トロフィーハンティングの実態とは?ハンティングビジネスの賛否
近年よく耳にするようになった「保全」ということば。動物や動物が暮らす環境をまもることをさします。
動物愛護や種の保全などがさけばれるなか、アフリカでは相反するようなビジネスが成長しています。
それが「ハンティングビジネス」です。
人気のある狩猟対象はライオンやゾウなど絶滅に瀕している動物たち。
なぜ絶滅危惧種の狩りができるのでしょうか?これにはなんとも不快なからくりがあります。
今回のzoo zoo diaryはスポーツハンティング・トロフィーハンティングの残酷な実態を紹介。狩猟ビジネスが流行している理由やその賛成・反対意見をまとめました。
ハンティングビジネスとは何か、なぜ盛んなのか、規制できないのか?など世界の声と現地の声に耳をかたむけてみましょう。
ハンティングビジネスとは?
動物を保護する活動が盛んに行われる昨今。
野生動物の宝庫であるアフリカでは動物狩りに関連したビジネスが成長しています。
スポーツ(トロフィー)ハンティング
生活のためでない「娯楽」の狩猟、いわゆるスポーツハンティングができる場所を提供するビジネスです。
射殺した動物をはく製や毛皮などに加工して狩りの記念品とすることから、トロフィーハンティングとも呼ばれています。
スポーツハンティングは何百年も前から行われています。規制のない時代、過剰な狩猟が動物の絶滅をまねいた例がいくつもあります。
現在は、IUCNレッドリストが絶滅のおそれがあると評価した種は国や団体によって守られています。
また、絶滅危惧動物のおおくはワシントン条約により生体および毛皮や角など体の一部の国際間取引が規制されています。
一方で、密猟にあたらない(合法である)場合、狩猟やトロフィーの輸出入は可能です。違法行為がおこなわれていないかの判断が重要となります。
キャンド・ハンティングが大流行!
ハンティングビジネスはさまざまな国や地域で行われていますが、とくに南アフリカ共和国で盛んです。
動物繁殖施設が何百とあり、幼獣はふれあい動物として、成獣は繁殖用もしくはトロフィー用として売買されています。
ハンティング業者はライオンやキリンなど繁殖施設で育った動物を狩りの対象としてハンターに販売します。
トロフィーとして育てられた動物は柵で囲われた広大な私有地にはなされます。
とても広い敷地ではありますが、動物たちは缶詰にされた状態【canned】。見つけるのは簡単です。
これはキャンド・ハンティングと呼ばれ、南アフリカでは一般的となっています。
やっと解放されたと思ったら殺される動物たち。なぜこんなに残酷なことができるのかと、憤りを感じます。
ハンディングビジネスが流行する理由
動物の命を商売にするハンティングビジネス。動物保全がさけばれるなか、動物愛護に反する職業がなぜ流行しているのでしょうか?
答えは簡単。
畜産よりキャンド・ハンティングの方が収益性が高いからです。
やせたアフリカの大地では食用の動物を育てることは容易ではありません。
一方、もともとアフリカに生息している動物は問題なく育ちます。
野生では狩ることができない貴重な大型動物はとくに狩猟の需要が高く、1頭当たりの取引価格が高騰しています。
絶滅危惧種の狩りは違法にならないの?
実は「絶滅のおそれがある動物を狩ること」イコール「密猟」ではありません。
もちろん国立公園や保護区での狩りは禁止されています。密猟をふせぐためのパトロールがおこなわれています。
ところが南アフリカでは動物の所有権はその土地の所有者に属します。つまり私有地での狩りに違法性はありません。
狩猟許可を受ければ、たとえ絶滅危惧種であっても自分の敷地内では自由に狩りができます。
そのため、野生動物を私有地内におびきよせたり車で追いこんだりして狩猟する例も確認されています。
これは密猟となんら変わりありません。しかし、違法ではないのです。
絶滅危惧種のハンティングをふせぐためには、保護区制定とともに法改正も必要となっています。
ヒトのために生まれるライオンたち
南アフリカにはライオン繁殖施設が300か所以上あるといわれています。
ライオンはとくに人気が高く、トロフィー用のライオンは常時1万頭以上!南アフリカに生息する野生ライオンの数を優に超えます。
現に年間800以上のライオンのトロフィー(毛皮やはく製)が輸出されています。
幼いあいだは「ふれあい動物」として売られ、おとなになると「狩りの対象」として売られるのです。そして死んだライオンの骨は薬品としてアジアに輸出されています。
生まれてから亡くなったあとまで利用価値のあるライオン。またたく間にビジネスとしてのライオン飼育が広まりました。
絶滅危惧種が簡単に生まれ、簡単に売られているという事実。
動物のしあわせ(動物福祉)をいっさい無視した飼育に怒りを覚えます。
狩り事業の規制にふみだす!南アフリカ
2021年5月、南アフリカ共和国政府はこの悪しきハンティングビジネスを規制すると発表しました。
商業目的の繁殖や飼育はもちろん、ハンターに売ることや観光客にさわらせることも禁止します。
ヒトのために生まれ、ヒトに殺される動物がたくさんいます。南アフリカ共和国は不幸な動物をへらすために大きな一歩をふみだしました。
今後、キャンド・ハンティングがなくなるよう応援しましょう!
