ホッキョクグマは寒くない?毛と皮ふに秘められた3つの特徴
ホッキョクグマが寒さに強い理由がわかる記事|からだの特徴
極寒の地に生息するホッキョクグマ。
クマのなかまであるジャイアントパンダやヒグマは寒いところにすんでいます。ところが、氷のうえで生活しているのはホッキョクグマだけです。
なぜホッキョクグマは北極で生きていけるのかでしょうか?
ホッキョクグマの毛の仕組みや皮ふの色、肉球の形など。今回のzoo zoo diaryはホッキョクグマの特徴を紹介します。
そして、ホッキョクグマが寒さに強い理由をひもといていきましょう!
ホッキョクグマとは?
全身が白い毛でおおわれているホッキョクグマ。特別な印象をうけますが、分類としてはヒグマやツキノワグマ等とおなじ「クマ属」の動物です。
- 食肉目 Carnivora
- クマ科 Ursidae
- クマ属 Ursus
- ホッキョクグマ Ursus maritimus
- クマ属 Ursus
- クマ科 Ursidae
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 ロシア、カナダ等北極圏 2.5万頭
- 体長 200~250cm
- 体高 140cm
- 体重 オス400kg メス200kg
生息地はカナダやロシアなどの北極圏。マイナス40度という厳しい寒さが訪れる地に生息しています。
ホッキョクグマは冷たい海を泳いだり、流氷に乗って移動したり、陸地より海上で過ごすことが多いといわれています。
夏は北上、冬は南下する行動範囲のひろい動物です。
北極という土地柄や行動範囲が非常に広いことから、生息数調査がむずかしいホッキョクグマ。
推定生息数は2万~3万頭。地球温暖化による北極海氷の減少にともないホッキョクグマも減少し、絶滅のおそれが高い状態(IUCNレッドリスト危急)です。
実際にはホッキョクグマが安定して過ごせている地域と、依然として減りつづけている地域が報告されています。
なおワシントン条約によって輸出入が規制されています。商業取引は可能ですが、非常に高値でやりとりされている動物です。
この記事は「ホッキョクグマのからだの特徴」を紹介しています。ホッキョクグマの日常や繁殖等を知りたい方は下記をご覧ください↓
地上最大の肉食獣!小顔・首長なクマ
ホッキョクグマは地上最大の肉食獣として知られています。
大きなオスは体重600kg、体長250cmほどに成長します。立ちあがったときの身長3メートル以上と最大にふさわしい大きさです。
メスは一般にオスより体長がみじかく、半分ほどの体重しかありません。ただし妊娠期には栄養を蓄えるため500kgほどに増えます。
ところで、大きな体のホッキョクグマですが、他のクマと比べるとスタイルが良いと思いませんか?
それは、顔が小さく首が長いからです。
小顔は水の抵抗を少なくし、長い首は息継ぎをしやすくしてくれます。クマのなかで圧倒的に泳ぎが上手な由縁です。
そして、最大の特徴は白い毛。
ところが、ホッキョクグマは実際は白色ではありません。ホッキョクグマの毛の秘密を解き明かしましょう!
ホッキョクグマが寒さに強い理由とは?
ホッキョクグマは陸上動物が住みつかないような北極に生息しています。
なぜマイナス何十度にもなる雪や氷の上で生活できるのでしょうか?
それは、ホッキョクグマの3つの特徴が答えとなります。
- 体毛:保温性と防水性
- 皮膚:色と厚み
- 肉球:大きさと形
ホッキョクグマの毛|保温と防水
ホッキョクグマ特有の白い毛は氷上で生きるホッキョクグマならではの進化です。その体毛にはいくつか秘密が隠されています。
ホッキョクグマは何色?
わたしたちの目には白く見えるホッキョクグマ。
しかし、ホッキョクグマの毛は白色ではありません。
実は「無色透明」
小さな穴がたくさん空いており、毛の中心部分は空洞になっています。光の反射でわたしたちの目には白色に映ります。
毛が空洞なのはなぜ?
ホッキョクグマの毛が透明なトンネル状に進化したのは、もちろん寒さに耐えるためです。
一般に、物体に当たった光は跳ねかえされます。反射された光は吸収されることはありません。
小さな空洞(ホッキョクグマの体毛)から入り込んだ光は、穴の壁に何度もあたります。ふつうは跳ねかえって出ていく光も、反射をくりかえすうちに吸収されていきます。
結果、より多くの光(熱)を取りこむことができます。光は最終的に大きな空洞をとおって皮ふにとどきます。
無数の空洞をもつ毛が太陽の光を効率よく吸収できるため、ホッキョクグマは極寒の地でも体温を維持できるのです。
さらに、毛そのもの以外にも秘密があります。
ホッキョクグマは濡れない?!
ホッキョクグマの体毛は外側と内側の2層構造。
外側は10cm以上と長く硬い毛。内側は5cmほどの短い毛が密集しています。
外毛は濡れると互いにくっつきレインコートの役割を担います。表面は滑らかで、陸にあがると水滴がするっと毛から落ちます。
内毛は外毛に守られています。たとえ濡れたとしても、密度が高いため皮ふが濡れることはありません。
水分が皮ふに達しないばかりか体毛にもとどまらない構造。
ホッキョクグマの毛には寒さを生き抜くヒントが隠されています。
はだの色|ホッキョクグマは白くない
驚くことに、ホッキョクグマの地肌は真っ黒!
