平川動物公園ボルネオオランウータンのポピー成長記
鹿児島市中心部からおよそ1時間。広さ30万ヘクタール、飼育動物140種類という立派な動物園があります。
その名は、平川動物公園。
平川動物公園は2016年にリニューアルオープンしました。複数の動物を一緒に展示する混合展示や、動物の生活環境を再現する生態展示を取り入れています。
日本一のコアラ飼育数を誇り、遮るもののないコアラ展示が話題の動物園です。
コアラやマサイキリンの赤ちゃん誕生、アマミノクロウサギ等保護動物の飼育など、動物園界からも注目を集めています。
今回zoo zoo diaryが紹介するのは、平川動物公園の森の人「オランウータン」。
名前や特徴、成長の記録をつづっていきます。

オランウータン
霊長目ヒト科オランウータン属。
インドネシアやマレーシアの熱帯雨林に生息しています。
現在、3亜種が確認されています。
- ボルネオオランウータン
- スマトラオランウータン
- タパヌリオランウータン
ポピー|平川動物公園のボルネオオランウータン
平川動物公園の2013年に完成した大きな展示場には、ボルネオオランウータンのポピー(オス)がいます。
ポピーは、2000年6月8日、多摩動物公園で生まれました。

父はボルネオ(1985年生)、母はチャッピー(1973年生)です。
ポピーには妹ミンピー(2006年生)、弟アピ(2014年生)とホッピー(2020年生)がいます。
ミンピーは現在、静岡市立日本平動物園で飼育されています。
ポピーのおばあちゃんジプシーは、2017年に世界最高齢の推定62歳で死亡しました。
ジプシーは野生の孤児でした。1958年からずっと多摩動物公園で飼育され、来園客を楽しませるだけでなく、繁殖や群れ形成においても重要な存在となっていました。
母親のチャッピーは、その遺伝子を次いで日本のオランウータン繁殖に大きく貢献しています。多摩動物公園のもう一人のおとなオス、キューとの間にも2頭の子をもうけました。
2020年10月には、国内最高齢47歳でホッピーを生み、順調に育てています。
【Twitter】多摩動物公園公式ツイッターでチャッピーとホッピーをチェック!
繁殖経験豊かな家族の中で育ったポピー。
2014年に鹿児島にやって来たときは、13歳でした。平川動物公園では、2012年以来のオランウータン飼育です。
オランウータンの展示場
ポピーが来園する前にリニューアルした、新しいオランウータン展示場。
中央にはタワーのような大きな樹木。室内展示場やタワー等をつなぐロープが、たくさん設置されています。野生オランウータンの動きに焦点を当て、人工物と自然物による環境の再現を意識しています。
来園者は展示場の周囲を、ぐるっとのぼりながら観察できるつくりです。
最初に大きなガラスビューがひとつ。そして、登りついた先に、ガラス張りの室内展示場と開放的な展望デッキがあります。
タワーを見上げる視点と、展示場全体を見渡す視点。2方向から観察することができます。

ポピーは人間嫌い?!
飼育員さんのお話によると、ポピーはむやみやたらに名前を呼ばれるのが嫌い、カメラを向けられるのが嫌い、と愛嬌を振りまく性格ではないそうです。
室内と屋外の間にいる場面によく出くわします。ポピーが少し戻ると姿が見えなくなります。
ポピーはここで人目を避けているのかもしれません。
ポピーを見るならごはん時に!
そんなヒト嫌いのポピーがよく見えるのは食事中。
詳しい時間はわかりませんが、10時前後や13時前後に見たことがあります。
室内から屋外へ出るときは、ロープを上手に使いすいすいと移動します。ポピーは動きがスムーズ、軽やかなオランウータンです。
ちなみに、ポピーは食べているところを見られるのも嫌いな様子。木の陰など見えにくいところで食べてます。
静かにそっと眺めていると、お顔を見せてくれるかもしれませんね。

ボルネオオランウータン・ポピーの記録
ポピー 2015年
2014年に来園したポピー。わたしが初めて会ったのは、2015年7月。よく晴れた気持ちの良い日でした。
夏の生い茂った緑が、ポピーの赤毛の美しさを際立たせています。

オランウータンの行動の変化
一般的に、若いオランウータンは母親や兄弟と暮らしています。
オランウータンは10歳前後で成熟を迎えると、母親の元を離れて行きます。サルの仲間では珍しく、単独行動を好む動物です。
多摩動物公園は、国内で最も多くのオランウータンを飼育している動物園。ポピーは、おばあちゃんや妹と暮らしていました。
【東京ズーネット】多摩動物公園時代のポピーをチェック!
来園時13歳だったポピー。野生のオランウータンと同じように、ひとり立ちのスタートでした。
アンフランジ
多摩動物公園には、ポピーのお父さんボルネオ(1985年生)と、キュー(推定1969年生)という2頭のフランジのオスがいます。
オランウータンのフランジは、強いオスの象徴。
フランジになるか否かは、各個体が判断しているという説があります。そのため、おとなになれば必ずフランジが発達するとは限りません。
平川動物公園に来園したころのポピーは、アンフランジ(フランジを持たない成熟したオス)でした。
ボルネオやキューの存在が影響しているのでしょう。
オランウータンのおとなオスは、環境や周囲の反応等を見て、自分の立場を認識しているのかもしれませんね。

