ゴールデンターキン【生態と特徴】3か所の動物園で会える中国三大珍獣
おおきなウシのようなヤギのような動物ターキン。
聞いたことも見たこともない方が多いかもしれません。
さてターキンとはなにものでいったいどんな生活をしているのでしょうか?
今回のzoo zoo diaryはゴールデンターキンの生態と特徴そして飼育施設を紹介します。
ゴールデンターキンとは?
中国の限定された地域の岩山や谷に生息するゴールデンターキン。
もともとの生息数の少なさに加え、環境破壊や狩猟により絶滅の危機に瀕している動物です。
ターキンはIUCNレッドリスト危急と評価され、ワシントン条約(附属書Ⅱ)による規制をうけています。
ターキンの種類|1種4亜種
鯨偶蹄目ウシ科ターキン属。こまかくはヤギ亜科、ウシよりもヤギにちかい動物です。
4つの亜種(3つの説あり)が知られており、いずれもヒマラヤ山脈や高原など標高の高いところで確認されています。
- 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
- ウシ科 Bovidae
- ターキン属 Budorcas
- ターキン Budorcas taxicolor
- ミシュミターキン B. t. taxicolor
- ゴールデンターキン B. t. bedfordi
- シセンターキン B. t. tibetana
- ブータンターキン B. t. whitei
- ターキン Budorcas taxicolor
- ターキン属 Budorcas
- ウシ科 Bovidae
ゴールデンターキン = 秦嶺山脈にすむターキン
ターキンのなかで中国南西部・秦嶺山脈に生息するものがゴールデンターキン。
とくに金色の体毛が美しターキンです。ターキンの最大亜種といわれています。
中国は「国家一級重点保護野生動物」としてゴールデンターキンを守っています。
中国三大珍獣とよばれるめずらしい動物です。
- 学名 Budorcas taxicolor ssp. bedfordi
- 生息 秦嶺山脈の高地 5000頭
- 体長 150~200cm
- 体高 120cm
- 角長 50cm
- 体重 オス300kg メス200kg
ターキンの形態
ターキンは非常に大きい動物。
とくにオスは大型で、体長2メートル、体重300kg以上に成長します。お顔も大きく、幅広で特徴的な鼻をもっています。
スイギュウの角に似た形のターキンの角は長さ50cm以上。頭部の真ん中から両脇へと伸びる立派な角です。
一方、体に対して四肢はみじかい傾向にあります。
ターキンの短いあしと大きく2つに割れた蹄は岩山を動きまわるために有利です。
通常はゆっくりとした動きをするターキン。
ところが、危険が迫ったときには足場の悪い斜面をすばやく移動することができます。
ゴールデンターキンはオスだけ?!毛の色
寒さをしのぐため長い体毛が生えています。とくに冬は長い毛に生えかわります。
ゴールデンターキンは名前のとおり金色のように明るい体毛です。しかし、全員が金色ではありません。
金色に光り輝くのは成熟したオス。メスや子はクリーム色や茶色です。
ゴールデンターキンの生態
ターキンは日中はひっそりと過ごし、早朝や夕方に活発になる動物です。
成熟したオスは単独もしくは群れを守る存在として行動。メスや子は群れのなかで暮らしています。
群れの大きさは季節ごとに変化
通常、家族がそろって行動するターキン。
春になるとたくさんの家族があつまり、大きな群れをつくります。最終的に300頭にものぼる集団となり、4000メートル以上の高地へと移動します。
気温がさがり食料が乏しくなると、20頭ほどの小さな群れに分裂。そして、谷へおりていきます。
大きくて穏やかな生活を送っていそうなターキン。実はターキンの移動は険しい崖をおりたり急流の川をわたったり、前途多難です。
一般に季節ごとのターキンの移動はおなじルートで行われます。
ゴールデンターキンは何を食べるの?
ターキンは草や木などさまざまな植物を食べます。採食時間は早朝や夕方。
大きなターキンはあしが届く範囲であれば、高い樹木の葉や枝も食べます。ときには、力づくで木を倒して採食します。
草食動物は食事により塩分を摂取することができません。塩は体液や腸内環境を維持するために欠かせない要素。
ターキンは移動をくりかえし、塩分がつくられる場所で数日過ごすことが確認されています。
【YouTube】CGTNで野生ターキンの生活をチェック!
コミュニケーション能力が高い
ふだんは物静かなターキン。
時として音をだしたり体勢をかえたり、独自のコミュニケーションをとります。
ターキンは音をあやつります
ターキンは「音」で意思疎通をはかります。
- ターキンのコミュニケーション(音)
- なにかを求めている → げっぷのような音
- 危険を予知したとき → 咳をして知らせる
- 発情中のメス → 高い声
- オス同士の争い → 怒鳴り声
その他にも優位をしめすとき、子と母の声のかけあいなど、さまざまな音を出すことによりターキンは互いにコミュニケーションをとっています。
体勢でアピール!
