平川動物公園ボルネオオランウータンのポピー成長記
鹿児島市中心部からおよそ1時間。広さ30万平方メートル、飼育動物130種以上という大きな動物園があります。
その名は平川動物公園。
平川動物公園は2016年にリニューアルオープンしました。複数の動物をいっしょに展示する混合展示や動物の生活環境を再現する生態展示をとりいれています。
日本一のコアラ飼育数を誇り、遮るもののないコアラ展示が話題の動物園です。
コアラやオオカミの赤ちゃん誕生、アマミノクロウサギ等保護動物の飼育など動物園界からも注目を集めています。
トラ5頭、マサイキリン3頭、コアラ10頭以上など人気動物がおおいなか、ひっそり暮らしつつもとても目立つ存在「オランウータン」がいます。
平川動物公園のオランウータンはいったいどんなオランウータンでしょうか?
名前や特徴、成長の記録をつづっていきます。
オランウータンの基本知識を知ろう
霊長目ヒト科オランウータン属。現在、3種に分類されています。
- ボルネオオランウータン
- スマトラオランウータン
- タパヌリオランウータン
インドネシアとマレーシアの熱帯雨林のなか、おもに木の上で暮らしています。
赤茶色の非常にながい毛におおわれ、ゴリラやチンパンジーとは生息地も外見もまったく異なるオランウータン。
身長は150cmほどとおとなのヒトよりも低いですが、オスの体重は80kgとメスの倍ほどに成長します。
オランウータン生息数はぜんぶで11万人ほど。絶滅寸前の動物(IUCNレッドリスト深刻な危機)といわれています。
1950年に比してオランウータンの数は80%以上減りました。密猟とアブラヤシ農園化による生息地破壊、森林火災、気候変動がおもな要因です。
なお、オランウータンはワシントン条約によって学術目的以外の輸出入は禁止されています。
- IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 インドネシア、マレーシアの湿潤林 11万人
- 身長 オス130cm メス110cm
- 体重 オス80g メス40kg
もちろん飼育下のオランウータンも減少。全国の動物園がいちがんとなり繁殖にとりくんでいます。
ポピー|平川動物公園のオランウータン
平川動物公園のオランウータンの名前は「ポピー」2000年6月8日生まれのオスです。
種はボルネオオランウータン。
マレーシアおよびインドネシアに属するボルネオ島(カリマンタン島)に生息しています。体毛の色は暗め。スマトラオランウータンほど毛深くはありません。
多摩動物公園生まれ【2000年6月】
ポピーは1985年生まれの父「ボルネオ」と1973年生まれの母「チャッピー」の長男として東京都・多摩動物公園で生まれました。
2006年生まれの妹「ミンピー」2014年生まれの弟「アピ」がいます。
そして2020年10月、チャッピーは国内最高齢47歳での出産をおえ、2022年現在も弟「ホッピー」を育児中です。
ポピーのおばあちゃん「ジプシー」は伝説のオランウータン。
野生の孤児だったジプシーは1958年からずっと多摩動物公園で飼育されていました。
来園者を楽しませるだけでなく、繁殖や群れ形成においても重要な存在でした。日本にいるボルネオオランウータンの相関図を見るとジプシーが頂点になっていることがわかります。
2017年に世界最高齢の推定62歳で死亡しました。
チャッピーはその遺伝子をうけつぎ、10歳のころから日本のオランウータン繁殖に大きく貢献しています。
オランウータンの飼育・繁殖経験ゆたかな多摩動物公園で生まれ育ったポピー。10人以上のオランウータンの仲間になりました。
また、ミンピーが生まれるときには隣の部屋で出産に立ち会うこともできました。動物園生まれの個体としては非常に貴重な体験です。
ポピーは多摩名物「スカイウォーク」を披露したり、ジプシーの真似をして器用さ・頭の良さを発揮したり。家族からたくさんのことを学びながら成長しました。
鹿児島にやってきました【2014年3月】
野生オランウータンは雌雄ともに単独生活を好みます。
一方、社会性のあるオランウータン。食料豊富な飼育下では多摩動物公園のように群れで暮らすことができます。
ただし、近親交配をさけるためオスはおとなになる前に別居するのが理想的。
ポピーはオランウータンの性成熟(10歳ごろ)をむかえると、家族のもとを旅立つことになりました。
2014年3月、平川動物公園の完成したばかりのオランウータン舎にやってきたポピー、当時13歳。
ぴちぴちの青年がこれからどのように成長してゆくのか楽しみです。
平川動物公園のオランウータン飼育歴史
平川動物公園は前身の鴨池動物園時代よりオランウータンを飼育しています。
なんとはじめてのオランウータン飼育は1916年!100年以上前です。
その後空白の時間があり、平川動物公園開園翌年(1973年)からはペア飼育がはじまりました。
1組目のペアは1979年6月、1984年5月に繁殖に成功。2組目のペアは繁殖へはいたりませんでした。
平川動物公園で30年愛されつづけた野生生まれのスマトラオランウータン「エミ」2012年6月推定49歳で亡くなりました。
平川動物公園 ポピー展示場のようす
ポピーが来園する直前、2013年7月にお披露目された新しいオランウータン展示場。
中央にはタワーのような大きな樹木が2つ。室内出入口、木、デッキ等をつなぐロープがたくさん設置されています。
人工物と自然物をくみあわせ、野生オランウータンの行動をひきだすようにつくられています。
来園者は展示場の周囲をぐるっとのぼりながら進みます。
低いところに大きなガラスビュー、登りついた先にはガラス張りの室内展示場と開放的な展望デッキ。
地上をあるくポピーを間近に見れたり、木にのぼるポピーをのんびり眺めたり。2つの視点があるのは嬉しいポイントです。
ポピーってどんなオランウータン?
