ゾウはなぜ絶滅危惧種なの?象の今と未来のためにできること

06/06/2022

ゾウ生息数減少の原因と対策|密猟と生息地破壊

いちばん大きな動物というと、ゾウを思い浮かべる方が多いでしょう。

ゾウは巨大なだけでなく、大きな耳と長い鼻を持ち、小さな子どもでも絵を描けるほど特徴的な動物です。

遠いむかしから人々に愛されてきたゾウ。

最近は動物園であまり見かけないと思いませんか?

実は、ゾウは絶滅の危機に瀕しています。

なぜゾウが減ってしまったのか?どうしたらゾウを救うことができるのか?いっしょに考えてみましょう!

本記事は、ゾウの絶滅に関する情報をまとめています。

ゾウの生態と特徴を知りたい方は別記事をご覧ください↓

ゾウは絶滅危惧種です

野生生物の絶滅の危険度を評価・リスト化しているIUCN(国際自然保護連合)レッドリスト。

現在、サバンナゾウ、シンリンゾウ、アジアゾウ、スマトラゾウの3種1亜種がIUCNレッドリストに掲載されています。

IUCNレッドリストに関しては「絶滅危惧種の解説」に詳しく掲載しています。

野生ゾウ減少のおもな原因は、密猟と生息地破壊です。

すべてのゾウは絶滅の可能性が極めて高く、とくにシンリンゾウとスマトラゾウは絶滅寸前を意味する深刻な危機(CR)と評価されています。

  • アフリカゾウ
    • サバンナゾウ 危機(EN)
    • シンリンゾウ 深刻な危機(CR)
  • アジアゾウ 危機(EN)
    • スマトラゾウ 深刻な危機(CR)

アジアゾウは1種4亜種確認されています。個別に評価されているのはスマトラゾウだけです。

ゾウの種類は別記事でご確認ください↓

動物園からゾウがいなくなる?!

野生だけでなく、日本の動物園のゾウも減ってきています。

とくにアフリカゾウの減少が著しく、30年ほどで半分以下に減っています。

2022年4月現在、アジアゾウ33園、アフリカゾウ15園で飼育されています。

ゾウの死亡により、ゾウがいない動物園が増加しています。ゾウに会えなくなる日はそう遠くないかもしれません。

熊本市動植物園 アフリカゾウ

ゾウの飼育施設は「ゾウに会える動物園リスト」に詳しく掲載しています。

アフリカゾウ|10年で10万頭以上減っています

アフリカ大陸に生息するゾウは1属2種、サバンナゾウとシンリンゾウ(マルミミゾウ)。

かつて2種は「アフリカゾウ」としてIUCNレッドリストに掲載されていました。

2021年よりサバンナゾウは危機(EN)、シンリンゾウは深刻な危機(CR)と評価されています。

シンリンゾウは中央アフリカから西アフリカに広がる熱帯雨林に生息しています。生息地が限定的で、その多くはガボンとコンゴ共和国で確認されています。

一方のサバンナゾウはサハラ砂漠以南の草原や乾燥地帯など、比較的広範囲に分布しています。

アフリカゾウ生息数(2016年)は2種合わせて推定41.5万頭。2006年からの10年間で11.1万頭という急速な減少が起こりました。

1970年代には130万頭いたアフリカゾウ。たった数十年でサバンナゾウが60%、シンリンゾウは80%以上減少したといわれています。

減少率の高さ、生息地の狭さから、シンリンゾウは絶滅間近といわれています。

サバンナゾウ シンリンゾウ
左:サバンナゾウ 右:シンリンゾウ

アフリカゾウ減少の原因とは?

