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ライオンの群れプライドの誕生【繁殖】オスライオンの過酷な一生

08/09/2019

ライオンのオスの仕事とメスの仕事・ライオンの誕生~最期がわかる記事

百獣の王として世界中に知られている屈強な動物「ライオン」

しかし、動物園で見るライオンたちは動かず寝ていることがおおいと思いませんか?

狩りをせずともエサを食べられる環境は「動物本来の姿」ではありません。

みずから食料を獲得しなければならない野生のライオンはいったいどんな暮らしをしているのでしょう?

今回のzoo zoo diaryはライオンのオスとメスの仕事やライオンの群れプライドの誕生など、野生ライオンの一生に迫ります!

アフリカンサファリ ライオン

ライオンとは?

ライオンは食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されます。

  • 食肉目 Carnivora
    • ネコ科 Felidae
      • ヒョウ属 Panthera
        • ライオン Pantera leo
          • インドライオン  P. l. persica
          • アフリカライオン P. l. leo

インドライオン、アフリカライオンともに絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約の規制をうけています。

一般にライオンと呼ばれるのはアフリカに生息するアフリカライオン。動物園で見かけるほとんどのライオンがアフリカ由来のものです。

インドライオンはインド・ギル国立公園に600頭ほどしか生息していません。生態がアフリカのものとちがう点もあります。

本記事ではアフリカライオンのプライドを紹介します。

インドライオンについては「アフリカではなくアジアに住むライオンの生態と特徴」をご覧ください。

プライドとは?

ライオンは「プライド」と呼ばれる群れをつくり集団生活をおくる、唯一のビッグキャットです。

ライオンの群れは1~数頭のオスと10頭前後のメスや子どもからなります

複数の成熟したオスがプライドにいる場合は、オス同士は兄弟であることが一般的。当然、複数オスの方が単独オスより強く、大きなプライドを有する傾向にあります。

近年は、3頭のオスが2つのプライドを支配する例も確認されています。

プライド = 誇りではありません

プライド【Pride】と記されることから「誇り」と読みとられることも多いですが、プライドの由来は諸説あり。確かな意味はわかっていません。

550年ほど前からライオンの群れをさす言葉として使われています。

姫路セントラルパーク ライオン

プライドの支配者はメス?!

オスはプライドにいても不安

実はプライドのオスライオンは数年おきに代替わりします

メスたちの評判が悪くプライドを追い出されたり、他のオスにプライドを乗っ取られたり。

オスライオンはプライドで暮らしていても、つねに周りの目を気にして生活しなければなりません。

メスは縄張りを受けつぐ

プライドのメス同士は姉妹や母子など血縁関係があります。

そのため、メスたちの絆は非常につよく一生涯おなじプライドに属します

生まれた場所(縄張り)で家族と暮らし、子どもを生み育てるのです。その子ども(メス)もまた母親のように生まれた場所で一生を終えます。

このようにメスライオンたちは子孫に縄張りを引き継いでいます。

メスライオンが子どもを連れてプライドを離れることは、仲間と関係性が悪い場合や食糧難の場合などに限られています。

また、おおくの時間を家族とともに過ごすメスライオンが他の動物から攻撃を受けることは稀。

つまり、メスライオンはオスに比べて、プライドを失ったり致命傷を負ったりする可能性が低く、安全に暮らしていけます。

ライオンの群れ「プライド」というとオスのもののように感じますが、実質的にプライドを支配しているのはメスなのかもしれませんね。

アフリカンサファリ ライオン

プライドの役割分担|オスとメスの仕事

オスはプライドを守ります

オスライオンのイメージはいつも寝ているのに、ごはんのときは一番乗り。メスに比べると、だらしない生活をしている印象があります。

しかし、そんなオスにも立派な仕事があります。

それはプライドを維持すること。プライドの縄張りを守り、子孫を残すという重要な仕事です

のちほど紹介しますが、繁殖活動はオスにとって最もきびしい試練といえます。

アフリカンサファリ ライオン

縄張り侵入者を撃退!

群れのリーダーであるオスはプライドを守るため、定期的に見まわりをしたり、声や尿で自分の敷地をアピールしたりします。

おとなオスが吠える声は、遮るものの少ないサバンナの5km以上先まで届きます。

また、侵入者を発見したら縄張りの外へ追いはらいます。

ライオンにとっての侵入者とは、おなじ草食動物をエサとするハイエナやリカオンなど

威嚇だけでなく、ときには殺してしまうこともあります。これは見せしめであって食べることはありません。

獲物が少ない季節に狩りをされたり、子どもたちを狙われたり、プライドにとって侵入者は非常に危険で忌まわしい存在です。

【YouTube】BBC Earthでライオンとハイエナの戦いをチェック!