野生オランウータンは単独行動をとります。森のなかの高木にのぼり、寝るときも食べるときも基本ひとりで木の上で過ごします。
おとなオス同士は繁殖をめぐってライバル関係にあります。一方でメスや若いオスに対しては寛容といわれています。
簡単にいうとオランウータンは闘争は好まず、自由なひとり暮らしが好きな動物。
これを基本としてポピーの性格をさぐってみましょう。
ポピーは人間嫌い?!
飼育員さんのお話によると、ポピーはむやみやたらに名前を呼ばれるのが嫌い、カメラを向けられるのが嫌い、と愛嬌をふりまく性格ではないそうです。
木の頂上や室内と屋外の出入口付近にいるのをよく見かけます。麻袋をかぶったり体をまるめたり、顔をかくしている印象です。
やはりのんびりとひとりで暮らしたいオランウータンにとって、野生も飼育下もヒトの存在は脅威なのでしょうか。それともただただ恥ずかしがり屋さんなのでしょうか。
本当のところはポピーにしかわかりませんが。
遠くからでも木の上にいるポピーはよく見えます。
また、距離をおいて静かに観察すると「素」のポピーが見れるかもしれませんね。
ごはん時に会いたい!ポピーはグルメ
そんな見られるのが苦手なポピーがよく見えるのは食事中。
くわしい時間はわかりませんが、10時前後や14時前後に見たことがあります。
もちろんポピーは食べているところを見られるのも好きではないようす。
木をうまいこと利用して見えにくく食べてます。開放的な展示場の死角を知りつくした男です。
実はポピーは食にこまかいグルメな一面があるそうです。
とくに食パンがお好み。ごはん時に食パンがないと不機嫌になるときも。飼育員さんしか見れない一幕、うらやましいです。
展示場ではおもに野菜や果物があたえられています。むしゃむしゃと食べていますが、きっといろいろ思いながら食べているんでしょうね。
夕方 とくによく動く
まだ20代と若いポピーは比較的活発なオランウータンです。
なかでもポピーがものすごく動く時間帯があります。
それは夕方、帰宅が近づくことです。
まだかまだかと落ち着かないのか、室内の出入口と木を行ったり来たり。
ポピーはロープを利用してすいすいと移動します。そのまま木の上まで軽々とのぼっていきます。
距離が短いのでつなわたりは一瞬の出来事ですが、ポピーの身体能力に驚嘆!おおくの来園者が歓声をあげて見ています。
閉園前ばかりは人目に耐えられるのか、じっとしていられないのか。葛藤しながら動いているのかもしれません。
夕方に行けない方も安心してください。
ポピーはずっとじっとしているオランウータンではありません。
飼育員さんの思惑どおりよく動いています。朝も昼もすこし時間や距離をおけばきっとポピーは動くはずです。
青空と奥にひろがる緑そしてポピーのコントラスト。
とても美しい平川動物公園の光景をぜひとも見てほしいです。
ボルネオオランウータン「ポピー」の記録
来園1年後 15歳のポピー(2015年)
2014年3月に来園したポピー。
わたしが初めて会ったのは来園1年をすぎた2015年7月。よく晴れた気持ちの良い日でした。
夏の生い茂った緑がポピーの赤毛の美しさを際立たせています。
13歳のひとり立ち
一般に若いオランウータンは母親と暮らしています。
オランウータンは10歳前後で性成熟をむかえ、母親のもとを離れていきます。サルの仲間ではめずらしく、単独行動を好む動物です。
多摩動物公園は国内で最もおおくのオランウータンを飼育している動物園。ポピーは母親だけでなく、おばあちゃんや妹と暮らしていました。
来園時13歳だったポピー。野生のオランウータンと同じように、ひとり立ちのスタートでした。
アンフランジの若々しいオス
多摩動物公園にはポピーの父「ボルネオ」と推定1969年生まれの「キュー」という2頭のフランジのオスがいます。
フランジとは頬にあらわれる大きなひだ。強いオスの象徴であり、メスや子どもにはありません。
しかし、オスでもおとなになれば必ずフランジが発達するとは限りません。野生ではアンフランジ(フランジをもたないおとなオス)も確認されています。
いまだにフランジの不思議は解明されず、各個体が状況をみて判断するのではともいわれています。
平川動物公園に来園したころのポピーはアンフランジでした。
ボルネオとキューの存在により、多摩動物公園ではフランジになるという選択肢はなかったかもしれません。
自分以外のオランウータンがいない平川動物公園。
