キンシコウの生態と特徴【熊本に1頭だけ】中国三大珍獣のサル
美しいサル代表の「キンシコウ」実は熊本県・熊本市動植物園に1頭だけ飼育・展示されています。
名前は有名ですが、見たことのない方がおおいかもしれません。
さてキンシコウはいったいどんなサルなのでしょうか?知られざるキンシコウの生態と特徴に迫ります。
キンシコウとは?
霊長目オナガザル科シシバナザル属。
しずくのような形をした上向きの鼻が特徴的なシシバナザル。その鼻の形からシシバナ(獅子鼻)と名付けられました。
シシバナザルの1種
現在、5種のシシバナザルが確認されていますが、茶や黒など一般的なサルと同じような体色を呈しています。
一方、四川省にすむシセンシシバナザルは明るい体毛をもち「キンシコウ」「キンイロシシバナザル」と呼ばれています。
- 学名 Rhinopithecus roxellana
- 生息 中国中西部の山岳地帯 1.5万頭
- 体長 50~65cm
- 尾長 60cm
- 体重 オス15kg メス10kg
一般に「ゴールデンモンキー」といわれるキンシコウ。
実はゴールデン・スナブノーズド・モンキー【Golden Snub-nosed Monkey】が正解。
ゴールデンモンキー【Golden Monkey】というとアフリカ中央部ヴィルンガ山地に生息するブルーモンキーをさします。
極寒の地に住むサル
キンシコウの生息地は中国中西部の標高2000~4000メートルほどの山林。
1年の半分以上のあいだ雪でおおわれるような非常に寒い地域です。積雪がおおい時期にはすこし低いところで観察されます。
シシバナザルのなかでも、ヒト以外の霊長目のなかでも最も寒いところに生息するキンシコウ。
高山の冬は厳しく、キンシコウは身を寄せあって寒さをしのぎます。
絶滅の危機に瀕しています
キンシコウ個体数は1.5万頭ほど、減少傾向にあります。絶滅のおそれがきわめて高い動物(IUCNレッドリスト危機)です。
中国では、ジャイアントパンダと同じように「国家一級重点保護野生動物」として絶滅の危機にある動物に指定されているキンシコウ。
国の野生生物保護法のもと厳重に守られています。
しかし、保護区周辺での開拓が問題となっています。山林に入る観光客のための道路やライフラインの整備などもキンシコウの住みかを荒らす要因。
また、中国政府の働きにより激減しているものの、ペット等のため捕らえられたり、食肉や毛皮のため殺されたり、キンシコウの密猟はいまだに確認されています。
保護区外の自然を守るために現地の方々や観光客の教育が課題となっています。
キンシコウの形態
メスは体長50cm、体重10kg程度。オスはメスよりかなり大きく、体重20kg以上の個体も確認されています。
雌雄ともに体長と同じくらいの長さのしっぽをもっています。
金色の毛と水色の顔
キンシコウの毛は金色からオレンジ色。体毛と対照的な青みがかった白い顔が印象的な、とても鮮やかなサルです。
厳しい寒さを耐え抜くため、顔以外は長い毛に覆われています。
一般的に成熟したオスの体毛はより明るく長め。さらに、オスは立派な犬歯と口の両脇に小さなイボをもっています。
キンシコウの生態
キンシコウは昼行性。おもに木の上で一日を過ごしていますが、地上におりることも確認されています。
食べものの多くは植物。地衣類(菌と藻の共生体)や種子、葉などを好みます。ときにタンパク源として昆虫や卵などを食すこともあります。
群れも異色!キンシコウのコロニー
キンシコウは1頭のオスと、メスや子から成る家族で生活しています。通常、いくつもの家族が共存し100頭前後の大きな群れをつくります。
近年の研究により、ひとつのエリアに複数のキンシコウの群れが生息していることがわかりました。
群れ同士が対面したときには互いに別の方角へと向かい、争いを避けている様子が報告されています。
また、ゴールデンターキン同様、春になるとさらに多くの家族群が統合します。
ときには300頭以上の大群となり行動を共にします。これは、霊長目としては異例です。
さきほど述べたように、キンシコウは闘争を好みません。しかし、大きな声を出して威嚇する場合があります。
また、食料を発見したときにはキーキーと鳴きます。その他にも声によるコミュニケーションは幅広く観察されています。
【YouTube】Walt Disney Studiosで野生キンシコウの群れをチェック!
