ユキヒョウの生態と特徴|雪豹のなぜ?なに?がわかる記事
ヒョウは、アフリカのビッグファイブにも数えられる人気動物。ほとんどの方がその姿かたちを思い浮かべられるでしょう。
では、ユキヒョウをご存知ですか?
飼育している施設がすくないため知らない方がいるかもしれません。
しかし、ユキヒョウ展示場には必ずといっていいほど立派なカメラを持ったファンがいます。それほ魅力的なユキヒョウ。
今回のzoo zoo diaryでは人々を魅了するユキヒョウを特集!
ユキヒョウの種類は?なぜしっぽや毛が長いの?なぜあしが短いの?寿命は?などユキヒョウの生態と特徴をくわしく紹介します。
ユキヒョウとは?
ユキヒョウはネコのなかま。
かつてはひとつの属(ユキヒョウ属)とおもわれていましたが、2010年遺伝子研究によりトラに近いことがわかりました。以降、トラと同じヒョウ属に分類されています。
- 食肉目 Carnivora
- ネコ科 Felidae
- ヒョウ属 Panthera
- ユキヒョウ Panthera uncia
- ヒョウ属 Panthera
- ネコ科 Felidae
亜種はまだ確定されていません。
ユキヒョウは「ヒョウ」という名がつきますが、実際には「ユキトラ」と呼べるほどトラと近い関係にあります。
- IUCNレッドリスト 危急(VU)
- CITES 附属書Ⅰ
- 生息 中央アジアの山岳地帯 7700頭
- 体長 100~130cm
- 尾長 100cm
- 体高 60cm
- 体重 オス45kg メス35kg
体長1~1.3メートルと一般的なヒョウの大きさと変わりません。一方、体重は軽く40kg前後。オスの方がすこし大きめです。
ユキヒョウ最大の特徴は毛色。
一般的に思いえがくヒョウやトラの色「黄色」ではありません。白やグレー、ベージュの体毛で覆われています。
花のような斑紋、いわゆるヒョウ柄はありますが、くっきりした模様ではありません。
ユキヒョウの生息地
ユキ「雪」のイメージ通り、中央アジアのアルタイ山脈やヒマラヤ山脈など極寒の山岳地帯に生息しています。
ユキヒョウは非常にひろい行動範囲をもちます。
冬場は積雪を避けるため標高の低いところで過ごします。反対に、夏は暑さをしのぐため標高5000メートルほどまで移動します。
生息数|絶滅の危機に瀕しています
雪山に生息するユキヒョウは発見がむずかしく、野生の個体数は定かではありません。
野生ユキヒョウは地球温暖化や密猟により減少傾向。とくに家畜を殺された現地住民の報復行動が問題となっています。
2016年には推定個体数7700頭前後と報告されています。そのうち60%ほどは中国に生息していると考えられています。
近年は、保護区の制定や密猟防止策により減少率は低下。
しかし、生息数1万頭未満かつ減少がつづいており、ユキヒョウは絶滅のおそれが高い動物(IUCNレッドリスト危急)です。
なお、ワシントン条約により学術目的以外の国際間取引は禁止されています。
ユキヒョウの特徴「雪山と進化」
ヒトが住みつかないような険しい雪山に生息するユキヒョウ。
アフリカに生息するネコ科動物とはちがう進化をとげています。
ユキヒョウの毛|色と長さ
まず「毛」黄色ではなく山岳地帯がもつ白や灰、茶色に変化しました。
じっと動かないユキヒョウを見つけるためには、かなりの忍耐と訓練が必要です。
また、寒い冬に耐えるためユキヒョウは毛深くなりました。腹の毛は10cmほどの厚さがあります。
尾も厚い毛におおわれており、マフラーのように口や鼻を冷気からまもる役割を果たします。ユキヒョウが尾をくわえ口もとをあたためる様子は動物園でも観察できます。
毛深い&大きい肉球
さらに、大きな肉球にも毛がぎっしり生えています。
大きくて毛深いユキヒョウの肉球は凍傷をふせぐだけでなく、摩擦力が高くすべりにくいという利点もあります。
おかげでユキヒョウは凍った地面をなんなく歩くことができます。
大きな鼻のなか(鼻腔)
体の冷えはエネルギーをうばう大きな原因になります。
体温低下をふせぐために、ユキヒョウは鼻の穴のなか(鼻腔)が大きく進化しました。
鼻から吸われた空気は鼻腔をとおる間にあたためられます。もちろん鼻腔が大きいほど空気をあたためる時間が長くなります。
そのため、ユキヒョウが吸った冷たい外気は肺に入るころには体温にちかづきます。おかげでユキヒョウは寒さを感じずにすむのです。
短いあしと長いしっぽ
毛色以外にとくに目をひくのは太く短いあしと太く長いしっぽ。尾長は1メートルもあります。
では、なぜ短足・長尾になったのでしょうか?