ターキンは、音だけでなく体をつかって意思疎通を図ります。
オスは直立し首と顎をあげて優位を示します。また、横向きになり自分の大きさをアピールすることもあります。
一方で、頭をさげる姿勢は攻撃性を意味します。
繁殖期のメスや塩場のとりあいの際には、ウシやシカのように角突きをして勝敗を決することもあります。
ゴールデンターキンの繁殖と寿命
秦嶺山脈に雪が降りはじめる前の7月ごろ、ターキンの繁殖期がおとずれます。
ターキンの尿に含まれるフェロモンが繁殖相手を探す重要な鍵となります。そのため、ターキンは自分の尿を体につける習性があります。
単独行動していたオスは、においを頼りにメスに近づきます。
晴れて妊娠したメスは、春の出産に向けて草木が生い茂ったエリアを探します。一般的に1度に1頭の子を生みます。
赤ちゃんは茶色だよ!
ターキンの赤ちゃんは体重およそ5kg、毛色は濃い茶色。山の中で保護色となります。
生まれて3日と経たないうちに、母親の後をついてまわるようになります。移動距離が長いターキンにとって、すぐに歩けることは非常に大切です。
また、ヒョウやクマはターキンを捕食するといわれていますが、体の大きいターキンを狙うことは稀。多くは小さな子どもがターゲットとなります。
ターキンだけでなく多くの草食動物は、捕食を回避するためにも自力での歩行が必須となります。
また、赤ちゃん特有の茶色の毛が目かくしとなります。
生後2か月ごろには離乳し、半年ごろには角が生えだします。年齢とともに毛深く、オスの体毛は明るくなります。
通常、母親が次の子を出産するまで母子は行動を共にします。
母ターキンたちが交代で何頭もの子を見守る「共同保育」をおこない、子ターキンたちは群れのなかでのびのびと育っていきます。
ターキンの性成熟は約3年。
寿命は16年ほど
飼育下では20年生きることが確認されています。
寒さとゴールデンターキンの進化
動物がなかなか住みつかないような寒い地域で暮らすゴールデンターキン。
当然、寒さにつよい体に進化しています。
大きな鼻は可愛いだけじゃない!
もちろん分厚い冬毛は凍えるような風を防いでくれます。
そして、愛らしい大きな鼻にも秘密があります。
ターキンの鼻には大きな副鼻腔があります。鼻から吸った冷たい空気はその空洞で温められたのち、肺の中へと入っていきます。
つまり、ターキンは鼻を大きく進化させ、呼吸による体温の低下をふせぐことに成功しました。
ターキンは油をかく?!
ターキンは汗を分泌する汗腺がありません。
そのかわりに油分を含んだ物質を分泌します。油脂は水分をはじきます。簡単にいうとターキンはレインコートを着ているような状態。
そのため、霧の中でも濡れにくく体温低下を防ぐことができます。さらには夏の乾燥も和らげてくれます。
動物園ではターキンがこすった壁や檻などに注目して見てください。付着したターキンの油性物質を発見できるでしょう。
ちなみに、この油は刺激臭をはなちます。ターキン展示場では異様なにおいが漂っていますが、ターキンのにおいなのでじっくり味わってみてください。
不思議なことにオスは油性物質を分泌しません。そのため匂いもありません。
オスのターキンは美しい黄金の毛のために、防水の仕組みを断念したのでしょうか?寒くないのか気になるところです。
3か所!ゴールデンターキンに会える動物園
日本では、現在3か所の動物園でゴールデンターキンに会うことができます。
- 多摩動物公園
- よこはま動物園ズーラシア
- アドベンチャーワールド
全国で3か所と限られていますが、計20頭以上のゴールデンターキンが飼育されています。
2019年3月には和歌山県アドベンチャーワールドでオス2頭、そして7月には多摩動物公園でオス1頭が誕生しました!
よこはま動物園ズーラシアでは、2019年に続いて2020年12月にもゴールデンターキンの赤ちゃんが生まれています。
たくましい落ち着いた成体とは異なる、活発で小さなターキンを見れるチャンスです。ぜひ訪れてみてください。
ゴールデンターキンの生態と特徴【まとめ】
- 鯨偶蹄目ウシ科ターキン属
- 生息 秦嶺山脈
- 形態
- オス 体長200cm体重300kg 金色
- メス 体長150cm体重200kg 茶色~クリーム色
- 音のコミュニケーションがさかん
- 寒さに強い(大きな鼻と分泌物)
- 性成熟3年 寿命16年
中国三大珍獣ゴールデンターキン。
極寒の山地で暮らすために大きなひづめや鼻へ進化。さらに油性物質を分泌し体を守っています。
ターキンは生息地破壊や過度な狩猟により減少傾向。近年は森林伐採や狩猟が禁止され、ターキンの住みかは守られつつあります。
とはいえ絶滅のおそれが高い状態がつづいているため、今後も継続的な保全活動が求められています。
ゴールデンターキンは日本でも会うことができます。動物園でターキン特有の声やにおいを感じてみてください。
以上、ゴールデンターキンのお話でした。
【参考】
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