メスは子育てと狩りをします

メスはおもに狩りと子育てを担っています。

ライオンの子育ては群れのメス全体でおこなう共同保育。自分の子以外も大切にあつかいます。親が狩りに行くときは別のメスが子守りをしてくれます。

血縁関係にあるメス同士は狩りの際のチームワークも抜群!数頭のメスが隊列を組んで次々と獲物に迫る様子は圧巻です。

【YouTube】Smithsonian Channelでライオンによるキリンの狩りをチェック!

また、キリンやスイギュウなど大きな動物を捕らえるときや空腹のときなどには、オスが狩りに参加することもあります

ライオンの狩りの成功率は?

一瞬にして急所を狙い、見事なハンターの印象があるライオン。

しかし、イメージとは裏腹にライオンの狩りの成功率は3割以下といわれています。

ドキュメンタリー番組等では、獲物に忍び寄る途中で気づかれ、狩りに失敗するライオンをしばしば見かけます。

ライオンは草食動物より足が遅く持久力もありません

そのため、ギリギリまで近づかなければ、獲物を捕らえることができないという欠点があります。

オスライオンとプライド

一生涯おなじ群れで暮らすメスライオンとはちがい、オスライオンは3歳ごろに群れから追い出されます

自分の子どもとはいえ、オスであればプライドのリーダーにとってライバルとなります。

そのため、オスの子ライオンはおとなになる前に排除されると考えられています。

プライドのために戦うオスたち

群れから旅立ったあと、若いオスライオンは兄弟もしくは単独で活動します。成熟を迎えると自分のプライドの獲得に奮起します。

プライドをもつ2つの理由

  1. 食料調達 … メスに狩りをしてもらう
  2. 繁殖活動 … 子孫をのこす

オスライオンは大きく目立つため狩りが苦手です。狩りが得意なメスといることで食事に困ることがなくなります。

そして当然ながら自分の遺伝子をのこすためにはメスが必要です。

プライドをもたないオスはつねにプライドの獲得を狙っています。

アフリカンサファリ ライオン

プライドを獲得するためには?