野生生物絶滅の多くは、狩猟や生息地破壊など人間活動が関与しています。

アフリカゾウも例外ではありません。密猟と生息地喪失に悩まされています。

密猟|毎年1万頭以上の被害

アフリカでは2008年から象牙目的の密猟が大流行。アフリカゾウ生息数は激減しました。

密猟は2011年にピークを迎え減少傾向にあるものの、現在も毎年1万頭以上のアフリカゾウが殺されています。

ザンビアやタンザニアでは密猟防止策が功を奏し、被害は75%以上減少。さらに数千頭のゾウを殺した密猟者が逮捕されています。

一方、ボツワナでは密猟増加が顕著。2014年には10数頭だった被害数が2018年には150頭以上記録されています。

全アフリカゾウの約3分の1(13万頭以上)のゾウが暮らすボツワナ。法整備が整った国や地域から、密猟グループがシフトしていると考えられます。

組織化・武装化した密猟グループ。密猟を防ぐために活動するレンジャーが、殺される事件も多々あります。

勇気ある方々の行動がゾウの絶滅を食い止めています。

生息地破壊|ヒトとの接触

ヒトは長きにわたり動物の生息地を奪い続けています。

アフリカでは人口増加に伴い、宅地や農地の開拓が急増しました。近年はインフラ整備を整えるために土地が使われています。

ゾウだけでなく多くの動物の集団が分断されたり食糧難に陥ったりしています。

道路ができたことによる交通事故や、動物との境界に置かれた電柵・毒等による死亡が確認されています。

また、ヒトとの距離が近くなり、お互いに危害を与えてしまう事故が増えています。

生息地周辺の村では、ゾウが果樹園や畑を荒らし村人の生活を苦しめています。

アフリカゾウの未来に明るい兆し?

ヒトによる密猟や開拓により絶滅へと向かっているゾウ。

動物たちのために活動する人々のおかげで、明るい兆しも見えています。

保全団体と地元の人々が協力し、密猟に関する法整備や動物と共存するための計画的開拓等が進められています。

先に述べたザンビアやタンザニア等におけるゾウ密猟の大幅な減少は、世界中から称賛されています。

また、ケニアでは密猟の厳罰化により、ゾウ生息数が約1.6万頭から約3.5万頭まで増加しています。

懸命な保全活動の結果、サバンナゾウの生息数は安定しつつあります。一部保護区では、シンリンゾウの減少も止まっています。

熊本市動植物園 アフリカゾウ

一方で、国や地域により絶滅危惧動物の保全の差があります。

全体数は安定したとしても、一部地域では絶滅することが大いに考えられます。

生息域が狭まることは、食料減少や遺伝子多様性の低下につながります。将来的には絶滅の可能性を高めるかもしれません。

アフリカゾウが現存している国や地域が一丸となって保全活動に取り組むことが最善です。

しかし、経済や文化を考慮し保全に踏み出せない国があるという事実。簡単には解決できない問題です。

アジアゾウ|野生には5万頭しかいません

アジアの森に生息するアジアゾウ(属)は1種4亜種に分類されています。

生息数は5万頭(2018年)と推定。その6割がインドに生息しています。

アジアゾウ減少の原因とは?