これからポピー自身の認識が変わり、フランジへと変貌する日がきっときます。
食事を楽しむ16歳のポピー(2016年)
ボルネオ島という暖かい島原産のオランウータンにとって辛い冬がおわりをつげ、春の風を感じる3月。
ポピーもなんだか嬉しそうです。まだ肌寒いからか麻袋をかぶっていました。
視線の先には飼育さんが隠したエサの数々。木の枝や草の間などに小さくカットした野菜がおかれています。
めったに地上に降りないポピーがわさわさとエサを集めながら歩いていました。
すぐに食べようとはせず、口いっぱいににんじんを入れていきます。
展示場全体を見おろせる展望デッキにいたわたし。
隠されたエサは見えませんでしたが、ポピーは次々とゲットしていきます。ガラスビューからだったらよく見えたのかもと、ちょっぴりざんねん。
食事の時間をながくする工夫は動物の幸福度をたかめるエンリッチメントの一環です。
しかし、ポピーは数分で探しだしていたので、難易度をあげる必要がありそうですね。
木の上で生活するオランウータン。
ポピーは高いところに登ってから、ゆっくりお食事をはじめました。動物園生まれ動物園育ちですが、しっかりとオランウータンの本能があらわれています。
美味しいにんじんだったのでしょう。終始ご機嫌そうなポピーでした。まだ幼さののこる可愛らしいオランウータンです。
8月暑そうに過ごしていました
実は、2016年は2度ポピーに会いに行きました。2回目は8月の暑い日。
長い毛をもつポピーも暑そうに過ごしています。
わたしはこの日大きな失敗をしました。カメラの充電をしていなかったのです。全く写真をのこせず、がっくり。
皆さんにもポピーの様子をお見せできず、申し訳ないです。
17歳ポピーがフランジに(2018年)
2017年は平川動物公園に行けなかった年。ポピーの成長を見れず悔やまれます。
2018年4月、2年前とおなじ春のあたたかい日にポピーに会いに行きました。
この1年半以上のあいだにポピーは大きく成長していました!
フランジオスへ変化
多摩動物公園と異なり、平川動物公園で暮らすオランウータンはポピーただひとり。
対抗するオスがいないからか、繁殖への心意気なのか、ポピーの顔の皮ふ(フランジ)が育ちはじめています。
明らかに顔つきが変化!まだ少し色が淡かったまぶたまで真っ黒になっています。さらに毛の質も変わっているように見えます。薄かった頭頂部の毛もふさふさです。
室内と屋外の扉の前、ポピーはいつものように座っていましたが、しばらくすると移動開始。
一瞬だけこちらを向いてくれました。フランジになったものの相変わらず可愛らしいお顔です。
木の塔まで音もなく、あっという間に移動するポピー。
デッキに着いたら朝ごはん。美味しそうなチンゲン菜を食べていました。
まだ控えめなひだですが、フランジへと成長しているポピー。
国内のボルネオオランウータンは全部で30人。そのなかからポピーと繁殖できる個体を探し、連れて来るのは簡単ではありません。
国外のオランウータンも視野に入れるとのことですが、未だ実現には至っていません。
親の繁殖を見て学んだ経験をもつポピー。おそらく繁殖能力が高い、貴重なオランウータンです。
ポピーが多摩動物公園で学んだ知恵を生かせる日が来ますように。
さらに成長19歳のポピー(2019年)
本日は曇り時々雨。7月の蒸し暑い日でした。
ポピーは雨をさけて庇の下。いつもの展示場出入口にある狭いくぼみに上手に座っていました。
おだやかな表情に癒されます。
昨年よりフランジがふっくら!体毛が長くなったのでしょうか、体も大きくなったように見えます。
相変わらず人目を気にしています。フランジになっても性格は変わらないようですね。
わたしが遠くに移動したあとも、こちらを意識し落ち着かないポピー。申し訳なくなってこの場を離れるとします。
約30分後。
雨が止んだため、もう一度ポピーのもとへ。先ほどよりさらに遠くから観察します。
すると、ポピーが動き出しました。
そろりそろりと綱渡り。
なんと両手は使っていません!腕だけは見たことがありますが、足だけははじめて見ました。
なんだかルンルンと歩いているようなポピー。雨で来園者がすくなく静かな園内、ポピーにとっては良き日なのかもしれません。
最終的には腕もつかって、
デッキにたどりつきました。
驚いたのはぐるりとこちらを向いたこと。だいたい背中を向けるのに。カメラのシャッター音で存在を気づかれちゃったのかもしれません。
のど袋も成長!
