ホッキョクグマの生態【過酷】野生ホッキョクグマの一生
ホッキョクグマの生活と狩り/繁殖から寿命までわかる記事
北極の氷で覆われた海やその周辺に生息するホッキョクグマ。
野生のホッキョクグマは極北の地でどのような生活を送っているのでしょうか?
今回のzoo zoo diaryはホッキョクグマの日常に注目!睡眠や狩りなど日々の暮らしから妊娠・子育て、寿命までホッキョクグマの生態を徹底解説します。
ホッキョクグマとは?
食肉目クマ科クマ属。ヒグマやツキノワグマとおなじ分類です。
- 食肉目 Carnivora
- クマ科 Ursidae
- クマ属 Ursus
- ホッキョクグマ Ursus maritimus
- クマ属 Ursus
- クマ科 Ursidae
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅱ
- 生息 ロシア、カナダ等北極圏 2.5万頭
- 体長 200~250cm
- 体高 140cm
- 体重 オス400kg メス200kg
ホッキョクグマは陸上最大の肉食動物。オスは身長3メートル(立位)、体重500kgをこえます。
推定生息数は2~3万頭。地球温暖化により数がへっているといわれ、絶滅のおそれがある動物(IUCNレッドリスト危急)です。
なおワシントン条約によって過度な輸出入がおこなわれないよう、規制されています。
生息地|北極のクマです
ホッキョクグマの生息域はカナダやロシア、グリーンランドなどの北極圏。
一年中氷で覆われている沿岸部や島などに生息しています。海の氷が溶ける夏には陸地に移動します。
しかし、陸にはホッキョクグマの食べものが少なく、再び氷がはる冬までホッキョクグマは絶食に近い状態となります。
地球温暖化による海氷減少はホッキョクグマの飢餓を導いています。
この記事は野生ホッキョクグマの日々の生活や繁殖・寿命など生態を紹介しています。
からだのしくみ等を知りたい方は下記をご覧ください↓
ホッキョクグマの生活
通常、ホッキョクグマは2歳ごろまで母親と行動します。その後は、雌雄ともに単独で生活します。
野生ホッキョクグマは狩りと移動、そして睡眠に多くの時間をさいています。
よく寝る|ホッキョクグマの睡眠
ホッキョクグマは自分で掘った穴や自然のくぼ地を利用した寝床をつくります。雪や氷に覆われた極寒の地から身を守るためです。
北極周辺では6月ごろに海の氷が溶けはじめ、アザラシ等の獲物がいなくなります。
そのため、ホッキョクグマは海上より陸地で過ごす時間が長くなり、1日20時間も寝ることが確認されました。
これは暇をもてあましているわけではありません。エネルギー消費を減らし体力温存を図っていると考えられています。
一方、冬になると獲物がふえるため狩りと移動に費やす時間が長くなります。それにともない、睡眠時間は1日7.5時間ほどに減少します。
ホッキョクグマは流氷がある地域では氷の上に乗り、ない地域では泳いで移動します。
近年、氷や獲物の減少によりホッキョクグマの行動範囲は広がりつつあります。2011年には、9日間で600km以上泳いだホッキョクグマが報告されました。
移動の増加にともない母クマについていけない子グマの死亡がふえている可能性があり、ホッキョクグマのさらなる減少が懸念されています。
アザラシ大好き!ホッキョクグマの狩り
狩りはもっぱら海上で行われ、ターゲットはアザラシが主。
ホッキョクグマは水中から顔を出すアザラシを氷の上で待ち伏せ。もしくは、氷上で休んでいるアザラシに海中から忍び寄り、一気に襲いかかります。
【YouTube】BBCでホッキョクグマのアザラシ狩りをチェック!
