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チーターが地上最速の理由とは?つま先からしっぽまで速さの秘訣を解説

09/27/2022

もっとも速い動物といえば?

おおくの方が「チーター」と答えるでしょう。

では、なぜチーターのあしが速いのかご存知でしょうか?

実は「あし」だけでなく「心臓」や「骨」までチーターの速さの秘密が隠されています。

今回のzoo zoo diaryはチーターの走り・速さを徹底解説!動物の進化や能力のすごさに注目してみましょう。

チーターとは?

食肉目ネコ科チーター属。

かつてはひろく分布していたチーター。局地的な絶滅がつづき、現在の生息地はアフリカ大陸とイランに限られています。

尾をふくめた体長は1メートルを超えますが、体重は軽くスマートなネコです。

  • 食肉目ネコ科チーター属
  • IUCNレッドリスト 危急(VU)
  • CITES 附属書Ⅰ
  • 生息 アフリカ大陸とイラン 7000頭
  • 体長 130cm
  • 尾長 70cm
  • 体高 75cm
  • 体重 オス50kg メス35kg
チーター 形態 秋吉台サファリランド

チーターは美しい外見と比較的ヒトに慣れやすいことから、大昔より乱獲されつづけています。

100年間で90%という驚くべきスピードでチーターはいなくなり、現在は7000頭ほどしかいません

チーターは絶滅危惧種(IUCNレッドリスト危急)であり、ワシントン条約により商業目的の輸出入が禁止されている動物です。

チーターが速く走れる理由

地上最速というものの、チーターの走るスピードはいったいどれくらいでしょうか?

なんと、

最高時速100km以上!

高速道路をはしる自動車のスピードで走れるなんて信じられませんよね。

親しみのあるイヌは時速30kmほど。走るために調教された競走馬でさえ時速70kmほどといわれます。

さらにチーターは加速が優れています。たった3歩で時速80kmに、3秒後には時速100kmに達します

では、いったいなぜチーターはこれほど速く走れるのでしょうか?

いわずと知れた地上最速の哺乳類チーター。そのスピードの秘訣にせまります。

歩き方のちがい|チーターはつま先立ち

第一に歩き方が違います。

なにを優先するかによって、あしのつくりは進化してきました。おおきく3つの歩き方があります。

  • 蹠行(しょこう/せきこう)
  • 趾行(しこう)
  • 蹄行(ていこう)

狩りを生業とするチーターは速さと器用さを兼ねそなえた「趾行」性の動物です。

蹠行性(サル、クマのなかま)

わたしたちヒトをふくむ霊長類やクマ等はあしの裏全体をつけて歩く蹠行性(しょこうせい/せきこうせい)の動物。

かかとをしっかり地面につけて体を支えるため、抜群の安定性を誇ります。2足立ちやゆびをつかうことを優先させた結果です。

ただ、かかとを地面につけると歩幅がちいさくなるため、スピードはあまり出ません。

ゴリラ 蹠行
蹠行:かかとをつける

趾行性(イヌ、ネコのなかま)

チーターをふくむネコやイヌ等はつま先だけつけて歩く趾行性(しこうせい)の動物。

かかとを浮かせた状態であしの長さを生かすことができるうえ、地面を蹴るように素早く走れます。

また、地面につく面積がすくないため足音が静か。

さらにゆびや爪をつかい、方向転換やものを押さえたり仕留めたりすることができます。

チーター 趾行性
趾行:つま先で歩く

趾行は「速く走れる」だけでなく「獲物にそっと忍び寄る」「相手の動きを制御する」など、捕食者にもっとも適した歩き方です。

蹄行性(ウマ、ウシのなかま)