腕をひろげた姿をばっちり見れたこの瞬間。
ポピーはフランジだけでなく「のど袋」も大きくなっていることが確認できました!
オランウータンののど袋は頬のひだと同じくフランジオスの特徴。ロングコールと呼ばれる大きな声を出してメスにアピールするときに活躍します。
さらに移動をつづけるポピー。
大きな体、長い毛を揺らしながら木にのぼりはじめました。肩の筋肉がもりっとして素敵です。
ついにはタワーの頂点へ。
人目を避けるポピーですが、樹上生活をするオランウータンらしく、やはり高いところがお好き。
口もとをよく見ると、むぐむぐ空気を入れたり出したりしています。
もしやロングコールを発するかと思いましたが、声は聞こえてきませんでした。いったい何だったのでしょうか、答えはわからず。
頂上に移動して数分後、雨が降りだしてきました。
ポピー無念。
また庇の下へと戻っていきました。
今回はポピーのいろいろな動きや表情が見れてとてもラッキーな一日でした。
ポピーのパーソナルスペースは20メートルくらいなのかもしれません。
メスを惹きつけるというオランウータンのロングコール。いつかポピーのロングコールが響きわたり、メスと結ばれる日が来ることを願います。
20歳になったポピー(2020年)
本日は曇り空。梅雨らしいむしむしとした日でした。
先日20歳の誕生日をむかえたポピー。たくさんの方に祝ってもらて美味しいごはんを食べれたことでしょう。
しばらく眺めていましたが、この日は観覧デッキに背中を向けて座っていました。
ポピーお祝いされすぎて疲れたのかなと勝手に解釈。撮影はひかえ、その場をいったん離れます。
ワオキツネザルの島の前あたりで振り返ってみると、ポピー木の上まで登ってるではありませんか!しかもあごのせスタイル!
ふだんは下あご出てないのに、この時はすごく出てます。はじめての表情が見れて嬉しいです。
あわててポピーのもとに戻ります。
しかし、ときすでに遅し。
ポピーはまたも顔を隠していました。見られるの好きじゃないんだな、とあらためて実感。
フランジやのど袋の成長は確認できず。ざんねん。
ポピーが見つからない(2021年)
青い空と白い雲がきれいな夏の日。マスクのなかまで汗だくになる暑さでした。
21歳になったポピーはどうしているかな、オランウータンだから暑さには強いのかな、と思いながら会いに行きました。
すると、なぜかポピーの姿が見あたらず。いつもの出入口にも木の陰にもいません。室内展示場は真っ暗。時間をかえて行っても見つけられませんでした。
人目をさける性格のポピー。ついにナマケモノのように擬態化を身につけたのでしょうか?
