日本で会える野生絶滅シフゾウ、シロオリックス、ヒトコブラクダ
絶滅した動物といえば?
マンモスや恐竜など大昔の動物を思い浮かべる方が多いかもしれません。
一方で、ここ数百年で野生から姿を消した動物はたくさんいます。そのなかには、動物園で飼育され続けている動物たち(野生絶滅種)がいます。
今回は知られざる野生絶滅種に注目!日本で会える野生絶滅の動物を紹介していきます。
野生絶滅とは?
一般に野生生物の絶滅危機の指標は、IUCN(国際自然保護連合)が発表するレッドリストに基づいています。
IUCNレッドリストにおける野生絶滅(Extinct in the Wild, EW)とは、野生ではすでに絶滅した種をさします。
シフゾウ、シロオリックス、ハワイガラスなど、およそ30種類の動物がEWと記載されています。
生息地における野生の個体は確認されていませんが、本来の生息地以外での野生個体や飼育下の個体は生存している状態です。
動植物の絶滅の多くは、乱獲や開拓などヒトの影響によります。
野生絶滅種は幸い飼育下で繁殖に成功し、種を維持しています。近年は、飼育下繁殖した個体を野生に帰す活動が行われています。
今後、野生絶滅(EW)から近絶滅(CR)等に評価が変わる種があるかもしれません。
日本で会える野生絶滅種
2016年の発表において、野生絶滅(EW)に記載された哺乳類は、シフゾウとシロオリックスの2種。
幸運にも、この2種は日本の動物園で会うことができます。
また、この章では大昔に野生で絶滅した動物、ヒトコブラクダも紹介します。
シフゾウ
鯨偶蹄目シカ科シフゾウ属。
英語では、ヨーロッパにシフゾウをもたらした人物(アルマン・ダヴィド神父)にちなんで、Pere David’s Deer(ダヴィド神父のシカ)と呼ばれています。
中国では、シカでもウシでもロバでもウマでもない様子から「四不像」と名付けられたといわれています。
シフゾウは、中国の川や湿地に生息していました。水を好み、草だけでなく水生植物も食べる動物です。
体格に雌雄差があり、オスは体長2メートル、体重200kgほどの大きなシカです。
シフゾウは長い顔と長い尾を持ちます。また、目頭から分泌腺が伸びているため、目も長く見えます。
成熟したオスの角は、ほぼ垂直に伸びたメインの角から枝分かれします。根元付近から分岐が始まり、年を重ねるごとに枝分かれが増えていきます。

乱獲のため野生から姿を消したシフゾウたち。
幸か不幸か、中国皇帝は狩りを楽しむために、捕獲したシフゾウを所有地に保護していました。そのうち数頭がヨーロッパへ輸出されました。
大洪水ののち、中国のシフゾウはすべて亡くなってしまいましたが、ヨーロッパで飼育されていたシフゾウが見事繁殖に成功。徐々にその数を増やし、1985年に中国の保護地域への再導入が行われました。
1998年には洪水により一部のシフゾウが保護区を飛びだしました。その後、野生に定着しています。
現在、野生のシフゾウは約2000頭。保護区に住むシフゾウを加えると、8000頭以上に回復しています。

シフゾウに会える動物園
2021年1月現在、日本では3か所の動物園で6頭のシフゾウが飼育されています。
- 多摩動物公園
- 安佐動物公園
- 熊本市動植物園
歴史的に遺伝子多様性に乏しいシフゾウ。日本で飼育されているシフゾウも、すべて血縁関係にあります。

若い個体である熊本市動植物園のチョッパーを繁殖させるべく、2017年多摩動物公園よりありさが来園しました。しかし、ありさはメスの繁殖限界(12歳ごろ)を超え、出産の可能性はほぼありません。
日本でシフゾウが見れなくなる日は、すぐそこまで来ています。
ぜひ、特別なシカ「シフゾウ」を観察してみてください。

