ホッキョクグマは寒くない?毛と皮ふに秘められた3つの特徴

05/26/2020

極寒の地に生息するホッキョクグマ。

クマのなかまであるジャイアントパンダやヒグマは寒いところにすんでいます。ところが、氷のうえで生活しているのはホッキョクグマだけです。

なぜホッキョクグマは北極で生きていけるのかでしょうか?

ホッキョクグマのの仕組みや皮ふの色、肉球の形など。今回のzoo zoo diaryはホッキョクグマの特徴を紹介します。

そして、ホッキョクグマが寒さに強い理由をひもといていきましょう!

ホッキョクグマの生態を知りたい方は「ホッキョクグマの生態と繁殖!野生ホッキョクグマの暮らしとは?」をご覧ください。

ホッキョクグマに会える動物園・水族館リストは別記事に載せています↓

ホッキョクグマとは?

ホッキョクグマは全身白く、ほかのクマとはちがった印象をうけます。しかし、ヒグマやツキノワグマなど一般的なクマとおなじ属に分類されます。

  • 食肉目 Carnivora
    • クマ科 Ursidae
      • クマ属 Ursus
        • ホッキョクグマ Ursus maritimus

ホッキョクグマの生息地はカナダやロシアなどの北極圏。マイナス40度という厳しい寒さが訪れる地に生息しています。

陸地より海上で過ごすことが多く、冷たい海を泳いだり、流氷に乗って移動したりします。夏は北上し、冬は南下する動物です。

地球温暖化による北極海氷の減少に伴い、ホッキョクグマは減りました。現在はホッキョクグマが安定して過ごせている地域と、依然として減りつづけている地域があります。

ホッキョクグマは北極という土地柄や行動範囲が非常に広いことから、生息数調査がむずかしい動物です。

生息数2万~3万頭と推定され、IUCNは絶滅のおそれがる危急(VU)と評価しています。

  • IUCNレッドリスト 危急(VU)
  • ワシントン条約 附属書Ⅱ
  • 生息 ロシア、カナダ等北極圏 2.5万頭
  • 体長 200~250cm
  • 体高 140cm
  • 体重 オス400kg メス200kg
サンディエゴ動物園 ホッキョクグマ

IUCNレッドリストについて詳しくは「絶滅危惧種の解説」をご覧ください。

ホッキョクグマの生態は別記事にくわしく掲載しています↓

ホッキョクグマの形態

ホッキョクグマは地上最大の肉食獣として知られています。

大きなオスは体重600kg体長250cmほどに成長します。立ちあがったときの身長3メートル以上と最大にふさわしい大きさです。

メスは一般にオスより体長が短く、半分ほどの体重しかありません。ただし妊娠期には栄養を蓄えるため500kgほどに増えます

ところで、大きな体のホッキョクグマですが、他のクマと比べるとスタイルが良いと思いませんか?

それは、顔が小さく首が長いからです。

小顔は水の抵抗を少なくし、長い首は息継ぎをしやすくしてくれます。クマのなかで圧倒的に泳ぎが上手な由縁です。

そして、最大の特徴は白い毛。

ところが、ホッキョクグマは実際は白色ではありません。ホッキョクグマの毛の秘密は、次の章でお話します。

上野動物園 ホッキョクグマ

ホッキョクグマが寒さに強い理由とは?

ホッキョクグマは陸上動物が住みつかないような北極に生息しています。

なぜマイナス何十度にもなる雪や氷の上で生活できるのでしょうか?

それは、ホッキョクグマの3つの特徴が答えとなります。

  • 体毛:保温性と防水性
  • 皮膚:色と厚み
  • 肉球:サイズ

ホッキョクグマの毛|保温と防水

ホッキョクグマを特別にする白い毛は、氷上で生きるホッキョクグマならではの進化です。その体毛にはいくつか秘密が隠されています。

ホッキョクグマは何色?

わたしたちの目には白く見えるホッキョクグマ。

しかし、ホッキョクグマの毛は白色ではありません。

実は、無色透明

小さな穴がたくさん空いており、毛の中心部分は空洞になっています。光の反射でわたしたちの目には白色に映ります。

毛が空洞なのはなぜ?

ホッキョクグマの毛が透明なトンネル状に進化したのは、もちろん寒さに耐えるためです。

一般に、物体に当たった光は跳ね返されます。反射された光は吸収されることはありません。

小さな空洞(ホッキョクグマの体毛)から入り込んだ光は、穴の壁に何度も当たります。ふつうは跳ね返って出ていく光も、反射をくりかえすうちに吸収されていきます。

結果、より多くの光(熱)を取りこむことができます。光は最終的に大きな空洞を通って皮膚にとどきます。

無数の空洞をもつ毛が太陽の光を効率よく吸収できるため、ホッキョクグマは極寒の地でも体温を維持できるのです。

さらに、毛そのもの以外にも秘密があります。

ホッキョクグマは濡れない?!