公式Twitterでは、木に登り元気そうなポピーの様子があがっています。
動きまくる22歳のポピー(2022年)
よく晴れた日。10月といってもまだまだ暑さを感じます。
さて昨年は会えなかったポピー。
今回はぜったいに会いたいと思い、ポピーが活発な夕方をねらって行きました。
案の定、出入口と木の頂上を行ったり来たり、よく動いています。
このときは足だけのつなわたりを披露。麻袋は口にはさみ、落ちそうになったらひょうと手でひっぱっていました。
オランウータンの運動能力と器用さがうかがえます。
またまたフランジが大きくなっているのかなと思いきや、さほど変化なし。
推定1969年生まれの福岡市動物園「ミミ」に比べると、皮ふの厚みも突出具合も半分以下に見えます。
すべてのオランウータンのオスがフランジになるわけではありません。
野生ではアンフランジが強いフランジの死亡後、急にフランジに変化したという報告があります。
いまポピーにとって何か大きな存在がいるのでしょうか?それとも小さいフランジがポピーの個性なのでしょうか?これからも観察をつづけたいです。
ポピーの新しい一面(2022年)
肌寒くなってきた11月。とはいえ日中はぽかぽか陽気でした。
本日はポピーの多摩動物公園時代の飼育員さんがいらっしゃるということで、どんな反応するか楽しみです。
ひとまず世界のサルゾーンに向かうと、サル舎から木の頂上にいるポピーが見えていました。
日当たりがよくて暖かそうですが、寒そうに麻袋を着るポピー。
オランウータンのように暖かい地域に生息する動物たちは辛い季節の到来を感じているのでしょう。
元飼育員さんと感動の再会!
チャッピーの妊娠からポピーの誕生、そして成長を知る多摩動物公園時代の飼育員さん。
上野動物園でゴリラが誕生したから人気がなかったとか、禿げてて心配だったとか、祖母ジプシーとの遊びの話などたくさん教えてくれました。
8年ぶりくらいに会うというお2人。
元飼育員さん「ポピーーー」
確実に覚えています!
声は出さないものの懐かしむような喜ぶような雰囲気を感じました。そして明らかにポピーの表情も行動もちがいます。
何度もデッキ左側(元飼育員さんが立っている)を見て、人だかりで見えないとなれば木にのぼって見て、ものすごく気にかけていまいした。
ふだんは来園者にお疲れ気味のポピー。この日ばかりは人目も気にせず元飼育員さんに会えてうれしそうで、とても感動しました。
ポピーの「におい」
現飼育員さんのお話もうかがうことができました。
2017年ごろ発達したポピーのフランジについて。
来園当時の平川動物公園の園長が体格のよい方で、頻繁にポピーを観察していらしゃったそうです。もしかしたら園長が立派過ぎてフランジが発達しなかったのかもとおっしゃってました。
実際に、飼育員(の接し方)が変わったことで、フランジの成長やロングコールなど繁殖活動がさかんになったという例があります。
平川動物公園の園長の影響はたしかにあったのかもしれません。
また、屋外展示場ではなかなか分からないポピーのにおい。アンフランジのときとは違う嗅いだことのない「におい」に変化したそうです。
ちなみにポピーの父「ボルネオ」が強烈なにおいの持ち主だったとのこと。オランウータンのにおい事情が知れてなにより。
なかなか聞けないロングコール
ずっと気になっていたポピーのロングコールについて。
実はポピー、フランジになってからロングコールをするようになったそうです。
一度も聞いたことがないので愕然としていたところ、なんと飼育員さんですらしっかり見たことはないとのこと。
なぜならポピーは壁に向かってロングコールするから。ヒトの気配を感じるとやめるので、そっと後ろ姿を見る程度なんだとか。
ポピーがロングコールすることに驚きましたが、壁向きにおこなうことにさらに驚きました。
なぜだろうと思っていたところ、多摩ではとなりの部屋に他のオランウータンがいたからかもしれませんね、と元飼育員さん。
たしかに。会ったことないけど隣の部屋にメスがいると思っているのかも。
単独生活が好きといえど、やはり繁殖活動ができないポピーの話を聞くと切なくなりました。
どうかポピーのペアリング相手が見つかりますように。
今回はポピーをよく知るお2人の話が聞けたので、情報もりだくさん。
平川動物公園に来る前や室内でのポピーを知れたうえに、動物とヒトとの友情や信頼を感じるとても有意義な時間でした。
ちなみにポピーの元飼育員さんとは、多摩動物公園・上野動物園で37年間ゴリラ、チンパンジー、オランウータンの飼育を担当していた「黒鳥英俊」さん。
動物園を退職した現在も、野生オランウータン研究・保全活動にとりくんでいます。
【リンク】
日本オランウータン・リサーチセンター
ボルネオ保全トラスト・ジャパン
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
サラヤ株式会社の特定商品を購入すると、売り上げの1%がボルネオ保全トラスト・ジャパンをとおして環境保全につかわれます。
2023年、ポピーはいったいどんなオスになっているのでしょうか?元気に暮らしているのでしょうか?
ポピーファンの皆さんのため、必ずまた平川動物公園のポピーに会いに行きます。
更新をお楽しみに。
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