ポピー 2016年
春の風を感じる3月。
ポピーも、気持ち良さそうです。この時は麻袋を被っていました。

視線の先には、飼育さんが隠したエサの数々。木の枝や草の間などに小さくカットした野菜が置かれています。
めったに地上に降りないポピーが、わさわさとエサを集め歩いていました。

すぐに食べようとはせず、口いっぱいににんじんを入れていきます。

展示場全体を見下ろせる位置にいたわたし。隠されたエサは見えませんでしたが、ポピーは次々とゲットしていきます。
食事の時間を長くする工夫は、動物の幸福度を高めるエンリッチメント対策になります。しかし、ポピーは数分で探し出していたので、難易度をあげる必要がありそうです。
木の上で生活する動物であるオランウータン。
ポピーは高いところに登ってから、ゆっくりお食事を始めました。動物園生まれ動物園育ちですが、しっかりとオランウータンの本能があらわれています。

美味しいにんじんだったのでしょう。終始ご機嫌そうなポピーでした。まだ幼さの残る、可愛らしいオランウータンです。
実は、2016年は2度ポピーに会いに行きました。2回目は、8月の暑い日。
長い毛を持つポピーも暑そうに過ごしています。
わたしはこの日大きな失敗をしました。
カメラの充電をしていなかったのです。全く写真を残せず、がっくり。皆さんにもポピーの様子をお見せできず、申し訳ないです。
この経験から、予備バッテリーを購入しました。まだ持っていない方は、ぜひご検討を!
ポピー 2018年
時は過ぎ、2018年4月。春の暖かい日にポピーに会いに行きました。
この1年半以上の間に、ポピーは大きく成長していました!
フランジへ変化

多摩動物公園と異なり、平川動物公園で暮らすオランウータンはポピーただひとり。対抗するオスがいないからか、繁殖への心意気なのか、ポピーの顔の皮膚が育ちはじめていました。
明らかに顔つきが違います。さらに、毛の質も変わっているように見えます。
いつもの人目につきにくいところに座っていましたが、しばらくすると、すいすい移動を始めたポピー。
一瞬だけこちらを向いてくれました。相変わらずきれいなお顔です。

タワーまで音もなく、あっという間に移動するポピー。

タワーに着いたら朝ごはん。美味しそうなチンゲン菜を食べていました。

まだ控えめなひだですが、フランジへと成長しているポピー。
国内のボルネオオランウータンは全部で30頭ほど。その中からポピーと繁殖できる個体を探し、連れて来るのは簡単ではありません。
国外のオランウータンも視野に入れるとのことですが、未だ実現には至っていません。
親の繁殖を見て学んだ経験を持つポピーは、おそらく繁殖能力が高い、貴重なオランウータンです。ポピーが多摩動物公園で学んだ知恵を生かせる日が、必ず来ますように。
ポピー 2019年
本日は曇り時々雨。7月の蒸し暑い日でした。
ポピーは庇の下、お気に入りの狭いくぼみに上手に座っていました。

フランジがふっくらしています。体毛が長くなったのでしょうか、体も大きくなったように見えます。
相変わらず人間嫌いの様子。遠くから眺めるだけでも、こちらを意識し落ち着かないポピー。申し訳なくなってこの場を離れるとします。
約30分後。
雨が止んだため、もう一度ポピーの元へ。先ほどよりさらに遠くから観察します。
すると、ポピーが動き出しました。
そろりそろりと、ロープを綱渡り。なんと、両手を使っていません!

なんだかルンルンと歩いているように見えました。
最終的には腕も使って、

放飼場にあるタワーに辿り着きました。

のど袋も成長!
フランジだけでなく、のど袋も大きくなっています。これも、フランジオスの特徴。
さらにポピーは移動を続けます。
大きな体、長い毛を揺らしながらタワーをのぼり始めました。

ついにはタワーの頂点へ。
人目を避けるポピーですが、樹上生活をするオランウータンらしく、高いところは好きなようです。

口元をよく見ると、むぐむぐ空気を入れたり出したりしています。
フランジオス特有のロングコールを発するかと思いましたが、声は聞こえてきませんでした。
頂上に移動して数分後、雨が降り出してきました。

ポピー、無念。また庇の下へと戻って行きました。
今回はポピーのいろいろな動きや表情が見れて、とてもラッキーな一日でした。
ポピーのパーソナルスペースは、20メートルくらいなのかもしれませんね。
メスを惹きつけるというオランウータンのロングコール。いつかポピーのロングコールが響き渡り、メスと結ばれる日が来ることを願います。
COVID-19流行後、県外への移動を控えています。
2021年、ポピーはいったいどんなオスになっているのでしょうか?元気に暮らしているのでしょうか?
とても気になります。
ポピーファンの皆さんのため、COVID-19が落ち着いたら、必ず平川動物公園のポピーに会いに行きます。
お楽しみに。

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