ホッキョクグマの生態と繁殖!野生ホッキョクグマの暮らしとは?

06/01/2020

北極の周囲、氷で覆われた海やその周辺に生息するホッキョクグマ。

野生のホッキョクグマは、極北の地でどのような生活を送っているのでしょうか?

今回は、ホッキョクグマの日常にクローズアップ!そして、ホッキョクグマの繁殖が期待される日本の動物園・水族館を紹介します。

王子動物園 ホッキョクグマ

ホッキョクグマの生態

ホッキョクグマの生息地

ホッキョクグマの生息域は、カナダやロシア、グリーンランドなどの北極圏。一年中氷で覆われている沿岸部や島などに生息しています。

氷が溶ける夏には、陸地に移動します。陸には、ホッキョクグマの獲物がいないため、再び氷が張る冬までホッキョクグマは絶食に近い状態となります。

通常、成熟したホッキョクグマは単独で生活しています。子ホッキョクグマは、2歳ごろまで母親と行動します。

野生のホッキョクグマは狩りと移動、そして睡眠に多くの時間を割いています。

ホッキョクグマの睡眠

ホッキョクグマは、自分で掘った穴や自然のくぼ地を利用した寝床を確保します。雪や氷に覆われた極寒の地から、身を守るためです。

北極周辺では6月ごろに海の氷が溶け始め、アザラシ等の獲物がいなくなります。そのため、ホッキョクグマは海上より陸地で過ごす時間が長くなり、1日20時間も寝ることが確認されました。

これは、暇を持て余しているわけではありません。エネルギー消費を減らし、体力温存を図っていると考えられています。

東山動植物園 ホッキョクグマ

一方、冬になると獲物が増えるため、狩りと移動に費やす時間が長くなります。それに伴い、睡眠時間は7.5時間ほどに減少します。

ホッキョクグマは流氷がある地域では氷の上に乗り、ない地域では泳いで移動します。

近年、氷や獲物の減少により、ホッキョクグマの行動範囲は広がりつつあります。2011年には、9日間で600キロ以上泳いだホッキョクグマが報告されました。

ホッキョクグマの狩り

狩りはもっぱら海上で行われ、ターゲットはアザラシが主。

ホッキョクグマは、水中から顔を出すアザラシを氷の上で待ち伏せ。もしくは、氷上で休んでいるアザラシに海中から忍び寄り、一気に襲いかかります。

一方で、クマは雑食です。空腹とあれば草や果物も食べます。

地球温暖化により北極の海氷が減少しています。氷がなければアザラシもいません。つまり、ホッキョクグマの獲物は海にいません。

ホッキョクグマは陸地生活が長くなり、エサを求めて人里で目撃されることが増えています。

地球温暖化は、北極の動物たちに致死的影響を与えています。

ホッキョクグマの繁殖

ホッキョクグマは哺乳類の中でも、とくに繁殖率が低い動物です。一生のうちに、5頭ほどしか子を残せません。

オスは6歳ごろ、メスは4~5歳で性成熟を迎えます。

おとなメスのホッキョクグマは、3月下旬~6月上旬にかけて発情期に入ります。オスは、発情しているメスが出す匂いを追跡すると考えられています。

繁殖可能なメスを巡り、オス同士は戦います。そして、優位となったオスがより多くのメスと交尾できます。カップルとなったオスとメスは1週間以上ともに過ごします。

繁殖活動の多くは4~5月に行われますが、着床遅延が起こり、秋になるまで妊娠は進みません。

着床:受精後、胚が子宮内に定着し発育を始める。
着床遅延:受精後すぐ胚が着床せず、一定期間後、もしくは条件が整った後に着床すること。

その頃、母グマは雪が積もった斜面などに巣穴をつくり、出産・育児の場所を確保します。出産のピークは12~翌1月。ホッキョクグマは、通常2頭の子を出産します。

生まれたてのホッキョクグマの赤ちゃんは、目が見えず毛も生えそろっていません。およそ30センチと小さく生まれますが、母親の質の良いミルクを飲み、日に日に大きくなります。

そして春、体重10キロほどに成長した赤ちゃんホッキョクグマが、巣穴から出るようになります。

驚くことに、母ホッキョクグマは出産前から子が外に出れる体に育つまでの間、何も口にしません。そのため、着床までの間に栄養や脂肪を蓄える必要があります。

メスの体重は通常200~300キロ。巣穴に入る前には200キロほど体重を増やし、絶食に備えます。

十分に体調を整えなければ、死産となったり出産後まもなく死亡したりする可能性が高くなります。2頭無事に生まれたとしても、体力差があり1頭しか生き残れない場合もあります。