アジアゾウは、およそ70年間で半減したといわれています。

アフリカゾウと同じように密猟と生息地喪失がおもなな原因です。

密猟|牙だけでなく皮も標的

アジアゾウのメスは牙がほとんど目立ちません。つまり、象牙を得るために殺されるのは、オスばかり。

インドには約3万頭のアジアゾウがいますが、毎年20頭~40頭の密猟による死亡が報告されています。

全体数が少ないことと、牙が短いことから、アフリカゾウほど密猟被害は大きくないと考えられています。

ところが、近年、ゾウの皮を目的とした密猟が行われているとわかってきました。

2014年から始まったミャンマーにおけるGPS調査は、メスも子どもも対象とする残酷なゾウ密猟の実態を明らかにしました。

ゾウの皮は宝石や薬品として違法に取引されています。

おそらく他の地域でも同様の密猟が行われているでしょう。メスや子が死ぬと個体数増加はとても困難となります。

マーケットの調査と密猟対策が急務となっています。

生息地破壊①違法伐採と列車事故

アジアゾウを脅かす最も大きな原因は、生息地破壊です。

インドや東南アジアは人口が多く、農地や宅地の開発が頻繁に行われています。

さらに、農園・植林地目的ではなく、建材取引を目的とした違法伐採が横行しています。

自然が守られるはずの保護区や国立公園で伐採された木々。一部は日本に輸出されているため、わたしたちも手にしているかもしれません。

当然アフリカゾウと同じように、ヒトとの距離が縮まったことによる問題が生じています。

インドやスリランカでは、列車事故により30年間で300頭のゾウが死亡しています。

農地化・都市化が進むインドは、80年の間に30%近くの自然林を失いました。その結果、砂漠化が進行。

近年は植林活動が盛んとなり、森林が増加傾向にあります。

アフリカンサファリ アジアゾウ

生息地破壊②プランテーションと森林火災

一方、東南アジアではアブラヤシ農園やパルプ材用植林地のために、多くの自然が壊されています。

とくにインドネシアの森林破壊は1970年ごろから異常なスピードで進行。すでに7割以上の森林が消えています。

また、アマゾンやオーストラリアと同様に森林火災も大きな問題です。

2015年、2019年、インドネシアで大規模な火災が発生。その際、約260万平方kmおよび約90万平方kmもの森が消失しました。

さらに、ヘイズ【Haze】煙がもたらす空気汚染が深刻な問題となっています。野生動植物だけでなくヒトへの被害も出ています。

インドネシア政府は複数のプランテーションが原因であると指摘し、処罰を与えました。

しかし、2回とも同じ企業が関係していることから、対策が十分ではないと非難されています。今後の動きに注目です。

絶滅寸前!スマトラゾウ

アジアゾウのなかで、唯一スマトラゾウのみがIUCNレッドリスト深刻な危機(CR)と評価されています。

生息数は推定2500頭ほど。

スマトラ島は最も森林破壊のスピードが速いといわれています。

25年間で約70%の生息地が失われ、75年間で80%以上スマトラゾウが減少しました。

森がなくなりエサがなくなり、ゾウは農地の植物を食べるようになりました。結果、害獣扱いされ迫害を受けています。

一部地域ではスマトラゾウが絶滅しています。

ゾウの絶滅をふせぐために

ゾウは森林破壊や密猟により生息地を失い、仲間を失い続けています。

わたしたちはゾウのために何ができるでしょうか?

密猟をなくす|象牙を欲しがらない

ゾウは象牙を狙った密猟により、生息数が激減しました。近年は、加工用の象皮を狙った密猟も増えています。

保護区や法の制定により一時期より密猟は減少しているものの、決して少なくはありません。

現在も象牙や象皮の闇取引は実際に行われています。

象牙の価値を上げるのは、質の良さと希少性。手に入らないからこそ欲しいという需要がなくならない限り、密猟はなくなりません。

頭部を切断されたり、罠にかかって鼻や四肢に傷を負ったり。密猟者の手にかかった動物のほとんどは、即死もしくは感染症等により死亡します。

他の動物も同じですが、ゾウやサイなど体の一部を狙った密猟の残酷さは見るに堪えられないものがあります。

密猟をなくすためには需要をなくすことが大切です。決して象牙や犀角を購入・販売しないでください。

トロフィーハンティングについて考えよう

実は、ゾウの個体数を減らしているのは密猟だけではありません。

ゾウはスポーツハンティング(娯楽目的の狩猟)の獲物として絶大な人気があります。これは、法にふれる場合もそうでない場合もあります。

より大きく強い動物を狩りたいというハンターたち。最強といわれるゾウを狩るために、あらゆる手を使います。

そして、仕留めた動物の一部をトロフィー(記念品)として持ち帰ります。

アメリカ合衆国はゾウのトロフィーの輸入規制を緩和。

絶滅危惧種である動物を自分の楽しみのために殺し、さらには牙や皮など体の一部を持ち帰ることが許されているのです。

アフリカの一部の国や地域では、個人の敷地に動物をおびき寄せれば殺しても問題ありません。

そのため、幾人もの裕福なハンターが高額な狩猟料を支払い、ゾウやキリン、ライオンなどの絶滅に瀕している動物を射殺しています。

2022年4月には、野生に数十頭しかいないビッグタスカー(巨大な牙を持つゾウ)2頭がハンターにより殺されました。

貴重なゾウを快楽のために狩猟するヒトの気持ち、わたしにはまったく理解できません。

一方で、商業が少ない国ではトロフィーハンティングによる収益を必要としています。また、狩猟料の一部はゾウなどの絶滅危惧動物の保全に充てられています。

皆さんはトロフィーハンティングを許せますか?