ウマやウシのなかまはひづめ(蹄)をつけて歩く蹄行性(ていこうせい)の動物。

簡単にいうと、ひづめは「なかゆび」および「くすりゆび」の頑丈なつめ。つま先(趾行)以上にあし全体の長さを生かせるため歩幅がひろくなります。

ただ、草食動物はひづめを進化させたために、ゆびを犠牲にしました。

器用に動かすことはできず、ひづめは速く走ることだけに特化しています。

シマウマ 蹄行性
蹄行:ひづめであるく

チーターの獲物であるスプリングボックは最高時速100km!チーターに勝るとも劣らないスピードです。

おなじくトムソンガゼルは時速70kmと、チーターから逃げる動物たちは最速の草食動物といえます

動物の歩き方【まとめ】

  • 蹠行性
    • ヒト、クマなど
    • あしの裏全体を地面につける
    • 安定性が高い
    • 速度は出ない
  • 趾行性
    • チーター、リカオンなど
    • つま先だけ地面につける
    • 速度が出る
    • 静かに走れる
  • 蹄行性
    • ウマ、ウシなど
    • つめだけ地面につける
    • より速度が出る
    • ゆびがない

つねに爪がでている|スパイクの役割

ネコ科動物の爪は獲物をとらえたり、木に登ったりする際に役立っています。

しかしながら、狩りのときには足音が邪魔になります。

そのため、ライオンやトラなどは爪を出したり引っ込めたりして、臨機応変に生活しています。

ライオンの爪
ネコの爪は肉球のあいだに収納できる

ところが、チーターの爪は引っ込めることができません(赤ちゃんのときはできます)。

爪は地面に突き刺さり、走行時のはずみになります。この牽引力を利用し、チーターはすぐに全速力で走りだすことができます

スピード勝負のチーター。爪を出し入れする時間さえ無駄にしないよう進化しています。

チーターの爪はつねに出ている

風の抵抗をうけにくい|スマートな体

チーターは速く走ることを最優先に進化した動物です。ヒョウやライオンとはちがう特徴がいくつもあります。

まず、チーターはとても小顔で痩せています。

これは走行時の空気抵抗を減らすため。面積が小さいぶん風の影響を受けにくくなります。

一般にライオンやトラなど肉食動物は噛む力が大きいため、頭(顔)も大きくなります。

しかし、チーターは顎の力や牙の長さといった「強さ」より「速さ」を選びました。

キングチーター 形態 アドベンチャーワールド

やわらかい背骨|ばねの働き

そして、チーターの速度にもっとも貢献している部分は背骨(脊椎)

ではチーターが走る様子をイメージしてみましょう。

後ろあしで前方に蹴りだしたあと、前あしでさらに前方へ。このとき背骨をぐっと曲げるため、後ろあしはおなかの下で前あしと交差します。そのあと後ろあしをつき2歩目にはいります。

実はチーターは走るときに背骨を曲げているのです。

このチーターの柔らかい背骨の動きが「ばね」となり、より大きな歩幅とスピードを生みだしています。

そもそもチーターのあしと胴体は細長いため歩幅をひろくとれます。ばねの相乗効果により走行時のチーターの歩幅は7~8メートル!たった3歩で時速80kmを超えます。

さらにチーターの頭は走るときに一切ゆれず、無駄な動きがありません。

空気抵抗の少なさや歩幅の大きさは、あしの力だけでは出せないチーターの速さの秘密です。

【YouTube】National Geographicでチーターの走り方をチェック!

超強い!チーターの心臓

わたしたち動物は走ると脈拍や血圧があがります。

これは心臓が働いている証拠。体を動かすために必要な酸素を全身へ送りだしています。

チーターは「無」から「動」への切り替えが一瞬でおこなわれるスピードの世界に生きています。

走りだすときにチーターの心臓は毎分200回以上動き、あっという間に全身に酸素を届けることができます。

ヒトの心拍数は運動しても毎分150回程度。200回を超えると動けないほど苦しいはずです。

チーターの心臓がいかにパワフルでタフかがわかります。

全力疾走したあとの回復に30分以上?!