一般的に、ホッキョクグマの幼獣は、2年ほど母親とともに生活します。その間、母親の発情はありません。

飼育施設でのホッキョクグマ繁殖

現在、日本では30頭以上のホッキョクグマが飼育されています。

北海道
  • 円山動物園
  • 旭山動物園
  • おびひろ動物園
  • 釧路市動物園
東北~中部
  • 八木山動物公園
  • 男鹿水族館GAO
  • 上野動物園
  • よこはま動物園ズーラシア
  • 八景島シーパラダイス
  • 日本平動物園
  • 浜松市動物園
  • 豊橋総合動植物公園
関西~九州
  • アドベンチャーワールド
  • 天王寺動物園
  • 王子動物園
  • とくしま動物園
  • とべ動物園
  • 熊本市動植物園
  • 平川動物公園

ホッキョクグマの繁殖可能年齢は、20歳前後と考えられています。

高齢化していいる日本のホッキョクグマたち。希少なホッキョクグマがいなくならないよう、国内の施設は共同繁殖に力を入れています。

上野動物園 ホッキョクグマ
イコロとデア(上野動物園)

北海道のホッキョクグマ

北海道は日本動物園水族館協会に加盟しているすべての動物園に、ホッキョクグマがいます。

寒い地域だからこそ、ホッキョクグマ本来の行動を観察することができるでしょう。

  • 円山動物園
    デナリ(26歳) ララ(25歳) リラ(5歳)
  • 旭山動物園
    サツキ(28歳) ルル(25歳) ホクト(19歳) ピリカ(14歳)
  • おびひろ動物園
    アイラ(9歳)
  • 釧路市動物園
    キロル(11歳) ミルク(7歳)

飼育数減少が危惧されているホッキョクグマは、繁殖目的の移動が頻繁に行われています。

ホッキョクグマ館がオープン!円山動物園

札幌市円山動物園では、2018年3月に新たなホッキョクグマ館が誕生しました。水中トンネルを含む国内最大級の展示場!繁殖を意識し、エンリッチメントに富んだ施設です。

1985年、円山動物園で最初の繁殖に成功しました。

1995年と1996年に、現在も飼育されているデナリとララが来園。その後、2頭のペアリングが功を奏し、繁殖例が増えました。

ララは死産を繰り返しながらも、8頭の子を育て上げました。上からツヨシ(メス)、ピリカ(メス)、イコロ(オス)・キロル(オス)、アイラ(メス)、ポロロ(メス)・マルル(メス)そしてリラ(メス)です。

2020年5月現在、円山動物園にはデナリ、ララ、末っ子のリラが飼育されています。

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第1子のツヨシ(2003年生)は2005年に釧路市に移動。その後、性別がオスではなくメスと判別されました。2016年からは、よこはま動物園ズーラシアで飼育されています。

【You Tube】ツヨシの動画をチェック

イコロ(2008年生)は、2015年より上野動物園で飼育されています。同い年のデアとの繁殖に期待が高まっています。

2012年生まれの双子、ポロロとマルルはそれぞれ、とくしま動物園と熊本市動植物園で飼育されています。マルルは現在も単独飼育されています。

一方のポロロは、2020年5月旭山動物園のイワンが来園したため、2頭飼育となりました。相性が良ければ繁殖に至るかもしれません。

【You Tube】徳島市公式チャンネルでポロロの動画をチェック

繁殖が期待されているホッキョクグマ

現在、日本で暮らすホッキョクグマのうち、繁殖の可能性が高い個体をご紹介します。

1児の父!天王寺動物園のゴーゴ

ゴーゴは、2004年にロシアの動物園で生まれました。2006年、天王寺動物園にやって来たときは、まだ2歳にもなっていませんでした。

2011年、静岡県・浜松市動物園よりメスのバフィンが来園しました。バフィンはスウェーデンの動物園生まれ、当時20歳でした。

性成熟を迎えたばかりのゴーゴ。不安視する声も多い中、2013年3月に初の交尾を確認しました。その際は、妊娠には至りませんでした。

翌2014年3月、再び繁殖行動が観察されました。そして11月、天王寺動物園で待望のホッキョクグマの赤ちゃんが誕生。バフィンは、23歳という高齢出産に成功しました。

モモと名付けられた女の子は、バフィンの愛情を受けて元気に成長しました。

【You Tube】モモとバフィンの動画はこちら

バフィンとモモは、2016年に浜松市動物園に帰って行きました。皆の期待を背負ってモモを産み育ててくれた、バフィンに感謝です。

一方、父親のゴーゴは、2015年3月、ブリーディングローンにより和歌山県・アドベンチャーワールドに移動しました。

3年連続で交尾が観察されたものの、妊娠には至りませんでした。そのため、2018年に天王寺に帰って来ました。

イッちゃんの妊娠に期待!

