嗅いだり、鳴き交わしたりして、オスとメスは意思疎通を行います。

パンダのコミュニケーションにおいて、匂いは非常に重要なツール。

マーキングのできない環境では、繁殖が妨げられてしまいます。そのため、匂いを残せない飼育下のパンダは、繁殖能力が乏しいと考えられています。

神戸市王子動物園 ジャイアントパンダ

偽妊娠

偽妊娠とは、実際には妊娠していないのに、妊娠中のように体や行動の変化が起きること。

ジャイアントパンダの偽妊娠は、とくに珍しいことではありません。

交尾のあとに起こる偽妊娠では、出産の時期になるまで真偽の判断は難しいといわれています。

上野動物園シンシンの場合

東京都・上野動物園のシンシン(2005年生)は、リーリー(2005年生)の子を3度出産しています。

2012年、第1子が誕生。しかし、生後6日で死亡が確認されました。

翌2013年の交尾は、偽妊娠という結果に終わりました。

シンシンの偽妊娠以来、リーリーとシンシンの間に交尾は確認されませんでした。シンシンの発情が弱かったためです。

2017年、ついにシンシンの発情のピークが確認され、交尾を確認。なんと4年ぶりの交尾でした。

パンダの巣

通常、クマの仲間は巣作りを行い、出産に備えます。

クマの赤ちゃんは小さく生まれ、成長が緩やかです。そのため、外敵や自然の脅威から身を守る環境を必要とします。

パンダも同様に、妊娠したら巣をつくります。そして、およそ5か月の妊娠期間を経て出産します。

パンダの赤ちゃんは特に小さく、母親の体重の1/1000ほどの体重しかないこともあります。超未熟児の子を育てるには、巣の質や場所が重要となってきます。

雨風や寒さをしのげることはもちろん、水場が近いことも大切。母親は水を飲むたびに、赤ちゃんを残して出かけなければならないからです。

生後100日ごろまで、赤ちゃんパンダが巣の中から出ることはありません。その間、母パンダもほとんどの時間を育児に費やしています。

パンダの赤ちゃん

ジャイアントパンダの繁殖の困難は、妊娠だけではありません。

リーリーとシンシンの第1子のように、パンダの赤ちゃんは生後間もなく亡くなる例が多々あります。

200グラム以下の赤ちゃん

パンダの妊娠期間は、およそ5か月。

体重100kgのおとなに対して、ジャイアントパンダの赤ちゃんは200グラム以下。未熟児の状態で誕生します。

体の機能が完成しておらず、非常に不安定な状態で母親のおなかから出てきます。そのため、体温調節や排泄など母親の手助けが必ず必要となります。

完全に目が開くのは生後2か月。そして、生後3か月ごろに、やっと動けるようになります。

ジャイアントパンダは生後8か月ごろまで母乳を必要とします。その後、徐々に竹を食べるようになります。

1歳半~2歳になると親離れし、母子ともに単独生活を送り始めます。

アドベンチャーワールド ジャイアントパンダ サイヒン

育てるのは1子のみ?!

半分の確率で双子が生まれるジャイアントパンダ。

しかし、母親は1頭しか育てません。2頭を育てるのに十分な母乳や栄養を、備えていないからです。

通常双子が生まれたら、より健常な1頭のみ世話をします。結果、残りの1頭は衰弱死してしまいます。

また、あまりに小さい物体を、わが子と認識できない母パンダもいます。

そのため、赤ちゃんパンダは母親に育児放棄されたり、踏みつぶされたりして死亡することがあります。

野生において、ジャイアントパンダの子の生存率は低く、初産では7割ほどが生後1週間以内に命を落とすといわれています。

一方で、パンダ研究や医療技術が進むにつれ、飼育下の繁殖成功率は大幅に改善しています。

双子の場合、1頭は母親が、もう1頭はヒトが育児します。頃合いを見て子を入れ替える手法により、双子も順調に生育できることが証明できています。

飼育下のジャイアントパンダ

極めて珍しく、可愛らしいジャイアントパンダ。

動物園でもジャイアントパンダ繁殖を期待しますが、なかなかうまくいきません。パンダは繁殖に関心がないという誤った見識が浸透しました。

しかしながら、野生パンダの繁殖活動に何ら問題はありません。それどころか、繁殖能力は高いことが発表されました。

野生パンダの研究が進むに従い、パンダの飼育環境が見直されています。

結果として、飼育下での自然交配が観察され、パンダの繁殖成功率が飛躍的に伸びています。

パンダの保護と人工繁殖

一時、生息数が1000頭ほどに落ち込んだジャイアントパンダ。

危機的状況を打破するために、中国ではジャイアントパンダの保護活動が行われています。孤児やケガなどにより衰弱したパンダが対象です。

2015年には、およそ1800頭の野生パンダが確認されました。

保護されたパンダの中には、繁殖に成功する個体もいます。

成都ジャイアントパンダ繁殖基地では、遺伝子管理が行われており、人工授精に成功しています。

また、育児技術の研究により、パンダの出産率だけでなく生存率にも、大きく貢献しています。

アドベンチャーワールドのパンダ繁殖

たくさんのパンダが見れることで有名な、和歌山県のアドベンチャーワールド。

2020年までに、ジャイアントパンダが17頭誕生しています。中国を除けば、世界一の繁殖数です!