ホッキョクグマの体毛は外側と内側の2層構造。外側は10cm以上と長く硬い毛。内側は5cmほどの短い毛が密集しています。

外毛は濡れると互いにくっつき、レインコートの役割を担います。表面は滑らかで、陸に上がると水滴がするっと毛から落ちます。

内毛は外毛に守られています。たとえ濡れたとしても、密度が高いため皮ふが濡れることはありません。

水分が皮ふに達しないばかりか体毛にもとどまらない構造。

ホッキョクグマの毛には、寒さを生き抜くヒントが隠されています。

東山動植物園 ホッキョクグマ

はだの色|ホッキョクグマは白くない

驚くことに、ホッキョクグマの地肌は真っ黒

ホッキョクグマが黒いなんて、全く想像できませんよね。

ご存知の通り、黒色は光を吸収しやすい性質を持ちます。その光エネルギーは熱へと変換されます。

つまり、空洞の毛を通ってきた光は黒い皮膚からたくさん吸収され、結果として多くの熱を生みだします。

ホッキョクグマの特徴的な毛と皮膚は太陽の光を効率よく吸収できる優れものです。

さあ「白い」と思っていたホッキョクグマ。みなさんは何色と答えますか?

肌の色でいくと「黒」毛の色でいくと「透明」でもわれわれの目には白に見えるから「白」でしょうか?

はたまた空洞の中に汚れや藻が入ると「茶」や「緑」色のホッキョクグマになります。

ホッキョクグマはいったい何色か。白とは単純に答えられない問題ですね。

王子動物園 ホッキョクグマ

5cm以上!ぶあつい脂肪

ホッキョクグマの体は5~10cmにもなる厚い脂肪で覆われています。

食料不足のときの貯蓄はもちろん。熱の産生や断熱の役割も果たしています。

近年は獲物の減少によりやせ細ったホッキョクグマがおおく、問題視されています。

ちいさな肉球|くらべてみよう!

みなさんはクマの肉球って見たことありますか?

比べてみるとわかりますが、ホッキョクグマの肉球は小さめ

これも、寒いところに住むための秘訣です。

クマの肉球
左:ホッキョクグマ 右:アメリカクロクマ

ホッキョクグマの大きくて幅広い足の裏には小さなこぶのような肉球があります。

この肉球のおかげで、ホッキョクグマは滑りやすい氷の上で動きまわることができます。

さらに、肉球の間まで毛がぎっしり生えています

雪や氷に接する足の裏はとくに冷えやすい部分。密度の高い毛によって守られています。

北極に生息するホッキョクグマは、見た目や体の仕組みなど他のクマとは異なる点がいくつもあります。

一方で、ホッキョクグマはヒグマが進化したものだと考えられています。

わたしたちはホッキョクグマを知ることにより、環境に順応するための進化を見て学ぶことができるのです。

ホッキョクグマの現状

温暖化が及ぼす影響

地球温暖化により、北極圏の海水温があがり多くの氷が解けています。

氷がないということはアザラシがいないということ。つまり、ホッキョクグマの獲物がいないということです。

ホッキョクグマは氷ができる冬が訪れるのをいまかいまかと待ちわびています。

また、氷が早く解けてしまうと、安定した海氷や陸地まで長い距離を移動しなければなりません。その移動中に子グマが亡くなるケースが報告されています。

彼らや彼らのターゲットの生息地減少により、ホッキョクグマの餓死や共食いが増加したといわれています。

さらにヒトがすんでいる地域にやってきて食べものを探すホッキョクグマも観察されています。

人間生活を脅かす動物は悪者として取りあげられることもあります。しかし、事の発端は森林破壊や温室効果ガス排出などヒトの行いです。

北極海に浮かぶ島の町に50頭ものホッキョクグマが移住し、大きな問題となっています。

それでもなお、ロシア政府は北極圏の開発や軍事拡張を進めています。

ホッキョクグマのためにエコな生活をしよう!

冷房の温度を1度上げる、テレビや電気をつけっぱなしにしない、公共交通機関を利用する等、ひとりひとりが環境を意識するだけで立派な地球温暖化対策になります。

ホッキョクグマやヒトを含むすべての生きものの未来のために、今の自分にできることをしましょう!

ホッキョクグマは氷のうえで過ごす唯一のクマ。地上最大の肉食獣とよばれ、極寒の地で生き抜いていきました。

さむさに耐えるため毛や皮ふ、肉球を進化させたホッキョクグマ。ほかのクマとことなる点が寒さに強い理由につながっています。

ちいさなところまでじっくり観察してみてください。

以上、ホッキョクグマの豆知識でした。

【参考】

国際自然保護連合

日本動物園水族館協会