しかし、パワーがあるイコール莫大なエネルギーが必要ということ。

チーターは全力で動いたあと、筋肉の疲れをとり心拍数を正常(毎分140回前後)にもどすために、必ず休憩しなければなりません。

その間は移動はもちろん、食事さえとれず。回復まで30分以上かかるといわれています。

サンディエゴ動物園 休憩するチーター

スピードは諸刃の剣。狩りのあと動けない状態のチーターが獲物をとられる光景はたびたび見られます

また、酸素をとりいれる鼻の穴や肺は大きく、酸素を運搬する動脈は太く強いとわかっています。

このようにチーターは速さを追求した独特の進化により、一気にトップスピードまで加速することができます。

チーターが速さを制御できる理由

チーターはただあしが速いだけではありません。

自分のスピードをコントロールするための機能もそなわっています。

ブレーキも強力!機能的なあし

チーターは前後のあしの筋肉構成が異なり、スピードとパワーを同時に生みだすことができます。

この四肢のちからが全速力からの急減速を可能にします。

また、チーターのあしは滑らかに動きつつ、過度な動きをおさえるしくみが備わっています

時速100kmでもケガすることなく、安定して走ることができます。

かちかちの肉球がポイント

実はチーターの肉球はかたく、家ネコのようにぷにぷにの肉球ではありません。

かたい肉球は摩擦がおおきいため、曲がるときに横滑りをしにくい急ブレーキが効きやすいといった利点があります。

チーターの肉球 アフリカンサファリ

バランス&コントロール!長いしっぽ

チーターのからだはスピードとパワー、安定性だけでなく、コントロールも優れています。

動物の尾は体幹を調整する機能があります。

尾を動かしてバランスをとるため、高いところに登る動物にとってはなくてはならない存在です。

チーターは木登りはしませんが、長い尾が重要な役割をになっています。

たとえば猛スピードで走るチーターが右へ曲がろうとするとき、チーターの左側には大きな遠心力がはたらきます。自動車で右折するときに体が左に傾いてしまう力です。

おそらくチーターが感じる遠心力はとてつもない大きさ。左側に倒れないようチーターは尾を動かしてバランスをとっています

また、尾の位置をかえることで重心をコントロールし、すすむ方向をさだめる(舵をとる)ことができます

狩りの際は相手の動きに合わせて、尾が機敏に動いていることがわかります。

チーター 形態 アフリカンサファリ

チーターは強大なあしの筋力やあし裏の摩擦、そして優れたバランス感覚により、急な方向転換や減速など他の動物にはできない行動ができるようになりました。

まさに走りを追求した動物です。

チーターのあしが速い理由【まとめ】

  • 趾行     つま先だけ地面につけて蹴るように走る
  • 爪      スパイクのように加速をたすける
  • 小顔・細身  空気抵抗をへらす
  • あし長・胴長 歩幅をひろげる
  • 柔軟な背骨  ばねとなり加速をたすける
  • 強靭な心臓  高い心拍数にたえる
  • 機能的なあし アクセル、ブレーキ、スタビライザー
  • 長い尾    重心を調整しバランスをとる

時速100km以上で走るチーター。最高かつ唯一といっていい特技が「速く走ること」です。

そのスピードの秘密はチーターのいたるところに隠されています。

本来であれば広い大地をあるき、獲物を見つけては疾走するチーター。

ざんねんながら動物園ではチーターの特技が発揮されていません。わたし自身、全速力のチーターをこの目で見たことはないです。

野生とかけ離れた動物の飼育に限界や憤りを感じてしまいます。

しかし、動物園がチーターを展示しているから、チーターを好きになり、チーターが絶滅危惧種であることを知り、チーターや環境のために働こうという人々が生まれるのです。

チーターは開拓だけでなく地球温暖化にともなう砂漠化により、生息地をうしなっています。

美しい最速の動物チーターがこれからも生きつづけられるよう、節電・節水ごみを減らすなど自分にできることをつづけていきたいです。

[広告]不要なものは買わないことが一番。必需品は売上の一部が寄付されるような商品を選ぶことで、自然や動物またはヒトをまもる活動につなげることができます。

以上、チーターの速さのお話でした。

【参考】

Cat Specialist Group

National Geographic