しかも、このうち16頭の父親はエイメイです。

エイメイ(永明)

新鮮な竹からより美味しい部分だけを食べるという、食へのこだわりが強いエイメイ。

アドベンチャーワールド ジャイアントパンダ エイメイ

性格は穏やかで、メスの発情期にも優しく接するジェントルマン。

そのため、メスの抵抗を受けることが少なく、自然交配に何度も成功しています。魅力的で繁殖能力が高い、文句なしのオス!

そんな理想のオスパンダ、エイメイは1992年生まれ。現在29歳です。

野生での寿命が20年ほどのジャイアントパンダ。

飼育下では、2020年に死亡した中国・重慶動物園のシンシン(新星)が世界最高齢の38歳でした。ちなみに、シンシンはリーリーの祖母に当たります。

ジャイアントパンダ界で、エイメイはかなりのご高齢。世界最高齢の繁殖成功パンダとして、自身で3度も記録を塗り替えています。

繁殖において、世界有数のパンダであるエイメイ。

今後、エイメイのように高齢になっても繁殖できるジャイアントパンダが現れるとは限りません。

生きる伝説のパンダに会いに行きましょう!

アドベンチャーワールド ジャイアントパンダ 永明 エイメイ

パンダの赤ちゃんに会える動物園

2017年から2021年までに、日本で5頭のジャイアントパンダが誕生しました。

上野動物園

シャンシャン(香香)

2017年6月12日東京都・上野動物園生まれ。メス。

2012年の第1子出産(その後まもなく死亡)以来、5年ぶりとなるシンシンの出産でした。

シャンシャンはすくすく成長し、日本中に大きな喜びをもたらしました。

2018年12月に1歳半を迎えたシャンシャンは、母親シンシンとの別居が完了しています。

当初はシャンシャンが2歳になったら、中国に返還する決まりでした。

しかし、日本からの要望により延長。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックにより、延長となっていました。

2021年12月現在、中国返還の期日が2022年6月まで延長されています。

シャンシャンは東園のジャイアントパンダ舎で展示されており、観覧列に並べば終日会うことができます。

ただ、ジャイアントパンダの観覧列は16時に締め切られます。混雑時には時間を早めるようなので、ご注意下さい。

上野動物園 シャンシャン ジャイアントパンダ
2018年4月撮影

シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)

2021年6月23日 東京都・上野動物園生まれ。

双子の子は、シャオシャオ(オス)、レイレイ(メス)と名付けられました。

一般に、ジャイアントパンダが双子を出産した場合、母親は生育の良い1頭しか育てることができません。

そのため、飼育下では2頭の子を引き離し、1頭を母親、1頭をヒトの手で育てます。しばらくしたら子を入れ替えます。

この行為を繰り返し、2頭とも母親の愛情を受け、さらに健康管理が行き届いた状態で生育することができます。

順調にいけば、数か月後には母親のもとに双子が戻されます。すると母親が2頭をわが子と認識し、2頭同時の育児に取り組むようになります。

シャオシャオとレイレイは順調に育ち、10月からはシンシンとともに3頭で過ごしています。

2022年1月より一般公開。専用サイトより事前抽選に当選した方しかシンシン親子を見ることはできません。

詳しくは、公式HPでご確認ください。

アドベンチャーワールド

サイヒン(彩浜)

2018年8月14日和歌山県・アドベンチャーワールド生まれ。メス。

さきほど紹介したエイメイと 2番目の奥さんであるラウヒン(良浜) の9番目の子。

母親の愛情を受け、すくすくと成長したサイヒン。

3歳となったサイヒンは、10-16:30の間、パンダラブで会うことできます。

アドベンチャーワールド サイヒン パンダ
2019年5月撮影

フウヒン(楓浜)

2020年11月22日和歌山県・アドベンチャーワールド生まれ。メス。

2021年10月より、ブリーディングセンター屋外展示場で公開されています。観覧は15時までなので注意。


ジャイアントパンダの繁殖がどれほど大変か、赤ちゃんパンダがどれほど貴重か、おわかりいただけたでしょうか?

メスの発情期の短さ、生まれてくる赤ちゃんの未熟さ。1頭の子パンダが誕生・成長するには、数々の困難が待ち受けています。

日本ではジャイアントパンダのおめでたいニュースが続いています。

いずれ中国に送られるパンダの赤ちゃんたちに、ぜひ会いに行きましょう!

以上、ジャイアントパンダの繁殖のお話でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会

スミソニアン国立動物園