ゴーゴの初の繁殖相手となったバフィンは、高齢のためさらなる繁殖は断念。そこで、次のパートナーとなるべく、イッちゃんが導入されています。

イッちゃんは、2013年にロシアの動物園で誕生。ゴーゴがアドベンチャーワールドに行った直後に来日しました。

2020年2月から4月まで、ゴーゴとイッちゃんは初の同居生活を送りました。ゴーゴは見事、交尾まで辿り着いています。

大阪でホッキョクグマの赤ちゃんを見れる日は、そう遠くないかもしれませんね。

【追記】2020年11月、メスのホウが誕生しました。

交尾経験あり!旭川動物園のホクト

2000年生まれ、ロシアの動物園出身のホクト。2002年に兵庫県・姫路市動物園にやってきました。その後、セルビア出身のユキとペアリングを成功させました。

ユキは2度ホクトの子を出産するも、子は育ちませんでした。2013年以降、2頭の交尾は確認されていません。

まだ、繁殖能力があると考えられる2頭。

それぞれの子孫を残すべく、ユキは2019年3月に秋田県・男鹿水族館へ、ホクトは2020年6月に旭山市・旭川動物園へ移動しました。

旭山には、もともとオスのイワンと、3頭のメスがいました。20歳以上となったサツキとルル、そしてララの次女であるピリカ(13歳)です。

交尾には至るものの、イワンと3頭のメスとの繁殖は失敗に終わっています。

高齢となり今後の妊娠が難しいと思われるサツキとルルに比べ、ピリカは若く繁殖成功のカギを握っています。そこで、イワンを徳山動物園に送り、繁殖オスとしてホクトを迎え入れました。

交尾経験のあるホクト。ピリカと良い関係が築ければ、赤ちゃん誕生に結びつくことでしょう。

【You Tube】ホクトのお別れ会の様子はこちら

新ペア誕生!男鹿水族館の豪太

豪太は2003年ロシアの動物園生まれ、2005年に男鹿水族館にやって来ました。2011年に、釧路市動物園からクルミが来園しました。

クルミとの間には、2012年メスのミルクが誕生しています。ミルクは元気に育ち、現在は釧路市動物園で飼育されています。

2018年1月、パートナーだったクルミ(21歳)が死亡。

繁殖成功例のある豪太の力に期待すべく、姫路市動物園からユキがやって来ました。

ユキは1999年にセルビアの動物園で生まれ、2002年に来日しました。ホクトとの繁殖に成功しましたが、子はすべて産後すぐに亡くなっています。

6年間ほど交尾を行っていなかったユキですが、なんと飼育開始月から豪太と同居。そして5月までに7回の交尾が観察されました。

2019年は妊娠に至りませんでしたが、翌2020年にも同居・繁殖行動が行われています。

環境の変化が吉と出たのか、豪太との相性が良かったのか、喜ばしいニュースです。

ホッキョクグマでは高齢にあたるユキ。今後、落ち着いた環境で元気な赤ちゃんを授かってほしいですね。

【追記】2020年12月、オス1頭が誕生しました。現在、名前募集中です。

若いペアに期待!日本平動物園のロッシー

ロッシーは2007年にロシアの動物園で誕生し、翌2008年に日本平動物園にやって来ました。

バニラはタイの動物園生まれ、ロッシーより2つ年下です。2011年にお嫁さんとして来日しました。

2頭は2015年に繁殖に成功しました。しかしながら、バニラが赤ちゃんを噛み殺してしまいました。初産だったため、子を認識できなかったのかもしれません。

その後も繁殖に向けた同居が実施されています。今のところ妊娠の報告はありませんが、まだまだ若い2頭に期待が高まります。


極寒の地で暮らすホッキョクグマの日常は、イメージできましたか?

狩りと移動そして休息を繰り返し、寒さや飢えに耐えながら生きています。

ホッキョクグマの繁殖は自然界でも困難です。

日本をはじめ全世界の施設で、ホッキョクグマ繁殖は重要な課題となっています。

海の氷の減少とともに、行き場をなくしているホッキョクグマ。

この美しい動物が絶滅しないよう、地球に優しい生活を心がけましょう。

以上、ホッキョクグマの生態と繁殖でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会