ハンティングビジネス賛成の声
殺されるために育てられるという動物たち。ヒトの身勝手な行動にいきどおりを感じるでしょう。
当然、世界中からトロフィーハンティングへの非難があつまっています。
一方で、ハンティングビジネスを必要とする意見が存在するのも事実。その一部を紹介します。
密猟をふせぐ
合法的な狩猟の場を提供することにより、野生動物の密猟をふせいでいるという見解。
すべての狩猟を規制したところで、ハンターがゼロになるわけではありません。狩りを楽しむものは行き場をなくし、公園や保護区に出没するでしょう。
そして、野生動物が標的に。結果として違法な狩猟がふえると懸念されています。
ハンティングビジネスがハンターの需要を満たしていることは事実です。
問題のある個体を駆除する
世の中には異常行動を起こす個体が必ず存在します。
なかには健康な個体や若い個体を殺したり、繁殖適齢期を超えてもメスをゆずらなかったり、種保全の観点から注視される個体もいます。
ハンターやビジネス側はむやみに殺しているわけではなく、対象個体を選んでいるといいます。
なかにはヒトに危害をあたえるおそれのある個体を駆除することで保護区の安全に貢献していると主張するものもいます。
実際のところ、狩猟禁止区内の問題のある個体はレンジャーによって射殺されています。
そのため、狩りのターゲットとして都合の良い相手といえるでしょう。
ところが、保護区のアイコンとなっているライオンやゾウを狩猟し、記念写真を全世界に発信しているヒトたちがいます。
果たして彼らはどういう基準で対象を選んでいるのでしょうか?
現地の収入・雇用をうむ
アフリカではハンティングビジネスを歓迎する声もあります。それは大きな資金源となるからです。
経済状況が厳しい国や地域では、狩猟による収益の一部が野生生物の保護にあてられています。
そのため、ハンティングビジネスは動物・環境保全に必要と主張する者がいます。
また、ハンティングビジネスは案内人、運転手、護衛など多くの雇用を生みます。
無情と感じながらも、ハンティング用の動物(トロフィー)の飼育にたずさわるヒト、動物を殺す手伝いをしているヒト等もいます。
つまり、ハンティングビジネスの規制が強まると失業者がふえると予想されます。すると、生活のために密猟をはじめるヒトが少なからず出てくると考えられます。
一方で、ガイドやハンターを装った密猟グループが確認されています。観光や娯楽に来ているように見える人々がプロの密猟業者かもしれません。
ハンティングビジネス【まとめ】
- 娯楽のための狩猟
=スポーツハンティング
トロフィーハンティング - 狩猟用・ふれあい用に動物を飼育
↑動物福祉を無視している - 敷地内に放飼し狩猟させる
=キャンド・ハンティング - 野生動物を敷地内に追い込み狩猟させることも
↑密猟や密輸につながる - 一部を記念品(トロフィー)とする
↑密猟や密輸につながる - 収入・雇用をうむ
↑規制をむずかしくさせる課題 - 南アフリカ共和国が規制にふみだす
むずかしい問題を抱えるハンティングビジネス。世界的には反発が多く、規制強化の傾向にあります。
皆さんはハンティングビジネスを認めますか?認めませんか?
野生動物をまもるために保護区をつくったりパトロールをしたり、世界中の人々が活動しています。
一方で狩猟を趣味とし、大金をはらい動物を殺している人々もいます。
わたしはハンティングをしたいとは決して思いません。
しかし、ハンターのおかげで生活ができている人々にとって狩猟規制は大きな問題です。
この記事を読んで、動物のことだけでなく動物をとりまく環境や現地の人々のことを考えるきっかけになれば幸いです。
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
以上、ハンティングビジネスのお話でした。
【参考】
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