シロオリックス
鯨偶蹄目ウシ科オリックス属。
アフリカ北部~中央の乾燥地帯に生息していました。おもに草を食べます。乾季には長期間を水を飲まずに生き抜くことができます。
オスはメスより大きく、体長1.7メートル、体重150kg以上に成長します。
全体は白色ですが、首元は赤茶色。子どものうちは全体が赤茶色です。
なんといっても、1メートル以上にもなる長くカーブした美しい角が特徴のシロオリックス。ウシ科であるシロオリックスは、雌雄ともに角を持ちます。
シロオリックスは食肉や角のために大量に殺されました。1990年代に絶滅したと考えられています。
その後も飼育下で命を繋いできたシロオリックス。2016年に初めてフェンスのない動物保護区に放されました。いくつかの生息地に再導入されたシロオリックスは、徐々にその数を増やしています。
現在、野生のシロオリックスはおよそ400頭。再導入の先例となるシフゾウのあとを追いかけています。

シロオリックスに会える動物園
2021年1月現在、日本では10以上の施設で、50頭以上のシロオリックスを飼育しています。
広大な敷地を持つサファリパーク等では、複数頭飼育され、群れで暮らす様子を見ることができます。
- 岩手サファリ
- 東北サファリ
- 那須サファリ
- 多摩動物公園
- 羽村市動物公園
- 千葉市動物公園
- 茶臼山動物園
- 伊豆アニマルキングダム
- アドベンチャーワールド
- 姫路セントラルパーク
- とくしま動物園
- とべ動物園
- アフリカンサファリ
シロオリックスの赤ちゃん誕生!
シロオリックスは日本の動物園でも繁殖に成功しています。
2021年3月、長野市・茶臼山動物園でシロオリックスのオスが誕生しました。
ヒトコブラクダ
鯨偶蹄目ラクダ科ラクダ属。

ヒトコブラクダは何千年も前から捕捉され、家畜として飼育されてきました。ウシやブタ、飼い犬などと同様に、ヒトとともに暮らしてきたヒトコブラクダは、いつの間にか、野生から姿を消しました。
IUCNはヒトコブラクダを野生生物として扱っておらず、IUCNレッドリストには掲載されていません。
ヒトコブラクダは、インド西部から北アフリカにかけて生息していました。
現在は、世界中で家畜化されています。原産地であるサウジアラビアやエジプトにおけるラクダ飼育は一般的。食肉や乳、荷物運搬等に利用されています。
体高2メートル、体重は400kgを超える大きな偶蹄類です。
ヒトコブラクダは、一度に100リットルもの水を飲むことができます。一方で、数週間は草の水分だけで生き抜くことができます。
また、ラクダ特有のこぶには、食糧・水分不足にそなえて栄養となる脂肪分が蓄えられています。
ヒトコブラクダに会える動物園
2022年1月現在、6カ所の施設で約20頭のヒトコブラクダが飼育されています。
盛岡市動物公園は、大規模なリニューアルのため2021年9月より休園しています。かつて、盛岡で暮らしていたヒトコブラクダのひとみは、現在、愛知県岡崎市・東公園動物園で展示されています。
- 群馬サファリパーク
- ズーラシアソフィー(2013年生)
- 東公園動物園ひとみ(2000年生)
- アドベンチャーワールド
- 姫路市立動物園ロール(2006年生)
- 九十九島動植物園ノビタ(1995年生)
名前と生年がわかるもののみ記載しています
ヒトコブラクダたくさん!群馬サファリ
群馬サファリパークは、毎年のようにヒトコブラクダ繁殖に成功している動物園です。2021年には3頭の赤ちゃんが誕生しました。
単独飼育の施設が多い中、群れるヒトコブラクダや赤ちゃんヒトコブラクダを見ることができます。
今回は、野生で絶滅した哺乳類を紹介しました。
当然、鳥類や魚類、植物など多くの種が野生絶滅種EWに数えられています。
保全活動家はこれらの種を絶やさないように尽力しています。野生絶滅にある動植物のために、わたしたち素人ができることは少ないかもしれません。
しかし、少しの寄付でも、たくさんの命が救われます。動物たちのためにできることを考えてもらえたら幸いです。
以上、野生絶滅種の紹介でした。
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