ホッキョクグマが黒いなんて、全く想像できませんよね。
ご存知のとおり、黒色は光を吸収しやすい性質をもちます。その光エネルギーは熱へと変換されます。
つまり、空洞の毛を通ってきた光は黒い皮ふからたくさん吸収され、結果として多くの熱を生みだします。
ホッキョクグマの特徴的な毛と皮ふは太陽の光を効率よく吸収できる優れものです。
さあ「白い」と思っていたホッキョクグマ。みなさんは何色と答えますか?
肌の色でいくと「黒」毛の色でいくと「透明」でもわれわれの目には白に見えるから「白」でしょうか?
はたまた空洞の中に汚れや藻が入ると「茶」や「緑」色のホッキョクグマになります。
ホッキョクグマはいったい何色か。白とは単純に答えられない問題ですね。
5cm以上!ぶあつい脂肪
ホッキョクグマの体は5~10cmにもなる厚い脂肪で覆われています。
食料不足のときの貯蓄はもちろん。熱の産生や断熱など、寒さ対策になくてはならない存在です。
しかし近年は獲物の減少のためか、痩せたホッキョクグマが多いことが心配されています。
ちいさな肉球|くらべてみよう!
みなさんはクマの肉球って見たことありますか?
比べてみるとわかりますが、ホッキョクグマの肉球は小さめ。これも、寒いところに住むための秘訣です。
ホッキョクグマの大きくて幅広いあしの裏には小さなこぶのような肉球があります。
この肉球のおかげで、ホッキョクグマは滑りやすい氷の上で動きまわることができます。
さらに、肉球の間まで毛がぎっしり生えています。
雪や氷に接するあしの裏はとくに冷えやすい部分。密度の高い毛によって守られています。
北極に生息するホッキョクグマは見た目や体の仕組みなど他のクマとは異なる点がいくつもあります。
一方で、ホッキョクグマはヒグマが進化したものだと考えられています。
わたしたちはホッキョクグマを知ることにより、環境に順応するための進化を見て学ぶことができるのです。
ホッキョクグマは絶滅のおそれがあります
陸地より海上で過ごすことが多いといわれるホッキョクグマ。昨今、北極における海氷減少(生息地減少)がホッキョクグマを絶滅へと追いやっています。
地球温暖化が及ぼす影響
地球の気温上昇にともない北極圏の海水温があがり、海氷の量がへっています。
生息地と獲物がへっています
氷がないということはホッキョクグマやホッキョクグマの獲物(アザラシ)の生息地がないということ。ホッキョクグマにとっては住みかも食料も減っている状況です。
テリトリー争いや獲物不足によりホッキョクグマの餓死や共食いが増加したといわれています。
通常、ホッキョクグマは氷がとけだす前に海氷上を北へ移動します。
ところが、氷がとける時期が早まったり、大きな氷がとけたりして、足場を失うという問題が発生。
すると、ホッキョクグマたちは安定した海氷や陸地まで長い距離を泳がなければなりません。過去に600km以上の距離を泳いだ例が確認されています。
子グマの死亡やヒトとの接触がふえています
また、長距離移動のときに、まだ十分な体力のない子グマが亡くなるケースが続出しています。
もともと死産が多いとされるホッキョクグマ。子グマの死亡がふえているならば、いよいよホッキョクグマ絶滅の可能性が増します。
さらにヒトがすんでいる地域にやってきて食べものを探すホッキョクグマも観察されています。
人間生活を脅かす動物は「悪者」として取りあげられることもあります。
しかし、事の発端は森林破壊や温室効果ガス排出などヒトの行いです。
北極海に浮かぶ島の町に50頭ものホッキョクグマが移住し、大きな問題となっています。
それでもなお、ロシア政府は北極圏の開発や軍事拡張を進めています。
ホッキョクグマのためにエコな生活をしよう!
冷房の温度を1度上げる、テレビや電気をつけっぱなしにしない、公共交通機関を利用する等、ひとりひとりが環境を意識するだけで立派な地球温暖化対策になります。
ホッキョクグマやヒトを含むすべての生きものの未来のために、今の自分にできることをしましょう!
[広告]WWF(世界自然保護基金)はさまざまなブランドとコラボレーションしています。日用品の購入を自然と動物の保護活動につなげることができます。
ホッキョクグマの特徴【まとめ】
- 地上最大の肉食動物
- 小顔&首長 → 泳ぎが上手
- 透明な毛&黒い皮ふ → より多くの熱を吸収できる
- ながい毛 → 2層構造(防水の外毛と密な内毛)
- あつい脂肪 → 貯蓄、熱産生、断熱
- ちいさな肉球 → 滑りにくい 毛深い(凍傷予防)
ホッキョクグマは氷のうえで過ごす唯一のクマ。地上最大の肉食獣とよばれ、極寒の地で生きぬいていきました。
さむさに耐えるため毛や皮ふ、肉球を進化させたホッキョクグマ。ほかのクマとことなる点が寒さに強い理由につながっています。
ぜひ動物園でホッキョクグマのちいさなところまでじっくり観察してみてください。
飼育施設は「ホッキョクグマに会える動物園・水族館 一覧とニュース」に掲載しています。
以上、ホッキョクグマの豆知識でした。
【参考】
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