一方でクマは雑食の動物です。空腹とあれば草や果物も食べます。
地球温暖化により北極の海氷が減少しています。氷がなければアザラシもいません。つまり、ホッキョクグマの獲物が海にいません。
ホッキョクグマは陸地生活が長くなり、エサを求めて人里で目撃されることがふえています。
地球温暖化は北極で暮らす動物たち(ヒトをふくむ)に致死的影響を与えています。
ホッキョクグマの繁殖と寿命
ホッキョクグマは哺乳類の中でもとくに繁殖率が低い動物です。一生のうちに5頭ほどしか子を残せません。
基本、単独行動をとるホッキョクグマ。繁殖期のみオスとメスが出会います。
オスは6歳ごろ、メスは4~5歳で性成熟をむかえます。
ホッキョクグマが妊娠するまで
おとなメスのホッキョクグマは3月~6月にかけて発情期に入ります。
オスは発情しているメスが出す「におい」を追跡すると考えられています。
繁殖可能なメスをめぐりオス同士は戦います。そして、優位となったオスがより多くのメスと交尾できます。
カップルとなったオスとメスは1週間以上ともに過ごします。
繁殖活動の多くは4~5月に行われますが、着床遅延がおこり秋になるまで妊娠は進みません。
※着床:受精のあと胚が子宮内に定着し発育を始めること
※着床遅延:受精後すぐに着床せず、一定期間もしくは条件が整ったのちに着床すること
統計的に交尾から出産までの期間は200日前後。実際の妊娠期間はいまだにはっきりしていません。
この200日の間に母グマは雪が積もった斜面などに巣穴をつくり、出産・育児の準備をします。
絶食で出産?!母ホッキョクグマのすごさ
ホッキョクグマの出産ピークは12~翌1月。通常、2頭の子を出産します。
驚くことに母ホッキョクグマは出産前から子が巣穴の外に出れる体に育つまで、子から離れることはありません。
つまり、絶食の状態で出産と育児をおこなっているのです。
過酷な出産・育児のために、母ホッキョクグマは交尾から着床までの間に栄養や脂肪をたくわえる必要があります。
メスの体重は通常200~300kg。妊娠したメスは巣穴に入る前に200kgほど体重をふやし絶食に備えます。
十分に体調を整えなければ、死産となったり出産後まもなく死亡したりする可能性が高くなります。
繁殖率の低さにくわえ、乳幼児死亡率の高さがホッキョクグマの個体数増加の足かせとなっています。
かよわい赤ちゃんホッキョクグマ
生まれたてのホッキョクグマの赤ちゃんは体長30cm、体重500グラムほど。目は見えず、毛も生えそろっていません。
小くて無防備な赤ちゃんクマ。しばらくは巣穴から出ることなく、母親のミルクだけで大きくなっていきます。
ヒトの母乳の脂質は3~5%。
一方、ホッキョクグマの母乳は約33%の脂質をふくんでいます。成長のはやい海獣(アザラシやアシカ等)とおなじように栄養価の高いミルクです。
母親はたくわえた栄養をきりくずしながら、子に質の良い母乳を与えつづけます。
そして春。体重10kgほどに成長した赤ちゃんはついに巣穴から出るようになります。
出産前から巣穴にこもっていた母ホッキョクグマもこのとき初めて外出。運が良ければ食事にありつくことができます。
子は徐々に雪や氷海になれ、狩りの仕方や生きぬく術を母親から学んでいきます。
一般に、ホッキョクグマの幼獣は2年ほど母親とともに生活します。その間、母親の発情はありません。
ホッキョクグマの寿命
体の大きな動物は長命の傾向にあります。
地上最大の肉食獣であるホッキョクグマ。自然界には天敵はおらず、寿命は18年ほど。飼育下では23年ほどといわれています。
日本のご長寿ホッキョクグマ
2021年1月、八木山動物園で飼育されていた日本最高齢のホッキョクグマ「ナナ」は36歳でその生涯を終えました。
現在は神戸市・王子動物園メスのミユキ(1990年生)が国内最高齢です。
ホッキョクグマと地球温暖化
ホッキョクグマの好物アザラシはもっぱら海で暮らし、ときおり海氷へあがります。また、出産や育児は海氷でおこなわれます。
そのときがホッキョクグマにとって狩りのチャンス。
ところが、北極の氷は地球温暖化により毎年のように減りつづけています。
おのずとアザラシつまりホッキョクグマの獲物が減少。そして地上最大の肉食動物が飢え死にしています。
また、ホッキョクグマは氷の上にのって海流まかせに移動することが知られています。
もしも移動中に氷が早くとけてしまったら、安定した海氷または陸地までひたすら泳がなければなりません。
冷たい海中の長距離移動はおとなでも餓死するほどの過酷さ。当然、子グマが亡くなるケースも多々報告されています。
動物や自然のためにエコな生活を!
地球温暖化は海水温の上昇だけでなく、暴風雨や干ばつなどの原因にもなっています。
ヒトをふくむ多くの動物が住みかを奪われたり、食べ物がなくなったり、死亡したりしています。
冷暖房をひかえる、テレビや電気をつけっぱなしにしない、公共交通機関を利用する、ゴミをへらす等、ひとりひとりの小さな意識が立派な地球温暖化対策になります。
ホッキョクグマやヒトを含むすべての生きものの未来のために、今の自分にできることをしましょう!
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
ホッキョクグマの生態【まとめ】
- カナダ、ロシア等の北極圏に生息
- 雌雄ともに単独行動
- 睡眠 20時間(夏)7.5時間(冬)
- 食事 主にアザラシ(雑食)
- 繁殖 妊娠中に200kg増量
絶食状態で双子(体重約500g)を出産
3か月ほど巣穴で子育て
母離れは約2歳 - 寿命 野生18年 飼育下20年以上
極寒の地で暮らすホッキョクグマの日常はイメージできましたか?
狩りと移動そして休息をくりかえし、寒さや飢えに耐えながら生きています。
ホッキョクグマの繁殖は自然界でも飼育下でも容易ではありません。日本をはじめ全世界の施設でホッキョクグマ繁殖は重要な課題となっています。
今後、動物園からホッキョクグマで会えなくなる日がくるかもしれません。
それでも野生から姿を消すことがないよう、節電やゴミ削減など自分にできることを続けていきましょう!
以上、ホッキョクグマの生態と繁殖でした。
【参考】
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