世界中でその是非が議論されています。

秋吉台サファリ アフリカゾウ

動物の取引(ワシントン条約)は「動物保全とハンティングビジネス」に詳しく記載しています。

生息地を守る|生活を見直そう

ゾウの生息地は草原や森林。

人口増加に伴う開拓等はわたしたち日本人には解決が難しい問題です。しかし、遠い日本からでもゾウの生息地を守ることができます。

アブラヤシや紙の原料を得るため、多くの森林が伐採されています。

アブラヤシはパーム油(植物油)の原料であり、食べ物や洗剤などに使われています。知らず知らずのうちに、わたしたちは毎日パーム油を利用しています。

そしてティッシュペーパーや印刷物など、紙もわたしたちの生活に欠かせないものです。

しかし、そのために動物たちの住みかを壊して良いのでしょうか?

答えは、ノー。

自然を壊すことは、地球上の全生物に影響を与えます。ヒトも例外ではありません。

悲しい結末を防ぐために、たくさんの環境保護団体や動物保全団体が森を守る活動をしています。

富士サファリ ゾウ

紙を大切に

紙の原料は「木」です。

かつては北米やオーストラリアで盛んだった工業ですが、近年は南米や東南アジアなど森林が多い地域に進出しています。

紙の原料となる木材(パルプ材)用の木を植林するために、多くの動物たちが住んでいる美しい森が壊され続けています。

わたしたちが紙を無駄にすればするほど、多くの木が必要になります。そのたびに自然が失われています。

日本はひとり当たりの紙消費量(2020年)は178kg!すごい量だと思いませんか?

裏紙の再利用や古紙回収など、日常的にできることを続けていきましょう。

パーム油(植物油)について考えよう

森林破壊の原因について、パルプ材用植林地に加えてアブラヤシの大規模農園(プランテーション)が大きな問題となっています。

アブラヤシはパーム油の原料となる植物。インドネシアとマレーシアの生産量が世界の約85%を占めています。

アブラヤシを植えるために、インドネシアとマレーシアの森林は激減しました。

パーム油は植物油脂として多くの食品に使われています。また、石鹸や洗剤などにも含まれています。わたしたちは多大なる恩恵をアブラヤシから受けています。

しかし、このまま植物油脂を消費し続けたら、自然はなくなってしまいます。

そのため2004年、持続可能なパーム油のための円卓会議【RSPO, Roundtable on Sustainable Palm Oil】が発足しました。

国際自然保護基金【WWF, World Wildlife Fund】やアブラヤシ農園関係者等が参加しています。

最近では、RSPO認証制度が普及し始めています。環境に配慮したアブラヤシ利用製品と認められたものに、RSPO認証マークが付与されます。

食料品では見かけたことがありませんが、洗剤や石鹸等にはRSPO認証マークが表記されています。

2022年4月、インドネシアは国内供給のためパーム油の輸出規制を開始しました。

価格高騰を機にパーム油の代替が模索されています。皆さんもパーム油の使い方について考えてみてください。

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陸上で最も大きく、野生には敵がいないゾウ。

しかし、最強の動物ゾウを苦しめているのは、わたしたちヒトです。

美しい象牙は多くのヒトを魅了し、いま現在も多くのゾウを犠牲にしています。

また、わたしたちの生活を豊かにするために多くの木が伐採され、多くの動物たちの森林を奪っています。

大きな耳と長い鼻、唯一無二の存在であるゾウたち。絶滅を防ぐことができるのも、わたしたちヒトです。

象牙を欲しがらない、紙をリサイクルする、パーム油を知る。これだけでゾウの未来が変わるかもしれません。

アフリカンサファリ アジアゾウ

これからもゾウが生きていけるよう、自分にできることを続けていきましょう!

【参考】

国際自然保護連合

ボルネオ保全トラストジャパン