ユキヒョウの生息地を思い出してください。
ユキヒョウは足場のわるい山岳地帯で生活しています。標高が高く風が強かったり、斜面が急だったり、とても動きづらい場所です。
捕食者であるユキヒョウ。機敏に動けなければ生きていくことはできません。
あしが短いと重心が低くなり風の抵抗をうけにくくなります。また、長い尾を動かすとバランスがとりやすく、さらに方向転換もしやすくなります。
つまり、短いあしと長い尾は雪山ですばやく動くための進化のかたちなのです。
ユキヒョウの生態
ユキヒョウは雌雄ともに群れをなさず、山奥でひっそりと暮らしています。
他の動物の気配に非常に敏感。接触をさけるように行動しています。休むときは岩陰などに隠れています。
また、灰色や淡い茶色の毛が周囲の岩や山肌にとけこみ、隠れていなくても見えないほどです。
そのため、野生ユキヒョウを見るのは至難の業。幻の動物と呼ばれています。
ユキヒョウの観察記録や研究報告は極めてすくなく、ユキヒョウの実態はいまだ多くの謎につつまれています。
性格は控えめ。自身や子に危険を感じないかぎり、自ら攻撃することはないといわれています。
ビッグキャットであり食物連鎖の頂点ともいえるユキヒョウ。いたって謙虚で静かな暮らしをおくっています。
ユキヒョウのジャンプと狩り
険しい雪山でも俊敏に動くことができるユキヒョウ。
狩りは明け方や夕方のうす暗い時間帯に行われます。主な食べものはヤギやヒツジ。
しかし、ユキヒョウは状況に応じて獲物をかえることが知られています。場合によっては、死肉や家畜を食べることもあります。
ユキヒョウは背後から獲物に忍びより、一気に跳びかかります。
ごつごつした急な斜面をものすごいスピードと跳躍で追いかけるユキヒョウ。非常に華麗でかっこいい瞬間です。
ユキヒョウはあしの力が強く10メートル以上ジャンプすることができます。
この跳躍力をもって自分より大きな動物を仕留めることも可能。
他者の目を避けるユキヒョウは獲物を隠れ家に運んでから食べることがあります。また、食べ切れないエサを洞穴などに隠すことも確認されています。
肉球が大きな赤ちゃん|ユキヒョウの繁殖
繁殖期は1~3月。雌雄ともに単独行動をとるユキヒョウはにおいを頼りに繁殖相手を探します。
妊娠期間は約3か月。妊娠したメスは出産に最適で安全な場所を探します。そして、地面に自分の毛を敷きつめ出産の環境をととのえます。
通常、体長20cm程度の赤ちゃんを1度に2、3頭産みます。
からだの小さな赤ちゃんはパウ(あしの裏)の大きさがとても目立ちます。ユキヒョウらしい一面です。
子は2歳ごろまで母親と行動を共にし、その後ひとり立ちします。
性成熟は3歳前後です。
ユキヒョウの寿命|ヒトとの関係
1度に複数頭産むことが多いユキヒョウ。
ところが、生まれた子は成熟前に死亡することが多いといわれています。生息地破壊や食糧難による飢餓がおもな原因。
天敵はいないため、きびしい時期を乗り越えたユキヒョウの寿命は15年ほど。
飼育下では20年以上生きたユキヒョウも確認されています。
唯一ユキヒョウをおびやかす動物は「ヒト」
動物があまり生息していない雪山。体長1メートルを超えるユキヒョウはその頂点に君臨しています。
そんなユキヒョウを絶滅に追いやっているのは「ヒト」です。
気候変動、報復殺、生息地破壊など
地球温暖化の影響か山岳地帯での降雪や雪崩がふえています。海水温上昇にともなう水蒸気の増加が関係しているといわれています。
ユキヒョウの生息地に雪がおおすぎると、獲物となる動物のなかには移動するものもいます。
また、雪崩は動物を殺したり木々を壊したり、一瞬にして環境をかえてしまいます。
狩りの対象がいなくなったユキヒョウは餓死。もしくは里にくだり家畜を襲ってしまいます。
すると、家畜を殺された住民が怒り、ユキヒョウを敵視。現にユキヒョウ密猟の半数ほどが報復として殺されたものです。
もちろん毛皮や骨などを目的とした密猟の被害者でもあります。
さらに、人口増加にともなう生息地破壊(開拓やインフラ整備等)、ヤギやヒツジなど食肉目的の狩り等によりユキヒョウの住みかや獲物がへっています。
ユキヒョウを絶滅から救うためには地域住民の協力が必須となっています。
一方で世界中のヒトが節電・節水、マイカー自粛、ゴミ削減など地球のために行動することで、たくさんの動物や自然をすくうことができます。自分にできることを続けていきたいですね。
[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。
ユキヒョウの生態と特徴【まとめ】
- 生息 アルタイ山脈やヒマラヤ山脈など 7700頭 減少傾向
- 形態 体長1m 尾長1m 体高60cm 体重40kg
- 体毛 白~茶色 毛深い 長い
- 特徴 鼻腔が大きい→吸った空気が温められる
短足→重心低 風の抵抗をうけにくい 力強い
長尾→バランスをとる 方向転換する - 生態 単独行動 ひっそり暮らす
食事 ヤギ ヒツジ(家畜)
繁殖 数頭(体長20cm)出産 親離れ2歳 性成熟3歳 - 寿命 野生 15年(成熟前の死亡率が高い)
- 天敵 ヒト(報復殺 密猟 生息地破壊など)
野生ではほぼ見ることのできない幻の動物ユキヒョウ。
灰色の長い毛に短いあし、そして太いしっぽ。重たそうな外見に似合わず、とても身軽で跳躍力がピカイチ!
一度見ると好きにならずにはいられない魅力的な動物です。
動物園に行ったユキヒョウの尾や毛、あしに注目して観察してみましょう。
飼育動物園は「ユキヒョウに会える動物園【2022年赤ちゃん誕生】一覧とニュースまとめ」をご覧ください。
以上、ユキヒョウの豆知識でした。
【参考】
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