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多摩動物公園にいたユキヒョウ「シンギズ」の子孫【動物の相関図】

09/23/2022

多摩動物公園は日本でもっとも多い5頭のユキヒョウが暮らしています。

今回はかつて多摩で暮らしていたオスのユキヒョウ「シンギズ」に注目します。

日本だけでなく海外でも活躍しているユキヒョウの祖。現在日本だけで10頭以上のシンギズの子孫が生存しています。

シンギズ|推定1989年~2015年10月

2000年10月、カザフスタン共和国から来日した「シンギズ」野生のため正確な生年は不明ですが、来園時すでに8~10歳でした。

貴重な野生ユキヒョウの飼育施設として、過去にユキヒョウ繁殖経験のある多摩動物園がえらばれました。

2003年には「ミユキ」2005年以降は「マユ」「ユキ」計3頭のメスと繁殖に成功しました。

実は2003年ミユキの子「ミカ」もシンギズと結ばれましたが、誕生した子は生後数か月で死亡しました。

合計16頭の父となったシンギズ。さすが野生!繁殖能力のたかいオスでした。

現在日本にはシンギズの子が6頭生存しています。その他、シンギズの生まれ故郷カザフスタン、イギリスそしてカナダへと送られた子たちがいます。

日本だけでなく海外でもシンギズの血は脈々とひきつがれています。

シンギズは亡くなる数年前より腎臓をわるくし治療をおこなっていました。2015年10月ついに息をひきとりました。

野生でありながら環境の異なる多摩動物公園で15年も活躍したシンギズ。推定24~26歳ととても長生きでした。

今後もシンギズの血が絶えず、子や孫がユキヒョウ繁殖に貢献してくれることを願います。

シンギズの家系図

2022年12月現在()内は年齢順

  • シンギズの子  15頭(マイ、ミュウ、エニフ、カーフ、スピカ、アクバル、シリウス、マイヤ、コハク、スオウ、ハン、ミルチャ、アサヒ、エナ、スカイ)
  • シンギズの孫  3頭以上(ヤマト、ユッコ、リアン+カナダおよびイギリスで生まれた個体)
  • シンギズのひ孫 2頭(リヒト、ユーリ)
  • シンギズの玄孫 1頭(ヒカリ) ※両親はシンギズの子とひ孫
多摩動物公園にいたユキヒョウのシンギズの家系図

アサヒとリヒト繁殖へ! 大森山動物園

2011年5月、日本生まれのマユとシンギズのあいだに3つ子として生まれた「アサヒ」多摩動物公園で生まれ育ちました。

一方の「リヒト」は2016年5月旭山動物園にて、シンギズの孫「ヤマト」とドイツの動物園からやってきた「ジーマ」のあいだに生まれました。

リヒトは2018年3月に、アサヒは2021年3月に秋田市・大森山動物園へやってきました。

アサヒとリヒトはどちらもシンギズの子孫ですが、4親等の関係。

さらにリヒトにはポーランド(祖母)およびドイツ(母)由来の血が含まれており、血統の問題はないと判断されました。

アサヒは多摩動物公園時代、カナダ生まれの「コボ」と交尾がみられたものの、出産はありませんでした。来園時すでに9歳、のこされた時間は長くはありません。

ユキヒョウの赤ちゃん|2022年9月より公開中

2022年1月、アサヒの発情にあわせて同居を開始。おおきな闘争はなく無事に2頭はむすばれました。

期待と不安がいっぱいのなか、ついに2022年4月アサヒが第1子を出産しました!!!

初産が10歳という偉業をなしとげてくれました。

子はメス「ヒカリ」です。アサヒの愛情をうけてすくすく成長し、9月より一般公開されています。

スカイもつづけ!いしかわ動物園

晴れて繁殖に成功した大森山動物園のアサヒ。3つ子のきょうだい「エマ」はカナダで繁殖しています。

のこる1頭はオスの「スカイ」2013年よりいしかわ動物園で飼育されています。

なかなか繁殖相手が見つかりませんでしたが、2022年1月に先述したリヒトの母「ジーマ」がブリーディングローンでやってきました。

ジーマ来園1か月後には、同居がおこなわれました。ざんねんながら今期の妊娠はなし。しばらくは別居がつづきますが、冬の発情期がたのしみです。

ついにユキヒョウの赤ちゃん誕生!2023年3月

期待が集まるなか、ついにジーマが1頭の子を出産しました。

スカイにとっては初の子どもですが、ジーマは3頭め。子は母親の愛情をたっぷり受けて成長中です。

2023年9月より一般公開と愛称募集がはじまっています!ぜひ会いに行きたいですね。

ユキヒョウは中央アジアの山岳地帯に生息しています。発見がむずかしく生息数は1万頭未満といわれています。

絶滅のおそれが高い動物(IUCNレッドリスト危急)としてワシントン条約によって輸出入が規制されています。

ユキヒョウが暮らす地域では地球温暖化の影響で降雪や雪崩がふえているといわれています。環境がかわったことにより獲物となる動物がいなくなっています。

食糧が乏しい結果、ユキヒョウは餓死もしくは家畜をおそいます。

そのため地元住民からは害獣として嫌われ、殺されています。密猟防止活動がおこなわれているものの、ユキヒョウの数は減りつづけています

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さいわいシンギズのおかげで、日本国内のユキヒョウ飼育がつづけられています。彼がいなければとっくに日本のユキヒョウはいなくなっていたかもしれません。

今後もシンギズの血が絶えないよう、ユキヒョウのための環境を整えてほしいと願っています。

以上、ユキヒョウのシンギズのお話でした。

【参考】

多摩動物公園