  1. オス不在のプライドの場合 … プライドをもたないオスを受けいれる
  2. オスがいるプライドの場合 … プライドをもたないオスが決闘を挑む

プライドのオスライオンが死亡した場合またはプライドが分裂した場合などは、リーダー不在のメスだけの状態になります。

オスがいなくても狩りは問題なし。しかし、縄張りの見まわりや子育てのためにはオスが必要です

そこで、メスたちはプライドをもたないオスをリーダーとして受けいれます。

一方、プライドをもたないオスがプライドを乗っ取る場合があります。

戦いの準備をととのえたオスはプライドのリーダーに対決を挑みます。ライオンのプライド争奪戦は非常に激しく、命を落とすこともあります。

仮に挑戦者が勝利した場合、プライドのメスたちは彼(ら)をリーダーとして迎えます。

【YouTube】National Geographic Wildでライオンの決闘をチェック

ライオンの子殺し|プライドの掟

ところが、獲得したプライドには問題があります。

それは、子ライオンの存在です。

もちろん新リーダーとプライドの子は血縁関係がありません。わが子でさえライバル視するオスライオン。一時代を築いた旧リーダーの血を受けつぐ子は脅威そのものです。

さらに、子どもがいるとメスライオンは発情しません。いいかえると子育てしているかぎり新リーダーは自分の子孫を残すことができないのです。

以上の理由から、子ライオンたちは新リーダーによって無情にも殺されてしまいます。

ライオンの子殺し行為はプライドの厳しい掟。通常、母ライオンたちが抵抗することはないと考えられています。

わが子を亡くしたメスライオンはしばらくすると再び発情期を迎えます。

そして、新リーダーの子を妊娠・出産。ついに新プライドが完成します。

熊本市動植物園 ライオンの親子 赤ちゃん

ライオンの繁殖

群れのオスライオン1~3頭に対してメスは多数。リーダーの重要な役割「繁殖活動」は骨をおる仕事です。

ライオンのメスは発情期をむかえるとオスに近づきアピール。そして、メスはオスを誘い出すように群れから離れていきます。

オスとメス2頭だけの環境が整ったのち、ライオンは交尾を繰り返します。

この時期をライオンの「ハネムーン」といいます。

アフリカンサファリ ライオンの雌雄

ハネムーンとは?オスライオンの試練

ハネムーン中は1週間ほどオスとメスの2頭だけで行動し、食事もせずに歩きつづけます。

この間、メスはオスの体力テストをしているのではと考えられています。

1時間に数回交尾をおこない、メスが妊娠するまでライオンの過酷なハネムーンはつづきます。

そのため、ハネムーン中のライオンは雌雄ともに痩せている個体がおおいと報告されています。

なかには空腹に耐えきれず餓死したり、自ら狩りをしたりするオスライオンもいます。

また、群れはリーダー不在の状態がつづきます。残されたメスにとっては不安な日々。結束して子どもたちを守ります。

晴れてメスライオンが妊娠すると2頭は群れに戻ってきます。

ライオンは共同保育をおこなうことから、プライドのメスはおなじ時期に発情・妊娠する傾向にあります。

したがってオスはハネムーンから帰ってすぐ別のメスとハネムーンへ、ということも少なくありません。

メスの発情期はオスライオンにとって最も忙しく体力のいる期間です

アフリカンサファリ ライオン

出産はプライドから離れて

ライオンの妊娠期間は3~4か月。子は1度に数頭誕生します。

つねにプライドで生活するメスライオンですが、出産前後はプライドを離れます。

ライオンの赤ちゃんは目が見えず、弱弱しい体で生まれてきます

もしプライドで出産すると、年長の子ライオンが危険となる可能性があります。ミルクを奪ったり赤ちゃんを蹴飛ばしたりするかもしれません。

そのため、母ライオンは出産前から1か月以上、プライドから離れて暮らします

赤ちゃんが十分に育ったころ、母子はプライドに戻ります。

アフリカンサファリ ライオン 赤ちゃん

メスライオンたちは久しぶりの再開と子の誕生の喜びをわかちあいます。なんとも感動的なシーンです。

ライオンは同じ時期に出産することが多く、子育てを母親同士協力しておこないます。非常に社会性のたかい動物です。

放浪ライオン|ノマド|コアリション

さぁ、みなさん気になっているかもしれません。

ライオンのオスはみんな群れをもっているのでしょうか?

いいえ違います。

リーダーになるオスがいれば、当然リーダーになれないオスもいます。

プライドを乗っ取ることができないオスライオンはサバンナをさまよい続けます

彼らは「放浪ライオン」「ノマド」と呼ばれる孤独なオスライオン。

プライドはもたずとも複数のオスで群れを成している場合は「コアリション」と呼びます。コアリションは兄弟同士が多いといわれています。

九州アフリカンサファリ ライオン

ノマドは長生きできない?!

協力者のいない放浪ライオンは生きていくために狩りをしなければなりません。

しかし、放浪ライオンはおとなのオスライオン。体が大きく見事なたてがみも生えています。

そのため獲物に気づかれてしまうことが多く、狩りの成功率は極めて低いといわれています

若オスやコアリションはもちろん、老オスやケガを負ったオスが食事にありつけることはほぼ不可能。

結果、プライドをもてない、あるいは失ったオスライオンは飢え死にしてしまいます。

つまり、オスライオンはメスがいなければ長生きすることはできないのです

動物園のライオンからは想像できませんが。百獣の王ライオンでさえ、厳しい弱肉強食の世界で生きています。

ライオンの群れ【まとめ】

  • 1~数頭のオス + 10頭前後のメスと子 = プライド
    • リーダー 数年おきに変わる
    • メス 生涯おなじプライド (社会性が高い)
    • オス 3歳ごろプライドを出る → プライド獲得に励む
  • 仕事
    • オス パトロールと繁殖活動(ハネムーン)
    • メス 育児と狩り
  • プライドをもてないオス = 放浪ライオン(ノマド、コアリション)

みなさん野生ライオンの生活をメージできましたか?

協力して子育てと狩りをおこなうメスライオン。先祖代々の縄張りをまもるために、強いオスライオンを迎えいれています。

プライドのため、子孫を残すために尽力するオスライオン。プライドをもてなければ死、ハネムーンに耐えられなければ死、という過酷な日々を送っています。

百獣の王ライオンでさえ生き抜くことがむずかしい自然界。

いまわたしたちがいかに便利な世の中に生きているかを感じさせる事実です。この人間社会をつくるために多くの植物や動物が犠牲になっています。

ちいさなことに感謝し、ものを大切に、日々生活しましょう。

[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。

以上、ライオンのプライドとノマドでした。

【参考】

国際自然保護連合