ハンティングビジネスの賛否|トロフィーハンティングの実態とは?
近年はよく耳にするようになった保全ということば。動物や動物が暮らす環境をまもることをさします。
動物愛護や種の保全などがさけばれるなか、相反するようなビジネスが成長しています。
それが「ハンティング」ビジネスです。
今回のzoo zoo diaryは野生生物の生息地における、狩猟の実態にせまります!
ハンティングビジネスとはなにか、なぜ盛んなのか、規制できないのか?など世界の声と現地の声に耳を傾けてみましょう。
ハンティングビジネスとは?
動物を保護する活動が盛んに行われる昨今。
野生動物の宝庫であるアフリカでは、動物狩りに関連したビジネスが成長しています。
生活のためでない娯楽の狩猟、いわゆるスポーツハンティングができる場所を提供するビジネスです。
射殺した動物をはく製や毛皮などに加工して狩りの記念品とすることから、トロフィーハンティングとも呼ばれています。
スポーツハンティングは何百年も前から行われています。規制のない時代、過剰な狩猟が動物の絶滅をまねいた例もあります。
現在は、IUCNレッドリストが絶滅のおそれがあるとした種は国や団体によって守られています。
また、ワシントン条約により毛皮や角も輸出が規制されています。
ところが、実際には狩猟やトロフィーの輸出はつづけられています。
場合によっては密猟や密猟にあたらないため、罪悪感のないハンターはたくさんいます。

キャンド・ハンティング
ハンティングビジネスはさまざまな国や地域で行われていますが、とくに南アフリカで盛んです。
動物繁殖施設が何百とあり、幼獣はふれあい動物として、成獣は繁殖用もしくはトロフィー用として売買されています。
ハンティング業者はライオンやキリンなど繁殖施設で育った動物を狩りの対象としてハンターに販売します。
トロフィーとして育てられた動物は柵で囲われた広大な私有地に放されます。とても広い敷地ではありますが、動物たちは缶詰にされた状態【canned】。見つけるのは簡単です。
これは「キャンド・ハンティング」と呼ばれ、南アフリカでは一般的となっています。
1万頭以上!狩猟のために飼育されているライオン
南アフリカだけでライオン繁殖施設が300か所以上あるといわれています。
ライオンはとくに人気が高く、トロフィー用のライオンは1万頭以上!南アフリカに生息する野生ライオンの数を優に超えます。
年間で800以上のライオンのトロフィー(毛皮やはく製)が輸出されています。
幼い間はふれあい動物として売られ、おとなになると殺されるために売られるのです。そして死んだライオンの骨は薬品としてアジアに輸出されています。

絶滅危惧種のハンティングは違法にならないの?
南アフリカでは動物の所有権はその土地の所有者に属します。
国立公園や保護区での狩りは禁止されていますが、私有地での狩りに違法性はありません。
狩猟許可を受ければ、たとえ絶滅危惧種であっても敷地内では自由に狩りができます。
野生動物を敷地内におびき寄せたり車で追い込んだりして、狩猟する例も確認されています。
そこに大金を払ったハンターが入り、狩りを楽しむのです。
なぜハンディングビジネスが流行するの?
動物の命を商売にするハンティングビジネス。動物保全が叫ばれるなか、動物愛護に反する職業がなぜ流行しているのでしょうか?
答えは簡単。
畜産よりキャンド・ハンティングの方が収益性が高いからです。
やせたアフリカの大地では、食用の動物を育てることは容易ではありません。一方、もともとアフリカに生息している動物は問題なく育ちます。
野生では狩ることができない貴重な大型動物はとくに狩猟の需要が高く、1頭当たりの取引価格が高騰しています。
ハンティングビジネスの規制にふみだす!南アフリカ
2021年5月、南アフリカ政府はこの悪しきハンティングビジネスを規制すると発表しました。
商業目的の繁殖や飼育はもちろん、ハンターに売ることや観光客にさわらせることも禁止します。
南アフリカは不幸なライオンのために大きな一歩をふみだしました。今後、キャンド・ハンティングがなくなるよう応援しましょう。
ハンティングビジネス賛成の声
殺されるために育てられるという動物たち。ヒトの身勝手な行動に憤りを感じるでしょう。
当然、世界中からトロフィーハンティングへの非難が集まっています。
一方で、ハンティングビジネスを必要とする意見が存在するのも事実。その一部を紹介します。
密猟抑制
合法的な狩猟の場を提供することにより、野生動物の密猟を防いでいるという見解。
すべての狩猟を規制したところで、ハンターがゼロになるわけではありません。
狩りを楽しむ者は行き場をなくし、公園や保護区に出没するでしょう。そして、野生動物が標的に。
結果として、違法な狩猟が増加すると懸念されています。
ハンティングビジネスがハンターの需要を満たしていることは事実であります。
問題のある個体の駆除
世の中には、異常行動を起こす個体が必ず存在します。
なかには健康な個体や若い個体を殺したり、繁殖適齢期を超えてもメスをゆずらなかったり、種保全の観点から注視される個体もいます。
ハンターやビジネス側はむやみに殺しているわけではなく、対象個体を選んでいるといいます。保護区の安全に貢献していると主張する者もいます。
実際のところ、狩猟禁止区内の問題のある個体はレンジャーによって射殺されています。
狩りのターゲットとしては、都合の良い相手といえるでしょう。
ところが、保護区のアイコンとなっているライオンやゾウを狩猟し、記念写真を全世界に発信しているヒトたちがいます。
果たして彼らはどういう基準で対象を選んでいるのでしょうか?
収入源
アフリカではハンティングビジネスを歓迎する声もあります。それは大きな資金源となるからです。
経済状況が厳しい国や地域では、狩猟による収益の一部が野生生物の保護にあてられています。
そのため、ハンティングビジネスは動物・環境保全に必要と主張する者がいます。
また、ハンティングビジネスは案内人、運転手、護衛など多くの雇用を生みます。
無情と感じながらも、ハンティング用の動物(トロフィー)の飼育にたずさわるヒト、動物を殺す手伝いをしているヒト等もいます。
つまり、ハンティングビジネスの規制が強まると失業者が増えると予想されます。すると、生活のために密猟を始めるヒトが少なからず出てくると考えられます。
一方で、ガイドやハンターを装った密猟グループが確認されています。観光や娯楽に来ているように見える人々が、プロの密猟業者かもしれません。

難しい問題を抱えるハンティングビジネス。世界的には反発が多く、規制強化の傾向にあります。
皆さんはハンティングビジネスを認めますか?認めませんか?
野生動物をまもるために、保護区をつくったりパトロールをしたり多くの人々が活動しています。
一方で狩猟を趣味とし、大金をはらい動物を殺している人々もいます。
わたしはハンティングをしたいとは決して思いません。しかし、ハンターのおかげで生活ができている人々にとっては、狩猟規制は大きな問題です。
動物のことだけでなく、動物をとりまく環境や現地の人々のことを考えるきっかけになれば幸いです。
- 狩猟用の動物を飼育
- 敷地内に放飼し狩猟させる
- 野生動物を敷地内に追い込み狩猟させることも
- 莫大な収入をうみだす
↓
- 動物福祉に悪影響をおよぼす
- 密猟や密輸につながる
- 南アフリカ政府が規制にふみだす
以上、ハンティングビジネスのお話でした。
【参考】
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