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福岡市動物園生まれのビントロングたち【動物の相関図】

01/18/2023

さて、ビントロングとはどんな動物でしょう?

パッと思い浮かぶあなたはきっと少数派。ほとんどの方が知らないかもしれません。

しかし、ビントロングはとっても可愛らしいユニークな動物です。

福岡市中心部にある福岡市動物園はかつて日本ビントロング界の祖といえるペアを飼育し、ビントロングの繁栄におおきく貢献しました。

今回はあまり注目されない動物「ビントロング」の相関図を作成するために、その歴史をさぐりたいと思います!

ビントロングの生態と特徴

食肉目ジャコウネコ科に属すビントロング。

分類上はネコに近いジャコウネコ科ですが、クマのような見た目から、熊猫【Bear Cat】と呼ばれています。

長いもさもさの黒毛におおわれた不思議な動物です。

  • 食肉目ジャコウネコ科ビントロング属
  • IUCNレッドリスト 危急(VU)
  • 生息地 南アジア~東南アジアの森林
  • 体長 70~90cm
  • 尾長 65~85cm
  • 体重 オス15kg メス17kg
福岡市動物園 ビントロング

ビントロングは大型犬ほどの大きさで、体とおなじくらいの長さの尾をもちます。全長は2メートル近く、予想以上に大きな動物です。

また、動物界においては珍しく、オスよりもメスの方がすこし大きく育ちます。

生息地はインドやタイ、インドネシアなど南~東南アジアの森林。ほとんどの時間を木の上で生活しています。

食肉目(ネコ目)に分類されますが、主食は果物。まれに小動物や昆虫も食べる動物です。

ビントロングは生息地破壊により住みかや食料を失っています。個体数は減少傾向にあり、絶滅のおそれが高い状態IUCNレッドリスト危急)にあります。

日本の動物園にいるビントロングたち

絶滅危惧動物であるビントロング。嬉しいことに日本ではおよそ20か所の施設でビントロングに会うことができます。

その祖ともいえるビントロングたちがいたのが「福岡市動物園」です。

ここからは、福岡市動物園のビントロングの繁殖に注目して紹介します。

コロン|1996年~2018年9月

福岡市動物園のビントロング歴史の発端は「コロン」1996年8月5日神戸市・王子動物園で生まれ、1999年7月に福岡市へやってきました。

王子動物園はコロンの前年1995年にメスの「こうめ」が誕生しています。コロンと血縁があるかはわかりませんでした。

ペアとなったオスの名前は不明ですが、コロンと同時期に鹿児島市・平川動物公園よりやってきました。

そして2007年5月、メスの「チャコ」オスの「ビンカ」が生まれました。

チャコは2008年に父の故郷である平川動物公園へ移動。その後2頭のオスとペアリングに成功し、たくさんの子をのこしています。

一方のビンカは2007年に転出。阿蘇カドリー・ドミニオンや大阪市・海遊館(NIFREL)をへて、現在は愛媛県・とべ動物園で飼育されています。

2009年、ざんねんながら父親個体が死亡。つまり、ビントロングの祖であるコロンペアの子は2頭だけです。

コロンは2018年9月に亡くなりました。22歳と長生きでした。

以降は、平川動物公園に送られた娘「チャコ」の活躍が光ります。

平川動物公園 ビントロング チャコ
チャコ|平川動物公園

コロンの家系図

2023年5月現在()内は年齢順

  • コロンの子  2頭(チャコ、ビンカ)
  • コロンの孫  11頭(サーム、ティガ、ティナ、キュート、シュート、コウ、ダイ、ユキ、フク、ラブ、ルビー、チャチャマル)
  • コロンのひ孫 1頭(サン)
福岡市動物園のビントロング コロンの家系図

2014年開催の九州ビントロング祭のポスターに阿蘇カドリー・ドミニオンの「サーム」「ティナ」の曾祖母が平川動物公園の「ノエル」だと記載されていました。

ノエルは1995年4月生まれ。2019年6月まで生きたご長寿ビントロング(満24歳)でした。名前不明のオスの母親と推定されます。

ビーン|2003年9月~

平川動物公園からやってきたオスが2009年に亡くなった翌年、あらたなオス「ビーン」がやってきました。

2003年9月15日生まれと誕生日ははっきりしているものの、どこからやってきたか見つけられず。

すこし神経質な性格というビーンですが、トロンとの繁殖に成功。また、高齢のコロンと仲良く過ごすなど社会性のあるビントロングです。

トロン|2009年1月~

日本にいる海外生まれのビントロングのおおくはタイ・カオキオ動物園から導入されています。

福岡市動物園の「トロン」もその1頭。2012年6月にオスの「ダム」といっしょにやってきました。

トロンは先に来園していたビーンとペアリングに成功しました。

3回の出産のうち2回目の子は成育しませんでしたが、1回目の「コーン」「シャロン」3回目の「ブーン」は元気に成長しました。

子どもたちは福岡市をはなれ、新天地で繁殖に成功しています。

ビーンとトロンの家系図

2023年1月現在()内は年齢順

  • トロンとビーンの子  3頭(コーン、シャロン、ブーン)
  • トロンとビーンの孫  3頭(ガンタン、ルチュ、サン)
  • トロンとビーンのひ孫 7頭(アイル、ウータン、ウダーラ、ウタール、ルビー、タン、ポポ)
福岡市動物園ビントロング トロンとビーンの家系図

2021年11月には、愛媛県・とべ動物園で生まれたトロン・ビーンのひ孫「ルビー」が福岡市動物園にやってきました。

お気づきでしょうが、ルビーはコロンの孫でもあります。福岡市動物園で飼育していたビントロングの血をうけつぐルビー。感慨深いものがあります。

福岡市動物園のビントロングの家系図をまとめると…

すこし複雑な図になります。

が、福岡市動物園の「コロン」や「トロン・ビーン」の血をひくビントロングがこれだけたくさんいるということが分かると思います。

今後は「ルビー」が福岡市動物園のビントロングの将来をになうことになるでしょう。

福岡市動物園 ビントロングの家系図 相関図

いまわたしたちが動物園でビントロングに会えるのは繁殖をつづけてきた動物園の歴史があるからです。

ビントロングは絶滅のおそれがある動物IUCNレッドリスト危急)です。紙やパーム油をつくるために森林が壊されたり、ペット用に密猟されたり、その数は減りつづけています。

これからも愛らしく香ばしいビントロングが健やかに過ごせるよう、紙や木材の節約・リサイクル、パーム油製品の選択など自然にやさしい生活を心がけましょう!

【関連記事】森林破壊と紙・パーム油について(動物のためにできること)

福岡市動物園 ビントロング 寝

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【参考】

福岡市動物園

平川動物公園

王子動物園