赤ちゃん超可愛い!キンシコウの繁殖
キンシコウは年中繁殖できますが、10月ごろにピークを迎えます。
妊娠期間はおよそ200日。春から夏にかけて通常1頭の子を出産します。
子育ては母親がおこないますが、しばしば母親以外のメスが手伝うことも確認されています。
生まれたばかりの子は500グラムほど。
雪山のなかで目立ちにくいよう、キンシコウの赤ちゃんの毛はよりより明るい色です。成長とともにおとなの色に近づいていきます。
生後3週間ほど経つとキンシコウの子は群れの中を動きまわりはじめます。3か月頃まで、母親とともに仲間に見守られながら成長します。
キンシコウの性成熟は5歳以降。
成長したキンシコウは親から群れを追い出されます。そして自立し、成熟した個体は新たな家族をつくります。
キンシコウの寿命は?
高山に生息するキンシコウを観察するのは至難の業。そのため、野生キンシコウのデータは乏しいのが実情です。
飼育下での寿命は比較的長く20年を超えます。また、20歳ごろまでは繁殖可能だと考えられています。
オスは天敵から子を守ります!
地上での天敵はヒョウやオオカミなど。危険を感じるとすばやく木にのぼり、逃げることができます。
ところが、樹上では猛禽類によって捕食されることがあります。
成体の被捕食率は低く、狙われるのは未熟な子ども。
危険を察知したキンシコウは群れ全体で若い個体を守る習性があります。
子や母親の周りをオスたちが囲い、勇敢にも歯や腕を使い、敵の攻撃を防ぎます。非常に頼もしい存在です。
熊本だけ!キンシコウに会える動物園
現在、日本でキンシコウを飼育している動物園は熊本市動植物園のみ。
2016年熊本地震災害を受け、復興工事のため一時は非公開となっていたキンシコウ。2018年12月、全面開園にともない、キンシコウ展示が再開されました!
- 父:パオパオ(29)*
- 母:ヘンヘン(27)*
- 兄:シンシン(21)*
- 弟:フェイフェイ(22)*
- 妹:ヨウヨウ(2004年生)
*死亡個体
1993年に中国の動物園協会と契約を結び、パオパオがやって来ました。その後ヘンヘンも来園。繁殖に成功し、6頭の子が生まれました。
その後3頭の子と両親で暮らしていました。
しかし、2018年に両親とシンシンが相次いで死亡。とても悲しい出来事でした。
そして2021年8月、フェイフェイが亡くなりました。
ついに日本のキンシコウはメスのヨウヨウ1頭だけになりました。
中国国内で丁重に扱われているキンシコウ。新たな個体をゆずりうけるのは容易ではありません。
日本でキンシコウが見られなくなる日はもうすぐでしょう。
熊本のキンシコウは「キンシコウ必見【熊本市動植物園まとめ】大きい&珍しい動物たくさん」でも紹介しています。
キンシコウの生態と特徴【まとめ】
- オナガザル科シシバナザル属シセンシシバナザル
- 生息 中国中西部の高山地帯 樹上性
- 形態 毛は金~オレンジ色 顔は青白い
- 食事 おもに植物
極寒の地で暮らすキンシコウ。国の野生生物保護法により守られている動物です。
しかし、保護区外の森林破壊や観光客用の施設整備などがキンシコウの生息地を脅かしています。
また、食肉のため殺されたり、他の動物をとらえるために仕掛けた罠にかかったり。密猟も問題となっています。
キンシコウの数は減りつづけ、絶滅のおそれがきわめて高い状態です。
2022年9月現在、熊本市のヨウヨウが日本唯一のキンシコウとなっています。これからも健康に長生きできることを願っています。
以上、キンシコウのお話でした。
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